エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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STAGE5【OBC News(戦争の真実)

 2005年9月26日。

 それは俺にとって忘れられない日となった。

 

 オーシアの放送局OBCが放送した報道ドキュメンタリー『OBC Documentary Special: Warriors and The Belkan War』

 ベルカ戦争の真実と、円卓の鬼神を追い求めた番組。

 

 オーシアやベルカ政府の闇をも暴いたその番組は本当に驚きの連続だった。

 

 ベルカのトップエースたちが口々に円卓の鬼神との戦いを、そしてベルカ戦争について話していく。

 ロト隊、グリューン隊、インディゴ隊、ゲルプ隊、シュヴァルツェ隊、シュネー隊、ズィルバー隊。

 円卓の鬼神と戦い、そして破れた名だたる強者たちがその円卓の鬼神、サイファーとの戦いの数々、そこで感じたこと。まさしく歴史に残るようなインタビューに俺は文字通りテレビに釘付けとなった。

 

 バルトライヒ山脈に落とされた7つの核にもスポットが当てられた。

 そこで死んでいった数多の人々。その中には………

 

 場面は変わり。

 ベルカ戦争のそのあと。そう、国境無き世界が起こした、歴史に記されなかった戦争の内容が明らかになった。

 

 ひた隠しされていたルーメンの爆撃の様子が晒され、世界は文字通り震撼した。

 何故なら、この情報は誰も知り得ない。歴史の暗部なのだから。

 

『元ベルカ空軍第3航空師団第23戦闘飛行隊『フリューゲル隊』2番機、エリアス・アインホルン。同部隊隊長であるアレクセイ・フォン・フリューゲルの右腕だった男。戦闘機を降りた彼は、今もベルカ軍上層部の軍人として、祖国の為に尽くしている』

 

 不意打ちとはこのことか。

 フリューゲル隊、なんと父の部隊の名前が出てきた。

 円卓の鬼神と戦った訳でもないのに出てきたのは。彼の存在がベルカ戦争の終幕、そして国境無き世界のルーメン襲撃に深く関わっていたからだろう。

 

『ベルカ戦争は本当に酷い結末に終わった。七つの核の爆心地の中にはアレクセイ隊長の家と家族があった、大豪邸さ。フリューゲル家ってのはベルカの中でも古い歴史を持つ騎士道貴族の家系だったからな………あの七つの核には様々な憶測があった。一番有名なのは、神聖なベルカの地をこれ以上汚さない為。馬鹿馬鹿しい、そんな神聖なベルカの地を汚したのは他でもないベルカ軍だって言うんだから手に負えない』

『私が調べた中では、あの七つの核は保守派筆頭であるフリューゲル家を消すためというものがあったのですが』

 

 それは俺も気になっていた。

 ラリーからも聞いたがそれは確定的な情報ではなかった。

 その真実が聞けるのかと、俺は耳をすませて次の言葉を待った。

 

『そんな噂もあった。実際、ベルカ急進派は隊長の父親を相当やっかんでいた。ベルカ戦争が始まる前も、始まった後も。隊長の父親は戦争に猛反対していた』

『ではやはり』

『いや、残念ながら真相は分からなかった。こうして今のポストに収まってから色々調べたが。憶測ばかり集まって証拠はなかった。だがそれが真実なら、全くもって度しがたい。守るべき祖国を守らずに自分の利益を優先して、何をもって軍人なのか。そんな凄惨な現状に当時の3番機は嫌気が刺してベルカ軍を辞め、何処かに行ってしまった。噂では国境無き世界に属したとか、エストバキアあたりに亡命したとか。真相はわからないし、あれから連絡は取れてないがな』

 

 場面がルーメンの調印式の会場に変わった。調印式の場には父の姿があった。

 黒髪を整えた凛々しい表情。写真で見たことはあったが。そのどれとも違う表情をした父がそこにいた。

 

