エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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STAGE51【Speed Only Star(阻止限界点)

 

 

「今作戦の大まかな概要は以上だ。ストライダー隊単体になるが、敵の空戦戦力規模を考えても1個小隊でなんとかなるはずだ」

「フェンサーが抜けた穴はでかいな。本人が無事なのが救いだけど」

 

 司令官とワイズマン、そして俺のスリートップによる作戦の事前説明。

 小隊長になってからというものの、老齢の指揮官とベテランの編隊長に混じって作戦概要に関わることが小隊長としての仕事として参加することになってきた。

 正直この2人と一つのテーブルにというのは外見も加味して場違い感が否めない。そう考えてるのは俺だけかもしれないけど。

 

「今回の作戦だが。ストライダー隊にはカウントを編成してもらう」

「それはまたどうして?」

「今後の作戦活動においてストライダー隊単体の任務も増えるだろう。うちはストライダーとサイクロプスのメンバーを入れ替えることは多々ある。今のうちにカウントにはトリガーの指揮下という環境に慣れさせた方が良い」

「自分は構いませんけど。カウントは良い思いしなさそうですね」

 

 メイジ時代では大衆の面前で煮え湯を飲まされ。恐らく転落の遠因となった俺。

 そしてスペア隊ではあからさまに敵視され、何度衝突したことが。

 後半になってからは多少そのなりは潜め、仲が良いとはならないものの対等の関係。

 ストライダーに入ってからは幾分か軟化し、今のところ友人同僚未満以上ぐらいの位置に落ち着いている。

 

 それでもカウントにとってトップエースの名を欲しいままにしてる俺のことを何処か面白くないと思うことはあるかもしれない。

 近頃は3本線という通り名が確立され。最近なんとメビウス1の再来だとか、第2の死神とか。そんな通り名でエルジアに恐れられているとか。

 流石にかのビックネームと同一視されるのは恐れ多過ぎるからやめて欲しい。いやほんとマジで。

 仮にメビウス1と戦ったら誇張抜きで瞬殺される未来しか見えない。

 

 え? もはやロートルとなったメビウス1なら勝てるんじゃないかって? 

 大馬鹿者め、あのメビウス1が少し老いたぐらいで可愛くなるタマかよ。むしろより化け物になってるとしか思えない。

 

 とりあえずメビウス云々は置いておくとして。

 

「カウントは確かに優れた腕を持っている。うちの奴等と同等、もしくはそれ以上のポテンシャルを持っている。今までもその技術で生き抜いてきたのだろう。だがいま奴はお前という壁にぶつかっている。そしてその壁を壊す為に足掻いてるようにも見える」

「足掻いてる、ですか。あいつがそんな泥臭い、というか面倒くさいことしますかね」

「そう見えるのも無理はないがな……引き受けてくれるか?」

「ご命令とあらば。拝命致します」

 

 んー。ブリーフィングで伝えた時のウゲーという顔が想像できるなぁ。

 なんとかやっていくしかあるまい。

 

「そいやワイズマン。カウントとは前から顔見知りか?」

「何故そう思った?」

「この前のミッションで敵増援が来た時にカウントが『スコアを稼ぐチャンスだ!』って言った時に相変わらずだなって」

「良く聞いていたな。訓練生時代のカウントが居た基地に私も居てな。一度だけアグレッサーとして戦ったことがあるんだ。本人は俺のことなど覚えていないだろうがな」

「成る程。合点がいきました。というかやっぱ昔からああだったんですねカウントって」

「フッ。みんなを呼んできてくれ。ブリーフィングを始める」

「了解しました。失礼いたします」

 

 

 

「……賢人どのは先の先を見据えている。ということかな?」

「そういうものではないですよ。ただカウントにはもっと近い位置でトリガーを見てもらおうと思いまして。奴にとってトリガーがどういう存在なのかを再確認させる。そうしたら奴はその先に進めるでしょう。それに」

「それに?」

「あの2人。良いバディになると思いませんか」

 

 少なくとも私はそう思いますと呟くワイズマンの顔は父親のそれだった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「なあトリガー。今回のヘビーな任務でカウントをストライダー2にしたのはワイズマンの指示か?」

