エースコンバット7 FLIGHT REZON 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
エースコンバット8発売おめでとうございます!
なんかサラッとプレイ動画見てると、エスコン7って平和だったんだなーって思えました。当社比だけどね。
なんというか、秩序があったというか……
もしエスコン8にうちのトリガーぶちこんだらソトア絶対殺すウィングマンになりそうだわ。怖い。
2度目の出撃から帰ったミハイは、1回目とは比べものにならないぐらい疲弊していた。
それこそ歩くこともままならず、担架で運び出されなければならない程に。
インシー渓谷で相対したF-15C。白い3本線を尾翼に刻んだそれはミハイをもってしても撃墜出来ず、逆に彼のSu-30SMに傷をつけた。
データだけで判断したならば、あと少しで彼が撃墜される可能性すら出てきた。
ミハイの筋肉は歳老いた身であるにも関わらず健康そのものだった。反射神経の衰えすらなく、彼の操縦技術は若年のパイロットにすら引けを取らない。いや凌駕してると言っていい。
しかし彼は放射能汚染を患っていた。
まだ技術が確立しきれていない古い時代の空を飛び続けた彼は空の毒に蝕まれ、本来の力を出し切ることが出来なかった。
「これでは駄目か……」
2回目の出撃時、ミハイは応急的に改良された特殊対Gスーツを来て出撃した。
当時のノースオーシア・グランダー・IGが誇る最新技術を注ぎ込んだスーツでさえ、天界の王と呼ばれた彼の全力を出させることは叶わなかった。
ソル隊4機が帰ってくる。
彼らが向かったのは名も無き海域。アリコーンという海の超兵器を強奪し、テロリストと成り果てた元エルジア軍人の討伐だった。
その艦は核兵器を持っていたという。
核兵器。ミハイの孫娘、イオネラの頭に浮かんだのはベルカ戦争末期。バルトライヒの惨劇だ。
ベルカによる自国に落とされた7つの核。穿たれた巨大な穴がある場所には12000人ものベルカ国民が居たという。
テロリストはオーシア首都に核を撃とうとしたらしい。そしてその後はエルジアを狙うと。
もしどちらかの首都が消えたら、戦争は終わったのだろうか。
「戦争は終わるけど。その先にあるのは理性のない地獄だわ」
シュローデル博士の助手、マーサは沈痛な面持ちでそう言った。
世界はそう単純ではない。たとえ国家の枠組みが消えたとしても人々は争うことをやめられないと。
なら兵器を作るノースオーシア・グランダー・IGの先には何があるのだろうか。だがそれを聞くのはとても残酷なことだと思った。少なくともマーサに聞くのははばかれた。
「ソル隊4機、帰還しました。アリコーンは撃沈。任務完了です」
「ご苦労だった。すまないな、この体たらくでなければ共に行けたのだが」
「いえ! キングの手を借りる程の相手ではございませんでした!」
「来ないほうが正解でしたよ。向こうの、3本線のパイロットと話をしましたが。相当嫌ってましたよ、ミハイのこと」
「そうか……」
ヴィトたちはオーシアの部隊と共同でアリコーンを撃沈した。
共同した部隊はなんとアーセナルバードを落とし、破竹の勢いでエルジアを噛み砕いてきたロングレンジ部隊、そのエース。3本線が居た部隊だったのだ。
「どうだ、彼は」
「……悔しいですが、我々では太刀打ち出来るか怪しい程の実力でした。型にはまらない自由な飛び方、戦場を読み取る戦略眼、そして此処ぞというときの勢い。インシー渓谷の時より遥かに手強い存在となっていました」
「若かったか」
「はい。我々と大差ないかと」
「どんな男だった」
「どんな、とは?」
「性格、理念、信条、プライド。彼を形作る物を知りたいのだ」
ミハイは敵の腕前と同じくらい、相手の精神性に意味を見出している。
相手が何を思って引鉄を引くのか、何を思って飛ぶのか。それをミハイは知りたいのだ。
過去に問いかけたことがある。そんな事をして意味があるのかと。最後は殺すのであれば、無駄に時間をかけなくて良い。祖父も苦しむ時間を減らせるはずなのではと。
「理解したいのだよ、敵を」
何故理解する必要があるのか。その問いには答えてくれなかった。
イオネラの眼には、祖父の頬に深々と刻まれた傷跡が映った。
