エースコンバット7 FLIGHT REZON 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
「温めてた爆弾だ! くらえ!!」
「「FOX2!」」
「対地装備で正解だったな。ソル隊、FOX3!!」
俺のF-22AのXSDB、ソル隊のSu-30M2の4AGM。残りのミサイルが一斉にアリコーンに殺到。
三分の一が敵CIWSに阻まれながらも所々で爆発が起こった。
「総員、退艦準備!」
「排水諦めろ! 退避!」
「駆逐艦シーガル、並びにイージス艦カナリー沈没!」
「こちらグローブー。沈んではいないが火器を潰された! グローブーとロースターは救出作業に移る!」
辛うじて2隻は生き残ったが。戦力にはならない。いやむしろ良かったかもしれない。攻撃出来ると分かったらむざむざ狙われかねん。
『俺たちが海底で戦った2年間! それ以外を忍耐と呼ぶことは 俺が許さんっ!!』
「レールガンがロックオン! 速度を上げて逃げるんだトリガー!」
「うおっ、射角広いな!!?」
レーダーマップに表示されたレールガンの射線を示す赤い極太の線。それがグリングリン回りながらこちらを射らんと狙いを定めてきた。
「くそっ! レールガンなんかで撃たれたらバラバラだぜ!」
「航空機も狙ってくるぞ! のんびり飛ぶな!」
「速度を上げろ!」
『発砲!!』
「おうわっ!」
大気を震わす二発の電磁砲弾が空間を切り裂いた。
脱落機は……なし!
「主砲を対空戦闘に使ってきたぞ! 」
「各機レールガンを狙え! 一発でも当たれば終わりだ!」
「あっ、くそ! 奴らレールガン仕舞いやがった!」
「なら他の火器だ! バラストタンクを攻撃しながら対応! 敵の戦闘力を削げ!」
再度降り注ぐミサイルと爆弾の雨。だがアリコーンの対空戦兵装は正にハリネズミ。
少しでも気を抜けば蜂の巣にされるCIWS群。絶えず放たれるSAMとVLSからのミサイルは艦隊空に違わぬ誘導性能を持っている!
「アリコーンが潜航する!」
「あーくそ! 早いな潜るの!」
「UAVも出してきたぞ!」
「バラストタンクが破損してるはずです! きっとまた浮上してくる! 射出された無人機たちを墜としてください!」
「了解!」
今潜航したのは仕切り直しだ。
長時間潜航が出来ないアリコーンはアザレア海溝を潜ることが出来ない!
潜れない以上俺たちから逃げることは不可能、ならあのイカれ艦長はどうするか。
『退路はない! 生き残るには、相手の命を奪うしかないぞ! 命を求めるなら命を捨てよ!!』
こっちを全力でブチ殺しに来る。
アリコーンはその戦闘力と引き換えに潜った状態ではろくに攻撃出来ない。だからこそ必ず上がってくる。
「スペクター隊は潜水艦の監視を続ける! 浮上直前なら位置を特定できそうだ」
「十分だ! 全機。アリコーンが浮上したら、すぐ叩けるように陣取るんだ」
「はいよ!」
「スペクター! こっちに近づきすぎるなよ! UAVが来たら直ぐに知らせろ! ここまで来たら生きてデータを持ち帰るんだ!」
「勿論だストライダー1! 奇跡を見せてくれたんだ。最後まで生き残るぞ!」
UAV撃墜! くそっ、こいつらMQ-101なみに動くな! 最新式にアプデ済みか?
「敵潜を捕捉! 潜航位置を送る!」
「敵潜水艦浮上!」
「攻撃開始!」
『恐れるな! 恐怖は海底に置いてきたはずだ!!』
「レールガン起動確認! 狙ってるぞ!」
「撃て撃て! 奴に撃たせるな!」
リロードを済ませフルアタック!
敵CIWSとSAMを何機か破壊、だがレールガンは破壊しきれなかった!
『主砲、撃ちー方はじめー』
「ぬわっち!」
『クソっ! ヒラヒラ躱しやがって!』
『少尉、さっきのは惜しかった! 次は殺せっ!!』
『了解!!』
「なんか俺ばっか狙われてねえかなあ!?」
「敵さんもメビウス1の再来様が怖いのさ! F-22だし」
「こいつ落とした時のメビウス1はファントムだったろ! そこんとこどうだデイビッド!!」
「えっ!? あ、はい。エイギル艦隊を破壊した時はF-4に乗ってるのを確認されてます」
「ほら!」
「ほらじゃねえ! とっととぶっ壊すぞ!!」
結構打ち込んだのに硬いなアリコーン!
未だにバンバンミサイルやら弾丸が目白押しだ!
『我らこそが死の翼だ! それを3本線に教えてやる!』
『艦長は死ぬ前に50人殺せと言った。やってやる!』
『救済を我が手にっ!!』
「アリコーンより艦載機が発進!」
「この状況で発艦とは。相当な練度、それに度胸だ!」
「度胸じゃねえ、狂気だ!!」
「トリガー! 艦載機は俺たちでやる! お前は奴に集中しろ! 行くぞフーシェン!」
「ウィルコ! 出てきたことを後悔させてやる!」
よし、出てきたラファールはあっちに任せて俺たちはアリコーンだ!
「オラ命中!!」
「ストライダー1がバラストタンクを破壊!」
「ソル隊も続け! FOX3!」
「撃て撃て! 特殊兵装を撃ち尽くすぞ!」
「レールガンが狙ってる!」
『発砲!』
『良いぞぉ! もっと撃てっ! 鉄の欠片で命を砕け!!』
「心臓に悪いな! レールガン周りの防御も厚いし!」
「待て、なんか出たぞ。UAVか?」
「アリコーンより飛翔体が射出された! これまでのUAVとは反応が違う!」
アリコーンのUAV発射管から、さっきの三角UAVとは別の何かが出てきた。
数は8、飛びたたずアリコーンの周りに対空し……
「うわっ、なんか広がったぞ!?」
「小型UAVが電磁バリアを展開!」
「視認した。アーセナルバードの防御システムに似てるぞ!」
「どうすんだ!? ストーンヘンジで撃ち抜くわけにはいかねえんだぞ!」
「隙間を狙うしかないが、不用意に近づくとプラズマを食らう! あっ、この野郎逃げやがった!!」
「UAVも出てきたぞ!」
三角UAVが8機、バリアの隙間を縫うように飛翔。
ミニマム版APSで対空防御って、あんな小さいのでこんなバリア展開出来るとは。ほんとこの世界の兵器科学は天井知らずだな!!
