エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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STAGE56【Raptor(反撃開始)

 

 

 アリコーン鹵獲作戦失敗からデイビットはマティアス・トーレスがアリコーンを使って何を企んでいるのか。その予測を組み立てていた。

 

 本来の領分からいささか外れてはいるものの。それでも調べなければならないと思った。幸いなことに上の許可はスムーズに取れた。理解ある上司の元で働けて幸せである。

 発端はデブリーフィング後にトリガーが呟いた、マティアス・トーレスがジョシュア・ブリストーに似ているという発言が一つ。

 もう一つは自身の性である未曾有の新兵器への好奇心と危機感だ。

 

 鹵獲作戦が終わったあとにデイビットはアレックスと共にトーレスの分析を始めた。

 

「アレックス、問題だ。マティアス・トーレス大佐、アリコーンの艦長。彼の目的はなんだ?」

《目的地の航路は21。そこへの航路は》

「違うな」

《主要なものだけで2405》

「論理的過ぎるのか……」

 

 論理的過ぎる。それは物事が矛盾せず、一貫して筋が通り過ぎているということ。

 トーレスはエルジアが起こした戦争をエレガントに終わらせると言った。そこには確かな熱があった。ということはもっと複雑か、或いは予想だにしないぶっとんだ思考故か。

 

《『主要』の定義を聞きたい?》

「いや、小難しいのではなく……アレックス、もっと……あー……感覚的に」

《感覚的とは?》

 

 感覚的と言ったが余りにも質問が曖昧だ。

 ここはまた別のベクトルで攻めてみることにしよう。

 

「記録にあるトーレスの全発言からコラージュしてみて。組み替えることで、何か見えるかもしれない。重み付けは任せるけど僕の仮説を参考に」

 

 パソコンに様々なワードが浮かび上がり、切り崩し、一見無作為に見える動作でアレックスが繋ぎ合わせる。

 組み上げた一文を、トーレスの声で読み上げる。

 

《シーパワーの前方投射的チープキルが奪う命》

「ダメだ」

《ダメとは?》

「アレックス! ……あー、すまん」

 

 いつもより察しの悪い相棒に思わず声のボリュームが上がってしまった。アレックスに声を荒げても仕方がないし彼女に非はない。

 アレックスが掴みきれない。つまりそれだけトーレスという男は実像が見えない人物ということだ。

 

「……続けよう。じゃあもう少し……官能的に」

 

 理論でも科学的にでもなく。もっと大雑把かつ、人間味があるように促す。

 ほんの少しの沈黙のあと、アレックスはワードを組み上げる。

 

《醜怪な16572と救済の消極的》

「うん」

《毎分6発の卑しさは安全保障が前のめり》

「いいぞ」

《死に瀕する核報復は濃い遺書》

「核報復……確かトーレスは学会で……続けて」

《大量の計画が殺戮を置く160ミリ無慈悲のガイダンス》

「っ! 少し論理的に!」

 

 何かが引っかかった。何かはわからないが。

 

《1000万の救済は大陸間の檻に降るエレガントな殺戮》

「待って! それ……あぁ。正解……なのか?」

 

 パズルのピースがはまった。

 デイビットの聡明な頭脳はそこから何かを嗅ぎ取った。

 

 1000万、救済、エレガント、核報復、殺戮。

 そしてジョシュア・ブリストー……核によるテロ? 

 

「まさかそんな、でもアリコーンに核は搭載されていないはず。でも確定ではない。アリコーンのスペックなら……だが主砲のレールガンで核は撃てるのか? VLSにそれが搭載できるとしたら…………」

 

 デイビットは様々な仮説を立てた。

 思いついた仮説からセレクトしデータとして組み込み、アレックスを用いて解析、整理する。

 

 トーレスの目的。そして3本線を含めた、更により3本線というファクターに焦点を当てて解決できるかをシミュレーションにかける。

 様々な考察を練り上げて4日後。アレックスから回答が出た。

 

