エースコンバット7 FLIGHT REZON   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 レイジルートとスクリームルートどっちに行こうかな。
 ところがどっこいどっちも書いちゃいます!!

 【レイジルート】このまま下へ
 【スクリームルート】


STAGE59【Ace(英雄)

 

【レイジルート】

 

 

 ミサイルがSu-47のエンジンを粉砕し、破裂したボディが内側から機体を食い破った。

 

「ギャッ……」

「スクリーム!!」

「やったのは女の方か!」

 

 スクリームだったか。アルティーリョでお前は一瞬で燃え上がるとかイキってたが、ションベン漏らす間もなく爆発四散だ! 

 ざまあみやがれクソビッチ! 

 

「ちっくしょうやりやがったな!! この野郎やりやがったッ!!」

「残り1機! 2人で追い込むぞ! だが仕留めるのはトリガー、お前だ!」

「おうよ! さっさと終わらせて帰るぜ!」

「絶対殺してやる! 絶対!!」

「ハッ! 殺し屋が今更何言ってやがる!! 寝ぼけたか坊や!!」

「黙れぇぇぇ!!」

 

 クールな感じから一転。レイジというTACネームの名の通り激しい怒りが奴からぶちまけられた。

 変わらずミサイルをしこたま撃ちまくり。機銃も射程距離外から乱射している。

 

「よくもよくもよくもぉ!! よくもスクリームを! よくも姉さんを! ぶっ殺す!! うおぉぁぁぁぁ!!」

「相手は感情的になっているが、流されるな!」

「ああ! 同情する気なんざ、これっぽっちもねえ!」

「怒りで勝てたら苦労しねえんだよ! 落ちやがれ三下ぁ!」

 

 怒りは確かに力をくれる。オレンジクソ野郎と戦った時、それを実感した。

 だけど冷静さを失ったらそこで終わりだ。

 ましてや半狂乱になってたら世話ないぜ。戦場を甘く見積もった報いだ、自業自得ってことで死にやがれ! 

 

「殺してやる! ハァハァハァ……殺してやる! ヒャハハハハハ! 殺してやるぅ!!」

「イカレ野郎が!」

「FOX2! ああくそっ! なんか動きさっきより良くなってんなぁコイツ!!」

「殺ぉす!!」

 

 力強い飛び方だ。テクニックなんかあったもんじゃないが、その分馬力がある飛び方だ。

 攻撃も苛烈極まりない。ステルスミサイルという搦手を辞めて大量のミサイルを一斉射して畳み掛けてきた。

 

「許さねえぞ3本線! うわぁぁぁぁ!!」

「完全に頭にきてやがる! 正気失ってるぜ」

「奪いやがって! たった1人の! たった1人の家族を! てめえは奪いやがったぁ!!」

「大切なら戦場に出すんじゃねえタコが! 甘ったれんじゃねえ!!」

「こっちはこっちでなんか言葉つえーし。飲まれるなよトリガー!」

 

 ええい! 気持ちよく怒りたれ流しやがってよ! 

 五月蝿いんだよマジで! その癖逃げ足だけは良いなコイツ!! 

 

「お前が英雄だと!? 認めねえ! 絶対認めねえぞ!!」

「知るかよ! お前の了解なんかいるか!」

「俺たちだって英雄になろうとした! なんでてめぇなんかが英雄なんだよ!!」

「散々せこい手使って英雄願望は一丁前か! 古き良きベルカ騎士見習って出直しやがれバーカ!!」

「くそっ! くそぉぉぉぉ!!」

 

 うるっせえ! ハウリングで耳キーンってなるわ! 

 こんな喚き散らすパイロット初めてだ! こいつほんとに軍人……ではないのか傭兵か。

 いやこんな奴らをラリーやマルセラさんと同じ傭兵カテゴリに入れるなんて侮辱以外の何物でもねえな! 

 

「独りじゃ勝てん! だがお前がいれば!」

「2人でも勝てなかったくせによく言う!」

「分かるぞ、お前が一緒にいることが! 行くぞスクリーム! 力を貸してくれ!」

「とうとう幻覚見やがったぞコイツ……」

「目も当てられん……」

 

 ブラウニーやチャンプを落とされた時だってここまでならなかったぞ俺は。

 

 ヘッドオン。前方から4本のミサイル。機銃はあいも変わらず撃ちまくり。

 フルバースト万歳かこいつは。

 

「俺たちは名を上げるっ! お前を殺してだ3本線! 最後まで生き残って英雄になる!! 殺す! 殺す殺す殺すぅ!! 絶対に殺す! 死ね3本線!! あいつのところまでその首を飛ばしてやるッ!! 死ねぇっ!! 俺たちはなるんだ! 英雄にぃ!!」

