エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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STAGE58【Mimic(姉弟)

 

 

「3本線を含む部隊がアンカーヘッド港湾施設を壊滅させている模様。クォークマンもまもなく配置につくとのことです」

「卵は受け取れそうだな」

 

 アンカーヘッド近海。砲火がまじ合う戦場を悠々と高みならぬ低みの見物をするアリコーンとそのクルーは戦場を飛び交う4機の鳥による惨劇を耳に入れ流す。

 

「マーカードローンが目標地点に到達。艦長、誘導砲弾発射訓練を開始します」

「副長代理、訓練を実戦に変えるのはなんだ? わからんか、それはイメージ!! 想像せよ! サブマリナー諸君! 一発で1000万人が救済される!!」

 

 放たれるは狂気にして狂喜。

 トーレスという脳が血液たる乗組員を鼓舞し。アリコーンという怪物を動かす。

 

「教練、対空戦闘用意!」

「対空戦闘用意!」

「アリコーン浮上、電磁レール起動。スーパーキャパシタ、オールグリーン!」

「散弾弾頭装填! 目標、アンカーヘッド、アンカー港!」

 

 カタパルトを兼任するアリコーンの主砲が鎌首を上げる。

 それはまさしくペガサスとユニコーンの間の子であるアリコーンの破壊の戦角。ラグナロクを告げるギャラルホルンの角笛。

 

「イメージだ!! 救済だ!! フハハハハ!!」

「主砲。撃ちー方始めー!」

「必要なのだ! 100万の死がっ!!」

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 

『艦橋よりCIC、港に火煙を多数確認!』

『悪天候で送れなければ我々もあの中だったな。対空戦闘用意!』

「全機、目標は戦艦デュスノミアだ! 頭を叩けば統率は乱れる。無敵だの完璧なんて奴は一欠片でも欠ければ意味はぶっ壊れる! それを無敵艦隊様に教えてやれ!!」

「「ウィルコ!」」

「ウィルコ! トリガーもいっぱしの隊長になってきたよな。味方を鼓舞するのが上手くなってきた」

 

 慣れかなそこらへんは。

 俺は勢いに乗る形で鼓舞してるけど、ワイズマンはまた違うんだよな。安心感というか、そういうのが違う気がする。

 

「レーダーに新たなUAVの反応あり! 数は1」

「増援にしては少ないな」

「注意しろ、何かある」

「この前のアンノウンじゃないだろうな。あれとやりながら対艦戦闘は御免だぞ」

「全機、UAVに注意しつつデュスノミアだ。もし例のアンノウンだった場合は一度艦隊から距離を取って迎撃する」

 

 二兎を追う者は一兎をも得ずと言うからな。補給線は潤沢。焦る必要はない。

 

「デュスノミア、ロックオン距離! 爆弾投下! FOX2!」

「「「FOX2!」」」

 

 ラストのXSDB2発投下と同時にミサイル斉射。

 爆弾は命中したが。デュスノミアとイージス艦からの防御射撃でミサイルは2発しか当たらなかった。

 

「防御が空母ニヨルドの比じゃない! 戦艦も硬いぞ!」

「反撃くる! 回避!」

「このまま行くのかトリガー!?」

「変更! 変更だ! 先ずは駆逐艦! そしてイージス艦だ! デュスノミアの周りを丸裸にする!」

「気化爆弾残しときゃよかったぜ!」

 

 俺も爆弾切らした。ミサイルはまだあるが。場合によっちゃデュスノミアを撃沈する前に補給に戻るか? 

 

 全機上空に退避し、大回りして艦隊外縁に突入態勢を取る。

 ふと。UAVが視界に写った。

 形はMQ-99やMQ-101のような飛行機のような形ではなく。何処かロケットのような三角錐に羽根が生えたような外見をしていた。

 

「警告! 飛翔体が高速で接近中!」

「飛翔体だと!?」

「飛翔体? ミサイルじゃなくて?」

「終末誘導をしてる! UAVから離れて!」

「デイビッド!?」

「どういうことだ!?」

「フーシェン! UAVが近くに!」

「まもなく到達!」

「ぐぅっ!」

「フーシェン!」

 

 フーシェンが居る空域に大量の爆発が疎らに破裂した。

 目も眩む爆弾のあられが灰色の戦場を照らす。

 

「UAVと同座標に着弾!」

「くっそ! くらった!」

「なんだって!?」

「何が起きた!?」

「まだ来るぞ!」

「こいつはどういうことだ」

「大丈夫か!?」

「続けて飛来! 距離5万! 軌道が修整されていく!」

「……トリガー! 離れろ!」

「距離3万! ……まもなく到達!」

「ヌグゥ!」

「うおっ!」

 

 目の前に大量の爆発。灰色の空にいくつもの花火が上がり、大気を震わせた。

 

「トリガー! 無事か!」

「なんとかな! てかなんだこれ! 飛翔体ってなんだよ!」

「飛翔体はレールガンの砲弾と判明! 発射地点は現在特定中!」

「水平線の向こうからです だからUAVに終末誘導させているんだ!」

「まさかアリコーン!?」

「パフィンをやったあのレールガンか!? だけどあれそんな射程距離出るのか!?」

「次から爆発予測範囲をデータリンクする!」

 

 あのイカレ艦長! なんだってこっちに攻撃を! 