《デイビッド。過去の作戦情報とあなたの仮説をもとにトーレス艦長と3本線の関係モデルを構築。高精細コンバットシミュレーションを試みた………でも失敗》

 

 ガクッと椅子から滑り落ちた。

 なんらかの結論が出ると確信していたから思いっきりハシゴを外されてしまった。

 

「困るよ! なんで!?」

《官能的に答えるなら。1、あなたの仮説がゴミ》

「うぐっ」

《2、あなたのくれた情報がゴミ》

「何か、君を怒らせた?」

 

 AIユニットの癖に言葉の切り口が鋭すぎて血すらつかない。

 そのように作った身としては甘んじて受けるしかない。アレックスはデイビットより遥かに賢いのだから。

 

《3、トーレス艦長は特異点(シンギュラリティ)

「値が発散するのか……」

 

 特異点。既存の情報、理論では証明できない存在。

 不可能と思われることを成し。可能を不可能に変えてしまう存在

 

 アレックスはトーレスをこの世の物理法則から外れた存在と定義してみせた。それに関してはデイビットも同じ仮説を何個か立てている。

 

 ならもう一つの特異点は? 

 入隊から0日で数々の偉業を成し遂げた彼は? 

 

「こういう可能性は? 4 、『3本線』は特異点」

《信頼区間外。1か2か3である可能性が99%以上》

「ホントに?」

《高度に有意》

「あーー」

 

 自分の仮説がゴミであることを加味されるのは問題ではないが。これでは前進出来ていない。

 アレックスはトーレスと比べてトリガーを特異点判定をしていない……

 

「あ、しまった。僕としたことが何やってるんだか」

《デイビット?》

「アレックス、これを加味してみて、3本線がロングレンジ部隊に入る前のデータだ」

 

 アレックスが認識してるのはトリガーがストライダー隊に入ってからのデータだ。

 ここにメイジ隊として戦争が始まった頃と、囚人として飛んだスペア隊時代。更に、トリガーが訓練校に居た頃のデータをぶっ込んでみた。

 

 これで何か変わるようにと、デイビットは祈った。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「3本線は何故まだ生きているんだ! 件の傭兵は何をやっている!」

「アルティーリョ港で3本線のミサイルが命中し、撤退したと」

「その報告は聞いた! クレメンスもクレメンスだ! 大口を叩いてこの体たらくとは!」

 

 とある【部屋】で肥え太ったの男が汗と唾を撒き散らしながらその場にいる全員にまくし立てる。

 完全に冷静さを失った彼の姿はもはや見慣れたものでほとんどの人はまったく意に返さず、それがまた彼の琴線に触れた。

 

「フン。シュールズベリー国防議員殿は何としてでもあのフリューゲル家末っ子の首が欲しいらしい」

「ベルカがオーシアのエースになるなど許さないと言っているが。次男坊の顔に泥を塗った男が許せないだけだろう」

「その次男坊も戦線に参加しているらしいな、確かグロリアス隊だったか? 名前に反してまったく戦果を出せていないらしいが」

「黙れ貴様ら! ミハエルは関係ない!!」

「昔話の元大貴族も形無しですな。長男なんて今じゃ」

「あいつはもうシュールズベリーの人間ではない! 今直ぐ閉じないならその口をねじ切ってやるぞアップルルース!」

 

 こうして舐めた態度を取られている以上彼の立ち位置は確立しているだろう。

 だがこんな彼でも国防総省に深く食い込んだ男だ。【部屋】の一員として、一応の仕事はきっちりこなせている。

 

 そんな喧騒を鎮めるのはこの【部屋】の長である彼の役目だ。

 

「落ち着いてくださいシュールズベリー国防議員。騒いだところで何も進まない」

「し、しかしだねシェパード君。ハーリング殺害の罪を奴に着せたというのに奴はのうのうと空を飛んでいるではないか。しかもハーリングを殺しても我々の風通しはまったく良くならない」