「まあね。どういう意図かははぐらかされたけど」

「作戦ごとの再編成はいつものことだ。今回も考えがあるんだろう」

「何が考えだ。小言を言われないで済むことだけが救いだぜ」

「俺の下だからってだらけるなよカウント」

「言ってろ」

 

 ニヤリと笑うカウントはいつも通り飄々としている。

 俺から見たら努力というものを好まないように見える。だがこいつの飛び方は教本飛行の基本形を徹底的に磨き上げた王道型。

 何処までも我流の飛び方の俺とは違って一長一短で会得できる飛び方には見えない。

 ワイズマンはそれを見抜いたのだろうか。

 

「次のサイロ発見。誘導開始!」

「いまんとこ全部当たりだが。こいつはどうだ?」

「……あ、これ違うな! よいしょ!」

 

 近づくとサイロだと思ったそれに立体感がなかった。

 急遽機体を急旋回。近くのADタンクの上に落とす。当然タンクは木っ端微塵、バンカーバスターによる地殻貫通弾により基地に大きなクレーターが出来た。

 

「お? 本当だ。良く見たらペンキで書かれた偽物だ。流石の目利きだな」

「いや本当に近くで見ないと分からなかった。エルジアの塗装技術凄いな」

 

 どうやら画伯ではなく本物の画家が居たようだ。

 だが近くで見ればわかるし、分からなくてもバンカーバスターを直撃させれば偽物本物問わず正体がわかる。

 

 ようするにとにかく当ててみろだ。

 やることは変わらない。

 

「こっちも空振りだ! 花火が上がらねえ!」

「快晴ならもっとサイロ探しも捗っただろうがな」

「サイロのポイントは後3つだ。迅速に頼む」

「了解! もう次のポイントだ。カウント、周りの小蝿を頼む!」

「しょうがねえなぁ。露払いしてやるよ新人隊長!」

 

 カウントの4AAMがヘリとハリアーを砕き、ミサイルが地対空ミサイルを焼いていく。

 通りがけの機銃掃射も見事なもの。常日頃から地上は性に合わねえとボヤいてる奴とは思えない手際の良さだ。

 

「エスコートはしたぜ」

「助かる。誘導開始! 今度はどうだ」

 

 2500……2000……1500……よし、こいつは本物だな! 立体感あり! 

 

「よっしゃあ! ど真ん中に落ちやがった!」

「命中! 目標を破壊! 間に合うかもしれん、残りは1つだ」

「順調だな。僚機が優秀だからやりやすい」

「煽てても何もでねえぞ」

「その割には嬉しそうだけど?」

「絶好調だからな。今の俺は鎖から放たれた狼だぜ! 敵さんも運が悪かったな」

「さっきは鳥籠の鳥とか言ってなかったか?」

「てか狼って言ったらどっちかというとトリガーだろ。エンブレム狼だし」

「はいやる気が下がったぞ。小隊長なんとかしろ」

「ソノヨウナサービスハウケツケテオリマセン」

「片言過ぎんだろ。どっから出したその声」

 

 さーてさて残りポイントは2つだ。

 二分の一ぐらいさっさとおわらせてしまおう。

 

「警告。方位330から機影が、なんだこれは。敵機はマッハ4で接近! ストライダー1、ストライダー2、警戒しろ!」

「4!? いまマッハ4って言った!?」

「なんだそりゃ。べらぼうに速いじゃないか」

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 

『爆弾が降ってくるぞ! 逃げろ! バラバラにされたくないならな!』

『ピンポイントにサイロを狙ってくる あいつらには鷹の目でもついてるのか?』

『向こうの爆撃は正確だ 爆撃を指示している機体を叩け!』

『グラム隊はもうやられたのか!? 何のために来たんだあいつらは!!』

 

 突如奇襲されたエルジア勢力は混乱の渦だった。

 あと少しで憎きオーシアに大打撃を与えられたというのに。

 それが起こす二次被害など頭にはなく、彼らはオーシアを打倒し戦争に勝つことだけを考えている。

 

 クリーンな戦争。

 世論を味方につけていた小気味のいいお題目はアーセナルバード撃墜という悲劇の前に崩れ去ろうとしていた。

 

『友軍識別のMIG-31Bが接近中。数は1……』

『シエルプラタの諸君御機嫌ようエルシアが誇る最速最高のスピードスターオーウェン・コーウィン様が来てやったぜぇぇぇ!!!』

『うるさっ!』

 