『フリューゲル隊は解散したが、隊長は父親の後をついで政府高官となり、戦争を終結に導いた。その時の政府のゴタゴタは酷いものでな。隊長が纏めあげなければ、あのあとも醜い戦争が延々と続けられていたかもしれない。その努力の甲斐があってルーメンは戦争終結の象徴となった。ベルカの兵士も安堵しただろうよ。やめるにやめれなくなった戦争がやっと終わったんだな、って』

『ですがルーメンは爆撃された。半年後、国境無き世界によって』

『ああ。偽りの戦争終結に意味はない、その歪んだ象徴は破壊し、見せしめにする。という目的の元でな………だが奴らにはまた別の目的があった』

『別の目的?』

『ああ、ルーメン襲撃の際、国境無き世界は調印式会場を木っ端微塵に吹き飛ばした………その中にアレクセイ隊長と、当時彼をサポートしていたうちの4番機の元パイロットがいた。後から聞いた話なんだが。隊長はベルカ国内で不穏な金の動きがあったのを突き止めた。他にも重巡航管制機フレスベルクやアヴァロンダムのことも。国境無き世界の存在、そして目的がオーシアやユークトバニアのような大国に向けられてることを、終戦から交流のあったオーシアの武官に伝えるためにルーメンに行った』

 

 そしてそれを察知した国境無き世界がルーメンごと父を殺した。

 父は戦闘機パイロットを降りたばかり。国境無き世界の理想に同調する訳もない彼が再びパイロットとして返り咲けば間違いなく脅威になる。それを踏んだ上のことだったのだろう。

 

『それからはもうフリューゲル家は壊滅だ。残った使用人が頑張ってるみたいだけど。跡取りがなくなったフリューゲル家は長くはなかったよ…………ジャーナリストさん、あんたには感謝している。久しぶりに隊長のことを話せたことを。この番組が上手く行くことを心から願う。そして世界の闇を残らず白日の元に引きずり出してくれ』

『約束します。必ず果たすことを』

『ありがとう』

『最後に一つ宜しいでしょうか。貴方たちから見て、円卓の鬼神はどんな風に見えたのでしょう』

 

 ジャーナリストに質問されてアインホルンは顎に手を置いて目を閉じたあとに口を開いた。

 

『隊長は円卓の鬼神を特異点と呼んでいた』

『特異点、とは?』

『この世の理から外れた存在。明らかに他とは違う次元にある者、今までの常識という物を根底から引っくり返す存在。円卓の鬼神はその力があると言っていたよ』

『もしフリューゲル隊が円卓の鬼神と戦っていたらどうなっていたでしょうか』

『勿論俺たちが勝つ。と言いたいところだが、戦場に絶対はない。隊長も「円卓の鬼神は俺でも勝てるかどうかわからない」って言ってたよ。当時の俺は信じられなかった。自分で言うのはなんだけど。フリューゲル隊は本当に凄い部隊だった。その中でも隊長が凄かった。正にエースの中のエース。『ベルカに蒼穹部隊のフリューゲルあり』と言わしめたのは、隊長の活躍があってこそだ。まあ、結局円卓の鬼神とは当たらなかったけどね。俺たちは主に連合軍の大部隊を相手にしていたから』

 

 フリューゲル隊は数で勝る連合軍の大半をことごとく地上に叩き落としたのだという。

 もしフリューゲル隊がいなければ。連合軍も少しは攻勢に出ていたのかもしれない。

 

『でもこうも言っていた。「あれほどの存在と空で戦ってみたい」ってな。隊長もいちファイターパイロットだってことだ。勿論、俺も同じ気持ちだったよ』

 

 そう締めくくってフリューゲル隊二番機、エリアス・アインホルンのインタビューは終わった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 そこからは国境無き世界のメンバーが次々と出てきた。

 

 マルセラさんのインタビューが始まった。

 