「そういえば、3本線の機体が変わっていました。F-22A ラプターで、翼端には空色のペイントが施されていました」
「翼が空色のF-22……」
「何か気になることでも?」
「過去に空色の翼を携えた部隊が居たのを思い出してな。ベルカの戦闘機部隊だ。私も翼を交じえたことがある」
「もしかして、ベルカのフリューゲル部隊ですか? ベルカ戦争で活躍した、F-22で構成された」
「いや、私が相対したのはそれより前の世代の戦闘機乗りたちだ。そうかフリューゲル。懐かしい響きだ。再びその名を聞くことになるとはな」
「失礼、いまフリューゲルと言いましたか?」
いつも通り静かな。いや、僅かに起伏に富んだ声色を発したシュローデルがミハイたちの前に駆け寄った。
「シュローデル博士。そういえば博士はベルカのご出身でしたな」
「ええ。ところで、何故フリューゲルと?」
「アリコーン撃沈作戦の時に3本線の機体がF-22Aで、翼端が空色だったんです」
「F-22、ラプター……その機体は、白地に空色でしたか?」
「いえ、オーシアの灰色迷彩の上からでしたが」
「彼の人相は、声は。若かったのですか?」
「え、ええ。恐らく我々と同世代かと……博士?」
「いや、まさか。だが生きていればそれぐらいの歳ではある……だが何故オーシアに。偶然にしては、だがあの飛び方は似ている……いやしかし……」
いつも冷静沈着なシュローデルが目に見えて狼狽えていた。口元を隠し、目はキョロキョロと落ち着きがない。
その後も彼らは眼中にないとばかりにブツブツと考えにふけるシュローデルにミハイが声をかけた。
「博士、何か用があったのではないか?」
「え? あー、すみません。本社から最新鋭の対Gスーツが届きましたので調整をしたいと思いまして」
「例の機体は」
「機体は届きました。ですが首都決戦には間に合いませんね。なかなか癖の強い機体で」
「分かった。行こう」
シュローデルに促され、引きずった重い足取りでミハイは歩き出した。
ふと。シュローデルの足が止まり、振り向いた。
視線の先には、憎しみを込めた目で睨みつけるイオネラの姿が。
(また祖父を苦しめるのか)
嫌われたものだ。とシュローデルは彼女の目を見続けることが出来ず目を逸らす。
彼女から見たら、愛する祖父をモルモットのように扱うマッドサイエンティストに見えていることだろう。
間違いではない。自分たち技術者は彼の才能を解析して兵器に転用し、戦争を引き起こさせた黒幕と言われても否定はできない。
何も間違っていない。技術者として、技術の発展は喜ばしいもの。
そしてなによりミハイがそれを望んでいる。自分たちは相互利益の為に利用し合う対等な関係だ。
だがシュローデルの中には、ある種のしこりがあることを周りの人間は知らない。
最近になって本当に無人機技術は正しいのかと考えるようになった。周りの技術者は更なる無人機の進化に目を輝かせている。ベルカの技術が、また世界に刻まれたということを。
無人機開発の第一人者であるシュローデルはそんなしこりに気づかぬフリをしながら作業を進めている。
彼がそう考えたのは、1人のパイロットの存在だ。
3本線の戦闘機乗り。いまエルジアを恐怖のどん底に陥れている、オーシアの英雄。
ボルゴテレスト方面にて試作機のADFX-10が3本線を刻んだF-15 S/MTDに破壊された。
その次はアーセナルバードを破壊された。
どちらも無人機技術の到達点となる最高傑作、それが人である3本線のパイロットに追い付けないでいる。
恐らく今活躍している3本線とインシー渓谷で戦ったF-15Cは同一人物だ。
そんな彼がF-22Aに乗り、翼を空色に染めたという。
フリューゲル。それはシュローデルにとっては憧れであり、目標とする存在だ。
シュローデルはフリューゲルに対する挑戦として無人機技術を磨いた。ノースオーシア・グランダー・IGで地位を築き、実績を積み重ねる。
骨の髄まで技術者であるシュローデルは邁進した。そして結果を出した。
フリューゲル家の末っ子が生きている。
そんな噂をベルカ戦争から7年後に耳にした。そして再び空色の翼が現代に現れた。同じF-22Aの翼として。
これは偶然なのか。何故今になって現れたのか。
我々に、ベルカに何を伝えたいのだろうか……
対Gスーツに着替えたミハイが機体に搭乗する。