 友軍のMIG-31Bのパイロットがやたら滑舌の良いかつやたら早口で登場した。

 もう一度言おう、やたら早口だ。息継ぎしてるのかというレベルで。

 

『誰だ! 部隊名、又はTACネームを言え!!』

『TACネームはコメットだ覚えなくても良いぜ今この瞬間俺という星が輝けばそれでいいぃぃ!!』

『やかましくて構わん!』

『もう少し静かに出来んか!』

 

 オーウェン・コーウィン。ネルジアの若手ネームドである彼はMIG-31Bを駆るスピードファイター。否スピード狂である。

 その速さは本人の全てを象ってると言っても過言ではなく。とにかく全部が速い。

 喋り方も速いが滑舌も速いおかげでなんとか聞き取れるらしい。だが五月蝿い。

 

『コメット、ネームドの1人か! 現在こちらは敵の長距離爆撃を受けている! 早くなんとかしてくれ! 敵の部隊は3本線だ!』

『おいおいオーシアトップスターがお出ましだとそいつはクイックリーだなぁ!!』

 

 オーシアの3本線

 数多のネームドを屠り、アルカンジュと戦って生き残り。

 アーセナルバードを落としたオーシアの2つ頭の片割れ。第2の死神という異名を持つネームドパイロット。

 今もっとも最先端を行ってると言っても過言ではない。

 

『オーケイそいつをぶっちぎれば良いんだな任せろエルジア1いや世界で誰が一番速いか決める時だ燃えるぜヒャッホォォォ!!』

『オイちょっと待てまだ話は終わってな、いやいいとにかく奴等をなんとかしろ!』

『翔けろハーレイィィィヤッホぉぉぉぉ!!』

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

『エエェェェントリィィィィッッ!!!』

「うおあっ!?」

「あっぶね!!」

 

 ほんの少しも速度を緩めることのないマッハ4の物体がミサイルと機銃を撒き散らしながら俺とカウントの間を切り裂いた。

 

「ミサイルの何個かが途中で破裂した! SASMに注意!」

「それ以前になんだ今の! 1機だけだからネームドか!?」

「MIG-31Bだとコメットって奴が居たな!」

「エルジア機なのにコメットって。なんか縁起悪くねえか?」

 

 彗星と隕石は似てるようで違うから良いって理論じゃねえかな。知らんけど。

 

「敵機旋回。もう一度突っ込んでくるぞ、注意!」

「注意ったって。あんな直線馬鹿どうすれば」

「来たぞ、回避!!」

『ヒーウィゴォォォォーー!!』

 

 敵の直線番長が又も全武装をばら撒きながら通り過ぎた。

 一瞬水色と白のカラー見えたけど一瞬過ぎて本当にあってるかわかんねえ! 

 

『アクセラレーショォォォォン!!』

「うわっち!」

「狙いはトリガーか? 速度のせいか今一狙いがおざなりな気もするが」

「FOX2! …………おいおいミサイルが速度で負けてるじゃないか!!」

 

 ミサイルって普通戦闘機に追いついて撃墜するはずなのにそれすら追えないってなんだよ馬鹿過ぎるだろマッハ4ヤベーな! 

 

『どうしたどうしたそんなへなちょこミサイルじゃ俺は捕らえられないぜ3本線遅い遅い全てが遅すぎるこのコメット様のスピードは全てを置き去りにしている旋回ブレーキ姿勢制御全てを切り捨てただひたすらスピードを磨き上げたのが俺のMIG-31Bマキシマムスピードカスタムだぁぁぁぁー!!』

「ぬあっ! こんなんじゃ終末誘導どころじゃないぞ! 少しでも止まったら即座に刺される!」

「今まで色んなネームド見てきたけど。こいつはぶっちぎりで頭が飛んでるな!」

『ドラマティィィィク!!』

 

 もうソニックブームが凄い。戦闘機越しなのに速さが音で伝わってくる。

 

「おいトリガー! お得意のノーロック射撃でなんとかならねえかよ!」

「いや流石に無理だよ! ボルゴテレストは敵がパターン化してたからだし、フードルの特攻はサイクロプス隊が削ってくれた上に一か八かだったんだぞ! 相対速度の予測なんか無理だあれは!」

「クゥゥゥゥガァァァァーー!!」

「ぬわっち!」

 

 とりあえず奴の特徴は単純明快の徹底したヒットアンドアウェイ。

 というよりそれしか出来ないんだろう。呆れ返るほどの馬鹿みたいな直線軌道。だが馬鹿も極めつければ立派な武器になる。

 機体限界を突き抜けたマッハ4で飛んでくるドラッグレーサー。

 本当に馬鹿だ。これ以上なく! 