『サブマリナー諸君! 君らの命は濃い! ほかの命を奪う資格がある!!』
『敵の攻撃を兄弟たちに届かせてはならん!』
『あの3本線とヘッドオンで刺し違える! どうせ拾った命だ! 艦長に捧げられるなら惜しくはない!』
『3本の爪痕の機体! 兄弟たちが何機もあの悪魔の手にかかった!』
『『『ここで死ね3本線!!』』』
カウントたちが相手してきたラファールが反転して俺の方に向かってきた!
殺意全開か! 人気者は辛いね!!
「トリガーにお熱だが背中がガラ空きだ!」
「決死隊かこいつら! なら望み通りにしてやる!」
「FOX3!」
カウントのHVAAの高速弾とフーシェンの4AAMがラファールのケツをぶっ叩く!
『俺たちは幽霊なんだ! 今さら死など恐れん!』
『我らが世界に栄光あれ!!』
「その執念は買ってやるよ」
「だが視野が狭まれば脅威ではない」
近くにいたソル隊の2機が追い立てたラファールを撃墜。
残り1機が俺の背後についた。
『ぐっ! まだだ! 3本線を殺すまでは!!』
「悪いがそっちの癇癪に付き合う気は、ない!」
減速、速度500。クルビット!
『なに!』
「死にな」
『おのれ3本せ……』
宙返りして上空からタッチダウン。
最後の1機を仕留めた!
「凄い、今のはまるでキングの動きだ!」
「おいソル隊の一人。言葉に気をつけろよ。俺の仲間がこの技で遊ばれたんだからな。うっかりそっちを撃っちまうぞ」
「なっ、俺なりの精一杯の賛辞だぞ! ありがたく思え!」
「よーし次会った時優先的に殺す。尾翼のナンバー言ってみろ。選んで殺してやる」
「ふん、やれるもんなら……」
「ちなみにうちの小隊長は尾翼のエンブレムとテールコードを目視出来るぞ」
「ああ、顔のついた太陽のマークがあったな。なんか下に文字も書いてたか」
「化け物すぎるだろ! なんだその視力は!?」
「今回はお前の負けたなロアルド」
「新しい死神の名に偽りなしだな。気をつけるとしよう」
よーし。ソル隊の若造をビビらせたから満足しておこう。
そうこうしてるうちに出てきたな!
「潜水艦浮上!」
「上から見てもこのサイズか!」
「右だ! 全機右のレールガンに集中攻撃! 撃たせるな!」
「ぶち壊せ!」
アリコーンからせり出したレールガンの白い砲塔。アリコーンは浮上直後に武装を出す間対空防御が出来ない。出たてホヤホヤが一番のチャンスだ!
多方向からレールガンに放たれるミサイル、そしてXSDBが殺到する!
「よし、レールガンの破壊を確認!」
「いいぞ! 牙を1本折った!」
『主砲に直撃! 大破!』
『まだだ! まだもう一つある! 二番砲塔に電力集中! 3本線を狙えっ!!』
なんかもう一本のレールガン凄い光ってるんだけど。あからさまにバチバチ行ってるなんかヤバそう!!
『スーパーキャパシタから二番砲塔、エネルギー充填完了!』
「トリガー! 回避しろ!」
『発砲っ!!』
『発砲!!』
「うおっ!!」
バシュシュシュシュシュシュ!!
「ヤバババババ!!」
レールガンの射線を切るためにレールガンの反対側に急速下降!
撃ち尽くしたレールガンはパチリとスパークして煙を上げた。
「トリガー、無事か!?」
「死ぬかと思った! おいあいつ今何回撃ったんだ!?」
「一次的に電力を集中して連射力を上げたんだ! だが反動でしばらく撃てない筈、チャンスだ!」
「全機狙え! 高脅威目標だ!」
「FOX2!」
「FOX3!」
再度フルアタック。
俺はあえて近距離で爆弾とミサイルをぶち当てて機銃の射線を切った。
「しゃおらあ!」
「ははー! トリガーが奴の両腕をもぎやがった!」
「油断するな。相手は化け物だ! 腕が2本とは限らん!」
「なら全部もぎ取ってやる! 海の古強者に現代の空戦を叩き込め!!」
ーーー◇ーーー
「主砲を二基とも失いました!」
「生き残った兵力を3本線に向けて発射ぁ!! 他の航空機は良い! 奴を殺せ! 奴を我々が殺すのだ!!」
「目標、F-22A! ターゲットセット!」
「ファイアっ!!」
SAMとVLSの全てが3本線に放たれる。
1機の戦闘機に向けるには過剰すぎる火力の波を3本線は縦横無尽に飛び回って回避に徹する。
「F-22、死神の再来……これも因果か……」
14年前、戦艦タナガーを筆頭にしたエルジアのエイギル艦隊は海を支配していた。
無敵艦隊、不沈艦隊。30船を誇る大艦隊の長であったトーレスはその職務を誇りに思いながら何処か燻っていた。
無敵であるからこその安定。無敵であるからこそ初めから完成されている。
不満はない、充足感もある。だが砲術長時代の焦燥感と高揚感がなかった。
迫りくる多くの敵を殲滅し、勝利をもぎ取る。敵の命を砲弾によって砕く。そんな達成感が。
そしてエルジアが戦争を仕掛けた後も変わらず。砲戦はストーンヘンジが主流となり、自分たちエイギル艦隊は敵海軍戦力を屠り続けた。
無敵艦隊の名に違わぬ、もはや約束された勝利を遂行する。軍としてはこれ以上の理想はない。
だが、張り合いがなかった。燻りは晴れることなく、徐々に徐々にトーレスの中で積もっていった。
そしてある日。敵対国の連合ISAFの戦闘機部隊が接近してきたという報告があり、戦闘態勢に入った。
今度の敵は少しでも歯ごたえがあるようにと何処かで祈りながら。
だが気付けば無敵艦隊は無敵ではなくなった。瞬きの間に全てが破壊された。
空母ジオフォンも、イージス艦レイヴンも、潜水艦ベイオウルフも。全てが海の藻屑に変わっていた。
自身の分身である戦艦タナガーもそれに撃沈された。完膚なきまでの敗北だった。船員を逃がし、艦長の務めを果たしきり。救命ボートの上から空を仰いだ。
青いF-4E。尾翼に刻まれた青と黒のリボン。
こいつだ。こいつがエルジアが誇る無敵艦隊を沈めたのだ。
空に棚引く8の字のリボンはこの戦場の支配者。恐怖の具現。その忌まわしき1機の戦闘機を睨みつけ……
マティアス・トーレスは笑った。
これだ。奴だ。あれは私だ! 自分だ!
