エースコンバット7 FLIGHT REZON 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
最近1週間と少しで書き上げる日々が続いている。
モチベが、モチベが続いている!
高評価貰うとモチベ上がるって本当だったんだなぁ……と思う日々です。
「エドワード参謀本部副議長。元准将が赤裸々に機密漏洩しましたけど、いかが致します?」
「それも加味して処罰を与えよう。それで、君はどうするのが最善と考える」
「洗いざらい話すのが一番かと。このままではロングレンジ部隊の運用に支障をきたすと愚行します。オーシア政府の策略に巻き込まれた我が部隊は無関係ではなくなったのも事実です」
「良いだろう。だが最重要機密を話す以上、契約書にサインをして貰うこととする」
「寛大な配慮に感謝致します」
「礼を言うのはこちらだ中尉。これでシェパードの尻尾を握れる可能性が出て来た」
はてさてどうなるかね。
あんな尻尾切り要員がどれだけ役に立つか。
「ノース分析官。情報を精査しアリコーンの対策を取る。引き続き彼らをサポートしてあげてくれ」
「了解致しました」
「作業中、聞き耳を立てることも許そう。君は事情を知る側だ……パーマー中尉」
「はい」
「先程少し目を離していてね。君がクレメンスの玉を蹴り砕いたという事実を私は知り得ない。以上だ」
それを言うと副議長は通信を切った。
我らが大ボスは意外とノリが良いらしい。
「おいクイズ屋。お前本当にただの分析官か?」
「分析官ですよ。参謀本部副議長とお知り合いで、大統領にレポートを送れる立場なぐらいです」
うん。心強いね。
よし、先ずは。
「なんかお腹すいたね! ロングキャスターも呼んでお昼にしようか。あ、今から聞きたくない人は言えよ。マジヤバ情報のオンパレードだから」
腹ごしらえだな! 激戦も激戦でお腹ペコペコでございます。
そんな場違いな朗らかさに皆が引き気味だ。
フェンサー居ないのが残念だなぁ。
ーーー◇ーーー
司令官が持ってきた契約書というか口止書にサインし、ロングキャスターが持ってきた大量のハンバーガーで遅めのランチタイムとあいなった。
ハンバーガー美味いな。流石ロングキャスターチョイス。
「モグモグモグ。んじゃ、どっから話そうか。あ、言っておくけど大前提として俺はハーリング元大統領殺してないぞ」
「いや、そこは疑ってないが」
「待て待て今なんて言ったトリガー。ハーリング? 大統領を殺した? あれは事故ではなかったと?」
いつの間にか一つ目をペロッと言ったロングキャスターが二つ目の包み紙を取ってパクり。
驚いても食の手を止めないのは流石ロングキャスター。そりゃあ恰幅も良くなるというもの。
「そもそもなんでそんな話に」
「クレメンスが更迭されるまえにトリガーをベルカのハーリング殺しって言ったんだ」
「ベルカ……」
「というかなんでトリガーはそんな明るいんだよ」
「だって悪いこと何もしてないし」
「そういうところだぞお前」
何故カウントから白い目で見られるのだろう。
良いじゃないか。変に深刻な雰囲気出して心配されるよりは。結果的に別方面で心配されてるけども。
「ゴクン……うーん。そうだな。始まりはやっぱ俺の生まれからだな」
「なんだ。どっかの貴族様だってのか?」
「当たり。俺の名前はリヒト・パーマーだけど、本当の名前はリヒト・フォン・フリューゲルなんだ。ベルカのフリューゲルって言えば、なんだか分かるでしょ」
「…………マジで?」
ベルカ空軍第3航空師団第23戦闘飛行隊フリューゲル。
F-22を駆りオーシアとユークトバニアの二大大国を押し返した英雄部隊。
ビッグネームの登場に各々は唖然とし、カウントに至っては目を見開いて絶句していた。
事情を知るワイズマン、あとイェーガーは変わらずだった。
ロングキャスター? 驚いてるけど食べる手が止まらないです。
「もしかしてイェーガーは知ってた感じ?」
「ワイズマンに言われてな。それを含めて俺はお前のサポート役だったんだ」
イェーガーはワイズマンとの付き合いも長い古株だ。これはハーリング殺しの件も知ってる感じだな。
「俺はそのフリューゲルの末っ子にしてただ一人の生き残りだ。家族は俺が1歳の誕生日の時ベルカの核で消滅。残った父親、元フリューゲル隊隊長だったアレクセイは国境なき世界のルーメン襲撃で殺された。その時俺は叔父夫婦に預けられたんだ。いつかフリューゲル家を再興する為の御旗として隠されてな」
「誕生日がバルトライヒの悪夢と同じ日で、しかもその日家族が消滅。残った父親も殺されて、か」
「トリガー。ジョシュア・ブリストーの名前出す時の顔、怖かったよなぁ」
え、マジ? そんな顔に出てた? なんか申し訳ない。
そのアレクセイを殺したのもジョシュアらしいって言ったらみんなウゲーって顔した。
いつか奴の玉を蹴り砕くのが野望って言ったら更に引かれた。何故だ。
「フリューゲル家最後の生き残り。それがなんでベルカじゃなくてオーシア空軍に入ってんだ? フリューゲルの末裔なら大事にされてたんじゃねえのかよ」
「それが酷いものでさ。俺の引き取った叔父夫婦が相当俺の親を嫌ってたらしくて。俺を重宝するどころか奴隷扱いの小間使いにこき下ろしてな。時期が来たら家の者が回収しにきて財産の一部を貰う手筈だったらしいけど。一般常識も教えない飼い殺しで金貰えてたかどうか怪しいものだね」
「お前も大変だったんだな、トリガー」
「フーシェンも中々ハードそうだね」
クレメンスの野郎がスラム育ちとか言ってたな。
気にならないと言ったら嘘になるが、今は置いておこう。
「頬の傷はその時の虐待で?」
「いや。これは環太平洋戦争のあとクラスの女子に『パパとママの仇!』ってナイフで斬りつけられた時の傷。あれはヤバかった、クラスは阿鼻叫喚だったよ」
「だからなんでお前はそんな何でもないみたいなテンションなんだよ」
「この傷のおかげで多少嘗められなくなったから……結果オーライかなって」
まあ多少は多少なんですけどね! 普通に嘗められまくりでしたよ!