「……ほんとに英雄になりてえのかお前は」

「なに!?」

「英雄、エースってのは大きく3つに分かれる。強さを求める者。プライドに生きる者。戦況を読める者。必ずしもその3つに限られることじゃないが、お前はどんな英雄になろうとしたんだ?」

「何をごちゃごちゃと!」

「俺にはお前らが英雄になれるとはとても思えないな。器量もない、腕も良くて中の中か上。挙句の果て子供みたいに喚き散らす。英雄以前に兵士として欠陥だらけだよ、お前は。そんな甘ちゃんが戦場で英雄になりたいだなんて吠えるんじゃねえ!!」

「俺たちはなるんだよ! 円卓の鬼神や片羽の妖精を超える英雄に!」

「っ! お前らがラリーみたいになれるものかよ! 羽一本毟られてから吠えやがれ! この底辺野郎が!!」

「うるせえええええ!!」

 

 コウモリが今日一番のキレを見せた。

 怒りでここまで飛べるとは大したものだ。

 

 だが俺はそれ以上だぞ。

 

 こちらの機銃を回避し、クルビットで一気に後ろに躍り出た。

 コウモリの口角が上がる。必勝を確信した彼は声高に声を張り上げた。

 

「取ったぞ3本線!! 俺たちが英雄だぁ!!」

 

 カチ……カチカチ。

 

「は? あ? あぁ!?」

 

 何度引き金を押してもミサイルが出ない、機銃さえも出ない。

 火器管制やシステムの故障ではない。もっと単純な原理だった。

 

「弾切れ、だと……!」

 

 狂乱の中苛烈なミサイルの応酬。射程距離外からの機銃連射。計算もなにもない怒りだけの攻撃をすればこうなることは自明の理。

 極限まで熱せられた激情が一気に冷え、再度燃え上がらせた時には全てが手遅れ。

 

 目の前に居た3本線のF-22Aが消えていた。左右を見渡すも姿はなく、レーダーを見る余裕なんてなかった。

 ただ、死神の声だけが耳に響く。

 

「教えてやる。英雄ってのはなれるものじゃない。皆に認められた者が英雄と呼ばれるんだ!!」

「!!」

「あばよ、独り善がり!!」

 

 ジャミングの切れ間、ロックオン。

 放たれた2発のミサイルがコウモリの両翼を焼き、もぎ取った。

 

「ぐああぁぁ!! スクリームぅ!!」

「命中! コウモリに当たった!」

「ざまあみやがれ!」

「スクリーム……! 3本線!! ゲホッゲホ、オェ……」

 

 Su-47が黒煙を上げながら滑空していく。

 怒号は静まり、荒い息遣いだけになった

 

「ハァハァ…………クッ、フフハハハ。やっぱりだ、俺達はこんな死に方しかできない! だがな3本線! お前が作る世界より地獄の方がマシだ! 俺達はそっちへ行く!」

「不明機のパイロット、脱出しろ」

「うあああああ!!」

「脱出するんだ!」

「先に行ったあいつを追いかけっ」

 

 ……Su-47が火の玉になった。

 最後の言葉を出し切ることなく片割れの元に逝き、激情は戦場から消え去った。

 

「歴史に残らず消え失せろ三下が……」

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

【スクリームルート】

 

 

 

「ぐあぁぁ!!」

「やったなトリガー!」

 

 男の方、レイジとやらを撃墜! 

 次は女の方だ! 

 

「レイジィィ!!」

「馬鹿! 集中しろ! 3本線を墜と……」

「ああああぁぁぁぁぁ!! …………馬鹿って……言うなぁぁ!!」

「うおっ!」

 

 Su-47、スクリームとやらの動きがバグった! 

 なんだこの不安定な飛び方! すげーグニョグニョ飛びやがる。気持ち悪い動きだな!! 

 

「1人じゃできない! 1人じゃ出来ないよぉ!!」

「残り1機だ! 2人で追い込……」

「いやぁぁぁぁああああ!!!」

「「うるっっさ!!」」

 

 金切り声が更にキンキンになりやがった! 

 なにこれブルクラか!? ブルクラ踏んだ? 俺に兄者は……みんな死んでるな核で! 

 

「あいつは賢い子だったんだぞ! 私なんかより頭も良かったんだぞぉ!!」

「なんだコイツ!」

「私だけじゃダメなんだ! 何もかも! あいつがいないと、私はぁぁぁぁぁ!!」

「同情なんてするなよトリガー!」

「当たり前だ! 絶対ぶっ殺す!!」

 

 死にたくなけりゃ投降なりベイルアウトなりしやがれ! 