今回のスーツは今までの比ではない。これさえあれば、彼の身体を蝕むことなく。全力のマニューバにすら耐えられるはず。
天気は快晴。風は弱い。絶好のフライト日和だ。
空の青さが突き刺さり、目を潜める。
いつからだろうか。空が眩しすぎて、時々直視出来ない事がある。
まるで空に見られているような、そんな感覚があった。
ミハイが離陸すると同時に、シュローデルの空色の目は彼の機体に釘付けになった。
離陸と同時に直角に急上昇。ヴァイパートレイルを青空に刻みながらミハイは何度もハイGターンを繰り返した。
これまで以上の、見たことのないキレを見せたミハイ。護衛機は飛び立つことすら忘れて空を眺めた。
イオネラも祖父の勇姿を目に移し、妹のアルマはそんな祖父を見てはしゃいだ。
ミハイは、地上の一切に関心がなかった。
ヴィトたち若者達が愛国心を持つ中、国の王族であった彼は祖国の帰属に興味を示さなかった。
そうだ。彼は空でしか生きられない。
大空こそが、ミハイ・ア・シラージの王国だからだ。
かつてのフリューゲルもそうだったのだろうか。
3本線の彼もそうなのだろうか。
その答えは首都決戦の結果が教えてくれる。シュローデルはそう信じた。
ーーー◇ーーー
結論から言おう。ピザはあった。
装甲車から保冷バックとトースターが出てきた時、目が点になった。
今回は基地機能を残したまま奪取できたから出番はなかったが家電用バッテリーも入ってるとか。開いた口がふさがらなかった。
バジリスク隊がおかしいのか、それとも陸軍海軍ではこれが普通なのか、俺は分からなくなってきた。
「ピザうめえ!!」
だがそんな疑問など目の前のピザを前にすればそんなの関係ねえ!
トマトソースの酸味、チーズがトロっと溶けた熱々のピザにかぶりつき飲み物をかっ食らう。これ以上の贅沢などあるだろうか、いやない。
見なよあのロングキャスターの満面の笑み。ピザ二刀流なんだぜ。
最終作戦の前祝いだから基地はもうどんちゃん騒ぎだ。ピザが焼かれてはなくなり、酒がなくなれば基地の備蓄から酒を持ってくる。
かくいう俺もすっかりピザのとりこだ。マルゲリータ美味い。次はクワトロフォルマッジを食べてみようか。もちろん用意されたサピン産のハチミツをかけてだ。
ちなみに縛られた敵兵にもピザを振る舞ったらしい。
「オーシアの施しなど受けん!」
「いいからピザ食えオラァ!」
「モゴォ! ……美味い」
「もっと食え! まだまだあるぞ!」
なんてこともあったとかなかったとか。
ちなみにベイルアウトしたネームドには特別に腹一杯食わせるらしい。実質拷問じゃないかな。トイレとか大丈夫だろうか。
時間が経っても笑い声は止まらず、しまいには歌い出す奴らまで現れる始末。
一歩引いたところで酔っ払いの奇行を眺めていたら携帯端末が揺れた。気付いた俺はそっと場を離れて外に出た。
メール、差出人はデイビットからだ。
題名は『ご依頼品』。
そこにはブリーフィング後に頼んでいた依頼という名のお願い事が記されていた。仕事が早いなんてもんじゃない。どんだけ優秀なんだクイズ王。
デイビットに依頼したのは2つ。
一つはミスターX、ミハイとやらの詳細。
もう一つは、ラリー・フォルクの所在だ。
戦争の中、ラリーからついぞ連絡はなかった。
アンソニーやマルセラさんのところにも連絡が来ていない。便りがないのは良い便り。ラリーがそう簡単にくたばる男ではないのは分かっている。
だけど便りがないのは本当に便りがないからではと思わずにはいられない時もある。
深呼吸をしてデータを見た。
そこには詳細を示す短文と、何枚かの写真、いやカメラの映像があった。
「……ハハッ」
ばっちり生きていた。
前の写真の時に生やしていたヒゲは剃ったらしく、あの皮肉屋で2枚目な男が仲間の傭兵と雑談を交わしていた。
ラリーはやはり戦争の最前線。バンドッグやマッキンゼイが向かった傭兵部隊の一員として戦争に参加していた。
日付は新しい、変わらぬ姿がそこにあった。
「元気にしてんじゃねえか」
心配はしていなかった。それでも不安があった。
そしてもうすぐ戦争が終わる、終わらせる。
俺は英雄になっちまったよラリー。
約束は守ってもらわないとな……
もう一つ、ミスターXの情報だ。
彼の名前はミハイ・ア・シラージ。
ちなみに本名はクソ長い。なにこれ、魔法の詠唱か?