 

「イェーガーたちはフリーだからこのまま奴を引きつければミッション自体はクリアだが」

「だとしてもあいつを振り切るなんて絶対に無理だろ」

「振り切るどころか追い抜かされるな。また来たぞー!」

『エヴァァァグリィィィィン!!』

 

 エルジアは人材が豊富だなぁ。

 あれかな。量が少なくなったからその分濃縮されたのがネームドたちだったりするのかな。

 

「どうする、このままじゃジリ貧だぞ!」

「……一つだけ。一つだけ案はあるんだよ。でもやりたくない」

「散々スキマニア・クグロフした奴でも躊躇うって心があったんだな」

「待て待てあれは好きでくぐってる訳じゃないからな!? どれも戦略的行動の一環であってだな」

「ダウト」

「ダウトすな! あー回避!」

『速さが足りなぁぁぁぁいっ!!』

 

 畜生。そろそろうざったくなってきたな。

 カウントからはあらぬ疑いをかけられるし。

 本当にそういう癖があってくぐってるんじゃないんだからな! 勘違いするなよぉ! 

 

「とりあえずカウントは離れてろ。やりたくないけど、これしか思いつかねえ!」

「もうなにしても驚かねえぞ」

「言ったな? 見てろ、本当の大馬鹿野郎を見せてやる!」

「もう手遅れだっての。おら来たぞー!」

『クリアマイィィィンドゥ!!』

「んぬぅ! うらあ行くぞぉぉ!!」

 

 通り過ぎたコメットを追って転進。

 俺のMTDは頑張ってもマッハ3ぐらいしか出せない。当然奴には追いつけない。

 それは問題なし。元よりドッグファイトなんかする気もないし奴もする気はないだろう。

 

 ならやるべき行動はただ一つ。

 

「ヘッドオンだ。食いついてこい彗星野郎!」

『何考えてるか知らねえがスピードの前では全てが無意味だそれを教えてやるぜ3本線んんんん!!』

 

 彼我の距離がみるみる縮んでいく。

 俺のミサイルは射程2000。マッハ4でミサイルすら引き離す奴には正面からぶち当てるしかない。

 

『シューティングスタァァァァ!!』

「うぐ、ぬぅ!」

「おいおい行けるのかそれ!」

「やりたくねえよ! でもやるしかない!」

 

 だけどこえー! フレア炊いてるとは言え敵のフルバーストをこんな神回避なんて胆が冷える! 

 とりあえず機銃を撃ってはいるが当たったのか分かんねえ! 

 

 一歩間違えば間違いなく正面衝突でお星様にマッハで到達。だがこれしか本当に思いつかなかった。

 

 普通は思いついてもやらないよな。マッハ4相手に居合斬り撃ちなんてさ! 

 

『ユニバァァァァァス!!』

「ふんぬぅ!」

「ヒヤヒヤするぜ。さっさと決めてくれよトリガー」

 

 オーケーオーケーオーケー。

 間合いは分かった。あと必要なのは度胸と勇気と反射神経と不動の構えと操縦技術。結構あるな必要なの。

 よーしそろそろ終わりにしようかこのチキンレースを! こいよやぁ!! 

 

『3本線遅延行為なんて男らしくないぜスピードだスピードに全てを委ねろ世界の答えはそこにあるんだぜぇぇぇ!!』

「来やがれレーサー気取り! その鼻っ面ぶち抜いてやる!!」

 

 コメット反転。再び再加速して瞬く間にマッハ4の未踏領域に突入。

 相対距離10000、9000、8000、7000、6000。

 

 一発勝負だ。気付かれたら奴は動きを変える…かは分からないが初見殺しはなくなる。

 相対距離5000。この段階で180度ロール。

 真っ逆さまのまま変わらず直進。

 心は平静に。あの音を聞き逃すな、それが抜き打ちの合図だ。

 

 4000、3000────ピー! 