444でダル絡みしてくる奴の股間を何回蹴り上げたことか! 一時期あだ名がボールクラッシャーだったよ。
「トリガーって子犬みたいな顔してるもんな」
「分かる。俺もすれ違う時たまにお菓子を渡してる」
「ロングキャスターがお菓子を……」
「まあ実際は狼だけどな。いやこの場合は猟犬か?」
どうだかなぁ。やっと猟犬と言われても遜色ない程度には強くなったし有名にはなれたなぁ。
「その後何を思ったのか家から逃げ出したんだ。小間使いに嫌気が差したのか、はたまたこのままじゃ殺されるとでも思ったのか。寒空の中逃げ出したけどぶっ倒れた。その時死ぬかもと思ったんだが、神様……いや妖精は俺が救いの手を差し伸べたんだ」
「妖精……ラリー・フォルクか」
カウントの言葉に頷いてみせる。
ラリー・フォルク。軍人なら誰でも知ってるネームドの傭兵。
主翼を片方なくしたまま帰還した、ハーフレッドウィングの英雄……そして国境なき世界で核のスイッチを押した男。
「国境なき世界ってのはそこか。しかし片羽の妖精とはな……」
「いや待て。トリガーの名字はパーマーだったよな? もしかして、アンソニー・パーマーとも関係が?」
「よく気付いたなスカルド。ラリーに拾われたあとマルセラさん……サピンのマルセラ・バスケスが働くバーに住み込みながら居候先探してアンソニーのとこに落ち着いたんだ」
「国境なき世界幹部3人と顔見知り……しかもその一人と住んでた……」
「わーお……わーお」
マズい、話せば話すほどカウントら4人が引いている。ランツァなんかわーお2回言ったぞ。
ロングキャスターは5個目突入?
「言っとくけど。クレメンスが言ってたみたいに何も吹き込まれてないからな? むしろ3人はすげー後悔してて、自分たちみたいになるなって耳にタコが出来るぐらい聞かされたよ」
「ほんとかねえ」
「カウントくん何故信じないの」
「だってお前ぶっ飛んでるし」
「失礼な。俺が学んだのはパイロットで一番重要なのは恐怖を我が物とすることみたいな感じよ」
「「「納得した」」」
おい何にだ。
少なくとも良い感じの物じゃないのは理解出来たぞ。
「そんな紆余曲折あってオーシアの空軍学校に入って、周りから大馬鹿野郎と言われながらも正規軍だったカウントを模擬戦でぶっ飛ばして「オイコラ」正規軍としてフォートグレイス基地所属になった直後エルジアが戦争起こしてスクランブルしたのよ」
「それはまた不運な」
「だがこいつ初戦闘でネームド落としてるぞ」
あの機銃モンスターはほんとヤバかったな。
まだ生きてるのかなあいつ。
「んで、俺の25回目の誕生日の日。軌道エレベーターに居るハーリング元大統領救出任務が来たんだ。要点は少し端折るけど。大統領見つけてその場にあったエルジア軍のヘリを奪取したんだけどアーセナルバードのUAVの物量を前に流石に守りきれなくて、大統領が乗ったオスプレイが被弾。酷いもんだった。コクピットのガラスはボロボロ。操縦していた護衛は死亡して、ハーリングが生きていたとしても絶望的だった」
その時だ。
オスプレイの軌道が安定し、軌道エレベーターに踵を返したのは。
「そっからはパニック。助ける対象が逃げるのを放棄したようにしか見えず。どう考えてもハーリング元大統領が操縦したにしては不気味なほど安定していた。そう、綺麗すぎたんだ。まるで最初から決められたみたいに」
「無人機のプログラムか?」
「分からない。だけどそれが一番現実的と上層部もみてる。ハーリング氏が逃げた先にあった、ちょうど良く人がいない。そしてエンジンがかかってるオスプレイ………最大の問題は、俺がそれに乗って脱出するよう提案したって話だけど」
「一気に黒幕説が出て来たなオイ」
我ながらそう思う。
真っ当な査問会議でもそこを突っ込まれたら知らぬ存ぜぬを返すしかない。
まさか本当に敵の罠だとは思わなかった。マジでしてやられた。
「その後も死に物狂いで守ったさ。周りを見る暇もなく無人機を落とし続けた。不意に無人機がオスプレイに近づいた。誰も助けに行けない、助けれるのは俺のF-16Cだけ。たった一つ残ったミサイルを握りしめて助けに行って、撃ったミサイルは無人機を粉々にした。近すぎたから旋回して直掩に回ろうとした、機銃だけでも戦い抜いてみせるってな……その時だ」
ハーリングのオスプレイが爆散したのは。
今でも鮮明に思い出す。身体の体温が全て消え失せるような感覚。
生身で空に放り投げ出されたような変な浮遊感。
そこに熱を突き刺したのは、通信越しの誰かも分からない声
「メイジ2が撃った。味方の誤射だ、俺は見た」
「………」
「瞬くまに俺が犯人に仕立て上げられた。誰もハーリングが撃たれた瞬間を見ていない。俺の上官も、普段あげない大声で何も分からない! って言ってな」
「あのクラウンがか」
そのままズルズルと状況は流され。フォートグレイス基地はIUN本部から来た奴らに全てのデータが回収、抹消された。
「査問会議の為にオーレッドに連れてかれたんだけどさ。それがもう茶番劇も良いところだったよ」
英雄ハーリングが死んだのに誰も悲しむ者はなく。F-16Cに乗っていたフライトレコーダーとブラックボックスは壊れてたときた。
口を割らない俺に拷問をしたけど効果はなし。結果的に痺れを切らした上層部は懲罰部隊に島流しという形で刑を執行。
そしてその時に居たのがクレメンスの上官であるシェパードだった。
「なんだよそれ! そんなふざけた事が通っていいのかよ!」
「なんてこった……」
「オーシアの野郎、またやらかしやがったのか」
「…………」
フーシェンは怒り、ランツァは声を絞り出すことしか出来ず、スカルドは呆れ果て、カウントに至っては口を閉ざした。
