エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 無理くりタイトルをDLCにしたけどこれでええんか感に(汗)
 


STAGE53【Destroy Logic Command(嵐の前触れ)

 

 9月19日、9時59分。

 

「んーーーー」

 

 この世界一番の超大国、オーシア連邦首都オーレッドの一室で一人の若い黒人の青年、デイビット・ノースがパソコンの前で唸っていた。

 

 オーシア大統領に送るレポート。

 その大部分が終わり、あともう少しで完結となるのだが……いまいちいい感じの文が浮かんでこない。

 喉まで来てるのに脳に行かず、手が動かないのだ。

 まるで締め切り前の小説家だなとコーヒーを一口飲もうとした時に時刻が10時00分になった。

 

 〜~~♪ 

 

 子気味のいいモーニングコールのアラームが鳴る。

 コーヒーカップに伸ばそうとした手をマウスに持ち替えてアラームを切り、自身の相棒に語りかける。

 

「やあアレックス。レポートのサマリーはほとんど完成している」

《……パーフェクト》

 

 女性人格型AIアシスタント、アレックスがデイビットのレポートを拝見して評価を出してくれた。

 しかしデイビットの表情は冴えない。

 

「だが結論がまだなんだ」

 

 デスクトップに表情されたレポートの名は【Alicorn Report】。

 デイビットと無関係ではない。あの未曾有の大事件のことが書かれている。

 

 かつての英雄が引き起こした事件。

 それを止める為に飛んだ空の勇士たち。

 

 そして……彼のことも。

 

「……さて問題だ、アレックス」

 

 デスクトップに新たな写真がポップアップされる。

 3本線の鉤爪のマーク。WW015 OADFのテールコード。そして右下にリボルバーを加えた狼のエンブレムが描かれた──F-22Aの尾翼の写真が。

 

「どうしたら3本線を殺さずに済む?」

 

 これは少し未来の話。

 ことのあらましを知るには、少しだけ日付を遡る必要がある。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 9月4日。

 ユージア大陸、ニューアローズ基地。

 

 3本線が刻まれたF-15 S/MTDがシルクハットのエンブレムを持つF-15Cに追い回されている。

 

 模擬戦でトリガーがカウントに追い回されてる、と見ただけならそう思うかもしれないが。

 

 今回は中身だけ反対なのである。

 

「くんぬ、おらぁ!」

「良いよ良いよ良い動き! ほらまだ後ろ張り付いてるぞ!」

「まだまだぁ!」

 

 トリガーとカウントのタイマン模擬戦から1週間が経った。

 

 あの地獄のトイレ掃除を終えた2人が夕食の席でロングレンジメンバーにF-22Aの納入と、F-15 S/MTDをカウントに譲る旨を伝えた。

 どういう反応が返ってくるかと思ったが思いの外すんなりと受け入れられ。あのフーシェンですら「まあ良いんじゃないか」と答えた。

 

 トリガーとは違い部隊にとって何処か壁を感じていたカウントだが。あのタイマンでカウントの本気と本音を見ることが出来、みんなはカウントを本当の意味で仲間として認めてくれたのだ。

 ワイズマンは相変わらずお父さんみたいな顔をしている。本当に、本当に何処までがこの賢人の策略なのか、これが分からない。

 

 なにはともあれF-15 S/MTDはカウントの愛機として運用される運びとなる。

 だが機体を変えるには先ず完熟訓練が必要だ。

 

 俺が乗っていたF-15 S/MTDだが。

 何を隠そうスペア15専用としてエイブリルが徹底的にチューンナップを施したスペシャルマシンだ。

 エイブリルの魔法であるクイーンズ・カスタムはF-22Aに移植されるから操作性は改善されるが元のF-15Cと比べたらそれはもうカリカリのピーキー仕様。

 幸いと言うべきか、コクピットのレイアウトは既存のF-15Cとそこまで大差がないのが救いだろう。

 

 おやっさんと一緒にカウントが乗り換える前に大幅にデチューンしようかと思案に暮れるなか、待ったをかけたのは他ならぬカウントだった。

 