 

「FOX2!」

 

 ロックオンの音が鳴るか鳴らないかでトリガーを引きミサイル発射の後に全力急降下&フレア! 

 敵のミサイルをかわしつつ俺のミサイルが敵の真ん前に躍り出る

 

『うわやばベイルア……』

 

 マッハ4のスピードでミサイルとMIG-31Bがかち合い、爆発する前にコクピットを丸ごと抉りながらようやく爆発。

 避けられるわけのない突然現れた開封済み玉手箱! 

 彗星野郎は無事にお星様になりましたとさ! チャンチャン! 

 

「ふーーーあーーー。きちぃぃぃぃ!!」

 

 心臓ヒュッてなった。

 動体視力万歳! 俺の聴力万歳! 俺はエースパイロットだぁぁーー!! 

 ふーふー。アドレナリンが、アドレナリンがヤバい。今夜眠れないかもしれん。

 

「おーいトリガー大丈夫か?」

「あ、あー……俺生きてる?」

「少なくとも五体満足には見えるぜ。お疲れさん」

「カウントから労いの言葉? やっぱ俺死んだか?」

「ジョークが言えるなら大丈夫そうだな。これでまたトリガー大馬鹿野郎伝説が更新された訳だ」

 

 好きで刻みたい訳じゃないんだぞ。

 瞬間瞬間必死に生きてるんだからな俺は。

 

「こちらストライダー3。最後のサイロを破壊した」

「全ての作戦目標の破壊を確認。ミッション終了だ」

「この前のストーンヘンジに比べたらイージーだったな」

「気楽で良いなあもう。こっちは生きた心地しなかったぞぉ。あとでガンカメラの映像見せてやる」

 

 なにはともあれこれでオーシア駐屯地、そして近隣住宅が更地になることはないだろう。

 途中違和感はあったけど。やっぱり気の所為だったかな……

 

「んー? ちょっと待て……ありゃなんだ?」

「どうしたカウント」

「方位100。ダムの方から何かが…なんだぁ!?」

「ん? え!?」

 

 ダムの方を見たと思ったらダムの水面から何かが打ち上がった! 

 噴射炎を出したそれは猛スピードで空の天蓋に向かって登ろうとしていた。

 

「緊急通告! IRBMが発射された! レーダーに飛翔体を確認! 発射地点は……このダムか!」

「サイロじゃないのか!」

「巧妙に隠蔽されていたんだ! まだチャンスはある! 破壊限界高度到達前に撃ち堕とすんだ!」

 

 おいおいおいおい! 

 水抜かないで発射ってアヴァロンダム以上じゃないか! 

 

「くっそー! やっぱさっきの何個かはダミーのミサイルか! なんか爆発の規模違うと思ったんだよなぁ!!」

「警告! 方位100から敵増援確認! 数は5!」

「イェーガー! フェンサー! 戦闘機は任せる! 行くぞカウント! あの凄まじい威力を落とさせるな!!」

「「ウィルコ!」」

「了解だ! こりゃ新体験だぜ……」

『敵機発見! 向かってくる。まさかIRBMを撃ち落とすつもりか?』

『やらせるな! この一撃がオーシアに下る神罰となるん……』

「どけ邪魔だ!!」

 

 正面から来たSu-35Sをミサイルでヘッドオンからの撃破! 

 後ろを確認することなくIRBMまで猛進。

 

「カウント! 特殊兵装は!」

「4AAMがあと2発だ!」

「危なくなったら撃てよ! 上昇!」

 

 目の前を通り過ぎるIRBMを追って垂直上昇。

 幸い戦闘機より早くないようだ。追いつけるが、限界高度に達したら戦闘機は姿勢を保つのが難しくなる。

 スピード勝負だ。直上推力のせいでGがいつもよりヤバい。

 

「目標! 破壊限界高度に接近中!」

「やらせん! 続けよカウント! FOX2!」

「おうよ! FOX2!」

 

 放たれた4本のミサイルはIRBMに追いすがる用に直上。ものの数秒で、着弾! 

 

「うおっと」

「あっぶね!」

 

 IRBMが目の前で小さな太陽になった。近づき過ぎると巻き添え食らうなこりゃ。

 

「レーダーに飛翔体を確認! 警告! 再び弾道ミサイルが発射された! 弾数1! 撃ち堕とせ!」

「了解! パワーダイブ!」

「ウィルコ! あと何発来るんだか!」

 

 高度1万に迫る高所からパワーダイブ。

 パワーダイブ込みで最高速マッハ3に到達。くそっ! 今だけマッハ4欲しいな!! 