「懲罰部隊。ザップランド基地の雰囲気にギスついたものを感じてたが、やっぱただの基地じゃなかったんだな」
「トリガーはハーリング殺しの汚名を被らされて、か……」
「あの時はほんと人生のどん底だったなぁ」
「よく壊れなかったもんだ。テロリスト落ちしてもおかしくないぞ」
良く言われますわー。
不屈のレベルが高いであります。
「さーてお待たせしましたメインディッシュだ」
「既に腹いっぱいなんだが?」
「これから話す中で一番ヤバい情報だからな。その為に契約書を書いてもらったといっていい」
ゴクリと揃って喉を鳴らす。
俺もこれを話すのは初めてだから少し緊張する。最後のハンバーガーを放り込んで水で押し流し、緊張を解す……
「これはニューアローズ基地での査問会議のやり直しの時に判明したんだがな。当時ハーリングを殺した奴の証拠が出て来たんだ」
「それは、初耳だな」
「俺も寝耳に水だった。俺のF-16Cのデータは消失されたけど、AWACSのデータは消去されてなかったんだ」
何故AWACSのデータ残っていたのか、真相は分からない。
AWACSのが消えればトリガーがハーリングの後ろ居たという立証が出来なくなるからか。はたまた本当に詳しく精査しなかっただけか……
「空域に居たIUNの味方機は10機、増援は見込めないなか必死に戦っていた、広域レーダーなんて見る暇もなくてとにかく必死に。敵はそこをついてきた。西から1機、居るはずのない11番目の味方機が現れたんだ。そいつはひっそりと俺がハーリングの後ろにつくのを待ち、ハーリングを殺した」
「待て。味方機が撃ったってことは、やはりオーシアが主犯か?」
「オーシアは間違いなく関わってるが、そうとも言えない。ハーリングを撃った後、そいつのIFFはエルジアの識別に変わったからな」
「「「!?」」」
驚くよね。
レーダーもなにもない昔とは違って現代戦闘に置いてIFFというものは絶対にして不滅のシステム。
衛星経由で信頼性が高く、全てにおいて指標である不変のルール。
これには普段温厚なロングキャスターもブチギレた。
「IFFの偽装だと! そんな破廉恥な物が存在するのか!?」
「ありかよそんなの」
「それがありになっちまった。俺は懲罰部隊の頃、ワイアポロでオーシアの識別に偽装されたF/A-18Fの3個小隊に襲われた。最初は俺を始末しに来た督戦隊かと思ったんだけど、そのホーネットは無人機だった」
「IFFを誤魔化す無人機の大群」
「悪夢だな……」
「あの時はF-16CやAWACSのレーダーでもミサイルの反応は俺が撃った一発だけだった。コウモリが使ったステルスミサイル、あれに類似した物で殺されたんだと思う。敵は確実に俺に罪をなすりつけてハーリングを殺した」
「そんな、戦争の根底がひっくり返されるぞ……」
「そもそもそんな事が可能なのか? IFFは衛星経由で管理されてるから不可能だろ」
実際は出来るはずがないというのが本音だ。
ワイアポロのホーネット。あれは無人機だったが、オーシアの督戦隊ではなかったという証明がない。
だが軌道エレベーターのあれは敵味方が切り替わった。
そんななか、俺たちの安楽椅子探偵が動いた。
「いえ、それが可能かもしれません」
「クイズ屋?」
「すいません、最後まで黙って聞こうと思ってたんですが」
「聞かせてくれデイビッド」
「はい。エルジアは開戦の少し前。オーシア、並びにユージア諸国所有の偵察衛星をハッキングし、手中に収めています」
「ああ。確かフォートグレイスでもそういう情報はあったな。確定ではなかったけど」
「衛星がハッキングされたからIFFを弄れた? そんな簡単なものではないだろう」
「その通り。本来IFFは皆さんが言った通り各国の統合戦略システムが管理し、衛星経由で各軍隊に情報が発信させられます。衛星がハックされても、大本のシステムを解析することは不可能です……だからエルジアはアプローチを変えました。では何をしたのでしょう?」
こちらに疑問符。クイズを投げかけてきたデイビッドを前に茶化すことも苦言することもなく知恵を絞り出す。
だが分からない。固定観念が凝り固まってるということもあり、それを可能にする発想が俺等にはなかった。
デイビッドが答えを出そうとした時、ワイズマンが解答を出した。
「統合戦略システムに干渉は出来ない。システムから衛星に向けられる情報も同様………ではハッキングした衛星から各軍隊のIFFを誤認させた、というのはどうだろう」
「なっ!」
「正解です中佐。エルジアは衛星にフィルターを通して発信されたIFFの情報を改竄したと情報部は考えています」
エルジアがIFFを偽装していたことは理解していても。こうもメカニズムがハッキリすると引くってもの……
「それ、発案したのグランダー・IGだったりしない?」
「えっと……」
「別に濁さなくていいぞ。俺グランダー・IG大嫌いだし、潰れるなら潰してほしいし」
「……ええ。過去にそういう構想があった程度ですが、上はノースオーシア・グランダー・IGを最有力と見て調査をしています」
意外とそういう気配りできるのねデイビッド。
隠すの苦手そうなのもまた。
「まだ秘匿段階ですが。奪取された衛星破壊作戦も視野に入れてるとのことです」
「奪われたとはいえ自国の衛星を破壊か。流石大国オーシアは豪勢だな」
「だが野放しには出来ない。追い詰められたエルジアがIFF改竄を武器にヤケを起こされては堪らん」
追い詰められて流星群(物理)しようとした国だからな。メビウス1達が止めなかったら第二次ユリシーズ事変で難民倍プッシュだった。
しかも主流は若手の急進派将校。追い詰められたバカは怖い。