全てを破壊し、全てを無に帰す破壊の具現。
トーレスにとってそれは自身を映す鏡のように見えた。
それは屈辱敵で、美しく、そして憎らしい。
憎んで、妬ましくて、憎くて憎くて憎かった。
自分に出来なかったことを意図も容易くやり遂げた。
徹底的な破壊。破壊の果てにある虚無。
エイギル艦隊を屠ったメビウス1はF-4からF-22に乗り換え、エルジアに破壊を振りまいた。
ストーンヘンジを薙ぎ倒し、黄色中隊を手折り、首都ファーバンティを掌握し、メガリス要塞を粉砕した。
その全てに、メビウス1の姿と名が轟いた。
それを聞いてトーレスは慟哭した。
何故お前がそれを成した!!
何故お前が私ではない!!
私がやりたかった!! 私の美学だ!! 私のエレガントだ!! 私の救済だ!! 私の破壊だ!!
マティアス・トーレスは笑いながら泣いた。
無力感と高揚感が入り交じる狂気を抱えながら、笑い狂った。
長年の燻りと狂気はやがてアリコーンという力に導かれた。
これが自分の美学、破壊と救済を成す力だ!
2年間海底に沈む中。船員に自分の美学を説き、そして再び陸に上がったとき、アリコーンと船員は一つの命となった。
美しい。素晴らしい。素敵だ。
これこそマティアス・トーレスが求めたもの。これこそが自分というパズル。もう少しでそれが完成する! そう、完成する!!
「それを貴様が成すのか。奴の代わりとなるのか。お前がそれになるというのか! 3本線!!」
メビウス1と同じ戦闘機を駆り、この戦争で一番の殺戮者となった英雄。
似ている。同じだ。雄々しくも憎らしく、そして美しく妬ましい破壊の翼!
自身の美学を奪い体現せんとする特異点。3本線!!
「させんぞ! それを為すのは私だ! 我々だ! アリコーンだ!! 落とせ! 奴を落とせ! 奴を救済の一部にするのだっ!!」
全てを持って否定する!
全てを持って破壊する!
アリコーンの狂気は3本線という一人のパイロットに注がれた。
「艦載機、発艦シークエンスに入ります」
「今出てるのは誰だ」
「バルビエーリ中尉です」
「繋げ……ルイス・バルビエーリ中尉。貴官は遺書を書いていないと聞いたが?」
「家族はみな戦争で死にました」
憔悴した覇気のない声。
だがその海より深い奥底には自身と同じ狂気と美学の炎が猛っていた。
「いいぞぉ。貴官も救済の一部だ! 死んで来いぃ! 発艦を許可する!!」
「了解! 我らが救済をこの手に……」
ズズン……
艦が揺れた。船体のダメージではない。
「は、発艦中のラファールが大破! 電磁カタパルトに障害物発生! 発艦できません!」
バルビエーリ中尉の命が消えた。
何も為せず、無意味のまま死んだ。
彼が起こす筈だった破壊と虚無が奴に奪われた。
「また貴様が奪うのか! 3本線んんー! ッ!!!」
ーーー◇ーーー
「離陸途中のラファール破壊! しばらく発艦は出来ないは、ずぅぅー!!」
レールガンを破壊してから敵のミサイルが全部こっちに来てる! 俺を集中的に殺しに来やがった!
しかもラファール破壊したら機銃群もこっちに、とにかく敵全兵装が俺のラプターに集中している!
「逃げ回れトリガー! お前が避け続ければ俺たちの攻撃が通るからな!」
「おうとも! 囮してやってるんだから早く壊せよ! FOX2!」
「トリガーの攻撃がタンクに命中! 船体の損傷を視認!」
「たくっ! 逃げ回ってる癖にきっちりぶちかましてくれるな俺らの小隊長は!」
「俺たちも続くぞ!!」
結構撃ち込んでるから敵の兵装も半減してきたけど火線が減った気がしない。むしろ激しくなってる気がする!
「アリコーン潜航。次の攻撃タイミングを待て!」
「フー。少しは一息つけるな」
「UAVは出てきてラファールは飛んでるけどな。アルティーリョで欲出さないで沈めちまえば、こんな面倒はなかったのによ」
政府はアーセナルバードへの対抗策としてアリコーンのレールキャノンを使おうとしていた。
もし仮にファーバンティを落としたとしても。前の大陸戦争のメガリスみたいに軌道エレベーターに立て籠もられたらアーセナルバードを相手しなければならない。
難しいところだ。結局俺たちが貧乏くじを引いて。ソル隊も結果的にオーシアを助けなければならなくなった。
ままならないものだな、本当に。
「もしもしノースです! そっちの状況は?」
「ちょうど手があいたところだ。そっちは?」
「アドドローンです! 終末誘導するのはこいつです!」
「まずは落ち着け!」
「デモ隊の頭上にアドドローンがいる! これに誘導装置を仕込めばいい!」
「アドドローンは正にデモの中心地にある。効率的に目標を定めるには最適か!」
「ならさっさとそれを止めれば!」
「ええその通りです! だが相手はあの艦長だ、予備策を用意してないとは限らない……また連絡します! アレックス! 1番近い航空基地までの距離は!?」
「約82キロメートル」
あっちも死に物狂いで戦っている。
死が背中に張り付いた中で頭を回してくれるデイビッドを信じるしかないか。
いや、その前に撃たせるな! 奴を沈めろ!!
『原子炉制御室で4人が重症! 耐圧殻に亀裂!』
『5分おきに放射線量をチェックしろ! 冷却剤漏れはないか!?』
『原子炉が駄目ならどのみち沈む! 今は対空戦闘に集中するんだ!』
『いいぞ! 命が失われていく! 完成していくぅ!! 魂がピースとなって! パズルが組み上がっていく!!』
「潜航中のアリコーンを捕捉!」
「アリコーンが浮上した! 攻撃開始!」
『倫理という檻の中で! 獄死する魂を我々が救うのだ!!』
「全機攻撃再開! ……あれ?」
なんだ? HUDが乱れたぞ!?
「ミサイルのロックが外れた!」
「ロングキャスター、HUDの表示が不安定だ! トリガー、カウント。そっちはどうだ?」
「こっちもだ! 電子戦機でも居るのかよ!」
「妨害電波の発生源を特定した! これはアリコーンによるジャミングだ!」
「浮かんでる潜水艦をやるのは簡単だと思ったんだがな!」
「どんだけ手品隠してんだあのなんちゃって潜水艦は! オラァ!!」
アリコーンを直下に急降下!