 マルセラさんの所属していた部隊、エスパーダ隊。

 アントニオ・ロペスという恋人とのツーマンセルの部隊はフレスベルクの護衛。

 鬼神との出会いで人生の道が変わり。愛するものは傷を負いながらも再び空に帰って、そして飛び立ってしまったこと。

 

『私たちの人生は確かに円卓の鬼神によって狂わされた。でも憎しみはないの。あの戦いの苦痛も、そして後悔も。全て愛する彼が残してくれたもの。私はその大切な遺品を守っていく。この愛しき故郷の地で………』

 

 そう答えるマルセラさんの瞳には、いまは無き一番機の姿が写っていた。

 彼女の言葉から、俺はそう感じたのだった。

 

 

 

 

『アンソニー・パーマー。元オーシア国防空軍中尉。第8航空団第32戦闘飛行隊『ソーサラー隊』隊長。同部隊のブリストー大尉とともに『バルトライヒの決戦』後、一時消息を絶つ。『国境無き世界』創設メンバーと噂されるブリストー大尉、その大尉と、行動を共にしていた為、グループの重要人物の一人と噂されていた。現在はオーシア首都オーレッドにある保険会社に勤務している』

 

 次はアンソニーのインタビューだった。

 俺は思わずアンソニーの顔を見た。俺は彼がインタビューを受けていたことなど知らない。いったいいつ撮ったのだろうか? 

 隣に座って一緒に見ているアンソニーに怪訝な目を向けると「お前が学校に言ってる間にな」と困ったような笑顔を見せた。

 

 再びテレビに目を戻すと、アンソニーのインタビューが始まった。

 

『フッ、鬼神とはよくいったものだ。奴が通ったあと、奴が触れた物は全て鉄屑に変わっていったよ。まるでマジックのようだった』

 

 テレビに移るアンソニーは普段一緒に過ごしていた時とは違う鋭さを持っていた。

 家にいる時は適度にだらけて適度にキチンとした何処にでもいるような人だったから。

 

『奴はエースだったが。俺も軍に属していた頃はエースと呼ばれていた。各地の戦場で勲章を貰っている。戦う相手に恐怖を感じたことは無い。それは世界が相手だろうとも怖くはなかった。信頼していたブリストー隊長と共に大義を、祖国の腐った根っ子を焼き付くす。あの時の俺は、本気でそれを成そうとしていた。B7Rで円卓の鬼神が敵として対峙した時は負ける筈がない、負ける訳にはいかないと思って対峙したよ。実際に相手は奴の尾翼を青く塗られたF-15C、そして当時の2番機であるF-16Cの2機。こちらはF-15S/MTDの8機編成。戦力としても全体の練度でもこちらが勝っていた』

『ですが、円卓の鬼神と交戦し、負けた』

『ああ、まったくその通りだ。2番機もよく動いていたが、やはり奴は特別だ。1機、また1機とやられていき、ついには奴と一騎討ちとなった。同じイーグルドライバー同士、プライドをかけた戦いだった………でも奴との戦闘中、何かが芽生えた。最初は何か分からなかった、だがふと操縦桿を持つ手が震えてることに気付いて、初めて実感した。これは、恐怖だ』

 

 マグカップを持っていた手が震え、カタカタとテーブルを叩いた。

 思い出しても震える程の恐怖。

 チラッと横に座っているアンソニーを見ると。自分の手を必死に握りしめ、ほんの少し震えていた。

 

『情けない話だが本当だ。だから俺は空から降りた。当時の仲間には悪いがな。哀れにも俺は生き残って近くの村で息を潜めていたところを発見され、軍事法廷で裁かれた。そして今ここにいる。残念だが、俺はもう再び空に上がることはないだろうな』

『円卓の鬼神は、今も何処かで飛んでいると思いますか?』

『奴は今も何処かの戦場で翼を広げている筈だ。悲しいことだが、大なり小なり戦争は何処かで起きている。奴の居場所が無くなることはないだろうな』

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 アンソニーのインタビューが終わったと同時に。アンソニーが俺に問いかけてきた。