「トリガーが乗り回したなら俺もやってやる。何時までもお前に負けてられんねえからな」

 

 挑戦的なその姿勢におやっさんもカウントをほんの少し見直したのか、それを承諾。

 カウントのF-15 S/MTD慣熟訓練がスタートした。

 

「うおおおおおぁぁぁぁぁ!!?」

 

 乗って1日目は大変だった。

 墜落なんてヘマをするほどでもなかったのだがカウントの予想数段上の性能に仕上がったMTDイーグルはとにかく感度がよかった。

 

 あいつこんな化け物乗り回していたのか!? と驚くなかでなんとか1日目は飛行終了。

 降りたあとカウントは大の字汗だくで倒れ伏した。あんな目をかっぴらいたカウントを見たのは初めてだった。

 流石に感度とか諸々少しだけ下げるか? となったがカウントは諦めなかった。

 

 結果、1週間ずっと暇さえあれば慣熟訓練をこなし続けたカウントは見事F-15 S/MTDを乗りこなすことに成功。

 トリガーみたいな大馬鹿野郎機動ではないが、しっかり物にしたカウントは俺とドッグファイトが出来るまでに成長して見せた。

 

「よしここだ! くぅぅー!」

 

 俺のF-15Cがカウントをロックオンしようとした瞬間F-15 S/MTDが減速、からのクルビット機動で撹乱しオーバーシュートを狙う。

 F-15Cにはないコブラ機能も合わせて使えるようになったカウントは既に手足のように動かすことが出来た。だが……

 

 こちらもスロットルMIN。エアブレーキ全開。

 強烈なマイナスG襲われながら後退。逆にカウントを罠に嵌めた。

 

「はいキル! よーし俺の勝ち」

「しまった! くっそーやられたー」

「タイミングはばっちしだったよ。俺じゃなかったら引っ掛かってたかも」

「逆になんでお前はそんな超反応なんだよ」

「いやーミスターXクソ野郎がこの戦法好んでるっぽかったからさ。これでチャンプやられたし。相手のクルビットに敏感になっちゃったんだよね。エアブレーキ立った瞬間とか見てこう、クイッと」

「この視力お化けめ」

 

 ハッハッハ。伊達にラリーに褒められてねえでございますことよ。

 遠く離れたエクスキャリバー砲台の折れ跡も見えるからな俺は。

 

「しっかしよぉ。お前のラプターいつ来るんだろうな? 予定では1週間前ぐらいだったんだろ?」

「そうなのよねー。何処で道草食ってんだか」

「案外お前を疎んだ奴が止めてたりしてな」

「怖いこと言うなよぉ」

 

 そう、2週間前に注文し。丁度カウントとタイマンした後ぐらいに届く予定だったラプターちゃんの納入が大幅に遅れている。

 陰謀論が囁かれるのも無理はない。実際フリューゲルの末っ子にラプターなんてオーシアにとっては厄ネタだろうからな。

 実際相手にしたクラウンやノッカーが見たらどう思うだろうか。

 

 とはいえ戦時中かつ、オーシア本国から戦闘機を届かせるにはエルジア王国の真横の海域を通るか。ユークトバニア地方をつっきるしかない。

 開戦当初に空母のほとんどを損失しているから遅れることは仕方ないし覚悟している。

 が、それにしても遅すぎる。

 

「次の作戦までには来ると良いなぁ。ファーバンティまでには慣熟しときたいし」

「お前なら一日ありゃあ充分だろうがよ。たくっ、こういうのを天才って言うのかね」

「コラッ。人が努力してない風に言うんじゃねえよ」

「そういう事は慣熟なしで爆撃機部隊半殺しにしたり砂嵐の中飛び回って空対空爆撃機の変態をキルしたり、サイクロプス隊でも落とせなかった所属不明のアンノウンを倒せないようになってから言え」

「ぐ、具体的に言いやがって」

 

 ぐうの音が出なさすぎる。

 しかもすべて事実だから反論も出来ない。

 畜生! 詐欺師のくせに事実ばっか並べやがって! 