ジャミング発生装置は、アリコーンのハゲ頭てっぺん!
「トリガーがジャミング装置を破壊! 妨害電波の停止を確認!」
「相変わらず仕事が早えなぁ」
「ありがてえ!」
「こちらソル2! アリコーンがバリアドローンを射出!」
「全機! バリア展開前にドローンを落とせ! バリア前に落とせば展開されない!」
「成る程、単純明快だ!」
「FOX3!」
ランツァとスカルドの4AAMがバリアドローンの半分撃破!
バリアは展開されたが、アリコーンの巨体を覆いきるには数が少なかった。
『バリアドローン撃墜! 左舷の防壁に穴が!』
『小癪な! だがこちらの火線も通る! 火力を左舷に集中しろ!!』
「やったぞ! 隙間が出来た!」
「指揮官としても優秀だな、3本線のパイロット!」
「ラファールの発艦を確認!」
「次を発進させるな! 敵の手数を潰せ!」
「任せな! FOX3!」
カウントの高速弾がアリコーン内から出たばかりのラファールを刺し殺した。
これでまたカタパルトを塞いだ。
「爆弾投下! FOX2!」
「やったぞ! トリガーが3つ目のバラストタンクを破壊!!」
『バラストタンクが損傷! 浮力が維持出来ません!』
『仕切り直せ! 急速潜航!!』
「また潜りやがった!」
「あれだけタンクを破壊したんだ! 直ぐに浮かんでくるだろ!」
アリコーンの兵装も7割破壊。ここまで脱落者はなし!
最上の戦果だ、奴の命数も尽きかけている!
「もしもし!? そっちはどうなりました!?」
「奴ら大分虫の息だ。そっちはどうだ?」
「空軍の電子戦機で、この地域全体にジャミングをかけます!」
「わーお」
「派手だな!」
ああ派手派手だ。
オーレッド首都で通信封鎖なんて、どれだけの損失が出るか分かったもんじゃない。
だがそれでも核で焼かれたら残るものも残らない。それを即決し、実行してくれる。
デイビッドの奮戦もあるだろうが、俺たちのバックは状況を理解してくれている。
「とにかく全部の無線が使えなくなる! ドローンの操作も、終末誘導も! 短絡的ですが効果的です!」
「ハハっ! この野郎!」
「携帯電話も通じなくなります! もう連絡できないかも!」
「あとは任せとけ!」
「吉報を期待してくれ!」
「頼みます皆さん! ご武運を!」
俺たちのホームズは仕事を果たしてくれた。
お膳立ては整った。あとはパイロットの仕事だ!
「アリコーンが浮上した! 攻撃開始!」
『やることはシンプルだ! 命令を受け、命を消せ! 破壊と救済の凱歌を歌え!!』
「ラファールが出てきて、なっ!? 1機海に落ちたぞ!?」
「発艦体制が完了しないまま離陸したんだ! それを理解してない奴らとは思えんが」
自分の命より俺らの命を取りに来てやがる!
どんな精神構造したらここまで命の価値を無視出来るんだ!?
『兄弟! お前の命も連れて行く!!』
『やってやるやってやるやってやる! 歯車の意地を見せてやる!!』
『敵機は魚礁にしてやる! パイロットは魚の餌だぁ!!』
「ラファールが次々と発艦! UAVも出てきたぞ!」
「敵も総力戦だ! とびきりの狂気を携えてな!」
「アリコーンは死に体だ! 俺以外のロングレンジは航空戦力を! それ以外はアリコーンだ! サラマンダー隊、ソル隊! 続けぇっ!!」
敵は崖っぷちで自棄になっている。だからこそここまで無茶をしてくる。
ここで終わらせろ! 核なんて絶対に撃たせない! あんな最低最悪な兵器はベルカ戦争だけで充分だ!!
「バリアドローン展開!」
「サラマンダー各機! 俺たちの見せ場だ! FOX3!」
「FOX3! FOX2!」
サラマンダーのホーネットがQAAM発射。
正確に敵を噛み砕く高誘導弾がバリアドローンを全て屠った。
「続くぞソル隊!」
「出し惜しみはなしだ!」
「FOX3!」
ソル隊が最後の4AGM発射。
残ったSAMとVLSを排除。最後のバラストタンクへの道が開けた!
『やらせるか3本線! 艦長の理想の邪魔はさせん!!』
『我らは1000万人の救済を果たす! 諸共に死ねぇ!!』
「させるかってんだ!」
「トリガーの邪魔はさせねえ!」
こちらを害そうとするラファールもUAVをカウントたち払っててくれた。
あとは俺の番だ。確実が決める!
「ロックオン! FOX2!」
海面スレスレで敵火器の射程範囲外に。ミサイル2発をぶち込み、強気の低速で機銃をぶち当てまくる。
「壊れろ! 壊れやがれぇ!!」
再度ミサイル発射! 離脱!
「最後のバラストタンクの破壊を確認!」
「敵潜水艦の外殻が大きく破損している! あれでは潜航は難しいだろう!」
「よし!」
「やったぜ!」
「よっしゃあ!」
潜水能力を失ったアリコーン。
もはや武装は数機の機銃群しかなく。飛び立ったラファールは全て撃ち落とされた。
間違いなく詰みだ。
だがまだ沈んでいない。核を持っている以上、一片の油断も許されない。
再度攻撃の命令を下そうとした、その時だった。
「……我が艦は降伏する!」
「各機に通達! アリコーンから全領域通信が発せられた!」
「はあ!?」
「なんだと……!」
「なんだこいつは?」
「聞き覚えがあるぞ、この声」
「こちら潜水航空巡洋艦アリコーン。降伏する、攻撃をやめてくれ!」
間違いない。奴の、マティアス・トーレスの声だ。
ここで降伏? あの艦長がそんな殊勝なことを?
「全機、攻撃を禁止する!」
「詐欺師の声だぜ、俺には分かる」
「沈めちまおう!」
「ダメだ! 降伏した者は攻撃できない! 国際法に抵触する!」
「くっ!」
詐欺師の声。ああ俺もそう思う。
あんな狂った大義名分をこさえた奴が。命を奪うことに特化した狂人がこんなところで降伏勧告などと!