 エルジア軍の援護か? いや、なんか違う気がする。現に先ほどまで山嵐の如くミサイルや機銃を撃っていたデュスノミア艦隊が沈黙している。

 

「おいフーシェン! 大丈夫なのか!?」

「間一髪致命傷は避けたが、結構やられた……仲間が戦ってんのに、くそっ」

「戻るんだフーシェン。帰還率は100%だ」

「……了解! 撤退する!」

「残りは俺たちでやる」

「吉報を期待しててくれ」

「任せたぞ。ストライダー4、撤退する!」

「ストライダー1から2と3。やることは変わらない。食えるメニューにマナーがついちまったが、お行儀よく食わなくても良い! 食い破れ!」

 

 アリコーンの水平線砲撃はUAVが来るところに着弾する。

 ということは、だ。

 

「再びUAVが接近! 飛翔体の発射も確認した!」

「連発かよ!」

「誘導してるなら、試してやる!」

 

 先ほどと同じロケットのようなUAVだ。

 終末誘導を目的としてるのだろう。動きが普通のUAVより……緩慢だ! 

 

「FOX2」

 

 ミサイル……命中! 

 直ぐ様下降し、上空から駆逐艦を喰らいに行く。

 

「飛翔体が遠方で爆発! 安全装置か!」

「随分とお利口な砲弾だな!」

「ビンゴ! この手は使えそうだ!」

「よし全機、出来る者はトリガーを真似してみろ!」

「くそ、簡単に言いやがる!」

「普通のUAVよりは簡単だ! 落ち着いて狙え、だが深追いはするなよ!」

 

 再度駆逐艦攻撃、撃沈! 

 低空から近づいて再び他の駆逐艦を狙う。

 

「またUAVが来たぞ! 砲弾の飛来を確認! 到達まで10秒!」

「くそっ! 狙うには遠いぞ!」

「回避に集中! UAVから離れろ!」

「着弾、今!」

「わーお!!」

 

 またも散弾花火が空に咲く。

 確かアリコーンの前身だったシンファクシ級戦艦は散弾ミサイルでオーシアの戦闘機部隊を粉々にしたと聞いたことがあるけど、納得だ! 

 

「爆弾と追いかけっこだ! 逃げ場が少なすぎる!」

「くそ! 空が狭いぜ!」

「ワイアポロよりはマシだろ! あの時はほんと酷かった!」

「ああ確かにな! あそこよりは広いな空が!」

「お前らどんだけハードなとこ飛んだんだよ!」

 

 聞きたいか!? 空に行けば高速巡航ミサイル! その後はアーセナルバードのヘリオスによる太陽出現! 

 おまけにIFF偽装した無人ホーネットの大群だ! あれはスペア至上2番目に最悪なミッションだった! 

 

「ダオラぁ! UAV破壊! そろそろイージス艦やるぞ! 低空飛行だ!」

「了解! 沈めよ!」

 

 駆逐艦3隻を沈没させたストライダー隊は3方向から低空進入。

 イージス艦の射角限界からミサイルをぶちかまし、急速離脱! 

 

「イージス艦、メティスを撃沈!」

『応答せよ! メティス応答せよ!  』

「やったぞトリガー! よし戦艦をやるぞ!」

「低空ならレールガンの砲弾も怖くねえな」

「違いない……ちょっと待ってあのUAV高度低くない?」

「「は?」」

 

 先程まで高度8000ほどに居たUAVがこっちに合わせて高度を下げている。

 

「砲弾の飛来を確認! 奴ら正気か!?」

「迎撃間に合わねえ!」

「回避! 全力で逃げろ!」

「3、2、1、インパクト!!」

「わったぁ!」

 

 散弾爆弾のいくつかが海面に着弾! 

 巻き添えを食らった駆逐艦が派手に爆発し吹き飛んだ! 