 

 だって完熟訓練なんてさせてもらえる環境じゃなかったんだもん! 

 ファッキンゼイが余剰の燃料費を許可する訳もないし! 俺は悪くねえ! 

 

「……まあこれでまだ発展途上なのがこいつの恐ろしいところだよな……」

「ん? なんて? なんか恐ろしいとか言った?」

「なんでもねえよ。さて、まだ時間あるからもう1戦やるか!」

「オーライ。じゃあ所定位置に」

「2人とも、はりきってるな。また危険な飛び方してないだろうな」

「いえ滅相もございません!」

「至極真っ当に慣熟訓練をしております!」

 

 地上からワイズマンの声が来て揃ってブルった。

 もうトイレ掃除は嫌じゃ、嫌じゃあ。

 

「それは結構。2人とも、悪いが訓練を切り上げてくれ。新しい任務が来た」

「ついにファーバンティ前の前哨戦?」

「いや、また特別な任務だ。ブリーフィング室に来てくれ。それと、今回はVIPが来ている。身なりは整えておけ」

「ウィルコ。おいトリガー、VIPだってよ。王女様だったりしてな」

「まさか。来たら俺は開幕罵詈雑言だぜ」

「嫌われてるねぇ王女様は。スペア隊にとっては女神様だったのに」

 

 まあ罵詈雑言は冗談だが。恨み節の一つや二つはぶつけるさ。

 

 しかしVIPねえ。こういうときのVIPというとオーシアの高官か? 

 だとしたら超絶嫌な予感しかしない。

 

 そして見事的中することになる。

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「なあなあ。フェンサーの怪我ってまだ治ってないのか?」

「トリガーとカウントが聞いた話では、本人はピンピンしてフィアンセと愛の電話をしてたらしい」

「幸せでなりよりだな」

「俺も良い相手欲しいなぁ」

「君たち、いつまで喋っているつもりだ。ここはハイスクールではないぞ」

「誰だ? あの偉っそうな男は」

「おい馬鹿聞こえるぞ」

「実際偉いんだよ」

 

 あからさまに不機嫌さと見下しを隠さない男にフーシェンが睨みつけようとするのを周りが止めた。

 そして男のほうもフンッとこれ見よがしに鼻を鳴らしていかにも偉そうである。

 

「お待たせ致しました!」

「お待たせ致しましたぁ」

「遅い! 一体何分待たせるつもりだ」

「申し訳ございません。先程まで機体の訓練に入っておりまして」

「言い訳は聞いていない。まったく、ワイズマン(ハルベルト)中佐。君の部下はいささかだらしないのではないかね?」

「失礼致しました。部下には気持ちの切り替えを上手くやるよう言っておりまして」

 

 ギロリとワイズマンに矛先を向けた男。

 だがワイズマンはなんともない風に見事に流してみせた。そして男はまたも気に食わんとばかりに目線を鋭くする。

 

「おいトリガー。あのいかにもVIPですって奴なんなんだ? ワイズマンにまで食って掛かってさ」

「偉いんだろうさ。胸元のバッジ見てみろよ。准将様だぜ」

「うわっ、マジだ」

「君たち、さっさと座らないか。時間は有限だ」

「ハッ! 失礼致しました!」

 

 形だけ100点の敬礼をしてみせた後に席につく。

 隣のフーシェンはなんか不機嫌そうだ。

 といいつつ俺も良い気分じゃないな。なんかすんごい睨んでくるし。

 そんな熱視線来られても、リヒトくん困っちゃうなぁ。

 

「……接続出来ました。いつでもどうぞ」

 

 ブリーフィング画面の左下に眼鏡を書けた黒人の青年の写真が出てきた。

 おっとどちら様だ? 