「ハーリングが巻いた種は立派に芽吹いたという事ですな、厄介なことです」

「それに関しては最初から期待していない。ハーリングを抹消できたという時点で戦果は出ている。問題はリヒト・フォン・フリューゲルだ。彼が生き証人である以上、我々の使命に支障が出る可能性が出てくる」

 

 シェパードが思い出すのは自ら判決を下すついでにその顔を拝んでやったリヒトの顔。

 決して屈しないという反骨心は正しく彼の父親の生き写しだった。無意識にアームレストを軋ませる自身の手に気づくことなくシェパードは続ける。

 

「クレメンスが次の策を出している。ファーバンティを落とさせ。今度こそ姉弟がトドメを刺すそうだ」

「それで前回は失敗しただろう。エドワードあたりが嗅ぎ回っている。もし【部屋】の存在が知られれば」

「その時はクレメンスを供物に出せばいい」

 

 准将クラスを平気で尻尾切りに使うシェパードのクレバーさにメンバー全員が僅かに震えた。

 それは明日は我が身であることの再確認だったから。

 

「一つ発言を宜しいだろうか。リヒト・フォン・フリューゲル暗殺の件だが。彼を今直ぐ排除しなくてもよいのではないか?」

「貴様何を言っている!?」

「当初の予定通りミスターXにぶつける駒が彼であろう? 彼とミスターX、ミハイ・ア・シラージとぶつけてからでも遅くはないだろう」

「あの老骨は勝手に朽ちるだろう。無人機が育ち切るまでの素材に過ぎん」

「たが下手に手を出し続けてラーズグリーズの二の舞は御免被る。奴のバッグにはエドワードとそのトップ。更にオーシア大統領と副大統領も居る。環太平洋戦争のウォードッグと違って彼らに後ろ盾がある以上。ヤブを突くのは最小限にするべきだ」

「確かに。かつて束の間の玉座にあぐらをかいていたアップルルース元副大統領の二の舞は避けたいところだな」

「その孫である貴様が言うことか」

 

 毒づくゴードン・シュールズベリー国防議員の蔑む目を意に介さず椅子に背を預ける若手エリートの青年。

 現在この【部屋】にはトリガー暗殺派とトリガー暗殺保留派に分かれている。

 シェパードは暗殺派だが、保留派の見解が間違っていると言えるほど視野が狭いわけではない。

 

「次の作戦はもうすぐ始まる。それを見てからでも遅くはないだろう」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 さーて今回も任務のお時間だよー!☆

 勿論クレメンスクソ野郎プレゼンツだ!☆

 

「へへ」

「トリガー。その生気があるんだかないんだかわからない笑みやめろ、こえーから」

 

 生気はありますよー。

 むしろみなぎってますとも。

 

 こっちを睨んでくるクレメンスに向かってニコーと嫌がらせ純度100%(プリティー童顔満面スマイル)を向けてみる。

 思っきし眉間に皺を寄せられました。何故だ! 

 

 怪訝な顔をする俺をドスルーしてクレメンスがブリーフィングを始める。

 

「エルジア軍が残存する海軍勢力をアンカーヘッド港に集結させている。モスボール保管されていた退役艦まで集めている状態らしい。ファーバンティでの決戦を見すえ、なりふり構わず海上戦力を増強していると見るべきだろう。ここに潜水艦アリコーンも合流するという情報を得た」

「准将、どの情報源です? 実はアリコーンの元乗員が、工作活動をしている可能性がありま……」

「君の仕事は兵器の分析だ今後は許可を得た時のみ発言するように………………返事が聞こえないが?」

「返事をする許可をいただいてもよろしいでしょうか」

「フフっ」

「ブッ……」

「君の上司に面白い土産話ができそうだ」

 

 今以上にか? 