 

『駆逐艦サムソン轟沈! アリコーンの砲撃に巻き込まれた!』

『くそっ! マティアス・トーレスめ!!』

「なんだなんだ! 味方ごとやりやがったぞ!?」

「とにかく下も安全じゃないな。敵も巻き込めると見ればめっけもんだが」

「その分危険割増しだ。やはり積極的に撃墜したほうがいい」

 

 敵も突然の砲撃に指揮が混乱してるらしい。デュスノミアの対空防御が鈍くなっている。

 イージス艦が落ちた今がチャンス! 

 

「カウント、ランツァ。ありったけをぶちこめ! 後は考えずにありったけだ!」

「よし! 派手にやるぞ!」

「FOX2!」

 

 3機のミサイルがデュスノミアの胴体、機銃、LVSを次々と爆破。

 堅牢だったデュスノミアの所々から火の手が上がり、艦の動きが目に見えて鈍くなった。

 

「UAVが来た! トリガー、こっちは任せて戦艦をやれ!」

「了解! これで落ちろデュスノミア!!」

 

 艦橋の根元、戦艦の中枢に向けてミサイル発射、更に機銃を限界まで打ち込み続けて……よし爆発!! 

 

「ヒュー! トリガーが戦艦を仕留めた!」

「FOX2! よしUAVも撃破だ!」

『戦艦デュスノミア大破! 自力航行不能!  』

『あれは鎧を着た船だぞ!? 信じられん!』

「付近の敵艦隊の全滅を確認した。これだけの海軍戦力を潰すとは見事だ!」

「こいつらがファーバンティに向かってたらと思うとゾっとするぜ」

「だがそれを防いだ。悪くねえ戦果だ」

 

 首都ファーバンティは海に面した街だ。

 ユリシーズによって出来た水没都市がそのまま海軍による防衛陣地として機能している。

 これまで叩いた艦船は20以上か。それが最終決戦に出張ってきた時の損失は比べるまでもないだろう。

 

「3本線の戦果が、予想を大幅に上回っている……!」

「随分と嬉しそうだな。よしトリガー! もっとやってやろう!」

「ああ、准将どのの期待に応えなきゃな!」

「……クッ」

 

 おーおー何故か悔しがってるねえ。

 おかしいですなー、我々は戦果を取ることはオーシアにとって利点でしかないし、作戦立案した准将も上からの覚えが良くなると思うのですがねー。

 

 ねえ今どんな気持ち? 今どんな気持ち? 

 俺たちは最高だけど今どんな気持ちー? 

 

「よし、敵戦力を十分削り取った。よくやった」

「プライムリブからトリュフスープまで、どれも美味かったな! だがまだランチタイムは終わっていない。敵航空戦力が接近中、デザートも食べていけ!」

「そう言うと思ったぜ!」

「作戦終了時間までまだ半分だ。全機補給に入るぞ! 押っ取り刀で来た航空戦力を叩き潰す! フーシェンの分まで平らげようぜ!!」

「「ウイルコ!」」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「こちらシェパード中将だ。3本線が活躍してるようだな。彼はオーシアに必要だ。それがこの『部屋』にいる者の結論だ、准将。私の予想した『結果』と違ったよ」

「申し訳ございません。しかし……」

 

 ブツリ。クレメンスが言葉を紡ぐ前に電話が切れる。

 電話に耳を当てながら震える体を必死に押さえ込むクレメンスの背中に冷えた汗が通った。

 

 シェパードの予想した。否、望む『結果』とは違う3本線の排除撤回。

 すなわち、シェパードの望むルートに導くための歯車であるクレメンスの失態ということとなる。

 

(おのれ3本線め!)

 

 内心毒づくがそんなことをしてる暇はない。

 当初の計画ではミッション終了後に疲弊したトリガーにミミック隊の姉弟を向かわせて抹殺する手筈だった。

 だがシェパードたち部屋の者たちがトリガーの生存を望んだ以上。姉弟がトリガーを殺せばシェパードの意向に逆らったことになる。

 その先は語るまでもなく破滅だ。一刻も早く姉弟の出撃を取り消さなければ。

 

「准将、どちらへ?」

「急用が出来た。ここの指揮は任せるぞ中佐」

「准将。この作戦の指揮官は貴方です。戦場が目まぐるしく変化する以上、此処に居てもらわなければ困ります」

「私が何をしようと私の自由だ。失礼する」

 

 ワイズマンの一見穏やかな忠告を無視しドアに向かうクレメンスを今度はイェーガーとランツァが道を塞いだ。

 

「困りますな准将。指揮官が持ち場を離れては」

「前回も指揮官不在で混乱を招いたんだ。いざという時に准将どのが居てくれないと対応出来ないこともある」

「誰の前に立ちふさがっているのか分かっているのか? 私は准将だ、佐官でもない木っ端が私の道を塞ぐな! どきたまえ!!」

 