 

「はぁ……ハワード・クレメンス准将だ。本作戦は私が指揮をとる。作戦の目的はアルティーリョ港に停泊中の新型潜水艦を鹵獲することだ。アルティーリョ港と周辺の石油施設の大部分は別の航空作戦により破壊された」

「あの港か! 良い思い出と嫌な思い出がよみがえるぜ」

「知ってるのか?」

「前の部隊で蹴散らしたのさ。あんときの爆炎は凄かっ」

「ンフン!」

「おっと失礼」

 

 ふむ。マッキンゼイ以上に締め付けが強いなこのクレメンス何某は。

 しかし確かに懐かしいな。あんときは正に更地にする勢いでやったが。どうやらエルジアは復旧して何かしてるらしい。

 

「しかしエルジア軍はその一部を修復し、巨大な潜水艦の補給と整備を行っている」

「問題です。その巨大な潜水艦の全長は何メートル?」

「「………?」」

「え、あ。300メートル!」

 

 咄嗟に答えるとあたりがシンと静まった。

 やべぇ、やっちまったかも。

 

「わーお、答えたぞ」

「なんで300なんだ?」

「ゆ、ユークトバニアのシンファクシ級が大体それぐらいってのをどっかで見てそうかなって」

「ハッ。馬鹿正直に答えるあたりお前らしいなトリガー」

「いや、だってクイズには答えなきゃだろ?」

 

 俺もブリーフィング中にいきなりクイズ出されるとは思わなかったから反射的に答えたけどさ。

 

「気を利かせてくれてありがとうございます中尉。ですが残念、正解は全長495メートル。ちなみに全幅116メートル、水中排水量は推定81万トン。溶解金属冷却型原子炉2基搭載の超大型原子力潜水艦です」

 

 でっかぁ。シンファクシ級より2回りもでかいのか。しかも原子炉2つ乗ってんの? 

 それほどの奴なのかあれは。ブリーフィング画面に出てる写真だけじゃいまいち分かりづらいな。

 

「確かにデカイな。で? あんたはどこのクイズ司会者だ?」

「デイビット・ノース 。オーシア情報局先進兵器分析部の分析官です」

「なぜここにいない」

「その必要がないからだ。彼は彼のオフィス 、つまり自宅から出ることなく敵の分析をする」

「ほほう。アームチェア・ディテクティブってわけか」

 

 つまり安楽椅子探偵。かの有名なシャーロック・ホームズのようなものという訳だ。

 この場合ワトソン役は誰なのかな? 

 

「ノース分析官、続けてくれ」

「はい。この潜水艦の名称はアリコーン、シンファクシ級の次世代を担う新造艦です。アリコーンは潜水艦でありながら、空母並の航空機運用能力があります。また主砲のレールガン2基は強力な火力投射能力を有します。射程も推定400キロ以上です」

「潜水艦能力を持った空母? しかもレールガン?」

「まさに化け物中の化け物だな」

 

 やれやれ。空のアーセナルバードの次は海のアリコーンか。

 次は地中を潜れる弩級戦車でも出るのか? 

 

「この艦のパワープロジェクション能力は空母打撃群に匹敵します。しかも潜航して敵地に近づき 航空機とレールガンによるアウトレンジ攻撃が可能です」

「既存の戦闘教本に喧嘩売ってるなコイツ」

「さらに、この艦には変わった経歴があります。進水したのは4年前。艤装を終えたのち、就役前の試験航行に出ますがその最中に行方不明になります。その後、偶然海底で発見され乗員356名中330名が生還しました。そこで問題です、アリコーンが沈没していたのは何日間?」

「おいトリガー」

「また俺!? えーと、1年、いや2年!」

「いやいくら巨大潜水艦でもそんなに潜れないぞトリガー」

「え、そうなのか?」

「いえ、ほぼ正解です中尉。正解は698日!」

「わーお」

「やるなトリガー」

「いや偶然よ、偶然」

 

 空の知識はあるが。海や陸に関してはさっぱり分からん。

 今回はガチガチのビギナーズラックだ。

 いやそんなことよりも。

 