「話が大分それたが、その後は?」
「懲罰部隊で任務こなしながらインシー渓谷でお前たちを助けて、また別の任務をこなした。無人機のレーダー網の目処が立ったであろう後は囚人全員に恩赦を貰ってボルゴテレストの任務終わりに此処に来たってわけ」
最後はやけにあっさりと。
メインディッシュのあとはお通しだからね。
洒落たデザートがないのは勘弁してくれ。
「まあこんなもんかな。蓋を開ければやましいことはない健全なオーシア国民ベルカ人って訳……だからこれからもいつも通りで接してくれたら助かる」
「それについては問題ないが」
「ほんと色々考えさせられるというか」
「頭が纏まらねえ」
「フリューゲルかぁ……」
ああみんな俺のヒストリー展開されて頭パンクしちまってる。
うん分かるよ。属性てんこ盛りだよね。
家柄が凄いけど滅亡してて国際テロリスト幹部と知り合いで軍属半年以下の元大統領容疑者化け物エースパイロット。なかなか居ないよこんな主人公。
「ちょっと待て。懲罰部隊ってことはカウントもそうなのか?」
話を締めようと思ったらフーシェンが突いちゃ行けないとこ突いてきた!
やべー、自分の話するのに夢中でそっち方面失念してた。
なんとかフォローしなければ。別にカウントの話題はそこまで重要じゃないし……
「俺は詐欺の罪でぶちこまれた」
「おいカウント!?」
と思ったら本人自らカミングアウト!
おいほんとどうした伯爵。スペア時代のお前何処行った!?
「んだよ。遅かれ早かれバレるかもしれねえ。なら此処が一番良いタイミングだろうよ」
この伊達男! こっちがフォローしようとしたのに態々溝を作るようなことしなくていいだろうが!
「詐欺……か。うん、お前ならやりそうだって説得力がある」
「なんか釈明があるなら聞くぞ」
「語るような大層なもんはねえよ。トリガーに負けた後やさぐれて酔い潰れた挙句財布をすられ。友人だと思ってた奴と詐欺やって呆気なく捕まったのさ」
「大馬鹿野郎だな」
「いーや馬鹿野郎さ。この部隊では大馬鹿野郎は褒め言葉だからな」
なんてことない、自慢話でもするみたいに軽く語る。
スペア隊の時のカウントが今のコイツを見たらどんな顔をするだろう。
なんとかフォローしたいが。
こういう時どんなに感じにすればいいんだ。カウントが暴露するなんて欠片も思ってなかったから想定してなかった。
一人勝手に悩むなか、ワイズマンが助け船を出してくれた。
「こいつは確かに食えないやつだ。軍人としての誇りを忘れて罪を犯した愚か者だ。だがそれを加味した上で、こいつには価値があると踏んだ」
「へえ、賢人様のお眼鏡に叶うことなんかした覚えはないがな」
「インシー渓谷で戻ってきたSu-33はお前だろう。それが理由では不服かな?」
自白した時とは違い思いっきり苦い顔。
あの時なんでカウントが戻ってきたかは分からない。俺にメイジ2と言われて意地になって戻ってきたのか。少なくともカウントのおかげでタブロイドが生き延びる事が出来た。
そこには感謝しないといけないな。
……なんかフーシェンがジトっとした目で見てる。
うーん、色々頑張れカウント。
ーーー◇ーーー
「今回の作戦で重要な情報が手に入りました」
俺と、ついでにカウントのカミングアウトが終わると同時に丁度デイビッドのデータ整理も終了。
何故アリコーンはエルジア側に合流するどころか妨害行動に出た挙句、秘密裏に補給を行ったのか。
そして何を手に入れたのかについてだ。
「今回アリコーンは遠方から散弾弾頭を撃ってきましたが。敵の遠距離対空攻撃の砲弾はディプレスト軌道だった。これを見て。推定されるレールガンの出力エネルギーは、最低でも500メガジュール。これがミニマムエナジー軌道で発射されれば、3000キロは飛ぶ」
「ちょっと専門用語ばっかで解らないけど。揚陸艦隊、パフィンを撃ったレールガンでそこまで飛ばせるのか? 結構小さかったように見えたけど」
「その通り。パフィンを撃ったレールガンはアリコーンの主砲ですが本命ではない。彼らは主砲以外に強力なレールキャノンを隠し持っています」
画面に表示されたのは、なんとカタパルトが迫り出して巨大なレールガンに変貌する様だった。
なんだこのビックリドッキリメカ。
「まるでストーンヘンジだぜ」
「動くストーンヘンジか……」
「成る程、そういうことか」
「ワイズマン?」
「何故クレメンス、上層部がアリコーンの破壊ではなく鹵獲にこだわったのか。上層部はアリコーンをアーセナルバードにぶつけるつもりだったんだろう」
確かに。現存するストーンヘンジが使用不能になった今。アーセナルバードのAPSを突破するための手札が居る。
それが動くストーンヘンジ、アリコーンだったという訳だ。
俺を殺すだけなら、別にアリコーンの有無は関係なかっただろうしね。
「それと……これを。アンカーヘッドでのアリコーンの停泊時間は約10分。SLBMを積める時間じゃない。積んだのはもっと小さい」
「小さい?」
「小さい……でも強力な兵器とは」
「……戦術核兵器」
「おしい! 正解は戦術核砲弾」
「核砲弾!?」
「馬鹿な!」
「おいおい、正解で良いじゃねえか」
「いや、今のは砲弾ってのがミソだ」
「静かに!」
核という浮世離れしたワードが出て浮足立った一同をイェーガーの一喝が鎮めた。
だが俺は目を見開いたまま固まり、頭の中で思考が高速で組み上がっていた。
核兵器、いや核砲弾。そして3000キロという法外な遠距離射撃。
マーカードローンで的確に狙えるその性能。
それが導く結果は……
「大陸の東海岸にある基地が狙われる」
「目標はオーシアの首都、オーレッドです」
「おいおい、そんなことしたら核戦争だぜ」
オーレッド?