 強引に2人の間を押し通り、ドアに手をかけようとしたところで先にドアが開かれた。

 

「おやクレメンス准将。どうかされましたかな? 凄い汗ですが」

 

 穏やかな雰囲気かつ、向け目のない眼差しを放つはニューアローズ基地の司令官ジョージ・アイゼンハワー少将だ。

 人懐っこい笑みを携えながらも恰幅の良い体躯でドアを完全に塞ぐその姿はまるで大木のようだった。

 

「急用が入りましてな。自室に一度戻らせてもらいたい」

「それは大変ですな。ですが今准将にここを離れれば作戦遂行に支障が出ましょう。それを分からぬ准将ではないはず、一体どのような用事であるか、ぜひともお教え下さりませんでしょうか」

「君には関係ないことだ、通らせて頂く」

「お断りいたします」

 

 声色を変えぬままピシャリと言ってのけたアイゼンハワーにクレメンスは思わず面を食らう。

 こんなことに時間を割くわけにはいかない。一刻も早く出撃停止の命令を止めなければ。

 

「クレメンス准将。将官とはなんなのかを考えたことはありますかな」

「何を言っているのです。下らぬ問答に割く時間はない」

「将官とは柱です。軍という巨大な砦を支える柱として我々将官は大きな権限と地位を与えられております。そして兵は国民を守る壁であり、屋根でございます。柱だけでは何も守れず、柱がなければ組織という砦は瓦解致します」

「いい加減にしてもらいたい! 無駄話なら後にしてもらおう! 失礼する!!」

 

 クレメンスは我慢出来んとばかりにアイゼンハワーですら強引に突破しようと……

 

 ドン……

 

 決して大きい音ではない。

 アイゼンハワーはドアの戸当たりに手で叩き再びクレメンスの進路を塞いだ。

 

「先ほど申した通り将官とは軍にとっての柱。柱が浮き足立てば組織そのものが崩壊する。かつて環太平洋戦争において我々オーシアはベルカ強硬派によって国家消滅まで追い込まれました」

「何が言いたい」

「良いでしょう。回りくどい言い方が好みでないのであれば端的に申し上げます。ハワード・クレメンス准将。あなたにはスパイの疑いがかけられております」

「なっ!」

「といいつつもまだ確証はなにもないのですがね。ですか心当たりは御座いましょう? 貴方が部屋を離れた直後に揚陸艦隊は壊滅、巡航ミサイルを積んだラファールによる囮。そしてアリコーンは逃走。余りにも疑われる素材が揃ってしまっています。私としても准将どのがスパイとは思いたくありません。ですので、身の潔白を証明するためにもこの部屋に居ていただきたい」

 

 全て事実なだけに反論出来ない。

 だがアリコーンのくだり自体はクレメンス自身も想定外。クレメンスが仕組んだのは援軍の遅延とミミック姉弟だけなのだ。

 

 まだバレていない。なら挽回の余地はある。

 多少疑われても今回を切り抜ければあとはどうとでもなる。

 いまは自身が切られないことが最優先。

 

「時にクレメンス准将。あなたは自身の階級を誇示しておりましたね」

「は?」

「軍人にとって階級は絶対、貴方の言う通りだ。そして私は貴方より一つ上の少将だ。持ち場に戻りたまえクレメンス准将、これは少将としての命令である」

 

 軽率な思惑が透けて見えたのだろう。

 目には目を。権力には権力を。

 アイゼンハワーは笑顔の仮面を外し、鋭い眼差しでクレメンスの矮小な心臓を射抜く。

 

 最後の武器である階級すら覆されたクレメンス思わずたじろぐ。モゴモゴと口を動かし、やっとのことで言葉を絞り出した。

 

「後悔しますよ少将」

「無論、何かあった時は責任は取るとも。部下を守る為に負債を背負う。その為に私は少将という階級をつけているのだからね」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 補給から戻ってきた俺たちを出迎えたのは大量の戦闘機。といっても前回のアルティーリョ港と比べたらそこまでだし、練度もさっきのSu-37と比べたらそれまでだった。

 俺のラプターも8連装空対空ミサイル、8AAMに換装して猛威を振るった。一気に8発も撃てるのはなかなか新感覚だった。

 

 興が乗った俺がとにかくミサイルをぶちこみまくり短時間で残弾がなくなって1人で補給に戻る始末になったのを見てカウントが呆れてた。

 

 もう撃墜数稼ぐなんて考えるのも虚しくなった、と。

 おいおい張り合いがないではないか。

 