 やめてくれこれ以上笑わせないでくれよ。さっきとは比べ物にならないスマイルが出てしまいそうだ。

 我らがワイズマンは流石に笑みを出さなかったが、唇の端がひくついたのを俺は見逃さなかったぜ。

 

 てかやっぱ偽っぽい情報掴まされてるじゃんねこの准将。

 情報のファクトチェックは常識ってエリート様は教えられてないのかしらねー。

 

「では任務を伝える。ロングレンジ部隊はアンカーヘッドを奇襲。北部のアンカー港、ならびに南部のダキアーク港を航空攻撃し、可能な限りの打撃を与えろ。この港の海軍機能を停止させられれば、同時に潜水艦の合流も阻止できる」

 

 アンカーヘッドか。確か大陸戦争でも大打撃を喰らった場所だっけ? 

 アリコーンの情報なしでも叩く価値はあるな。

 

「アンカーヘッド周辺はエルジア支配地域だ。敵に察知されるのを遅らせるため、少数機で出撃し、水面ギリギリの超低空飛行で侵入する」

「少数機か。編成はどうする?」

「カウント、ランツァ、フーシェン、そしてトリガー。ストライダー隊4機での出撃だ」

「わーお! 任せとけ!」

「頭数の少なさを補うため、補給を手厚くする。見ろ。複数の帰還ラインを設定した。これを積極的に活用し、補給や兵装の換装を行え」

「おっと、こいつはすげぇ」

 

 ブリーフィングマップに示された補給ラインを見て思わず舌を巻いた。

 北、東、南の三点に補給線が配備されている。

 ここまで手厚く補給が完備されているのは相当の労力と金が動いている。

 しょっぱいクレメンスではこんな芸当は出来ない。やっぱ俺たちの参謀本部副議長様は格が違うぜ。

 

「また、敵が奇襲に気づいてから迎撃態勢を整えるまでには時間がかかる。その間に高脅威目標を破壊するんだ。これでかなり楽になる」

「出撃機の帰還率も上がるはずだ」

「帰還率、ねえ」

 

 隊の代弁者カウントの言葉にみな揃って半眼になる。

 あいも変わらず准将は嘘がお下手でいらっしゃる。

 

「何か問題でも」

「いえいえ、帰還率は大事ですな。お前ら喜べー。我らがハワード・クレメンス准将どのは俺たちの帰還をご所望だぞ」

「そいつはいいな」

「トップが私たちを信頼してくれるのはありがたい」

「その通りだ。ストライダー隊4名、必ず戻ってくることを約束しましょう。クレメンス准将どの?」

「フン」

 

 嫌味を嫌味で返されてクレメンス准将が拗ねちゃった。

 どっかにガラガラ落ちてねえかな。中年が拗ねるなんてミリも可愛げねえぞ。

 

「奇襲と補給、それが本作戦の鍵だ。あとは素直に命令に従うパイロットが数人いればいい。エースパイロットは必要ないんだ……納得できたようだな」

 

 ハイ! ワレライッペイソツ! 

 チュウジツナルコマデゴザイマス! 

 

「准将。一つ宜しいで……」

「説明は以上!」

「え、あ、ちょっと……」

 

 バタン! 

 

 言いたいこと言って満足したクレメンス。

 画面の向こうで手を伸ばしたまま固まってるのがわかる気がする。

 

「デイビッド、続けてくれ」

「ありがとうございます中佐。潜水艦アリコーンの艦長、マティアス・トーレスの経歴を共有します。彼が母国でなんと言われていたか、分かりますか?」 

「ヒントが少なすぎる問題は、良問とは言えないな」

「アハハ、確かに。答えは『コンベースの英雄』。彼は大陸戦争当時、戦艦タナガーの艦長をつとめていました。無敵と謳われたエイギル艦隊の旗艦です」

「エイギル艦隊っていやぁ」

 

 エルジアがかつて誇った無敵艦隊。

 その絶対的な海軍戦力は大陸戦争時にストーンヘンジと共にISAFに圧力を与え続けた。

 その艦隊は戦争中期にメビウス1を中核としたISAFの部隊により壊滅、轟沈した。

 