「繰り返す! 降伏する!」
「どうする!?」
「攻撃は禁止!」
「国際法がそんなに大事かよ!」
「法を無視したら軍人じゃなくなる!」
「なら軍人なんか辞めてやるぜ!」
「攻撃禁止!」
「こちらサラマンダー。飛んでいた無人機が自爆した。アリコーンも沈黙している。本当に降伏するつもりなのでは?」
「どうするんだトリガー!」
「…………各機、アリコーン周辺で待機せよ」
「トリガー!」
「待機だ! 俺たちは軍人だ! そうだろうワイズマン」
「……ああ」
「我が艦は降伏する! 現在武装解除を受ける準備を進めている……」
震えた声だ。声色だけなら奴は怯えている。
これが演技なら相当な名俳優だ……
信じられない、ああ信じられない。だが奴らは降伏した。
俺たちは法と権限の名の下で殺戮を行う暴力装置だ。ここで手を出せば、奴と同じ無法者だ。
それだけはあってはならない……だが……
「こちらデイビッド・ノース、オーシア情報局の分析官です」
「デイビッド? なんで、通信は……」
「公衆電話からです、初めて使いましたよ……艦長、現在オーレッド一帯でジャミングをかけています。ドローンでの終末誘導は妨害しています、弾着はずれる。あなたの理想は実現しません」
なんだ? デイビッドは何を。
こんな挑発的なことをわざわざ?
……まさか、いやそういうことか。
「……教えてやろう、俺が砲術長時代の話だ。時化の中、30キロ先の敵艦を狙って撃ったことがある」
背中が冷えた。
温度のない燃え盛る炎に当てられたかのような。身体を突き刺す冷たい炎が。
「ひどい高波でな、それでも2発に1発は当たった。その時の感動は忘れられない。当たるはずのない目標をぶち当てた、あの感動は!」
「問題です、あなたの計画はエレガントだった? 答えはイエス」
「フッ、ククッ」
「でもそれを3本線が踏みにじった! 新たに生まれた死神の手によって!!」
「貴様に美しさの何が分かるッ!!!」
「全機警戒! アリコーンの甲板が上がっている! レールカノンに紫電が!」
「敵に降伏の意思はない! 止めるんだトリガー!!」
諦めていない! 奴は何も諦めていない!!
艦を満たす狂気を核という炎で放とうとしている!!
スロットルMAX! アフターバーナーオン!
遮二無二にアリコーンに向かって飛翔した。
「砲身に攻撃を当てるんだ! トリガー! 急いで!」
「了解だ!!」
「待てトリガー!」
「駄目だストライダー1!」
「攻撃を中止せよ!」
「蓄電完了!!」
「目標! オーシア連邦首都オーレッドォ!!」
「やらせるかぁーっ!!」
前方にバリアドローンのAPS複数!
すごい数だ、残ったドローンを全部出しやがったな!
だが構うものか! 狭くて潜り抜ける! 抜け道がなかったら突き抜ける!
たとえ落とされても! 軍規に背いたとしても! 奴に撃たれるぐらいなら構うものか!!
「もう二度と!」
「自らの手で!」
「あの穿たれた穴を!」
「5000キロ離れた!」
「あの炎を!」
「100万人を!」
「刻ませたりはしない!!」
「殺すッ!!!」
「FOX2ッ!!!」
潜り抜けた先をロックオン、発射!!
2本のミサイルは寸分違わずレールキャノンに着弾!!
ブワァン!!!
「はっ!!」
「撃った!!」
撃たれた! レールキャノンが撃たれた!
砲弾は飛んだ! オーレッドに!? 間に合わなかった!?
「レールキャノンは! ミサイルは当たりましたか!?」
「ミサイルは命中した! レールキャノンの砲身が少し下がったようにも見えた!」
「1センチ程のズレでも飛距離は著しく落ちる。大丈夫! 砲弾は外れる!!」
「フォーー!!」
「よっしゃあ!!」
「アッハッハ! 命令違反だぞこの大馬鹿野郎!!」
外れる。砲弾はオーレッドに届かない。
オーレッドに核は届かない!!
「何が起きた!?」
「砲身にミサイルが命中! 射角をズラされました!」
「クッ! おのれ3本線!!」
「全機、アリコーンを撃沈しろ!!」
「「「ウィルコ!」」」
「「了解」」
「「コピー!」」
「了解!!」
「レールキャノンの根元を狙ってください! そこがアリコーンの動力源、奴の心臓部です!」
サイクロプスとストライダーのF-15Cが。
サラマンダーのF/A-18Fが。
ソル隊のSu-30M2が。
カウントのF-15 S/MTDが。
そして俺のF-22Aが持てる火力を全てアリコーンに叩き込んだ!
「FCSにエラー! 砲の仰角上げられません!」
「空に3本線は……凶事なり!!」
「艦長!?」
「両舷前進微速ぅ!! 後部トリムタンク注水ぃっ!!」
「そんなことをすれば、艦が尻から沈降します!」
「それで砲の仰角をかせぐ!! フハッ、フハハハ!!」
奴ら2発目を撃とうとしてる! しかも艦を傾けてまで!? なんて滅茶苦茶を!
「スーパーキャパシタへの蓄電、45%! 姿勢角は現在アップ2度!」
「分からんか3本線!! 100万の犠牲で1000万を救うのだ!!」
「まだそんな薄っぺらなお題目掲げてんのか!! ふざけんじゃねえぞ、殺したいだけだろこの狂人野郎が!!」
アリコーンの正面、レールキャノンの根本にミサイル命中!
クソっ! 生意気に硬えな! サクッと終わらせやがれ!
「いいぞ! 攻撃がレールキャノンの根本に命中している! そのまま続けろ!」
「トリガー、お前が終わらせろ!」
「躊躇するな! 降伏を欺瞞に使うやつは軍人ではない!!」
「それがお前の意思なんだな、トリガー!」
「ああ! ここで奴を沈める。二度と浮き上がらないように! その思想ごと水底に叩き落とす!!」
軍人の大原則すら忘れたテロリスト! 自分の思想に酔った破綻者が!!
降伏勧告は慈悲によって遂行される! それをあいつは騙しに使いやがった!!
「死ねクソがぁ!!」
「3本線の攻撃がエネルギーコアに着弾!」
「レールキャノンの電力供給異常なし! ですが艦全体の電力ラインがオーバーロードしています!」
「UAVを全て3本線に向けろ! 奴を自由に飛ばせるな!!」
「サラマンダー隊奮起しろ! ストライダー1の邪魔をさせるな!!」
「ソル隊! 対UAVのスペシャリストが3本線だけじゃないことを見せる時だ!」
「張り切ってるなヴィト! 俺らも負けてられねえ!」
アリコーンから出せるだけのUAVが飛ぶが構うものか!