 泣き叫んだぐらいで手心加えるかよ馬鹿が!! 

 

「ああぁーー! ヴァぁぁーー!!」

「相手は感情的になってるが、流されるな!」

「ああ、同情する気なんざこれっぽっちもねぇ!」

「それより五月蝿いし動きもキモい! さっさと殺して」

「イヤああぁぁぁぁぁ!!」

「黙れクソビッチ!!」

 

 ロックオン! ミサイル発射! 

 あ、こいつフレア吐きやがった! 往生際悪い! 

 

「死にたい! 殺してぇ!! ふ、フフ、ヒヒヒヒヒヒ、アハハハハハハ!!」

「この女、いよいよおかしくなりやがった」

「こっちの気が触れそうだ……」

 

 こんな奴生きてきた中で初めてだ! 

 ハイスクールの頃に親の仇! ってナイフで襲いかかってきたクラスの女子も大概だったけど。ここまでぶっこわれた奴はそうそういないぞ! 

 

「私に死ねって命令して! ねえ3本線! 殺してよ3本線ッッ!!」

「死ね! とっと死ね! 疾く死にやがれ!! 殺してやるからそこを動くんじゃねえ!!」

「トリガーも同情どころかドタマブチギレてんな。クールなのは俺だけか?」

「レイジぃ! 独りにしないでぇ!!」

 

 こいつ死にたいだの殺してだの言うくせに生き汚な過ぎるんだよ! 

 相変わらず気持ち悪い飛び方してるしこっち向いたら普通にミサイルぶち込んでくるし! あとなんかミサイルが気持ち悪いぐらい誘導上がってるし! なにこれ艦隊空ミサイル!? 

 

「殺してよ3本線! う、フフ、フフフフ……3本線……フフフフ……殺してやる!!」

「「イカレ女め!」」

 

 イライラするなこの女! ミスターオレンジクソ野郎と別ベクトルでイライラする!! 

 戦場で発狂したり支離滅裂なことを垂れ流す! 死にたいだの殺してだの言うくせにやってることは無茶苦茶! 

 ファイターパイロットの恥さらしが! PMCの傭兵だからってプライドの欠片もない! 

 

「目障りだ! 俺の前から消えろビッチ!!」

 

 ミサイル発射、1発ヒット! 

 

「うあぁぁーー!? フフフ! 殺す、殺される! 私殺されちゃうの!? いいよ好きにして! 私を殺してよ3本線!! アハハハハハハハ!!」

「完全に頭にきてやがる!」

「クソが……」

 

 こんなことから先にコイツ落とすべきだった。

 ほんとイライラする! 好き勝手なことばかり喋りがって! 

 

「殺してやるよ3本線!! 私たちだって英雄になろうとしたんだ!! お前を殺せば私とレイジは傭兵の英雄に! あの鬼神や片羽の妖精みたいになれるのよ!!」

「っ! ……お前が……お前らなんかがラリーみたいになれるわけねえだろうが!!」

 

 怒髪天を突くとは正にこのことを言う。

 よりによってラリーやサイファーのこと持ち出しやがった! 身の程を知れクソが!! 

 

「いるんだねレイジ! よしやるよ! 私たちだったらやれる! あんたがいるなら堕とせる!」

「1秒たりとも生かしてはおけねえ! その汚い口を今すぐ閉じてやる!」

「「殺してやる!!」」

 

 お互いデッドヒートのままもつれ合う

 機銃、ミサイル。使えるものは全てを使い尽くして相手の息の根を狩る。

 止まらない、相手の命を奪うその時まで!! 

 

「トリガー! 前にドローンだ!」

「ストライダー1! 前方にUAV! 回避せよ!」

「死ねえぇぇぇ」

「とっと堕ちやがれっ!!」

「砲弾到達まで5秒! トリガー!! 回避しろ!!」

「トリガー!!」

「っ!」

 

 ロングキャスターとカウントの声が鼓膜を叩く。

 目の前にアリコーンのマーカードローン。爆破範囲どまんなか。回避は不能

 

「やべ……」

「間に合え! FOX3!」

 

 カウントのF-15 S/MTDから放たれたHVAAの高速弾がマーカードローンを粉砕。

 直後に砲弾らしき影が横切り、海に低くない水柱を上げさせた。

 

「しゃんとしやがれトリガー! お前まで突っ走るんじゃねえ!」

「カウント……」

「俺たちはもっとヒデェ空を飛んできた筈だ! そんな鼻垂れションベン小娘に乗せられていいのかよ! オーシア2つ頭様よ!」

「っ! …………まったくだな、本当に!」

 

 まったく、俺は毛ほども成長してねえな! 