 

「リヒト。戦闘機乗りで強い奴に備わってるのはなんだと思う」

「操縦技術」

「ああ、それは大前提だ。だが本当に強い奴は『恐怖を自分の物にする』術を身に付けていることだと思う。人は誰しも恐怖し、怯える。だがその恐怖に負けることなく克服しそれを乗り越えることで、迷いの無い戦闘機動が出来る。俺があの円卓の空でそれを思い知らされた。恐らく円卓の鬼神にはそれが備わっていたのだろうな」

「それが本当に強いパイロット」

「ああ、俺はそう思うよ」

 

 恐怖を自分の物にする。

 今の俺にはピンと来なかったが、その言葉を忘れない為に心のなかで繰り返し反芻した。

 

『ジョシュア・ブリストー。元オーシア国防空軍大尉第8航空師団第32戦闘飛行隊『ウィザード隊』隊長。ベルカ戦争時の行動に謎が多く、『国境無き世界』の創設者の一人と噂されている。彼の消息は『バルトライヒの決戦』で一度途絶える。数年後、再び姿を表した彼はテロリストグループのリーダーとなっていた。現在は服役中の身』

 

 国境無き世界の首謀者の一人、ジョシュア・ブリストーのインタビューもあった。一体どんな面構えなのか見てやると俺は息巻いた。

 

『………今はこの暗闇とあの小さな空が私の全てだ。暗闇は無限の世界を感じさせてくれる。境目の無い世界とはこのことだ』

『あなたたちが企てた計画は、円卓の鬼神が打ち砕きました。世界を変えるという願いを砕かれた時。あなたは何を感じたのですか?』

『フフッ』

『?』

『いや失礼。なにも彼が居たから世界が変えられなかったんじゃない………まだ変われるのさ』

 

 ゾクッ。俺は得たいの知れぬ恐怖心を抱いた。テレビに映る男に抱いた。

 

 この人は暗闇だ。真っ暗で、全てを飲み込みかねない暗闇。

 恐怖を克服することが強いパイロットの理由と言われたばかりだと言うのに。俺の身体はカタカタと震えていた。

 

『望む世界がどうであれ。人が知識を得て、変化を願えば、ただそれだけだ。今の世界も、既にあの時から変わっているんだ』

『では、今の世界は国境無き世界が求めた世界であると?』

『さあ、どうだろうな? それは今の国のトップしだい、さ』

 

 国境無き世界が破れた後もテロを重ねて牢獄に入れられた彼は、今も虎視眈々と再起の時を待っている。

 実際そんなことは一言も言ってないのだが、俺にはそう映って仕方がなかった。

 

 この男を牢獄から出してはならない。

 自分に何が出来るという訳ではないが。この男が再び外の世界に足を踏み入れないことを祈るばかりだ。

 

 ──そのあとゴルト隊のアントン・カプチェンコという人が紹介された。

 彼はジョシュア・ブリストーと同じ国境無き世界の首謀者で、エクスキャリバー、フレスベルク、アヴァロン要塞、そしてV2ミサイルを設計した人であった。

 その人は今この世にはいなく。墓石だけがそこにあった。

 

 墓石には、こう書かれていた。

 

『新しい世界への門は開かれた。我が魂は風となり。その門へと誘う。眠りし王が目覚める時、私の肉体も蘇るだろう』

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 そしてインタビューは最後の人物を迎えた………

 

『『片羽の妖精』本名、ラリー・フォルク。

 ウスティオ空軍第6師団第66戦闘飛行隊 「ガルム隊」2番機。そう、『彼』の相棒であり、敵でもあった男』

 

 その語りだしから、ラリーのインタビュー映像が始まった。

 テレビに写し出されたのは、いつかの再会を誓った彼。その姿が映った時、目尻が熱くなった。

 