「ちょっと待て、2年間も海底で生きてたってのか!? 水は海水を濾過すれば行けるが、食料はそうもいかねえだろ」

「ええ、15度傾いて着底した潜水艦内でね」

「なんということだ。大した精神力だな」

「それほどなのかイェーガー?」

「ああ、人間はデリケートだからな。少しの傾斜でもずっと居れば具合が悪くなる」

 

 後で調べたことだが。イェーガーの言う通り傾斜と人間の身体は相性が悪い。

 先ず平衡感覚の乱れによるめまいから始まり頭痛、吐き気、肩こり、そして睡眠障害や倦怠感、ストレス、不安感が増加される。

 しかもそれは傾きの程度が大きくなるほどこれらの症状は重くなる。

 15度と見れば小さい数字だが、僅か0.57度でも健康被害が発生することを考えればその恐ろしさが分かることだろう。

 

 特に不安感の増加はヤバい。潜水艦という閉鎖空間、いつ助けが来るかも分からない絶望。切り詰めていく食料による不安。日光を浴びないことによる健康被害などなど上げればキリがないほと人体には悪影響だ。

 きっかけさえあれば暴動が起きてカオスの坩堝、たちまち蠱毒の苗床になるだろう。

 だというのに船員の90%が生きながらえた。艦長は相当な人望の持ち主ということだろう。

 

「アリコーンの生き残りが凄いのは分かったけどよ。それをいまさら前線配備するのはなぜなんだ?」

「アーセナルバード1機とIRBM郡を失ったことと、関係があるかもしれません」

「ふーん。それで、そのバケモノをぶっ壊せってわけか」

「鹵獲だ。これ以上言わせるなよ 。アリコーンに大量破壊兵器が積まれているという情報を、現地の情報源から得た」

「情報源?」

「その証拠をつかめれば、終戦後の和平交渉を優位に進められるだろう」

 

 鹵獲かぁ。こいつはハードだな、壊すだけならどれだね楽か。

 だが少し気になるな。さっきのノース分析官の反応。彼は情報局って言ってたし知らないのは妙だ、もしかして情報局を通していないとか? 

 

 その疑問を口に出す前に、クレメンス准将の横に立っていたワイズマンが作戦の概要を説明し始めた。

 

「アリコーン鹵獲のため、オーシア海軍から揚陸艦を含む艦隊が派遣された。我々の任務は航空優勢の確保、並びにこの強襲鹵獲艦隊の護衛だ」

「時間をかけると自沈される。艦隊は防空戦闘と並行して行動を開始する」

「おいおい。航空優勢が取れる前に艦隊を近づけるのは危険じゃないか?」

「それを考えるのはお前たちの仕事じゃない」

「要するに、政治のために味方艦を危険にさらすってことじゃねえか」

「上官から口の利き方を学ばなかったようだな」

 

 そりゃあまあ納得の行く説明をされてきましたからね。

 だがカウントやフーシェンの言う通りだ。

 作戦成功の為に要である味方艦隊が矢面に立たされるのは危険だ。作戦行動前に本命が沈めば元も子もない。

 

 それはそれとして。この人、いやこいつの不遜っぷりはなんだ? 

 自分の偉さこそが至上みたいな態度を取る。まるで俺たちは捨てても問題のない駒みたいな扱いだ。

 

 説明したワイズマンも本意ではないのだろう。声色がいつになく淡泊だ。当然だ、ワイズマンは人一倍仲間の生存を優先する。

 クレメンスが見ていないところでほんの少し顔をしかめてすらいる。もしかしたら結構機嫌が悪いかもしれん。

 

「本作戦には電子戦機部隊を投入する。味方の電子戦支援は強力だ。影響下にいれば、相当優位に。戦闘を行うことができるだろう。電子戦機のETAは作戦開始と同時刻になる。並びに本作戦はオーシア本国、ウェザール基地所属のドレイク隊8機が増援に来てくれている」

「マジか」

 

 ドレイク隊。俺の、いや俺たちの学び舎に所属していた部隊だ。

 もしかしたらあいつらも部隊に居るのか? 