 カチ切れると周りが見えなくなってしまう癖。しゃんとしろ、俺は小隊長だろ! 

 

 ……仕事だ。ビジネスだ。任務を全うしろ。

 与えられた力。与えられた地位。与えられた役目。

 軍人としての規律を持って、そして信念を武器に。

 

 祖国の敵を討て! 

 

「行け!!」

 

 先程の濁流のような荒々しさではないキレが増した飛行軌道がコウモリの喉元に突き刺さる。

 

「死ね死ね死ねぇ! レイジのとこに送ってやるよ3本線!!」

「黙れっ」

「っ!」

「もううんざりだ。ああうんざりだ!!」

 

 開けた視界で目の前の敵を見る。

 あいも変わらずロックオンを阻害するジャミング。気持ち悪いぐらいぐにゃぐにゃした戦闘軌道。

 ああ惑わされるだろう。だが……

 

「お前の敵じゃねえだろトリガー!」

「無論だ!」

 

 所詮正気を失った失格傭兵。

 一見滅茶苦茶な飛び方でも……パターンがある! 

 

「チェックシックス」

「3本線! 3本線! 3本線は何処なのレイジィィ!!」

「FOX2!」

 

 ロックオン。瞬間を見逃さず発射。

 ミサイル警告にも気づかず緩やかに旋回しようとしたコウモリの尾翼とエンジン、主翼の一部を吹き飛ばした。致命傷だ。

 

「命中! コウモリに当たった!」

「ざまあみやがれ!」

 

 黒煙を吐きながら力なく落ちていくコウモリ。

 もはや先程の絶叫もなく、ただ落ちていく。

 

「不明機のパイロット、脱出しろ」

「嫌だ……」

「脱出するんだ!」

「嫌だ! レイジは天国だから……地獄でまた独りだ。3本線、あんたが来るのが待ちきれないよ! ……フフ、フフフフフ、3本線! 私……」

 

 ……コウモリは没した。

 事切れるまで狂気と呪詛を撒き散らして。

 

 最後に何か俺に言いかけたようだったが。

 

「あー、うるさかった」

 

 心底どうでもいい。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「レーダー上からコウモリの信号が消えた。高度から見て墜落したものと思われる」

「ざまあみやがれ……」

「……ハァ。あぁ、問題は排除された。よくやった中尉、褒めてやろう」

「それはどうも……」

「……今度こそミッション完了だ。現空域より離脱、撤退せよ」

「「ウィルコ」」

 

 炎と煙、そして狂気にまみれたアンカーヘッドの成れの果て。

 これでエルジアの戦力の何割かは削られたことだろう。

 

「アリコーン、出てこなかったな」

「だな……」

 

 合流どころか味方であるはずのエルジア戦力も関係なしに砲撃。

 これはいよいよかもしれんな。ダルすぎる。

 

 それよりも先にやらないといけないこともある。

 年貢を納めさせねえとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「受け取りを行う。邪魔なエルジア軍は3本線が片付けてくれた……余興にはなったな」

「1000万人救済計画は、エルジアを真の勝利に導くものと確信しております」

「小さな事を言うな。もっと大きな救済だ」

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「おう、お疲れトリガー坊主。例のコウモリどもは出てきたか?」

「ええ。しっかり処理完了です」

「そりゃよかった! あとはヒヤシンス野郎だな」

「それも直ぐ終わります。整備頼みますおやっさん」

「おう! ピッカピカにしてやる!」

 

 F-22Aをおやっさんに預けヘルメットを脱ぎそのままブリーフィング室に向かうとガシガシと頭をかいたカウントの後ろ姿が

 

「お疲れ」

「おうお疲れ」

「今回の伯爵様はいつも以上に殊勝だったな。囮しかり、撃墜数稼ぎやめたりとか」

「俺はお前の2番機だからな。隊長を立てる部下で幸せだろう?」

「そうだな。無茶しちまうようになったのが玉にキズだが」

「お前には負けるよ大馬鹿野郎。それに雑なプライドにしがみつくのは辞めたからな。あん時の決闘で踏ん切りもついた。てわけで、これからも俺の生存の為にバリバリ飛んでもらうぜ英雄どの」

「あいよ。部下を守るのは隊長の仕事だからな」

「小僧っ子がでかい口叩けるようになりやがった」

「英雄ですから」

「思ってもないことを」

 

 失礼な。これでも自覚だけは出てきたんだぞ、自覚だけは。

 

「大丈夫かトリガー」

「何がよ」

「いや、コウモリで結構やられてたろ」

「あー。なんつーか、単純にムカついたというか。まだ俺も未熟者っていうか」

 