 しかしアリコーンからの砲撃は俺等だけでなくエルジア勢力も狙い撃ちにしていた。というより無差別だ。

 味方を巻き込む砲撃をしたあの艦長はいったい何を考えているのだろうか。

 もしかしたらアリコーンはエルジア軍の手を離れているのかもしれない。そんな仮説が浮かんだが現実になってほしくない。それはもう立派なテロリストだ。

 あんな狂気思考の艦長が従えるテロリスト集団なんて目も当てられない。

 

 更にタッカーから2つのターゲットを知らされて、それの撃墜に成功。

 巡洋艦エニュオ艦長ディルク・タルナート艦長と、10年後のエルジア海軍を仕切る男とされるダム・ヴァン・リーという男。

 

 さっきのも合わせて計5人の大物海軍将校を撃墜し、タッカーからも「俺たちの潜入が無駄にならずに済んだよ」と感謝された。

 

『4機で港が壊滅だと!? 貴官は夢でも見てるのか?!』

『夢じゃありません! 悪夢です!』

『航空戦力も軒並みやられた!』

『無人機は! 無人機の応援はなんで来ないんだ!!』

 

 前回のミッション含めてエルジア陸軍海軍空軍全てに致命的な打撃を加えた。しかもたった4機の小隊にだ。

 アンカーヘッドの防衛能力はエルジア首都ファーバンティに迫るものだったという。それが瞬きの間に壊滅、更地にされたとなれば我が身を疑うのも無理はなく。

 ファーバンティ守備隊の生き残りはしきりに状況確認を行うだけの烏合の衆となってしまったのだった。

 

「よくやった! エルジア海軍の艦船と指揮機能に十分な打撃を与えた」

「ハッハー! 思いっきり食い散らかしてやった! もちろん金は払わねえ!」

「これだけ食って無銭飲食か。重罪も重罪だな」

 

 ファーバンティは壊滅し、ミッションは成功した。

 だがあのコウモリたちは最後まで来なかった。エルジアからの巻き添えを恐れた? 

 それともクレメンスが手を引いたのか? 

 

「フッ。作戦終了、RTB! 作戦空域より撤退しろ。全機帰還したら作戦成功を宣言する」

「もったいつけやがって! ならさっさと帰ろうぜ!」

「ちょっと待ってくれ……警告! ボギー2、インバウンド! 方位090。機種はSu-47!」

「Su-47、コウモリか!?」

 

 東! ……なんだあれは! ミサイルか? 大きい! 

 

「ランツァ! ミサイル! 後ろだ!」

「よけろランツァ! 回避運動!!」

「なんだと!? ぐぅぅおっ!」

 

 ランツァのF-15Cが必死に機体をよじるも、飛来してきたミサイルがランツァの尾翼を消し飛ばした! 

 

「「ランツァ!」」

「ストライダー3が被弾!」

「よし、これで取り巻きが減った! やれスクリーム!」

「イヤッホウ!!」

 

 この耳障りかつ甲高い声! 

 ダズル迷彩のSu-47! 間違いない来やがった! 

 

「コウモリ野郎どもか!」

「交戦し、ストライダー3を逃がせ! 撤退は中止!」

「了解! 行くぞカウント!」

「おうよ!」

 

 ここであったが百年目! 

 ぶっ潰してやる!! 

 

「ぐぅ! 2人とも、ミサイルに気をつけろ! アラートが鳴らなかった! いや鳴ったがすぐドカンだ!」

「なんだって!? 確かにアラートもレーダーにも映らなかったけど」

「敵のミサイルにはステルス性があるのかもしれん! ミサイルアラートがなった直後に着弾する可能性がある! 目視確認を怠るな!」

「そういう手品か!」

 

 ステルスミサイル……もしかしてハーリング元大統領の時と同じ……

 いや! 今はそれを考える時じゃない。最短最速でこいつらをぶちのめす!! 

 

 ロック……やっぱ外れるか! 

 やむなく機銃をぶっ放すがヒラリと避けられた。

 

「所属不明機に告ぐ! 戦闘を停止し、撤退せよ!」

「なんだ!?」

「クレメンス准将が敵機に呼びかけている。オーシアの回線で!」

 

 オーシアの回線。もう形振り構わなくなったか。

 てことはこいつらが来ることはクレメンスの想定通りではないのか。それとも理由付け? 

 今回はアイゼンハワー司令官も巻き込んでクレメンスを部屋にロックしてる。妙なことをされてはたまらんと思ったが。

 

「俺たちはもう始めちまってるぞ! 落としていいんだろ!?」 

「繰り返す! 撤退せよ!」

「しくじったと思われたくない。3本線は撃墜する」

「応えたぞ!」

「くそっ! 馬鹿どもが!」

「馬鹿って呼ぶな! 殺すぞ!!」

「姉弟仲良く地獄に堕ちろ!!」

「姉弟だと?」

 

 はい確定。

 こいつら一度もTACネームはあれどお互いを姉弟と発していない。

 しかし叩かなくても埃が出るのは楽でいいですなクレメンス准将。

 

「カウント! 准将どののオーダーだ! こいつらを地獄に叩き落とす!」

「ああ! 准将直々の命令だからな!」

 

 とりあえず准将閣下は脇にどかしてこいつらぶち殺すか。やる気満々だし、ランツァにちょっかいかけてくれたからな!! 