彼はかつて存在したシラージ大公国直系の王族だった。長ったらしい名前も祖先の名を引き継いだ名残だそう。
大昔、シラージがエルジア王国に飲み込まれ国が消えた。直系の王族であったシラージ家はその身分を保証し、王族として帰属することを許された。
だがミハイはその申し出を断り、一兵士となる身分を選んだ彼は空軍士官学校へ編入。
そこからは数々の戦場を渡り歩き、敵を屠り、そして天界の王と呼ばれるエースパイロットとなり。現役を退いたあとは空軍教官を拝命。あの黄色中隊にも教えを説いたという。
「ケラーマンレベルの大ベテランじゃないか」
この話が本当なら、彼は間違いなく老人だ。
とっくにパイロットを離れても良い歳だ。
だが彼の類まれなる才能にノースオーシア・グランダー・IGは目を付け。ミハイ・ア・シラージの技術をUAVに映し取った。
それと引き換えに、彼は翼を得た……
「此処に居たのかトリガー。1人で黄昏てどうしたんだ。酔った訳でもないだろう」
「そういうワイズマンも飲んでないだろ」
「俺はこの後も仕事があるからな。そんな坊やに差し入れだ」
手にはコーラとサイダーの缶が握られており、サイダーを貰う変わりに端末をワイズマンに渡した。
「……成る程。イェーガーの話は本当だった訳だな」
「超ご老人だぜ。そんな奴に俺たちは踊らされていた訳だ」
「立ち向かうは戦争が生んだスーパールーキーか」
「老害……ああ老害だな。老害に違いない、あんなクソったれな飛び方を生きている間に変えれなかったクソ野郎だ」
「少し含みがあったな」
我らが賢人は何もかもお見通しで嫌になるね。
ソル隊の、ヴィトの話を聞いて俺は彼の人物像を測りかねていた。
俺が思うような男ならば、あんなに慕われることはない筈だ。あいつらの精神性が同じというなら話は別だがその線は限りなくゼロだ。
デイビットから送られてきた情報は外面だけで、彼の内面を指し示す物は見受けられなかった。
たった一つ、彼が王族ではなくファイターパイロットの道を選んだという点が目についた。
ヴィトは俺とミハイは何処か似ていると、ミスターXがそう言っていたという。
正直一緒にするなと声を大にして言いたかったが。それでも共通点を探すのならば、答えは空だ。
空に焦がれ、空に憧れ、空を飛ぶ。それを生き甲斐として、生きていく。
「ミスターXはただ飛びたいが為に自分の人生をグランダーとUAVに売り払ったのだろうか。自分の誇りすら捨て去ってまで飛ぶだなんて、本当にそれで満足しているのか?」
「そんな奴らの手を借りなければ飛べなかった、或いは何をしても空に戻りたかった。そんな執念の現れでもあるのだろう。トリガー、もし飛べない状況で手を差し伸べられたらどうする?」
「少なくとも俺の技術を売り払うなんてしないね。それは俺の翼に対する侮辱だ」
それがミスターXと俺の最大の違いだ。
若いから、まだ未来があるからそんな事が言えるのかもしれない。だが俺にはそんな未来がどうしても想像できない。無理に想像したら、胃のあたりにどす黒い棘か刺さるような痛みを感じる。
胸の痛みをサイダーの炭酸で洗い流す。刺激のつよいスパークが喉と食道、そして胃をぶっ叩いて渇を入れた。
「F-22Aに乗り、父親と同じ尾翼となった。空と一つになれる場所は見つけれたか?」
「いいや。やっぱり俺が目指す空は戦争が終わった先にあるっぽい」