 可哀想なんて露ほども思っちゃいないが。奴らは戦場に不釣り合いな存在だった。

 てよりマルセラさんやサイファー、それにラリーのような上澄みの傭兵を知りながら育ったからあんな半端者が勝手に騒ぎまくってるのを見て我慢ならなくなったんだろう。

 

「英雄なんていいことねえよ」

「だが求められる。憧れるなってのは無理ってもんだ。お前は違うだろうけど」

「そんなことはない。俺だって憧れる英雄はいる」

「ラリー・フォルクか?」

「…………」

「コウモリの時も名前出してたな。お前と片羽って何か関係が……」

「てめえ! いい加減にしやがれ!!」

「おっと?」

 

 作戦室が近くなるやいなや我らが跳ねっ返りが恐らく准将に食って掛かっている。

 覗いてみればフーシェンが今にも准将に飛びかからんとしていた。

 

「こっのっ!!」

「待て待て! やめろフーシェン!」

「おいやめろ!」

「やめろフーシェン! 座れ!」

 

 カウントを含めた男勢数名でようやく抑えられるフーシェンの馬力よ。出撃後だってのに元気だねぇ、俺はヘロヘロだよ。

 

「ちっくしょう、俺のコーラが」

「大丈夫かランツァ。何があった」

「言わなくてもわかるだろ」

「まあね。ほらフーシェン、大人しくしなさい。小隊長命令」

「トリガー……くっ」

 

 俺を見るなり一先ず矛を収めるフーシェン。

 まったく准将どのは人を怒らす天才だな。

 

「アンカーヘッド港の艦隊は壊滅し潜水艦の合流も阻止した。所属不明部隊も撃墜、作戦は大成功だ!」

「どうしました准将、早口ですね」

 

 声もなんか空元気ですなぁ。

 一刻も早くここから出たいってのがありありと出てる。相変わらず腹芸が出来ませんね。

 

 ん? なんでこんな冷静かって。

 いやだってここまで来たら笑い通り越して呆れるしかないもん。

 変わりにみんなが怒ってくれるしね。

 

「なにが大成功だ! よくもそんな思ってもないことを!!」

「准将、コウモリどもはあんたを知っている様子だったな。いい加減白状した方が楽だと思うが?」

「貴官は混乱しているようだ。医師の診察を受けろ。今後出撃できるかは診察内容を見て判断する」

「俺よりあんたが受けることをオススメするぜ」

「3本線にくっつく口だけの屑パイロットが……」

「てめえ今なんて言った!!」

「オイ馬鹿なんでお前が怒るんだよ!」

「いい加減にしろフーシェン!」

 

 あら惜しい、もう少しでフーシェンの黄金ストレートがクレメンスに刺さるところだったのに。

 だが肝っ玉の小さい准将には充分効いたらしい。抑えていた冷や汗が吹き出している。

 

「MPを! 誰かMPを呼べ!!」

「──その通りだ、MPを呼べ」

「え、エドワード参謀本部副議長!?」

 

 おーっと! ここで登場するは我らがニューアローズ基地ボスの上の大ボス。フェリックス・エドワード参謀本部副議長様だ! 

 これにはクレメンス准将、冷や汗が限界突破だぁ! 目がもうカピカピに乾いております! 

 

「作戦終了後、アリコーンは混乱するアンカーヘッド港に入港。短時間で補給を済ませ、逃げおおせた。奴らの目的は合流ではない、我々がエルジア軍を追い払ったところで補給することだったのだ」

「ほ、補給、ですと?」

「そうだ。我々はまんまと敵の手伝いをする形になってしまった……だが問題は我々が間抜けだったという点だけではない。ノース分析官、説明しろ」

「了解致しました。潜水艦の沈没から生還したクルーは330名。内300名は、いまも潜水艦に乗っています。下船した30名の一部、または全員がアリコーンのための工作員になっていると分かりました。破壊工作、諜報活動、サイバープロパガンダ、偽情報の流布……准将、エドガー・サクソン、またはズールという名前に聞き覚えはありますか? 彼はアリコーンの元乗員でした。あなたが情報源として使っていた男です」

「なっ、あ、あっ…………」

 

 あーやっぱ偽情報掴まされてたんだ。

 これで准将がアリコーンのスパイだって言うんだったらまだ格好がついたんだろうけど。この反応見るに素だな。ダサ過ぎる。

 

 しっかしマッキンゼイ以下が現れるとは。

 あいつは一応裏切ってはいないからな。あれがマシってほんとオーシア高官はクソばっか。

 

 