 

 柄にもなくワクワクした。だがクレメンス野郎はそこに遠慮なく冷水をぶっかけた。

 

「出撃するのはストライダー隊のみだ」

「えっ?」

 

 何を言うとりますので? 

 

「わーお 俺は留守番かよ!」

「ワイズマンは出撃しないのか?」

「俺は司令部で准将の指揮を補佐する」

「作戦の難易度は低い。フン、中隊長抜きでも問題なかろう」

 

 待て待て待て待て待て。

 いくらドレイク隊が居るとはいえワイズマンお休み? 

 てかこいつ作戦難易度低いって言った? 何を言ってるの? 

 このまま進めるのはまずい、嫌な予感もバリバリ来てる! 

 

「説明は以上だ。ただちに作戦行動の準備に入れ」

「待ってください准将! 意見具申宜しいでしょうか!」

「何を言っている中尉。君のような尉官階級の者が准将である私に意見など」

「ありがとうございます!!!」

「なっ、君」

 

 ヨシ! 准将から意見具申の許可が下りたので発言させていただこう! ヨシ! 

 隣のカウントからヒュー♪ って口笛が聞こえた気がしたがとりあえず今は意見具申だ。

 

「今回の作戦で何故ワイズマンを含めたサイクロプス隊を外すのでしょうか。ブリーフィングデータを見る限り敵戦闘機の数も多いように見られますが」

「それを決めるのは君ではない。先ほども言った通りハルベルト中佐には私の補佐をしてもらう。これは決定事項だ」

「では、せめてイェーガーとランツァの発進許可を貰えますでしょうか。損傷した乗機の修復も完了しております。少しでも数を補ったほうが作戦の成功率が上がると思われます」

「君は小隊長だ。なれない6機編隊で支障が出ても困る。今回の作戦は万に一つのミスも許されない」

「ならばなおさら!」

「君はエースパイロットとして名を馳せている。これぐらいの敵に怖気づいてどうするというのかね?」

「………っ」

 

 クレメンスはこう言っているのだ。

 お前というエースパイロットが居るのだから少しばかり味方、中隊長であるワイズマンがいなくても問題はないだろう。

 それともこれぐらいやれなくてよくエースパイロットなど名乗れるものだなと。

 

 馬鹿なのかこいつ。

 そんな希望的観測で一世一代の作戦を決めているのか? 

 

「確かに私は若輩ながらエースパイロットとして戦果を残しました。ですが私一人でそれを成したわけではございません。過大な評価は私の身に余ります」

「随分と弱気なことだ。メビウス1の再来の名が泣くのではないかね」

「お言葉ですが。そのメビウス1も1人で戦局を覆した訳ではないと記憶しております。エースパイロット1人で全てをこなせると思えるほど、私は戦場を甘く見てはおりません」

 

 クレメンスの眉がピクリと痙攣した。

 当然だ。遠回しに戦場を甘く見てるんじゃねえぞ階級野郎と言ったようなものなのだから。

 

「それともう一つ。失礼ながら准将が手に入れた情報は本当に信用できる物でしょうか。先ほどの分析官の反応を見るに情報部も周知していないようですが、一体その情報源は何処から……」

「中尉、御託はそこまでにしてもらおうか」

 

 准将が会話をバッサリ切り捨てる。

 この場合は地雷を蹴り上げたと言ったほうが正しいが。こいつ腹芸も出来ないのか? 

 

「リヒト・パーマー中尉、君は大きな勘違いをしているようだ。第一、君の職務は何かね?」

「小隊長として部下を守り、戦争の早期解決の為に」

「違うな。君がすべきことは軍上層部の指示に従い任務に準じることだ。将官の作戦に意見することでは断じてない」

 

 つまり黙って命令に従えってことだ。

 

 間違ってはいない、ああ間違ってはいないとも。

 軍人は命令に準じてこそ、軍事力という暴力を振りかざす資格を得る。

 そこから外れればそれは軍人ではないだろう。

 だが納得できるかどうかは話は別だろうに! 