小蝿は他の奴らがなんとかしてくれる! 俺は奴の喉元にぶち込むだけだ!!
「アップ4度、手近な物につかまれ! 蓄電60%!」
「強大な艦! よく飛ぶ砲! 威力ある弾! 大勢の人間! 正確な狙い! あとはそこに死があれば! 救済は完成する! 貴様ら空の英雄が成した! 全てを破壊する圧倒的なエレガントが!!」
「一緒にすんじゃねえ!! お前はただ刹那主義な快楽殺戮者だろうがぁ!!」
「ならば答えろ! お前と俺、何が違う!!? お前はこの艦の乗員300名を殺して100万人を殺すという!! 何が違う!!?」
「それすらも分からなくなったのかよコンベースの英雄様!! 堕ちるとこまで堕ちたなダボが!! 所詮お前らは玩具ではしゃぐクソガキと同じなんだよ!!」
「殺戮者がそれを言うか3本線!!」
「それが戦争だ! お前がやってるのはただのテロだと分かりやがれ!!」
こいつが生み出す物は何もない。
あるのは虚無の果てから生まれる憎悪の連鎖、そして破壊を遂行した達成感と快楽。
国境なき世界も、灰色の男たちも。ある種の理想と目的があって核を使おうとした。
だがこの男には何もない! ただ破壊したい。ただ破壊しつくしたい。より多くの命を奪いたい。そんな狂った破壊衝動だけが奴を動かしている!!
「こちら衛星追跡艦シルバーアイ。核砲弾はオーレッドより離れた海に着水。爆発の兆候は認められず!」
「1発目は外れたとよ! 残念だったな艦長様! 結局独りよがりの自己陶酔的な自慰行為に過ぎないんだよ、お前のエレガントって奴は!!」
「それの何が悪い!! 3本線! 殺される者の気持ちを考えたことはあるか! なぜ自分が殺されるのかを!」
「あるともさ! だがそんなこと考えて戦争なんか出来るかよ!!」
「奪いたかった! 虐げたかった! 焼きたかった! 刻みたかった! 罰だった! 因果だった! 復讐だった! 何かあるべきだ!! 欲がなければ人は生きられない! お前にはあるのか3本線! 全てを捨て去ってでも叶えたい欲が! 俺にはあるぞ3本線!! それを今叶えられるなら、俺は! 俺たちは死んでも構わない!!」
「なら死ね! 何も叶えれぬまま! 無力を刻まれて死にやがれ!!」
「欲のない貴様が我らを沈めるのか!!」
「欲ならあるさ! お前如きでは計りきれないでっけえ欲望がな!」
「それが我らを超える物なのか! そう豪語するなら答えてみろ3本線!!」
誰がてめえなんかに教えるか!
俺の欲と夢は、お前なんかが居ない世界にある!!
「分からんかぁ、分からんかぁ!! フハハハハ! 難しい目標を照準しぶち抜く! だからエレガントなんだ!! それが美だっ!!」
「マジで艦が傾いてやがる! あんな傾いた状態で撃てば艦が転覆しかねないぞ!」
「奴の言ってることは本当だ。この一発に全てを賭ける気だ!」
「分からんか3本線! フハハハハ! 分からんだろうお前にはぁ!!」
「トリガー、回答を叩きつけよう! あいつを沈めることで!!」
「了解だ!!」
再びアリコーンにヘッドオン。コア部分がスパークしてる!
あと一撃で終わる筈だ! 最大加速! 奴の喉元をブチ破る!
「気をつけろストライダー1! 主砲が一門迫り上がっている!」
「なんだと!?」
「艦長! 一番砲塔復旧完了! 1発なら撃てます!」
「蓄電90%! カウントダウン開始!!」
「貴様という命を撃ち抜く!! フヒャハハハハハハ!! 俺の勝ちだ3本線ッ!!!」
「こいつ!!」
今すぐ回避しなければレールガンに当たる!
だがまだミサイル射程圏外、今回避したら次の攻撃まで間に合うか!?
いやこのまま行くんだ! 絶対に核を撃たせては……
「俺らの隊長の邪魔はさせん!」
「大人しくしろクソ野郎が!」
「トリガー! そのまま行けぇ!!」
ストライダー、サイクロプスのミサイルが臨界間際のレールガンを破壊! 溜め込んだエネルギーが爆発し艦が揺れた!
ロックオン警報解除、奴は丸裸だ!!
「主砲破壊されました! 射撃不能!」
「木っ端共がぁ!!」
「F-22A接近! 撃墜不可!」
「撃て! レールキャノンを発射しろ!」
「駄目です! 艦が揺れて発射体制が取れません!!」
「おのれぇぇーー!!」
「ロックオン! FOX2!! 沈みやがれーー!!」
ミサイル発射。寸分違わず直進した最後のミサイルがレールキャノン根本の動力源をぶち破り、盛大に爆発した!