 

「ストライダー1、2! 後方注意!」

『やらせるな! 全機総力を持って奴等を排除しろ!』

『3本線め! これ以上邪魔はさせん!』

「後ろから来てるぜ!」

「構うな! フレアでゴリ押せ!」

 

 パパパとフレアを垂れ流しながらバレルロール。ミサイルが明後日の方向に行くのをレーダーで確認しながらIRBMに向かって急速下降。

 

「よし、余裕で間に合いそうだな!」

「気を引き締めろよ! 急上昇!」

「うぐ、これはキツいぜっ」

 

 急降下からの急上昇。ベテランのパイロットでも視界狭窄に陥り目の前が暗くなっていく。

 俺は普通より対G能力に恵まれてるせいかそこまで酷くはないが、それでも視界の周りが黒く霞んできた。

 

「もう少し、もう少し!」

「レーダー上に新たな反応! 再び弾道ミサイルの発射を確認!」

「おいまだこっち落としてねえぞ!」

「もう少し、もう少しだ………ロック! FOX2!!」

「よしきた! FOX2! FOX2!」

 

 ミサイルがIRBMに迫る。

 くそっ! いつもより遅く感じるのは気の所為では無さそうだ! 

 

 2発目のIRBMが爆発! 特大の花火が咲いた。

 だがそれに喜ぶ暇もなく俺とカウントは先ほどIRBMが飛んだ場所に蜻蛉返り。

 

「こちらストライダー4、敵機破壊! だが残り3機がそっちに行った!」

 

 目の前にMIG-21bisが2機、Su-35Sが1機! 

 全機がミサイル一斉射。フレア、からのハイGターンで回避する。

 だがカウントが敵の攻撃を避ける為に軌道をずらしてしまった。

 

「くっ! 機体の挙動が!」

「カウント、大丈夫か!?」

「すまねえ先行ってくれ! 直ぐに追いつく!」

「了解! 客は待ってくれねえからな!」

 

 まだ間に合う。イーグルの推力なら間に合う! 

 

『3本線が逃げた! 俺が追う! お前らはそいつらを抑えろ!』

『了解! 最後の1発、邪魔されてたまるかぁ!』

「トリガー! 後方からSu-35Sが接近! 回避せよ」

「くそ! なんでこんなもん落とそう躍起になってんだよ! 民間人犠牲にして何が楽しいんだクソ野郎共が!!」

 

 クリーンな戦争と謳ってたエルジアは見る影もない。

 そんなお題目自体がお笑い草だったが、追い詰められた人間は何処までも自分を正当化して残酷になれる。

 

「ストライダー1! ミサイル接近」

『やらせるか死神! オーシアに鉄槌を! エルジアに栄光を!』

「しつっこい!」

 

 機体を水平に。背後確認、相対距離予測。

 スロットルMIN。エアブレーキON。

 パワーダイブからの急減速でシートに身体が沈み込む。歯を食いしばりつつレバーを上げ、コブラ機動! 

 

 俺に追いつかんと躍起になっていたSu-35Sはまんまとオーバーシュート。

 ロックオン完了、FOX2! 

 

『なんだと!? うわぁ!』

「相手してる暇ねえんだよクソが! ミサイルは、もう上か!」

 

 間に合うか? いやまだ間に合う、間に合わせる! 

 

 遮二無二にスロットルをぶったたき急上昇。

 射程2000mが余りにも遠い! 

 

「目標、破壊限界高度まで残り僅か! 急げトリガー!」

「上がれぇぇー!!」

 

 高度限界を超えれば大気圏の外に行けない戦闘機は無力だ。

 限界高度を超えれば自動でストールする。

 その前に射程距離にミサイル収めなければ! 

 

「3000、2500、ロックオン! FOX2!!」

 

 ミサイル2発発射! 

 

 マッハ4相当のミサイルがIRBMを食い千切らんと猛進。そのまま着弾。だが……

 

「壊れねえのかよ! くそがぁ!!」

 

 ミサイル2発食らってもIRBMは健在! 