「ファーバンティには必ずミスターXが現れるだろう。まだ奴に憎しみを抱いているか」
「……抱いている」
彼が思い描いた外道畜生だったかは分からなくなってきたが、それでもブラウニーとチャンプを弄んで殺したのは事実だ。
どんな心情や負い目があったにしろ、そんな事は関係ない。
奴は俺が堕とす。それは絶対に変わらない。
「心配しなくてももう憎しみに支配されたりはしないよ」
「俺や部隊の誰かが落とされてもか」
「……俺は灰色の男たちとは違う。憎しみだけで跳ぶつもりもないし、憎しみだけで勝てる相手じゃない。でも……怖い。本当にそうならないという確信が持てないんだ……もしまた呑まれたら、俺以外の誰かが死ぬと思うと……」
ミスターXは怖くない。本当に怖いのは、俺自身だ。
ブラウニーが落とされた時も、チャンプが落とされた時も。俺の心の中には怒りと憎しみしかなかった。
今だってそうだ。怒りで暴走しかけた事が多々ある。
目の前にミスターXが現れても対処出来る、自分の飛び方を貫ける。だけど仲間が落とされても冷静さを保てるのか……わからない。確証が持てない。
「俺もミスターXに仲間を殺された。目の前でな。その時の俺は武器弾薬もなく、ただ逃げ出すことしか出来なかった」
「ああ」
「それでも俺が取り乱せば部隊が総崩れになる。だからこそ負の感情を押し殺し、自身の役目を完遂する。俺を突き動かすのはそういう単純な責任感と使命感があったからだ」
「………」
「トリガー、お前の感情は間違っていない。だが俺たちは軍人であり、多くの人間を殺して今この場に居る。それも全て、戦争の早期解決の為だ」
ワイズマンは、本当に強い心を持っている。
どんな事があっても取り乱すことなく職務を全うする。
俺には力がある。恐らくこの戦争で唯一無二の力がある。だがワイズマンにはそれよりも大事で、もっと大きな強さがあった。
「直ぐに理解しようとしなくていい。だがそれでも俺たちにはやらなければならないことがある。たとえどんな犠牲を前にしたとしても、確固たる信念を持って翼を広げて飛ぶ。それが軍人として空を飛ぶものの務めだ」
「俺にそれが出来るだろうか」
「出来るとも。お前の胸には確かな信念が根付いている」
トンと拳を俺の胸に当てたワイズマンはいつも通りの笑みを浮かべた。
「自信を持て、リヒト・フォン・フリューゲル。お前はもう立派な軍人だ。歳や年季など関係ない、強い心は既に持っているんだ」
「ありがとう、ワイズマン」
「おーい! トリガー! 何処にいるんだー! まだまだピザはあるぞーー!!」
基地の中からカウントの声が。明らかに酔っぱらっている。お前酒に強いほうじゃなかったっけ?
「お呼ばれだな?」
「そのようですね。行ってまいります」
「行ってこい。俺は仕事に戻るとするよ」
「ゴミ捨てますよ」
「ありがとう。あまり遅くならないようにな」
何処までもお父さんみたいな事を言う。
「ほらぁ! トリガー食べろ食べろ! 飲め飲め! お前の好きなハニーミルクだぞ!」
「待て! なんか酒の匂いするぞ! 酒入れたのかお前!?」
「なんだー!? 俺の酒が飲めないのかー!? 俺は元王族だぞー!」
「酒臭! どんだけ飲んでんだお前は!」
「おらー飲めー! 今日はぶれいこーだトリガー」
「フーシェンまで酔ってる!!」
ひとまず酔っ払いの介抱をしなければ。
これはある意味ミスターXより厄介だな!