「やったぜぇ!!」
「命中! 命中!!」
「イヤッホゥ! いいぞトリガー!」
「爆発閃光視認! レールキャノン破壊!!」
「ヒャッホー!」
「よっしゃあっ!!」
アリコーンの各所から爆発。船体全体からリチウムバッテリーの赤い火花が迸る。
あれでは中は灼熱地獄だろう。
「分からんかぁ……フヒ、ヒヒヒヒ! 分からんかぁ! ハハァ! 100万人だぞぉ!!!? ウワハハハハハ!! ウヒ、ヒヒ、ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
轟音。
これまで以上の爆炎を上げた中央動力源の爆発はマティアス・トーレスの狂笑ごとアリコーンを沈黙させた。
「アリコーンの船体が大きくは破損している! いや、真っ二つだ!!」
「やりやがったぜ……」
「ファイナルアンサーです……」
「ハハッ!」
アリコーンが、海の怪物が沈む。
真っ二つに折れた船体からゆっくり、海へ、海へと沈んでいく。
クジラの鳴き声のような轟音を立てて沈んでいくその姿は、アリコーンの断末魔か。それとも自分を役立ててくれたクルーに対しての感謝の鳴き声なのか………
沈め、二度と浮かび上がらないように……
黒い船体が完全に沈み。海から天を貫く程の巨大な水柱が上がり、雨となって振り注いだ。
「結局、奴の回答は100万人だったな。デイビッド」
「ええ……」
救済救済と言いながらも。マティアス・トーレスの欲望はやはり破壊だった。
100万人を殺したい。ただそれだけの欲望でエルジア軍を離脱し、核弾頭を持ち出した。
……やったよ。アンソニー、マルセラさん、ラリー。
この大地に核の穴は穿たれなかった。
「海上に多量の浮遊物を視認。生存者はいないだろう、ワイズマン」
「了解。敵潜水艦を撃沈した、作戦終了を宣言する」
「信じられねえ戦いだった。何もかもな、信じられねえ」
「ああ……まあな」
航空巡洋潜水艦アリコーン。空のアーセナルバードよりとんでもない兵器だった。
いや、やはりその海の怪物の手綱を取ったマティアス・トーレスだからこそだな。奴じゃなかったらここまで厄介じゃなかった。
はあ……これは本当に近いうち陸上戦艦なんかも出そうだな。
超兵器なんて大抵敵側が使うもんだ。いや、それがないと戦争なんか起こせないからか? 迷惑な話だ。
「ある者は、関わる人を破滅に追いやります。例えばマティアス・トーレス艦長、彼は悪魔です。一方、 ある者はみんなを導きます。自ら先頭に立ち、道を照らす。その背を追う者は思うのです。『あの人についていけば大丈夫』。クイズにように、答えが1つとは限らない時代です。灯りを掲げて導く者が、英雄として求められています」
「詩人だな」
「息子に聞かせたい話だ」
「良い話だ。エルジアから遥々来た甲斐があったな?」
「ああ……」
導く英雄……か。
円卓の鬼神。
スカーフェイス。
メビウス1。
ラーズグリーズ。
ガルーダ。
戦争を終わらせた英雄である彼らも、皆を照らす光だったのだろう。そして……
F-22Aの尾翼に塗られた空色を見やる。
父が率いたフリューゲル隊も、ベルカにとっては希望の灯火だったのだろう。
俺の名前であるリヒトは、ベルカ語で光という意味だ。
リヒト・フォン・フリューゲル。光の翼。父さんたちは俺に灯火となれと願ったのだろうか。分からないけど、そうだったらいいし、そうありたいと思った。
「では、我々は帰投する。エルジアの恥を注いでくれたことに感謝する」
「お前たちの為にやった訳じゃない……だが感謝するよソル隊。お前たちのおかげで勝てたと言っていい」
「素直じゃないな」
うっさい。感謝の言葉が出たんだからありがたいと思いやがれ。
「ヴィトと言ったか。最後に一つ良いだろうか。お前たちのリーダー、ミスターX……ミハイって奴はどんな奴なんだ? 何故あんな飛び方をする。あんなことしなくても奴は強い筈だろう」
恐らくここでしか聞くことが出来ない。
聞いたからと言ってなんだってこともないが。何も分からずに居るのはモヤモヤする。
「彼の飛び方は、敵を知るためとも言っていた。敵を理解し、それを見定めたいと」
「その結果相手を追い詰め尽くす飛び方だとでも? 訓練でもPTSDを発症させまくったらしいじゃないか」
「……彼もそれは理解している」
理解した上で飛び方を変えないってのか?
それはそれでより悪辣に見えるが……ヴィトらの反応を見るに、トーレスのような狂人には見えない。
「ストライダー1、君は認めないだろうが。ミハイは君が自分に似ていると言っていた。ミハイが自分の唯一生きる実感を与えてくれると、そんな空気が3本線から感じれたと……」
「………」
「質問には答えた。これを聞いてどう思うかは自由だ……次会うときは敵同士だ。その時は、全力を持って落とさせてもらう」
「望むところだ。あんたらのリーダーは、俺が落とす」
「返り討ちにしてやるぜ」
「フッ。ソル隊、RTB」
漆黒のSu-30M2が4機、夕焼けに照らされながら踵を返した。
あんな好青年たちと命のやりとりをしなければならない。まったく戦争とは百害あって一利なしだな。あのロアルドという青年はまた分からせてやらねばならんが。
「全機、そしてデイビッド。作戦は終了だ、帰還せよ。帰って休め。やれやれ、これでやっと飯が食べられる。すまんがそこのハンバーガー、あとナイフとフォークを取ってくれ」
「俺も早く戻って飯が食いてえ」
「肉! 最高級の肉とハニーミルクが飲みたい! ワイズマン、手配しといてくれよ!!」
味気ない名もない海域の戦いは終わった。
戦争はまだ終わらないが、この時ばかりは喜びに胸を躍らせた。
ーーー◇ーーー
「食うぞ、飲むぞ、じゃなきゃやってられん」
「この作戦って。本来の作戦とは別口だもんな……」
「あの艦長殺してやる。いや死んでるか」
「これが帰還した英雄の扱いかよ、なあトリガー」
「まあまあ、飯はあるんだから。それでいいと思おうぜ」
基地に戻った俺たちは作戦の成功を喜んだ。
それこそお祭り騒ぎ、これから宴でパーッとやって歓喜の渦に飲まれようと意気込んでいたが。
「次の作戦は32時間後だ」
編隊長の鶴の一声によって撃墜された。
これには全員が椅子に倒れ込んだ。
とりあえず飯は用意してくれている。腹いっぱい食べて、作戦までにグータラするぐらいは許してくれたんだから贅沢は言わんでおこう。
「トリガー、君は少し残ってくれ」
「……はい」
「先行くぜトリガー」
カウントたちが出払い。ブリーフィング室には俺とワイズマンとアイゼンハワー司令。そして画面越しにデイビッドが残された。
「トリガー。君のおかげでオーレッドが火の海にならずに済んだ。だが命令を無視し、戦闘行動を起こした件については処罰を考えねばならん」
「はい」
あの時はああするのが最善だった。
だとしても軍規違反であることは変わらない。
理不尽だし納得が行かないのもあるが、それが軍人であることも理解しているし、俺をよく思わない相手からしたら格好の攻撃材料だ。
処罰を受けることで収まるならそれでいいが。空を飛ぶことを取られるのは嫌だなー。
「君への処罰だが。階級を一段階降格とする。わかったな、パーマー少尉」
「………はい、申し訳ございません」
階級降格か。いやそれで済むなら上々だろう。
元々階級なんて興味なかったし。でも司令官の懇意で貰った階級を下げられたのは少し凹むなぁ……
「そして……アリコーンを撃沈し、オーシアを救った功績を認め、君を少尉から中尉に昇格とする。以上だ」
「え?」
あれ、それって今までと変わらないのでは?