 何処かの部屋、ボロボロで窓も割れている。戦場にいるのだろう、時折遠くから銃声が聞こえた。

 ラリーはその中央に椅子に座り、あの時抱えていたものと同じ自動小銃を抱えていた。

 

『あいつか。ああ、知ってる。話せば長い。知っているか? エースって呼ばれる奴には3種類の人間がいる。強さを求める奴。プライドに生きる奴、戦況を読める奴。この3つだ。奴は、確かにエースだった。初出撃の時は忘れられない。あれは、雪の降る寒い日だった』

 

 ラリーの。ラリー・フォルクの声がテレビから聞こえる。

 度々手紙が送られてくることもあったが。声は聞けなかった。

 生きている。生きていてくれた。

 ラリーは俺との約束を、今でも守ってくれていた。

 

『円卓の鬼神はどういう人物だったのでしょう。鬼神の名の通り容赦のない人だったのでしょうか?』

『いいや、あいつは鬼神なんて厳かな名前が似合わないような男だった。基地の良い相談役でもあったし、ジョークだって飛ばした。だが一度戦闘機に乗ればガラッと変わる。場数を踏む度、基地から飛ぶ度に、あいつの強さが際立っていった。ひたすらに強い。冷徹さと決して折れないプライドを併せ持つ戦闘のプロフェッショナル。鬼神とはよく言ったものだ。あいつにはきっと戦いの女神、ラーズグリーズでもついていたんだろうな』

 

 ここまでラリー含め、みんなサイファーの強さは別格と言っていた。

 大陸戦争で活躍したメビウス1もそうだが。戦争を終結に導くのは、いつだってエースパイロットの存在が大きかった。

 ガルム1、円卓の鬼神。ラリーの相棒であるサイファーもその一人なのだろう。

 

『気付けば色んな奴があいつを見ていた。出撃の度に見送りが増えてたなぁ。他の傭兵どころか、整備兵までも。あいつの飛び立つ姿を目に焼き付けていた。彼が飛べば安心だ、彼についていけば生き残れる。きっと戦争に勝てると。真のエースというのは、そこにいるだけで周りに影響を及ぼす。そこに希望を見いだすんだ、真っ暗な海に光る灯火のように………俺もそうだった。出来ることなら、もう少し、いや何時までも奴の二番機で居たかった』

 

 その言葉に嘘偽りはなかった。

 ラリーがサイファーの話をする時はいつも悲しそうで、寂しそうだったからだ。

 

『あいつと道を違えたのは、戦争の意味が変わってきたからだ。そして、戦争の真実を知った。ベルカ戦争はオーシアがベルカの資源を手に入れるための自作自演だった。更に連合軍の上層部は、あたかも自分たちだけの力で戦争に勝利していった風に主張してきた。真の功労者はウスティオの傭兵、円卓の鬼神と呼ばれたサイファーや他の傭兵のお陰であったのにも関わらずにな。俺たちは、いや俺はなんのために戦ってきたのかわからなくなって。心が空っぽになったように空しく、悲しくなった』

『だから国境無き世界に?』

『他にも色々とあるがな。戦う意味がなくなって、ジョシュア・ブリストーの誘いに乗ったよ。その時は心から信じていた。国境無き世界に俺の戦う理由がある。全てをリセットし、次の世代に未来を託す。それがより良い未来になると信じていた』

 

 そして彼は核を撃った。

 禁断の引き金を自ら引き。唯一無二の相棒と一騎討ちし、そして敗れた。

 

『相棒との戦いに敗れた俺は、死ぬはずだった。でも死ねなかった。痛む身体を引きずってたどり着いた場所は、あの核の爆心地だったんだ何も無い光景。それがなんだか悲しくてしょうがなかった………』

 

 淡々とした口調でありながら、何処か泣き出しそうな声色語り始めるラリー。

 かつて核を撃つ手助けをしたアンソニーも。固唾を飲んでテレビに視線を向け続けた。

 