「クレメンス准将、君は愚かな男だ……その上、作戦中の通信は君が裏切り者であることを示唆している」

「准将。あなたがGRガーディアン・マーセナリーズ社、民間軍事企業に依頼し。ミミック隊、あのSu-47を差し向けた裏付けも取れています。あの姉弟を使い、ストライダー1、トリガーを始末しようとしたことも」

「権力で握りつぶせるつもりだったのだろうが、何処までもツメが甘い男だ」

「それに関しては、シェパード中将にご確認下さい。誤解と分かるはずです」

「中将は作戦内容の責任はすべて君にあるとおっしゃっている」

「なっ!?」

「君も替えの効く部品だったということだ。分からないか? 君は切り捨てられたのだ」

「…………」

 

 将官クラスをトカゲの尻尾切りとは。オーシア上層部って怖いね。俺ずっとパイロットでいいわ。

 見ろよ、クレメンス准将固まって息すら出来てないんじゃないか? 

 

「MPを呼び給え。速やかにこの愚か者を連行しろ」

「待ってください、私は」

「その必要はねえ……」

「っ! 貴様何……」

「このクソ野郎!!」

 

 ドゴォッ! 

 

「ワーオ!」

「ヒュー!」

 

 フーシェンの溜めに溜まった鬱憤を込めた金色の右ストレートがクレメンスの顔面をぶち抜き床を滑らした。

 ついでにランツァのコーラゾーンを通過した。コーラ、お前の犠牲は無駄ではなかった! 

 

「てめえら、トリガーに散々パラ世話になった癖に恩を仇で返しやがって! 恥ずかしくねえのか!!」

「き、貴様に何がわかる木っ端が! 我々は国の未来を担って」

「英雄を自国で殺すのがお家芸の癖して何が国の未来だ! この恥知らず!!」

「ぐぅ。この、スラム育ちの野蛮人が……!」

「まだ口が減らねえみてえだな腐れエリート野郎。もっぺんぶちかましてやろうか!」

「はいそこまで」

 

 再び准将の顔面が凹む前にフーシェンの前に立って止めた。

 おー、フーシェン顔こわーい。

 

「止めるなトリガー!」

「大事な商売道具が傷ついたら駄目でしょ。1発で我慢しなさい」

「だけどこいつは!」

「ダーメ。こっからは俺のターン。当事者なんだし譲ってよ」

「…………わかった」

「ありがと」

 

 俺も鬱憤溜まってるからねー。

 とりあえず見下ろすところから始めましょう。

 

「っ……」

「なんですかビクッとして。大丈夫ですよ俺は殴りませんから。お前殴って操縦桿握れなくなるなんて笑えないですもんクレメンス准将。いや失礼、元、准将どの」

「貴様っ……」

「おーおー良い顔。信頼してたシェパード野郎に切られて可哀想ですなぁ。どうせ自分は切られないと思ってたんでしょう。実際は貴方もただの駒に過ぎませんでしたね可哀想に」

「ぐっ……」

「というか杜撰過ぎますよ元准将。もしかしてあれで隠してるつもりでしたか? 参謀本部副議長も言ってましたけど、権力があればなんとかなると思ってたんでしょうけど無理でしたね! こっちには少将司令官と参謀本部副議長がバックに居るんですよ! 見通しが甘いですな見通しがぁ!」

 

 ここぞとばかりに煽り倒す。

 クレメンスはぐぬぬ顔です。あー最高に気分がいい。ここ1週間のイライラが晴れるようですわぁ! 

 

「見積もりも甘いですね元准将。確かにあのコウモリ姉弟は厄介でしたけど強くはなかった。あんなので俺を殺せると思ってたとは、随分と俺を低く見ていたようで。俺を殺すならミスターXクラスを連れて来いって話ですよ。あんな兵士としての欠陥品しか用意できないとは、オーシア上層部も手札が乏しいんですね」

 

 大方疲弊しまくったところで初見殺しで殺そうと思ったんだろうけど。

 初見殺しはあくまで初見殺し。種がバレた手品ほど脅威はない。

 まああのホログラムは驚いたけど。驚いただけだし。

 

「しっかし。あんたらほんと英雄アレルギーですね。なんで使い潰してから始末しようとしないんです? そもそも私って対ミスターXですよね。私が死んだら誰があのイカレ野郎を撃墜するんです? いや私抜きでやれるならそれに越したことはないんですけど。なんでしたっけ? エースパイロットは必要ないんでしたっけ? アルティーリョと言ってること真逆でしたけど」

 

 主体性なんかない連中だからそこを求めるのは酷だろうけど。

 ウォードッグに関しては活躍しまくってユークトバニア劣勢になり過ぎる故のバランス調整だって説があるらしいけど。今回に至っては真価を発揮させずに殺しに来た。

 アーセナルバード1機落として首都陥落の目処がたったからか? 