「その通り。艦隊がコンベース港で壊滅した時、彼の艦も沈みました」

「なのに英雄か?」

「的確な退艦指示とダメージコントロールにより、クルーの多くが生き残ったからです。それにアリコーンの2年に渡る沈没事故からの生還、生存者の数からして奇跡の産物とも言われたそうです。そしてそれを可能にしたのはマティアス・トーレス艦長のカリスマがあってこそだと。彼についていけば生きて帰れると口にする将兵もいる」

「どっかで聞いたことある文言だな、トリガー」

「水上艦から潜水艦への配置転換は異例です。しかし彼の実力と名声。それにアリコーンがただの潜水艦ではないことを知れば、納得がいきます」

 

 その異例が認められるほどの実力を持った艦長。

 カリスマ。正しくそれを体現した人物であり、多くの勲章を授与される優秀な軍人。英雄と呼ぶに相応しい偉業は持っていると言える。

 

「だがそんな綺麗に収まる話ではないだろ」

「どういうことだ」

「あれから俺なりにマティアス・トーレスという男を調べてみた。彼は大陸戦争のあとに海軍司令部に移動したあと海軍大学校で教鞭を取っていたそうだ。教師としても優秀で、生徒からの評判も良かったらしい……だが短い期間で辞めている。そうだよねデイビット」

「はい。僕も調べましたが、彼は海軍大学校である思想を流布していました。そのテーマは圧倒的破壊と虐殺によりもたらされる、救済という名の戦争終結です」

 

 その場に居た全員が唾を飲んだ。

 簡単に言えば、敵国に回復不能な壊滅的なダメージを与え。戦闘行動と呼ばれる行為を物理的に停止させるということ。

 アリコーンは潜水艦でありながら空母であり、戦艦並の攻撃力を持つ。まさに海の超兵器だ。もしこいつがオーレッド近辺近くから首都を殲滅破壊すれば。オーシアは戦争行為を停止せざるえなくなる。

 

 だがそれは確実に後世に遺恨を残し、さらなる戦争の火種になりかねない危険な思考だ。

 戦争というのは、置き換えれば戦闘を主題にした交渉だ。敵国を殲滅させてしまえば交渉どころではない。仮にエルジアがこれを行えば得るものを得ることは不可能であり、世界的地位を失いかねない。

 

 俺たちの敵であるマティアス・トーレス艦長。そしてアリコーンはそれほどの敵であるということになる。

 

「今回の作戦だが、十中八九あのベルクトが現れるに違いない。それ以前にアンカーヘッドはエルジア海軍の要だ。 4機で戦うのは厳しい作戦だと言えるだろう。だが俺はもう1つ、条件を加えたい」

「まだ無茶を言う気かよ!」

 

 カウントの言うことはごもっともだ。

 だが我らがボスは口元に笑みを浮かべ、呆れるほど真っ直ぐな瞳をしていた。

 

「出撃機の帰還率は100%だ。それ以外の数字だった場合は失敗とみなす!」

「……へへ」

 

 クレメンスと同じ帰還率という言葉を使っているというのに。これほど胸が熱くなるのは人徳の差だろうな。

 

「それとトリガー、お前に朗報だ」

「朗報?」

「プレゼントが届いたそうだ」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「F-22Aラプターだやったぁぁぁぁああああ!!」

 

 両腕を思いっきり上げて基地全体(ついでに准将野郎に聞こえるよう)に響くぐらいの歓喜を放出した。

 

 目の前にある今までの戦闘機とはベクトルの違うスラッとした造形。

 ステルス性を高めるための細部にまで拘った凹凸の少ないボディライン。六角形を用いた変形デルタ翼。

 そしてこの世界においてF-35とSu-57を含めた3機のみカテゴライズされている第五世代ジェット戦闘機。

 自他共に認められた最強格のステルス戦闘機。そして亡き父と共に空を駆けた勇姿が目の前にあった。

 