 

 せめてイェーガーとランツァの出撃だけは取り付けなければ……

 

「そこまでだトリガー。准将、部下が失礼致しました。後で厳しく言っておきます」

「フン。先程といい、部下のしつけがなっていないな。英雄部隊と持て囃されているから増長するのだ。しっかり躾けておくように。ブリーフィングは以上だ、諸君の作戦の成功を祈る」

 

 言うだけ言ってクレメンスが部屋から退出した。

 部屋には重く、そして沈痛な空気で張り詰めていた。

 

「すまないワイズマン。あんたに謝らせてしまった」

「お前の気持ちもわからんでもない。だが今回は相手が悪い」

「分かってるワイズマン……機体のチェックにかかる。ストライダー隊、行くぞ」

「お、おう」

「イェーガー、ランツァ。お前たちもチェックはしておけ、念の為にな」

「「了解」」

 

 淀んだ空気から出たいとばかりに足早に退出するパイロットたち。

 彼らが出払うのを見計らい、ワイズマンはまだ回線をつないでいる彼に話しかける。

 

「ノース分析官、頼みがある」

「クレメンス准将が掴んだ情報の発信源ですね」

「分野は違うが、頼めるか」

「任せてください。専門は兵器分析ですが、それだけが出来ない一辺倒ではありませんよ。それに」

「ん?」

「僕も彼には死んでほしくない。彼はオーシアにとって必要な男ですからね」

 

 

 

 

 

「ちっくしょう! なんなんだあの野郎は」

「落ち着けよフーシェン。誰に聞かれてるか分かったもんじゃないだろ」

「だがトリガーは何も間違ってないだろ! なのにあんな」

「ありがとうフーシェン。でも彼が言っていることは正しいよ、悔しいけどね。ワイズマンが止めてくれなかったら大事になってたかもしれん」

 

 フーシェンが変わりに怒ってくれるおかげで大分気持ちに整理がついてきた。

 だがやはり何処かはらわたが煮えくり返るものを感じる。

 それでもやらなければならない。

 怒りに囚われるな。もうあの日と同じ過ちはしない。

 

 問題はそこだけではない。やはり嫌な予感がする。

 クレメンスの言動もあるが。俺が気になったのは彼の俺に対する目だ。

 

 あの汚らわしい物を見るような目。オーレッドで俺を尋問したオーシア高官の目にそっくりだった。

 

「トリガー? 大丈夫か?」

「え、ああ大丈夫だ。とにかく今回の任務、准将は簡単だと言っていたが一筋縄では行かないのは間違いない。それに、何かがある気がする」

「おいおい、あまりそういう事言うなよ。お前の悪い予感は当たるんだからよ」

「悪い、だけど警戒はしておいてくれ。そして大前提だが、全員で生きて帰るぞ。いつも通りにな」

「「「了解」」」

 

 今回はドレイク隊も出る。

 もしあいつらが居るならくすぶってカッコ悪い姿を見せるわけには行かない。

 

 パン、と頬を叩いて気持ちを切り替える。

 近くにいたおやっさんに装備の調整を相談しにいった。とりあえず増量モリモリで挑まないと足りなそうだ。

 

 この時はまだ俺たちは知らない。

 俺たちが拿捕しようとするアリコーン、いやその中にいた者がとんでもない怪物であることを。

 

 そして敵は敵だけではないということも。

 





 どうも涼しくなったと思ったら暑いってどうなっとんねん。作者のブレイブでございます。

 ついに始まりましたDLC、そして我らがクレメンス准将どのの登場です。
 いやー、書いてて思ったけどムカつきますねぇ。でもマッキンゼイと比べてそこまで印象薄いんだよな、なんでやろ。

 そしてトリガーが青いです!青い!良いねぇ若さ出てるよぉ!まあ彼はオーシア高官アレルギーなので過剰反応です、かしこ。
 クレメンスも結構なベルカアレルギーっぽい。てかこのキャラでベルカ嫌いじゃないの解釈違い過ぎますわ。

 次回はついにSP1スタート!ラプターなしでやれるのか?
 お楽しみに!


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