 

 てか、さっきから黙ってばっかだなコイツ。

 図星突かれまくってぐうのねも出ないとか? 面白くないな。

 

「聞けば、俺のF-22Aの納入遅延は貴方の仕業ですってね。デイビッドが一夜で調べてくれましたよ。流石オーシア上層部。仲間の足を引っ張ることに関しては天性の才がある! あっぱれですよ本当に!」

「……れ……」

「クレメンス准将。戦争において、もっとも厄介な存在は有能な敵ではありません。階級主義の無能な上官です。あなた方はベルカの過激派残党に踊らされた環太平洋戦争で何も学ばなかったのですね。なーにが大国オーシアだか。肥え太ったのは立派な贅肉だけとはほんと笑えない」

「……まれ」

「はい?」

「黙れ! ベルカのハーリング殺しがぁっ!!」

 

 おお、なんか凄いことぶちまけたな。

 成る程そうくるかい。

 

「貴様のような汚らしい陰謀国家のベルカがオーシアで幅を利かせるなど片腹痛い! そんな狼藉を許してなるものか! 我々オーシアの栄光に貴様のような汚点は必要ない!」

「……で?」

「っ! おのれベルカめ! ラリー・フォルクに何を吹き込まれた! 国境なき世界に何を吹き込まれた! 貴様は厄災だ! いずれオーシアを滅ぼす厄災だ!! 何が英雄だ! 何がオーシアの2つ頭だ!!」

 

 なんか凄い恐怖まじってないかい元准将。

 

 つまりなんだ。

 オーシアの戦争なのにベルカが活躍してんじゃねえよってことかい。うわっ、マジでベルカ戦争から変わってないじゃん。もっとクレバーに行こうぜクレバーによ。

 君たち昔はベルカのアグレッサー雇ってたんでしょ? 罠だったけども。

 

「何故貴様は飛んでいる! 何故飛び続ける! ビンセント・ハーリングを殺しながら何故悠々自適に空を飛ぶ! 存在自体が大罪なのだ貴様は! イレギュラーめ! 貴様はこの世に存在してはならないのだ!!」

「情報が古いですな准将。私のハーリング殺しは冤罪ですよ。もう査問委員会開いて無罪放免なんですよ俺」

「身内同士の査問委員会になんの意味がある! 貴様の存在そのものが罪なのだベルカめ!!」

「口をひらけばベルカベルカ。まったく視野が狭い。これだから出世欲だけの空っぽエリート様は駄目なんだよ。その結果が豚箱行きだ。楽しい囚人ライフが送れそうですね。頭でっかち口だけエリートなんざ格好の的でしょうね、ああ可哀想に!」

「貴様ぁっっ!!」

 

 堪忍袋の尾全ブチギレの元准将が胸ぐらを掴んできた。

 呆気に取られていたカウントたちが慌てて止めに入るのを後ろ手で制し、血走った目と合わせる。

 

「どうしました元准将。あんたの怒りはその程度か? そんなんじゃパイロット規定ギリのウェイトすら上がりませんよ」

「黙れ黙れ黙れ! 貴様さえ、貴様さえ居なければ私はぁ!!」

「無理ですよ。あんたはどっちにしろ破滅していた。国益より自身の保身と地位にしか失着しない高官に未来なんかあるわけないじゃないですか」

「貴様に私の何がわかる! 私はハワード・クレメンス准将だ。准将なんだぞ! 貴様のような中尉風情に!!」

「……フッ」

「何がおかしい! 何がおかしいんだベルカぁ!!」

 

 これが笑わずにいられるかい。

 最後の最後まで階級至上主義とはあっぱれとしか言いようがないね。

 

「くだらないな」

「なんだと!?」

「元准将。あんたらが考えた3本線暗殺計画なんていう些事のせいでパフィンを始めとした揚陸艦隊の乗組員が死に、アリコーンも逃がした。それに関してはどう思ってるんだ? 政治的重要性は何処行った? 目的と手段を履き違え過ぎなんだよ。そんなことも分からねえ上層部の下で働く兵士の気持ち考えたことあるのかよ」

「知ったことか! 貴様ら兵士などいくらでも補填が利くスペアだ! 我々選ばれた者とは違う盤上の駒に過ぎな……」

「いい加減にしろよ屑野郎」

「ぬおっ!?」

 

 胸ぐらを掴む手を捻り上げそのままクレメンスを床に転がせ、背中から体重をかけて動けなくする。

 ジタバタもがくことも叶わず目線だけを向けるクレメンスを見下ろした。

 