 今まで乗ってきた戦闘機はどれも間違いなく傑作機であり思い入れもひとしおだ。

 それでも目の前のラプターの存在感に圧倒され、胸が熱く高鳴っている。

 

 現在納入されたばかりのラプターに過剰ともいえるメカニックが投入され、整備、カスタム調整が行われている。

 作戦開始まで時間はない。俺を万全に飛ばす為にみなが一丸となって頑張ってくれている

 

「おやっさん!」

「よおトリガー坊主! 悪いな、手が離せねえから振り向けねえ」

「いやいいっすよ。どうですかF-22」

「見たところ変なものは取り付けられてねえ、エドワード副議長様に感謝だな。いまクィーンズ・カスタムをMTDから引っこ抜いてこっちに移植してる。流石は師匠のお孫さんだよ、まったく違う戦闘機なのにちゃんと噛み合うように出来てんだ」

 

 ほんと凄いパーツだな。これ流出したら世界基盤ひっくり返るんじゃないか? 

 

「時間いっぱいまでチューンしてみるが、全開とは行かねえ。だがこいつはチューン前でもF-15Cとは比べものにならねえ性能をしている。本当に慣熟なしでアンカーヘッドに攻め込むのか? 聞いた話だとイージスアショアが2個もあるんだろ?」

 

 イージスアショアというのはイージス艦に搭載された対ミサイル対航空機防衛システムを地上施設に組み込んだものだ。

 本来は対遠距離ミサイル防衛の名称だったらしいのだが、昨今のイージスアショアはCIWSや地対空ミサイルをしこたま備えた正にハリネズミのようなものだという。

 

「逆にこいつの対地能力が必要になります。艦も多いですし。慣熟は給油前にやります。なに、スペア時代は慣熟なしに3機も乗りこなしたんだ。問題なしですよ」

「ハッハッハ! 流石はトリガー坊主だ! ワイズマンでもそんなこと出来なかったぞ!」

 

 ほんとね。そこらへんもやっぱりおかしいんだろうなぁ俺。カウントなんて慣熟にどれだけかけたやら。逆に俺よくあれでアンノウン落とせたよな。

 

「なあトリガー坊主。この前から来てるヒヤシンスって野郎」

「クレメンスですよ。どうかしました?」

「いやよ、あいつってトリガーを貶めた野郎の一味って噂は本当か?」

「それは……」

「心配しなくてもワイズマンから詳細は聞いているぜ」

「よく殴りかからなかったですね」

「そりゃ俺やお前にも立場ってもんがある。だから鉢合わせしないよう注意したし。鉢合わせても首を折りに行かないよう我慢したさ」

 

 運がいいなハワード・クレメンス。もしラプターに何か仕込んでたらお前の命はなかったぞ。比喩抜きで。

 

「まだ分からないです。シェパードとは繋がりあるようだけど」

「しょっぴけねえのか」

「今やってもって感じです。それにあいつは大物ぶっても雑魚っぱだ。尻尾を出さないどころか見せびらかしてる。余りにも迂闊だ。間違いなく尻尾切り要員ですよ」

「イライラするぜ。黒が分かってても放置するってのはよ」

「大丈夫ですよ。俺たちはあんな奴らに負けない。ウォードッグのときと違って俺たちにもバックがある。アンカーヘッドを攻めること自体に意味があるし、完全勝利で帰ってきますよ。それにおやっさんたちが整備してくれてるんだ。鬼に金棒、死神に鎌ってもんでしょ?」

「ヘッ、そんなおだてられちゃあバッチリやっとかねえとな! こっちは心配するな、トリガー坊主はコンディション整えとけ」

 

 整備に関してパイロットは信じて待つしかない。おやっさんから離れてラプターの姿を見て回る。

 本当に良い機体だ。贔屓目ってのもあるかもしれないが。本当にこいつに乗れるんだな……

 