オーレッド……オーレッドには、アンソニーが居る……
「トリガー、大丈夫か?」
「あ、ああ。大丈夫だ……大丈夫……続けてデイビッド」
「はい。皆さんに聞きます。核兵器を保有する目的は抑止力の意味合いが大きく占めます。では、核抑止が成立しない代表的な状況とは?」
「おいクイズ野郎いい加減に……」
「テロリストによる核の使用。暴力装置が行き着く、徹底的な破壊行使……マティアス・トーレスが掲げるテーマと共通する」
「正解です、パーマー中尉」
国境なき世界。灰色の男たち。
どちらも核兵器を使い、世界機能を麻痺される為に膨大な破壊力を振りかざそうとしていた。
マティアス・トーレスもその一人だと? オーレッドを破壊し、戦争を強制的に終わらせようと?
「だが俺たちが追ってるのはエルジアの潜水艦だ。テロリストじゃねえ」
「いや、分析官は正しい。司令部によると、エルジアは『アリコーンが反乱を起こした』と言ってきたらしい。『当該潜水艦の行動とその結果にエルジア軍は責任を持たない』だそうだ」
「くそったれ! お偉方はどいつもこいつも!!」
「やはり敵は、オーシアの首都オーレッドに核を撃ち込む気だ」
「……分析官問題だ。俺たちの敵は一体何者だ?」
「正解は『テロリスト』か『非正規軍』です。でも僕はこう呼んでます」
今まで世界に跋扈してきた二大テロリストと同じく核を掲げる者たち。
振り下ろされれば世界に風穴を開ける、その正体は……
「『絶対に止めなくてはいけない敵』」
「……正解だ」
ーーー◇ーーー
「あーもう出ろよ早く出ろよ。仕事終わってないのか? 早く出ろよ……」
重苦しい空気の中、俺はなんてことない風にブリーフィング室を出て人気の無い屋上で電話をかけた。
発信先は勿論アンソニーだ。
たった数秒しか経ってないのに数分待たされる錯覚を覚えながらめげずにコールする。
「…………もしもし」
「もしもし! アンソニー無事!?」
「ん? 無事もなにもオーレッドは平和そのものだ。どうしたんだいきなり」
「あ、えーと、いや。なかなか電話出なかったから。仕事中だった?」
「いや今日は休みだ。風呂に入っててな」
「そうか……」
溜まった息を吐き出す。
とりあえずよかった。本当に……
「なんか騒がしい?」
「ああ。最近オーレッドでデモ活動が始まっててな。対岸の火事故の暇を持て余した市民運動さ」
アンソニーはオーレッドに居る。
依然として変わらず保険会社に勤めながら変わり映えもしない日々を送っている。
そう、今は……
「……」
「どうしたリヒト」
「アンソニー。何も聞かずにオーレッドを離れてくれ。出来るだけ早く、出来るだけ遠くに。久々にマルセラさんのとこに顔を出せばいいと思う。オーレッドに引きこもってばっかってのもあれだし……」
「なんだなんだ。ここに核でも降るっていうのか?」
「っ……そんなわけないじゃん。ただオーレッドでキナ臭いことが起きてるって聞いてさ……」
我ながら下手な嘘だ。
だが核が来るなんて馬鹿正直に言えるわけがない。
究極的な話、オーレッドが本当に核に焼かれることさえ分からない。
だけどあのイカレ野郎が核を持った。焼かれる可能性があるなら……
「悪いが俺は離れられない。仕事も立て込んでるしな」
「いや、だけど」
「それに最近監視の目が増えてきてな。下手に動くとお前にも迷惑がかかるだろ」
「そんなのこっちでなんとかする! 俺のことはどうでもいいから早くオーレッドから離れてくれ!!」
「……核が来るのか」
「っ!」
確信を持った声が電話越しに鼓膜を震わす。
息を呑んだ音が通った。
アンソニーは分かっている。
「仮に……仮にそうだとしたら、なんで離れないんだ。死ぬかもしれないんだぞ」
「なおさらさ。俺たちは核を使った前科がある。そんな俺らが核が来るのを分かって離れるなんて出来はしない。関与してると疑われる」
「アンソニーは無関係だ」
「信じてくれるのはお前だけさ。それにな、もし俺が核の炎で焼かれるなら。それは天罰ってものだ」
「なにらしくないこと言ってるんだよ! お願いだ、オーレッドから離れてくれ! 頼むアンソニー!」
「駄目だ」
「アンソニー!!」
「駄目なんだリヒト」
「……くっ!」
諦めでもない。
自棄になってもない。
アンソニーの意思は固かった。
それが分からないほど、俺はアンソニーを理解してないつもりはない。
「どうしても駄目?」
「ああ」
「もう何年たったと思ってるんだ」
「それでもさ」
「…………そんなことはさせない」
「そうか。なら安心だな」
プツ……ツー……ツー……ツー。
多分。いや確実に。マルセラさんやラリーでも同じ結果だった。
いや、電話する前からアンソニーは動かないと分かっていた。
だけど無理だろ。何もしないなんて、何も伝えないなんて。
アンソニーは俺の家族だ。それ以上でもそれ以下でもない。
「電話は終わったか」
「……いつから居たんだ伯爵」
「お前声デカいんだよ。ほれ」
差し出されたココアを空けて一気に飲み干す。
甘くコクのある液体が身体に染み渡るように溶け込んでいく。
「落ち着いたか」
「……少しは」
「そりゃ結構だ……いてて」
「ん? 背中どうした?」
「フーシェンに背中打ち抜かれた。ビストロでの宣言通りに」
ああなんか言ってたな。