「人の命は有限だ、紙の上の数字なんかじゃない。一人一人に人生があり、背負うものがあり、大切な人や大切に思ってくれる人がいる。いくらでも補填が利くだと? エルジアを見ろ、戦える奴らが居ないせいで無人機なんぞに頼りだしたぞ。オーシアだって例外じゃない、いずれ限界が来る。そんなことも分からないくせに階級ばっか声高に吠えてんじゃねえぞ?」

「この戦争で一番の殺戮者が言うことか!」

「言うともさ。なんならお前もその一人に加えても、いいんだぜ?」

「ヒッ?」

 

 今までにない低い声色、なんの価値も見いだしていない眼、それを前にクレメンスはようやく自分が陥れようとした者を見た。

 彼は搾取する側だった。だからこそ自分がその側であることを想像できない。

 首筋に当てられた爪が頸動脈に触れた時、ハワード・クレメンスは初めて自分の立場を再認識し、目を見開いた。

 

「失礼します! ハワード・クレメンスの連行に参りました!」

「随分と暴れたようですね?」

「ええ、さっさと連れてって下さい」

「ハッ!」

「オラ立て!」

「やめろ、私は准将だぞ、准将なんだぞ!」

「こら、暴れるな!」

「大人しくしろ!」

 

 MPに両脇を掴まれたクレメンスが最後の抵抗とばかりに荒れる。往生際の悪さもここまで来ると、なんとも……

 しかしそこはMP、ガッシリとロックしてクレメンスを逃さない。

 

「あー、そうだ。すいません憲兵さん。少しだけ時間をくれませんか」

「中尉殿の頼みとあらば」

「ありがとうございます……クレメンス元准将、最後に一つだけ聞きたいことがあります。グレゴール・ダッチマンという男を覚えていらっしゃいますか?」

「………誰だそれは」

「4年前、貴方の顔面を半殺しにした男です。元准将、貴方は過去にIUN国際停戦監視軍の作戦に対するオーシア本国の援軍との作戦時間をずらしたそうですね。今回の俺たちと同じように」

 

 デイビッドに調べさせたが。グレゴール、チャンプが2本線になった原因はやはりクレメンスだった。

 この男は自分の所業を棚に上げ、チャンプたちの実力不足で部隊が壊滅したとのたまり、彼の剛腕の餌食となった。

 

「世界は狭いものでね。偶然、私は彼と出会って話を聞いたんですよ。その時約束したんです。もしその准将が同じ愚行を俺たちにやりやがったら」

 

 ズムン!! 

 

「コッ……」

「1発ぶちかましてやるってねっ」

 

 渾身の力を込めた蹴りがクレメンスの股ぐらにめり込む。足の甲ではなく爪先でだ。安全靴じゃないのが惜しいが贅沢はいうまい。

 まさに手加減無用。ハーリング元大統領のことや査問委員会のことやオーレッド獄中生活のことや懲罰部隊のことやら。今回の戦争のその他諸々のフラストレーション全てを込めて奴の玉を潰さんと金的一撃をお見舞いしてやった! 

 

「これは亡き戦友の分込みだクソ野郎……連れてって下さい」

「はい!」

 

 想像を絶する痛みに意識を手放したクレメンスを担ぎ上げてMPがブリーフィング室を退出した。

 

 ハーーー。スッキリした。

 見てたかよチャンプ。ぶちかましてやったぜ! 

 

 …………さて。

 

「色々聞きたいことあるって、感じかな?」

「そう、だな。色々と」

「ベルカってマジか? それに国境なき世界って……」

「元大統領は事故死じゃなかったのか?」

 

 あとはクレメンスが置いてったこの微妙な空気をなんとかしなければ。

 

 少なくとも金的のことでびみょい空気になってないことを祈りたいね。

 

 





 どうも。エースコンバット8の熱でエースコンバット7がタイムラインに沸きまくってウキウキマンボーな男。作者のブレイブです。
 いやはや本当に陸の超兵器でるとは思わなんだ!最高だなエースコンバット!!だけど軌道エレベーターが折れたら……わかってるなソトアさん?

 ミミックどっちも書くことは確定してました。
 同じような展開、内容にならないよう頑張って書きましたがいかがでしたでしょうか。
 ミミック、厄介ではあるが強くないんですよね。落ち着いて狙えば即殺出来ますし。

 そしてクレメンス虐は続くよ何処までも!!
 うちのリヒトリガー君のオーシア高官嫌いが大爆発でしたわ。流石にクレメンスが可哀想……ではないですね諸行無常。

 フーシェンパンチでは終わらせません。
 貴様には金的をプレゼントだ。

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