顔を上げると、いつもと変わらぬ笑みを浮かべるワイズマンと司令官の姿が。
「我々は規律と法によって力を行使する権利を得た軍人だ。命令は絶対であり、それを逸脱した者は処罰を受ける。だが時として、本筋から外れた行為だとしても。信念を持った行動を成した君を、私は誇りに思う」
「司令官……」
「部下の不積を何とかするのは上司の仕事だ。改めて礼を言おうパーマー中尉。貴官の勇気ある行動に敬意を表する」
「ハッ! ありがとうございます!!」
なんて出来た上官だアイゼンハワー司令!
俺は涙が出てきそうですよ!
「しかし、命令に従うのは絶対であることは変わらないぞ中尉。中佐、彼の手綱をしっかりと握るのだぞ」
「承知しました」
「では、私は部屋に戻ろう。まだ片付けなければ行けない仕事があるのでね」
「お手伝います、司令官」
「ありがたい。終わったら1杯やらんかね。上物の酒が入ってな」
「お供します」
ポンポンと肩を叩いて司令官が部屋から退出し、ワイズマンが後に続いた。
残ったのは俺とデイビッド。
「デイビッドもお疲れ様。有能な分析官が居てくれて頼もしかった。このままうちの専属になってくれないか? 口利きするぞ」
「大変魅力的ですね。ですが私も私の仕事があります。今回のアリコーンのレポートを大統領に送らなければなりませんし……あと、今回君、トリガーを命令違反に唆したってことで少し怒られてね」
あらら。あれがなくても俺は攻撃したと思うけども。
「それと、君が危険な存在じゃないというレポートも書かなければならないんだ」
「それはまた苦労をかけるね」
「いいや。僕としても興味深い議題だからね。君のことを書けるのは楽しいんだ」
「……俺の勘違いなら恥ずかしいんだが。なんかデイビッドって俺に好意的だよね」
確たるものはないが。デイビッドは俺と話すのが楽しそうに見える。
クイズに真摯に答えたからかな?
「ああ、それは単純な回答だよ。僕は君のファンたからさ」
「ファン? まあ英雄にファンは付き物だけど」
「いいや、それより前さ。君が軌道エレベーターに単身突入したのを見てから、僕は君を知りたいと思ったんだ。軌道エレベーターのレーダー網を単身で突破した、君のことをね」
それはそれは……なんとも照れくさいね。
「んじゃあ、そんな初期のファンに頼みたいことがあるんだけど。あー、全然後回しにして良いことなんだけどね」
「君の頼みならお安い御用さ。リヒト・フォンフリューゲル」
「助かる。んじゃあ2つほど……」
ーーー◇ーーー
9月19日、11時59分……12時00分
♪ 〜〜
「大丈夫だアレックス、2時間おきのモーニングコールはもう必要ない」
アリコーン撃沈から5日。世間はアリコーンがオーレッドを核を撃とうとしたという事実を知らずに世界を回している。
デイビッドも、レポートの総仕上げにかかろうとしていた。
「『デイビッド、サマリーだけでいい。レポートをなるはやでくれ、大統領にお渡しする』………どう、似てた?」
《いいえまったく》
「酷いなぁ。まあ上がせっつくのも分かる。今日はエルジア首都ファーバンティ攻略戦だ」
《あと5時間20分後》
そう。今日で戦争が終わる、予定だ。
トリガーたちロングレンジ隊も戦闘に参加する。
大統領は戦後交渉の参考にしたいと、デイビッドのレポートを待っている
「おかげでこっちは80時間眠れなかった」
《78時間52分》
「んーー、オーケー……」
《トリガーからの依頼がなければもっと早く終わっていた。彼は後回しで良いと言った》
「それは言いっこなしだよアレックス」
彼からの依頼はデイビッドの興味を持つのに十二分の価値があった。
勿論レポート作業に滞りはない。それを疎かにするデイビッドではないが。いささかアドレナリンが出てしまった。
「さあ、あとは結論だ。アレックス。3本線が特異点だとして、彼を排除しなくても良い理由は?」
デイビッドの言葉に、アレックスは高精度シミュレーションを立ち上げた。
彼という矢印が戦場のデータを駆け回り、それに随伴する矢印が彼の後を追った。
《3本線が参加した全作戦で、実際に観察されたことがある。調査対象の行動を模倣する、または追尾行動をする従属対象の生存率は高まる》
「……もう少し官能的に」
《トリガーについていけば生き残れる。彼はみんなを導く》
「ホントに?」
《高度に有意》
ポン、とデスクトップにトリガーのF-22Aの尾翼が映される。
3本線の爪痕と、テールコード。そしてリボルバーを加えた狼の絵が。
「フフッ。君にしては論理的じゃない結論だ」
《……へへへー》
「アハハ……いまの、君の笑い声なの?」
こんな反応は今まで見たことがない。
勿論デイビッドがプログラムを書き加えた訳でもない。
トリガーたちとの出会いが、アレックスにとって良い刺激になったのだろうか。
REPORT REMAINING COMPLETE
レポートの送信が終わり、デイビッドは急激な眠気に襲われた。
「果報は寝て待てだな。おやすみ、アレックス」
《おやすみ、デイビッド》
彼らの勝利をデイビッドは欠片も疑っていない。
トリガーの依頼の件も送信済。
起きたら戦争終結の報で目を覚ますことにしよう。そう思いながら、デイビッドは着の身着のままベッドに倒れ込んで撃沈した。それはもうアリコーンが沈んだ海域より深く、深く。
まさか起きた先の戦場が、とんでもないことなったなどと知らずに。
どうも、最近長袖を着ました。作者のブレイブです。
DLC編終了!!またも文字数がアレですが、なんとか1週間で書き切りました!嬉しい!!
でも最近18000文字以上をメモアプリからハーメルンにコピペすると最後切れるんですよねー、なんとかしてくれ運営。
アリコーンとの決戦、如何でしたでしょうか。
マティアス・トーレスの掘り下げ。なかなか苦戦しました。台詞は名言のオンパレードなので調理が難しく。なんとかゲーム音声を聞きながら声の抑揚とかを再現したりしました。
あと掘り下げ。個人的にトーレスは自分たちを破壊したメビウス1に脳を焼かれた、というより理性の蓋をぶっ壊されたと思いました。
海のブルートゥの狂気を垣間見えてくれたら幸いです。
DLC編、書くの大変だしカロリーもヤバかったですが書いてて楽しかったです!ありがとうエースコンバット!
今回のお話が良ければ高評価、コメントをバンバン宜しくです!
次回はミッション14!お楽しみに!それでは!