 直ぐ様機銃を当てるが機体がブレてなかなか当たらない。

 ミサイルのリロード、間に合わない! 破壊限界高度が来る! 

 

 間に合わない! 駄目なのか!? 

 

「トリガー! 機体をどけろぉ!!」

「っ!?」

 

 数ヶ月前から聞き慣れた声に俺は自然とレバーを横に倒した。

 自重を持って落下する俺の目に写ったのはカウントのF-15Cだった。

 

「FOX3!! 落ちやがれぇ!!」

 

 放たれたのは4AAM。射程距離4000という通常のミサイルより射程の長いミサイルが宇宙に逃げようとするIRBMをロック! 

 放たれた2発の高性能ミサイルは重力を振り切り、逃れようとするIRBMの尻尾に喰らいついた。

 

「イヤッホーウ!!」

「……ハーーー」

 

 カウントの歓声と共に背中越しから振動と光が爆発した。

 対して詰まっていた息がマスクの中にこもった。心臓がまだ早鐘を鳴らし、冷や汗を垂らしていた。

 

「全てのミサイルの撃破を確認した! ミッション完了だ! みんな、良くやってくれた!」

 

 地上での2発、そして今撃たれた3発。

 破壊目標のIRBM、完全破壊完了! 

 

「間一髪だったな。流石にヒヤヒヤしたぜ」

「まったくだ。こっちは手出しのしようがなかったのに手が汗でびっちょりだぜ。共同作戦のパートナーがあんたらでよかったよ。ありがとな、ストライダー隊」

「こちらこそ。協力感謝。カウントもありがとう。お前が来てくれなかったら失敗していた」

「ざっとこんなもんだ。トリガーもようやく俺の実力を理解してくれたみたいだな。中隊長から解き放たれた俺の力、しっかりと報告しといてくれよ?」

「ああ、ワイズマンに対する愚痴もきっちり報告しといてやる」

「おいおいイェーガー。今日のMVP様に向かってそりゃねえだろうよ」

 

 日頃の行いでございますわなぁ。

 

「安心しろカウント。間違いなく今日のMVPはお前だよ。ワイズマンにも言伝しといてやる」

「トリガーが優しいとむず痒くなるな」

「あっ! さっきの仕返しかコノヤロー」

「さあてな」

「まったくお前は」

 

 呆れつつも後ろに3機健在であることにホッとする。

 

 クリーンな戦争をかなぐり捨てたエルジアによるIRBMの攻撃は阻止された。

 だが一度歯止めがなくなった以上次は何をしてくるやら。

 

 だが今は生き残れたことを喜ぶとしよう。

 

「ストライダー隊、これより帰還する。みんな、お疲れ様」

「「「ウィルコ!」」」

 

 

 





 どうも。昨日カプリコ食べようとしたら顔がついたレアカプリコを引き当てた男、ブレイブです。

 ミッション13終了。
 なんかとてつもなく色んな意味で速い奴が出てきましたね。
 劇中でコメットが叫んだ言葉はもうノリと思いつきでだしました。深い意味はないです、あってたまるか。

 発射されたIRBM破壊の描写は味方も動けるというのを最大限活用しました。カウントが4AAMぶっ放して窮地を救ったのが良い例ですね。
 そのために照準ポッドをトリガーとイェーガーのみにした感じです。良い感じに書けて満足です。

 次回はついにSPミッション!の前に一つ幕間を入れさせて頂きます。お楽しみに。

【FLIGHT REZON アサルトレコードNo.16】
ネームド: コメット
機種: MIG-31B フォックスハウンド
カラー:白地に水色
派閥:なし
パイロット:オーウェン・コーウィン

 エルジアきってのスピードスターという名のスピード狂い。喋り方も息継ぎ一つなく超早口かつ情事テンションが高い
 遊撃要員としてシエラプラタの救援に向かった。
 とにかく速さのみを追い求めたライフワークであり、乗機のMIG-31Bを徹底的にスピードにチューンナップ。ミサイルすら追い越せる驚異のマッハ4を叩き出した。
 急進派、保守派、ましてや戦争自体彼にはどうでもよくただただ愛機でかっ飛んでいくことのみを生き甲斐としている。
 最後はトリガーにスピード勝負を挑んだ末にヘッドオンからのミサイルで流れ星になった。
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