 

「コウモリどものECMが強化されているようだ。ブレイクロックの隙を突いていけ」

「あいよ!」

「任せろ! 小細工ばっかに頼ってるってことは実力はおざなりって白状してるもんだ!」

「言ったなこの野郎!!」

「スクリーム! 挑発に乗るな!」

 

 おーおー叩けばよく鳴る玩具だこと! 

 前回煮え湯飲まされた分、利子つけて返してやる! 

 

「いいぞ後ろをとった! 2対2だトリガー! 負けるはずねえ!」

「1対2さ! お嬢ちゃんは数に入ってない! フフフ!」

「誰がお嬢ちゃんだくそ!」

 

 こんな髭面なお嬢様がいてたまるかよ! 

 俺が女装したほうがまだ映えるってもんだ! 

 

 兵装チェンジ。最後の補給で特殊兵装を高誘導空対空ミサイルQAAMに変えている。

 一度ロックしたら……

 

「そらいけぇFOX3!」

「回避を……ぐあっ!」

「レイジ! あのコースで当たるの!?」

「気をつけろ、こいつ高誘導を積んでる!」

「この野郎!!」

 

 返しでミサイルを撃ったみたいだが、マジで至近距離じゃなきゃレーダーに映らねえな! なんだよこの超技術ステルスミサイル! ベルカテクノロジーかなんかか!? 

 

「カウント、マジでステルスミサイルは曲者だ」

「ああ。だがそれ以外は普通のミサイルだ。得物がデカい分見やすいぜ。前回もそうだったが、わざと追わせてもう一匹がケツを狙うつもりだ!」

「相当自分に自信があるんだろう。延命措置でジャミングはつけてるけど」

「おいなんか別口で客来たぞ!」

「はぁ!?」

「砲弾の飛来を確認! 到達まで十秒!」

『救え!!』

 

 さっきまで収まっていたアリコーンの誘導ドローンがまた来やがった! 

 なんかハイテンションな艦長見えた気がしたけど幻覚だよなコレ!? 

 普通にこっち来やがった! 他のエルジア機いないから集中的に狙ってきてるのか! 

 

「どうするトリガー!」

「ケースバイケースだ! 今は撃墜、FOX3!」

 

 こいつに時間はかけてられん。

 QAAMで即時撃破だ! 

 

「飛翔体が爆発! 消失!」

「ドローンが気になるか3本線!」

「ほら3本線! 目の前にいい女がいるよ!」

「いい女………カウント、何処に居るいい女」

「俺も見えねえな。目の前には鶏ガラみたいに骨ばった雌犬しかいねえ」

「その減らず口いつまで持つか見ものだね!」

 

 そら死ぬまでさ! 

 閉じたきゃさっさと殺してみな! 

 

「やつら徹底的にお前を狙ってきやがる!」

「一瞬でも隙を見せたらおしまいだ! 3本線、あんたはたった1人で私を満足させられる!」

「聞いてたろ3本線。お前を堕とさないといけない」

「なんで俺狙われるんだろう。昔から清廉潔白で清らかに生きてきたはずなのに……」

「それは嘘だ」

「ほんとなんだが!?」

 

 古き良きベルカ貴族の末裔で拾ってくれたのが元国際テロリスト幹部3人でハーリング元大統領暗殺の容疑を被らされただけの善良なオーシア国民なんだがなぁ! 

 

「トリガーミサイル!」

「あっ、くっそ!」

 

 フレア発射。そらされたステルスミサイルだが近い距離で起爆し少ないダメージがラプターを襲った。

 

「ストライダー1、機体損傷!」

「大丈夫か!」

「ああ! 良い感じに仕上がってきた!」

「商売抜きの殺しは久しぶりだ」

「いいねえ! これから殺す男と話せるなんて! ねえ、痛かったら痛いって言っていいんだからね3本線!」

「殺し屋にトリガーが堕とせるはずねえ!」

「あんまりさえずるとお前から殺しちゃうよ、かわい子ちゃん」

「やってみやがれ!」

 

 敵は俺以外眼中にないらしい。

 カウントはメインの俺についてくる添え物程度か。

 

「ストライダー隊! 何を手間取っている! さっさとそいつらを撃墜しろ! 貴様ら兵士にどれだけ予算をかけていると思っている! 兵士としての役割を果たせない役立たずなど……」

「「うるっせえ能無しお飾り准将!! てめえは黙ってろっ!!」」

「なっ!?」

 

 この期に及んで能書き垂れたクレメンス何某を一蹴。

 思わずカウントとシンクロする始末だ。ほんと黙っててくれマジで! 