ご愁傷さまでございます。
「しっかしまさかお前があのフリューゲルだったとは。とんだジョーカー隠してたな」
「驚いた?」
「そらなぁ。どうだ、家柄アピールしてた俺はさぞ滑稽に映ってただろ」
「うん。正直むかついてたから白状して鼻とプライドベキベキにしてやろうと思ってた」
「少しは濁せよ」
だってウザかったのは事実ですし。お家アピールしてた時ろくに働いてなかったですし。
「お前が化け物なのも納得だなって思ったよ。ベルカ最強のフリューゲル隊の血を受け継いでいたらよ」
「ショック受けてる感じ?」
「うるせー」
「アハハ。素質だけはあったのかもな。父さんも凄い目が良かったらしいし。ていっても直接的な繋がりはないんだ。知ってるのは人に聞いたり写真やテレビに映ってる父のことだけ。受け継いだのはTACネームぐらいかな」
アブツーク。
ベルカ語で引き金という意味を。故郷であるベルカで引き継いだ。
あの時からだ。俺の中の飛ぶ理由が確立されたのは。
「F-22Aを選んだのはやっぱ父親が乗ってたからか?」
「それだけじゃないけど、半分はそう。でもちゃんと性能で選んだよ。うちの部隊、対地が薄いから」
F-15Cに無誘導爆弾をくくりつけれる程度。
F-15 S/MTDはFAEBを持ってるが数は持てない。
F-22AのXSDBに関しては大変使いやすかった。
「前から聞きたかったけど。カウントってどんな家柄なのさ。てか名前も聞いてねえな。そろそろ教えてくれてもいいだろ」
「少し調べたら出てくるだろ」
「めんどい」
「お前な……」
カウントがどデカい家柄だろうが実は平民だろうが個人的にどうでもいいし。
いまは立派に2番機してくれてる。パイロットの技量に家柄なんて関係ない。
「仕方ねえ、心して聞け。シュールズベリー、ミシェル・シュールズベリーだ」
「ミシェル……なんか王子様みたい……シュールズベリー? いまシュールズベリーって言った?」
「言ったが?」
シュールズベリー……あれどっかで聞いたことあるな……シュールズベリー……あっ。
「ねえ。親戚にミハエルって奴居る?」
「それは弟だな。なんだ知り合いか?」
「訓練校の同期だよ……」
「ああ……」
マジかよ。もしかしたらそうかもって思わないことはなかったがマジかよ。
カウントも気の毒にって顔してやがるし。
「その顔を見るに仲良しって訳じゃねえみてえだな」
「ああ。我々は選ばれた血統なのだから共に歩むべきだって言い寄ってきて、丁重にお断りしたら一方的に目の敵」
「あいつどうだったよ」
「お前から腕前と自重を引いて虚栄心をぶち込んだような奴だった。大学主席って言ってたけど、ぶっちゃけコネだなって」
そういやカウントが前に親が国防議員って言ってたな。
世間って狭いな……
「俺の家系はオーシアの古い有力貴族でな。それなりにデカい名声を持っていたらしい。なんでも昔の王族の家系だったとかなんとか。知名度はフリューゲルに負けるけどな」
「こっちは消滅してんだ。そっちは残ってるからマシだろ」
「長く続いてるだけさ。威張れるようなもんじゃない」
「散々家柄アピしてたのに?」
「それしかなかったんだよ」
嘘つけ。真面目に飛んでたら普通にエースの成績残してたのにサボタージュしてたからだ。
それも込みで家柄しか取り柄ないと思ってたんかな。
「はぁ……」
「そんな落ち込まんでも」
「ちげーよ。俺の親父が謀略に関わってたんじゃねえかなって考えちまった」
「それはまたなんで」
「俺や弟はガッツリ親父似でな。家柄とか出世欲とか自己保身ばっかな男だった」
「それだけでか? 考えすぎだろ」
「環太平洋戦争の時。ハーリングが国に戻ったと聞いた時の親父、青ざめてた」
あの時オーシアは光明がを見た。
その光を見て青ざめたということは……
「まだガキの時だ。見間違いかもしれねえ」
「もしそうだったらどうするんだ」
「どうもしねえ、もう勘当された身だ。勘当された俺を見切って、今ごろ弟を猫可愛がりして色んなコネを総動員してるだろうさ」
てことは戦場に出てるんだろうか。
アレが戦場の空気に呑まれてないとはどうしても思えない。
「お前はなんでラリー・フォルクに憧れてんだ?」
「別に憧れてないけど」
「は? だってコウモリに引き合いに出されてカチキレててただろ」
「ラリーは命の恩人だけど。ラリーみたいになろうとは思ってないよ。そりゃ武勲に関しては凄いと思ってるし、奴らに引き合いに出されたらブチギレる程度には尊敬してる。最初は憧れてたけどでも3人とも自分は反面教師にしろって五月蝿くてさ」
テロリスト落ちした自分たちのようになるなと口酸っぱく言ってくれる気持ちは分かる。
ラリーに傭兵にはなるな。自分たちとは違う真っ当な軍人になれとそれはもうしつこく言ってくれましたわ。
それに、憧れるには3人とも身近過ぎた。
「3人は核の恐ろしさを教えてくれた。核は信念も、覚悟も、戦争も、命も、全てをゼロにしてしまう悪魔の兵器だと。もう二度とバルトライヒの悪夢を起こしてはならない、二度と核の力が振るわれてはならないって。だから止めなきゃならない。もしマティアス・トーレスが核を使うなら、使われる前にぶっつぶす」
それが軍人として、ファイターパイロットの力を振るうものの義務であり責務だと。