「おーおー。クリスマスプレゼント貰ったガキみてえな目してんじゃねえかベイビーフェイス小隊長」

「言ってろ一人称僕2番機。出撃前に格納庫来るなんて珍しいじゃん。おやっさん苦手は克服したの?」

「馬鹿言え、あんな筋肉ダルマと一緒の空間にいるだけで息が詰まりそうだ。俺が乗る機体の罪線が消えたか確認しに来たんだよ」

 

 ラプターの隣にはクィーンズ・カスタムを抜いたばかりのF-15 S/MTDがある。

 カウントの乗機となるイーグルの尾翼に刻まれた3本線は消え、彼のエンブレムである羽付きシルクハットが描かれていた。

 そしてラプターにはバッチリ3本線が刻まれている。こいつはマーカーだからな。ベルクトの2機が来ても見失わないようにしっかり目印になってもらおう。

 

「たくよぉ。くそったれザップランドを抜けたのに罪線を見る度にあそこを思い出すぜ」

「あら黒歴史思い出しちゃう?」

「うっせ」

「ハッハッハ。でも良いデザインでしょ?」

「それは同意しかねるが、確かにベッタベタのあれと違ってスタイリッシュだな」

 

 そこは同意する流れだろうが捻くれ者め。

 3本線羨ましがってくせによぉ。

 

「あーやだね。さっさと用事済ませてトンズラさせてもらうわ。トリガー、ほれ」

「なにこのメモ。周波数帯?」

「コウモリどもは俺たちと同じ回線を使って来る。こっちの話が筒抜けだったら企み事も出来やしねえからな。これを使えばイケメン様とのプライベート空間にご招待ってわけさ。フーシェンとランツァにも渡してある」

「成る程ね。ありがとう」

 

 これを使えば奴らとシャットアウト出来るが。同時にAWACSとの連携も難しくなる。使い所が重要だな。

 

 再度F-15 S/MTDを見やる。

 5回もミッションを共にした。メイジから含めると実は一番多く乗ってることになる。

 

「行けるか、カウント」

「舐めんなよ。こういう時の為にらしくねえ努力してきたんだ」

「そこは心配していない。ただ作戦の最初は集中砲火をくらうかもしれん。F-15 S/MTD=3本線という図式はエルジアの中で出来ている。ベルクトの2機は間違えないだろうがな」

 

 クレメンス経由で俺がF-22Aに乗り換えたのは知れ渡ってるはずだ。

 

「余計なお世話だろうけども」

「心配すんなよ。むしろ俺に集まった羽虫をお前がステルスでサクッとできるだろ。てかF-22Aのほうが目立つと思うんだが」

「それもそうか」

「お前はお前で慣熟なしだろ。行けんのかよ」

「いつも通りだろ。おやっさんにも聞かれたけど、給油前に慣熟は済ませるさ」

「化け物め。だがクレイジー艦長を相手するにはうってつけの機体だ。奴にもう一度リボン付きのトラウマ掘り起こしてやろうぜ」

「エイギル艦隊の時はまだファントムだった気がしたけど、同感だな。クレメンス共々ぶち抜いてやる」

 

 仕込みは上々。後は仕上げを御覧じろ。

 誰を敵に回したのか思い知らせてやろうじゃないか

 

 

 




 結局3話で終わらないなと確信した男。どうも皆さん、作者のブレイブです。
 ちゃうねん。ミッションを3話で終わらすと言ったんです。ほんまなんです。一応流れは頭で組み立ててるから3話で終わらせるはずなんです。信用できない?それは俺が一番よく知ってるぜ。

 SPミッション2でチラッと出てきたシェパード率いる?【部屋】を少しクローズアップ。こういう黒幕の密談系大好きでございます。懐かしいベリーさんとか、違うゲームで見覚えのあるアップルさんの孫も居たり。

 そしてついにラプターが登場しました!
 ジャケット絵にもF-22Aラプター出てるんで、エスコン8で3本線スキン出るならF-22Aになるのかな?
 とりあえず間に合わせのチューンと女王の魔法を携えて出撃。
 次回ラプター無双かも?デュエルスタンバイ!!

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