 

 こっちはステルスミサイルだのブレイクロックだのでただでさえフラストレーション溜まってるんだ! 

 お前の相手は後でしてやる!! 

 

「逃さねえぞクソだらぁ! さっさと落ちやがれおらぁ!!」

 

 加減速、ハイGロール。必死に操縦桿を手繰り寄せてSu-47のケツに食らいつく。

 相手もなかなかトリッキーに動いてやがるがミスターオレンジクソ野郎と比べたら屁でもねぇ!! 

 

「くそ! これがお前の飛び方かトリガー!」

「ついてきてるかカウント!」

「こっちは気にするな、好きに飛べ! 俺は勝手についてく! ついてくぞ! 意地でもな!」

 

 いいね! お前のそういうクールに見せかけてホットなところは嫌いじゃない! 

 

「どうするレイジ。お嬢ちゃんが出張ってきたよ」

「放っておけ。3本線を落とした後にやればいい」

「おいコラこっち見やがれ!」

「あんたを落としても名は売れないんだよ!」

「言われてるぞ伯爵様! どうするよ!」

「うるせえ! 見てろよこの野郎!!」

 

 こんな奴らよりカウントの方が腕は数倍上だ。断言するとも。

 所詮ジャミングやらステルスミサイルやらでこっちと同じ土俵に立ってる雑魚っぱだ。

 だからこいつらは厄介というより面倒臭い。それに気づかず戦場を人気取りの場と勘違いしてる時点で負ける道理などない。

 

 あと関係ないけど、太陽が眩しい! 

 なんかいつもより太陽さんの殺意が激しい気がするんだけど気のせいかな! 

 HUDのロックが外れるのと合わせてやりづれえ! 天運は奴にありか畜生! 

 

「トリガー、周波数を変えろ。敵に話が筒抜けだ。俺に考えがある」

「オーライ」

 

 格納庫で渡された周波数帯にチューニング。

 スクリームとやらの甲高い雑音が収まり、無駄にイケてる2枚目な声だけになった。

 

「よし、この回線なら2人っきりだ」

「男と二人っきりってゾッとしねえ」

「うるせえ。トリガー、コウモリは挟み撃ちしてくる。もし敵が俺のケツについたらお前はそれを狙え」

「あっちは俺にお熱だぞ。やれんのか」

「やつらお前に夢中だが……なあに、振り向かせてみせるさ!」

「わかった。ドジんなよ色男!」

「任せなベイビーフェイス!」

 

 周波数再調整し2枚目伯爵とのプライベート空間を出る。

 カウントの位置を確認して、スイッチ! 

 

「トリガーの相手は飽きたろ! 俺様が相手してやる! さあこいキッズども!!」

「お嬢ちゃんをやろうレイジ! 邪魔だあいつ!」

「よし仕掛けろ!」

 

 コウモリの前でケツを振ったカウントが2機を誘い込んだ。

 囮戦法を使わず2機で一気に落としにかかるコウモリは初めてフォーメーションを解いた。

 

 行き成り追い立てたら目論見は外れるからな。先ずはドローンでお茶を濁すか。

 

「お前ら民間軍事会社だろう! だからオーシア軍とのパイプがある!」

「ハッ! 俺たちを堕とせたら教えてやる!」

「その前に燃えちゃうだろうけどね! アハハハ!」

「お前たちに落とされるカウント様じゃねえぞ!!」

 

 上機嫌で結構なことだな。

 こいつらは傭兵、いや殺し屋といったところか。

 

 傭兵で名を馳せるなんて円卓の鬼神じゃあるまいし。仮にここで俺を落として名声を得たとしてもオーシアから真っ先に矢面に立たされる。

 名が売れればそれでいいのか、それとも承認欲求が凝り固まってるのか。

 

 言っとくけどお前らの出自はデイビッドがもう調べ上げてんだからな。

 どちらにせよ死人に口無し、その汚い口は閉じさせて頂こう。

 

「ほらほらどうした! 立派な玩具も宝の持ち腐れだなぁ!」

「意外とすばしっこい! あんただって3本線のお下がりだろ!」

「俺はあいつの2番機だ! あいつ以外に落とされるわけには、行かねえんだよ!」

「こいつが3本線の僚機だと!?」

 

 僚機だよ。

 小憎たらしくて可愛げもないプライド一人前の元詐欺師。だが俺を1番機として認めてくれた自慢の僚機だ! 