「お前を見れば見るほど、パイロットに家柄なんて
関係ねえって痛感するよ」
「伯爵も随分な変わりようで」
「フン。目の前で見せられ続けりゃ、考えも変わるさ」
ーーー◇ーーー
アンカーヘッド攻略から2日後。
ついにアリコーン討伐作戦の目処が立った。
エルジアからはあれ以来何の便りも来てないが、最低限の義務は果たしてくれたようだ。
「エルジア軍がアリコーンのスペックをやっと一部よこしました。基本スペックは情報部の予想通りでした。興味深いのは……これこれ」
データのアリコーンに備えられた飛行甲板が立ち上がり、左右に割れた。それは正しく砲門。
デイビッドの推測通りだ。
「敵は主砲以外に128口径600ミリレールキャノンを装備しています。砲身は70メートルを超えます! そして射程3000キロ、アンカーヘッド港への砲撃から計算した数値と一致します」
「うちの情報部は優秀だな、いやデイビッドか?」
「僕だけではないですけどね。彼らが入手したと思われるミニ・ニュークですが、核出力1キロトン。弾着点より半径400メートル以内の敵を破壊できます。直接の犠牲者は数万人規模です」
サイズがサイズだからか、ベルカが使ったV1ミサイルより小型で威力も少ない。
「俺は口にすべきこととそうでないことをわきまえてる人間だ。トリガーの手前もあるからな」
「なら俺が答えるよスカルド。あのイカレ艦長、1000万人殺す武器とか抜かしてなかったか? にしては被害が少な過ぎる」
「流石です。この演説を覚えていますか?」
『我が艦はこの醜怪な戦争をエレガントかつ、最終的に終わらせる能力を持っている。この先、我々が奪う命の数に、世界は驚愕するだろう。そして自ら武器を置くだろう……1000万人を殺すはずだった武器を』
改めて聞いてみると、なんとも聞き入るような声と内容、いやカリスマか。
だがその奥にあるギラついた何かを隠せていない。
「1000万人を殺すはずだった武器……この言葉のイメージと、想定される被害との間にはギャップがあります」
「さてと、ここで問題だぁ!」
「あはは。残念ですが、クイズはお休みです。敵は9月19日に核を撃ち込みます」
「明日じゃないか!」
「おい、なぜ分かる?」
「その日が大陸戦争の終戦記念日だからです。現在オーレッドでは反戦デモと戦勝デモの両方が盛り上がってます。参加者は100万人規模、記念日当日はもっと増えます」
アンソニーも言ってたな、最近デモ活動が活発化してるって……
この日の為の下火か?
「ただし……この核砲弾は威力が小さい彼らが望む結果を得るには針の穴に糸を通さなきゃいけない」
「終末誘導が必要だ」
「それ、GPSも使えないのにどうするつもりなのか……」
「オーレッドに直接UAVを飛ばすわけにはいかないもんな」
「うだうだ考えてる場合か。潜水艦さえ沈めちまえば、問題ねえ」
「短絡的ですが効果的です」
「短絡だと……」
「褒めてる、これは褒めてるからなフーシェン。ドードードードー」
「私は馬か何かか!?」
また背中打ち抜かれるぞカウント。
だがフーシェンの言う通りだ。敵がどれほど強力な武器を持とうと、撃つ前に水底に沈めちまえば万事解決だ。
「では今度はこれを。アリコーンの予想進路です。アンカーヘッド沖合を出発し、9月19日までにオーレッドを射程に入れなくてはならない。オーシアとその同盟国の音響監視システムならびに、艦船による探知を避ける。かつ最大潜航深度を踏まえる。ルートはこれしかない」
情報部の本領発揮。
示されたポイントは軌道エレベーターの向こう側。ユージア大陸とオーシア大陸の丁度真ん中らへん。
「アリコーンはアザリア海山列に沿って進み、PX80443という、味気ない名前の海域に到着します。この海域は海底山脈と周辺の
「よく割り出せたな」
「ええ。でもこの海域を抜けると、ピアニー海峡です。彼らは最大潜航深度600メートルまで潜る、ここまで潜られれば、追跡はできません」
正に紙一重。命運は奴らがピアニー海峡を抜けるまでの勝負だ。
「それと、悪いニュースがもう一つ、エルジアから持ち出された核砲弾は2発と判明しています」
「まさか、エルジア首都ファーバンティにも撃ち込むって言うんじゃないだろうな!?」
カウントの問いにデイビッドは沈黙で答えた。
オーレッドを破壊すれば戦争が終わる。
戦争が終わるなら、反対側のファーバンティを撃つ利点はない。彼らがエルジア軍だったらという想定ならば。
「エルジア政府はこの事を理解しているのか?」
「上層部の命令で、可能性が大いにあること。そしてアリコーン討伐作戦を秘密裏に送信しました。ですが返答は来ていません。増援は期待できないでしょう」
「半端なのが来て敵になられても困るからな」
オーレッドがやられたら次は自国の首都だってのに。
オーレッドが落ちれば棚ぼただとでも考えてるんだろうか。お気楽ここに極まれりだ。
「よし、作戦内容を説明する。よく聞け 。俺たちの任務は哨戒機と協力してアリコーンを発見することだ。
まず第1段階、複数の哨戒機がソノブイをばらまき『ソノブイ・バリアー』を形成する 。第2段階、そこから得た情報を解析しアリコーンがいる可能性のある場所を絞る。解析結果はデータリンクされ、レーダー情報に重ねて表示される。