『でもそこで強く生きる人々が居た。俺は彼らに助けられた。ただでさえ少ない薬と食料を貰い。そしてその村の惨状を見た。酷いもんだった。子供も大人も関わらず被爆による後遺症に苛まれ、目の前で死んだ人も居た。5歳の子供だった………俺は自分が酷く恐ろしく感じた。もし相棒が止めてくれなかったら。俺が全てをリセットするなんて言いながら放ったV2ミサイルで、これ以上の惨劇が起きていたと思うと、震えが止まらなかった。本当に相棒には感謝している。そして今になって思う。あの時の自分は間違っていたってな』

 

 外で鳩の群れが飛び上がり、部屋に幾つもの影を生み出した。

 

『世界に境目なんて必要ないのかもしれない。でも無くすだけで変わるんのだろうか………ある少年に言われた。戦争を起こすのは人であって国ではない。たとえ国がなくなったとしても。そこからまた争いが生まれるだろう。戦争を無くすには互いに助け合い、分かり会うこと、そうすれば戦争は生まれない。信じあえば、憎悪は生まれない』

 

 ドキッと胸が跳ね上がった。

 ラリーが言っていたある少年というのは、正しく自分自身だったからだ。

 

『でもそれが出来ないのも人だ。悲しいことだけどな。だけど、そんな当たり前のことが必要なんだ。俺はその子に言われて、少しだけ道が開けた気がした。救われた気がしたんだ』

 

 救われた気がした。

 そんなことはない。救われたのは俺の方だ。

 視界が滲む。

 駄目だ、泣いては駄目だ。まだラリーは、ラリーがそこに居る。

 しっかりと見届けなければ………。

 

『俺はまだ戦場に居る。国境の近くだ。確かめたいんだ、国境の意味を。なんのために国境があるのか。かつて国境無き世界を止める為に集まった連合軍の間には確かに国境の垣根を越えた何かがあった。それを見つけたいんだ。ここに答えなど無いのかもしれない、でも探したいんだ。そう、今はそう思う。それでいいと思う。探し続けることに意味があると、俺は思うんだ』

『もし、その答えが見つかった時は?』

『まだその先のことは考えてない。だがそうだな。もし見つかったら、俺に大事なことを気付かせてくれた少年に会いに行こうかと思う。そして行く行くは、また相棒に会って話がしたい。それまで俺は死ぬつもりはない。俺はまだ、なにも成せていないからな───なあジャーナリスト。この映像はあいつも、相棒も見るのか? ………そうか、もしあいつに会ったら伝えてくれ』

 

 

 

 

 

 

『よお相棒。まだ生きてるか? ………ありがとう戦友。またな』

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

『「円卓の鬼神」。ベルカ戦争を駆け抜け、畏怖と敬意の狭間で生きた戦士。彼はたった数ヵ月の間だけ空に存在していた。その後の消息は不明。ついにその人間性にまで迫ることは出来なかった。ただ彼の話をする時。皆、少し嬉しそうな顔をしていた。それが、答えなのかもしれない』

 

 ジャーナリストの言葉と共に、番組はエンディングに入った。

 

 俺はしばらくそのまま動かずに込み上げる思いを必死に抑え込んだ。

 少しでも気を抜くとまた泣き虫に、ラリーといた頃の自分に戻ってしまう気がしたから。

 

 俺も前に進むよ、ラリー。

 いつか戦闘機のパイロットになって、ラリーの分まで飛んでやる。

 

 俺は改めて自分の心に誓いを立てた。

 

 

 




 今回は長文台詞が今まで以上に多かったと思います。読みづらかったらすいません。

 書いていくうちに筆は乗っていたのですが『これ前の話と大して同じこと書いてね?』と思って勝手にモダモダしていました。
 インタビューということなので許しておくれ。
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