 

 さーてそろそろ仕掛けますかぁ! 

 

「FOX3!」

「スクリーム、後ろから!」

「いつの間に! ああっ!」

「ナイスだトリガー!」

「一度ロックオン出来りゃ楽勝だ! ほら、手品はもうねえのか! またホログラムか? それともデコイか? 種も仕掛けも無くなりゃ後は死ぬだけだぞ!!」

「撤退はしない! 逃がしはしない! 決着をつける!」

「ぐちゃぐちゃの肉塊に変えてやるよ!!」

「最後に飛んでるのは俺たちだ!」

 

 姉弟の鋭さが変わった。

 今まで舐めプでもしてたのか? 奴らもようやく自分が狩られる側だと気付いたらしい。

 

「カウント! 後方からミサイル! 多いぞ!」

「なろっ!」

 

 Su-47から複数のステルスミサイル。

 ここにきて一気にぶっ放しやがった。カウントはフレアを炊いて逃げにかかるが、ステルスミサイル故にタイミングを逃した1発が近くで破裂した! 

 

「被弾した!」

「カウント! 大丈夫か!?」

「なんだフーシェン。高高度で聞き耳立ててたのか? ちゃんと飛べる、そんな声出すんじゃねえ」

「……教えてやる。口は軽いが無理する奴、そんな男は早死にする。トリガーの前のストライダー1がそうだった。お前はあいつに似てる、そのいけ好かねえ笑い方もな」

 

 前任のストライダー1。

 ワイズマンから軽く聞いたことがあるが。インシー渓谷に突入する前に殿を買って出て撃墜されたらしい。

 そしてフーシェンをニューアローズに勧誘したのも彼だという。

 

「ヘッ、そいつと俺は違う。それに今回のストライダー1はそう簡単には落ちねえ」

「証明してみろ」

「どっちのだ?」

「お前の話に決まってる!」

「じゃあ大人しく基地で待ってろ。こいつらを片付けてすぐ帰る」

「頼むぞ……」

「よしトリガー! さっさと終わらせるぞ!」

「はいよ!」

 

 ……もしかしなくても当てられちゃったかしらね。

 カウントは落ちる心配はしてないが、フーシェンをこれ以上やきもきさせる訳にはいかないな。

 

「レイジ! さっさとこいつやってよ! 邪魔くさい!」

「だったらお前がやれよ! こいつ、教本通りな飛び方の癖に!」

「落ちろよおまけ野郎が!!」

「トリガー。俺たち、いやお前ならコウモリ共を落とせるはずだ!」

「おいおい手柄頂いちゃっていいのかよ!」

「ああ! もうそんな小せえこと構ってられるかよ!」

 

 変わったな伯爵様! 

 いいぜ期待に応えようじゃないか! 

 

「マーカードローン接近!」

「カウント! 網張れ!」

「っ! オーライ! オラ来いよ! 小細工しか使えねえモブどもが!」

「モブっ、てめぇ、待ちやがれ!!」

「逃がすか金魚の糞野郎! 殺す! 殺してやる!!」

「威勢だけじゃ食ってけねえぜぇ!!」

 

 カウントの煽りがクリティカルヒット。

 遮二無二に追い立てるコウモリは知らず知らずにドローンの円範囲に誘い込まれていく。

 

「残り5秒!」

「今だ!」

「なに、ドローンが!」

「これは、しまった! スクリーム!」

 

 カウント180度ロールから急降下。

 砲弾到達、散弾花火がコウモリの眼前で炸裂した! 

 

「ぐぅ!」

「きゃあ!」

 

 爆発の光、音、風圧に煽られコウモリのSu-47がぶれた。

 最大戦速。アフターバーナーによる超加速で一気に彼我の距離を詰める。

 射程距離、ジャミングにより乱れ……落ち着いて、ロックした瞬間を差し込む!! 

 

「ロック! FOX3!!」

 

 2発のQAAMが直進。一度ロックされた高誘導ミサイル。気づいた時にはもう遅く。半端な回避を逃さず猛追。

 

 ついに片割れのエンジンを木っ端微塵に吹き飛ばした。

 

 

 





 グローグーが可愛すぎて映画を見ようと考え中。
 どうも作者のブレイブです。

 いやーやっぱDLCミッションってカロリー高いですわ。台詞回収も骨が折れました。
 クレメンスぐぬぬ回が書けました。まだまだ続くぞどこまでも。

 ラストでコウモリの片割れを撃墜。どっち撃墜したのかな?どうなるのかな?
 次回SP2終了!クレメンス死す!デュエルスタンバイ!!
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