最終段階はトリガー、お前に潜水艦を探してもらう。特殊なMAD:磁気探知機が1基だけ用意できた。これをトリガーの機体に搭載する。頼んだぞ」
「了解」
「探査範囲を検知次第、アリコーンがいる可能性のある領域を飛び回れ。真下に潜水艦がいれば、MADが見つけてくれる。それとレーダーには海図も表示するから活用しろ 。アリコーンを発見できたら、味方艦隊がアスロックを一斉発射、撃沈だ」
「外した場合は?」
「作戦に参加する艦隊は4隻です。2発目に賭ける余力はありません。仮に、敵のバラストタンクが破損すればアリコーンは深く侵攻出来ない。その後は航空機による直接攻撃になります」
とんでもない博打打ち。ハイローラーが喜びそうだ。
そしてシンファクシ級を超えたアリコーン。記載されたスペックを見るに、単艦でもとんでもない対空能力を持ってる。
何が潜水空母だ、潜水戦艦の間違いだろこれは。
「メンバーはどうする、ワイズマン」
「今回は俺以外、全機出撃だ」
「わーお!」
「本当なら俺も行きたいが。今回の作戦は高度なオペレートが必要になる。指揮をする者が必要だ」
「クレメンスの野郎が居なくなって本当に良かった」
まっっっったくだ。
露程役に立たない五月蝿いガヤが居て成功する作戦ではない。
「ファーバンティ攻略を控えている今、こちらが出せる追加戦力は別基地のサラマンダー4機小隊のみです。あの化け物を相手取るには少ないかもしれない、ですがやるしかありません。核の炎を再び灯さないためにもアリコーンは必ず撃沈する。たとえそれがどれだけ困難な事だとしても……」
「そいつは問題ねえ。ウォードッグ隊はたった4機でシンファクシ級2隻を落としたんだ。そして、こっちにはウォードッグ顔負けなメビウス1の再来様が居る」
「ああ。奴にもう一度、死神の恐怖を叩きつけてやる!」
その為なら、喜んで再来の名を継ごうじゃないか。
「さあ! とっととその重いケツを椅子から引っ剥がせ! インテリ気取りの狂人を、海の藻屑に変えてやれ!」
「「ウィルコ!!」」
ーーー◇ーーー
「おっ、トリガー坊主! ラプターはフルチューン完了! 限界までカリカリに仕上げたぜ!」
「短いなかありがとうおやっさん!」
「おうともさ! あと、こっちもちゃんと仕上げたぜ」
「……うん」
みなに自身の出生を話し、諸々の決着を付けられた。そんな俺はおやっさんに一つ依頼を取り付けていたのだった。
戦闘機の追加塗装。
いま俺のF-22A ラプターの主翼と尾翼は空と同じ色が塗られていた。
そう、フリューゲル隊と同じ空色の翼を。
「なんだなんだ。ご機嫌なお色直しじゃねえかトリガー」
「色々踏ん切りついたからね」
「どうだよ伯爵野郎、良い色だろ? お前のにも塗ってやろうか、可愛い可愛いショッキングピンクをよ」
「言ってろ山猿整備士。さっさと整備に戻りやがれ」
ヘッと鼻で笑ってF-15 S/MTDの元に向かうおやっさん。
仲がいいとは言えないが、こうして軽口を叩けるようになるまで修復されたのは部隊としてもありがたい。
「本体はオーシアの灰色迷彩のままか。フリューゲルカラーは白地に空色のスカイカラーだろ?」
「流石にそこまでやるのはオーシアでは許されないだろうなって思うしベルカにも図々しいと思われるだろうから。これで良いんだよ」
「また新しい敵湧きそうだ」
「その時は叩き潰すさ」
「リボンはないのか?」
「ないよ!」
俺にはリボルバー加えた狼エンブレムあるから良いんだよ!
3本線ばっか目立ってるけど、主翼にデカデカと書いてるんだからもっと目立ってもいいと思うんだけどな。
「今回もお前だけ対地装備……嫌な予感か?」
「嫌な予感」
「当たりそうだな。俺も気化爆弾に変えとくべきか」
「2発程度じゃ沈まないだろうし、ウェイトの関係もある。おそらくUAVやラファールが出てくると思うから、その時は哨戒機を守ってやれ」
「あいよ。なあ、アンソニー・パーマーは結局オーレッドから動かないんだよな」
「あれから電話はかけてないけど。今もオーレッドに居るよ」
「なら何としてでも止めねえとな。俺もソーサラー隊を尊敬してた時期があったもんだ」
「頼りにしてる」
「おう。お前も気張れよ、フリューゲル家末っ子」
「お気遣いどうも、シュールズベリー家長男どの」
もう一度空色の翼を見やる。
願掛け代わりとしてこの世に蘇った空色の翼。
「会ったこともない父さんたち。見守っててくれよ」
もう二度と核は使わせない。
ベルカ騎士の翼を背負い、海の怪物を討伐する。
今年の夏は北海道してる。どうも夜は寒い作者です。
前書きにある通り最近更新が安定している気がする!
皆様の応援のおかげです。いや本当に。
最近エースコンバット7に復帰して機体縛りプレイで乗り回しております。アリコーンも何回か鎮めたので、イメージが乗りやすいかも。
【悲報】カウント、ミハエルの兄だった。
本人はもう家柄なんてどうでもいいと、スペアの頃とは別人なぐらいトリガーの相棒枠ポジションに落ち着きました。
そしてF-22Aに空色カラーリングが追加。二次小説だからこそ出来ることですが、ずっと書きたかったです。
次回SP3、アリコーン討伐!
ぶっちゃけ艦長の味が濃すぎて料理できる気がしません!