ーーー◇ーーー
どんちゃん騒ぎを繰り広げたレイニー基地にアイゼンハワー司令官、おやっさんを始めとしたニューアローズ基地の一部クルーが到着。
おやっさんは俺抜きでピザパーティーしたのか!? とショックを受けていた。ごめんね。
オーシア本土から潜水艦が到着して補給体制が整った。
そのあと続々と各地から結集したオーシア、ならびにIUNの人員が続々と集結。フォートグレイス基地の人員は来るのかと聞いてみたが、彼らを含めた東部戦線はこのドサクサに紛れてユークトバニア、あとソトアが悪さやちょっかいをかけさせないための牽制として残るらしい。
ソトアはともかくとして、オーシアに並ぶ大国ユークトバニアがパイを奪いに来ないとも限らない。友好国を疑わなきゃならないとは嫌な世の中である。
続々と集まり、レイニー基地は一気に手狭になった。
みんな3本線である俺を一目見て若すぎる見た目に驚いては握手を繰り返し、サインまで強請られる始末だ。
途切れる事がなさそうなので適当な理由をつけて逃げ出して今に至る。
「人気者は辛いなトリガー。みんながみんな英雄にあやかりたいって感じだ。最後に物を言うのは自分の腕だってのにな」
「羨ましいのか?」
「うるせえ。まあ否定はしねー。俺が長年なりたかった夢を半年も経たずに叶えちまったんだ。嫉妬ぐらい許せよ」
「あいよ。しかしあれだな。ラリーから聞いたサイファーの気持ちが分かった気がする」
円卓の鬼神、TACネーム、サイファー。
彼は正規軍人ではないが、傭兵と正規軍関係なく彼を讃える者ばかりだった。
基地にいる人たちも出撃の度に見送りに来る人たちが多かった。
デイビットは言っていた。灯りを灯す英雄を皆が望んでいると。
タブロイドは言っていた。トリガーについていけば生き残れると。
皆の希望の象徴。それが時代を担うエースパイロットだと。
俺はみんなの灯火になれているかは分からないが、皆が俺に光を見ているなら生きて飛び続けなければならないな。
「こんなところまで来ちまったなあ。想像できるか? 囚人である俺らが首都攻略の重要戦力だなんてよ」
「俺は冤罪だよ」
「そうだったな。けどあんなゴミ溜めからコレだぜ? まるで夢のようじゃないか。時々起きたら全部幻だったんじゃないかって怖くなる時がある」
確かに。まさか着任して直ぐ戦争になるなんて、フォートグレイス行きの輸送機でみんなと駄弁っていた時は想像もつかなかった。
今でも覚えている。初めて人の命を奪った時の震えと怖さを。ハーリング元大統領が死んだ時の衝撃を。
「この戦争が終わったら正真正銘歴史に名を残す英雄だな」
「ああ。俺たちが終わらせれば、タイラー島に居るタブロイドやエイブリルが楽できる」
「大丈夫だ。あいつらがそう簡単にくたばるもんかよ。もしかしたら戦闘機を奪って飛び回ってるかもしれないぜ」
そうであったら良いと思うと同時に不安だ。
クソったれな任務に放り込まれた元囚人がヤケを起こしていないとも限らないし。
「それもこれも全部終わってからだ。俺はお前のおこぼれ2番機として頑張るとするぜ」
「ワイズマンが戻るからサイクロプス隊だぞお前」
「…………なあトリガー。ストライダー隊続投の交渉に行かないか?」
「そんなに嫌か?」
「あいつの下だと小言言われるだろうがよー!」
「お前も変わったんだから大丈夫だって」
ーーー◇ーーー
「ニューアローズ基地司令官、ジョージ・アイゼンハワー少将だ。今日この場に多くの空の勇士が募ってくれた事に、オーシアを代表して心より感謝を申し上げる」
ニューアローズ基地より狭いレイニー基地のブリーフィング室には集ったパイロットたちがところ狭しと詰め込まれている。
その中には共にアリコーンを落としたサラマンダー隊、そしてドレイク隊のみんなも居た。
「ブリーフィングを始める。エルジア王国首都、ファーバンティ制圧作戦を開始する。本作戦群の総仕上げだ。ファーバンティ南部にあるエルジア軍総司令部を制圧し、この戦争を終わらせなければならない」
最終作戦。この戦いが終わればこのクソったれな戦争が終わる。
エルジアのクリーンな戦争というお題目から始まったこの戦い。もはやエルジアはそんなものをかなぐり捨てて様々な手段を行使した。
追い詰められた奴らがどんな馬鹿を仕掛けてくるかわからない。それをする前に叩き潰し、戦争の優位を確保しなければならない。
「ファーバンティへは北部、東部からから地上部隊、そして南西の海上から機動艦隊が侵攻している。我々は首都上空の航空優勢を確保しつつ、適宜味方の地上部隊、艦隊への航空支援を行う。陸海空、それぞれ激しい戦闘が繰り広げられる事が予想される大規模な戦いだ。北部に補給の為の帰還ラインを設定した。弾薬補給、機体整備は各自の判断で行なってくれ」
アンカーヘッドも陸海空の大激戦だったが。エルジアは背水の陣、敵は決死の覚悟で戦いを挑んでくる。
ストーンヘンジで戦った黄色中隊の生き残りであるサーペント部隊。そしてミスターXの部隊も必ず来る。
今まで以上に死の気配が来い戦場に、俺たちは今から出向くのだ。
「また本作戦と並行して、エルジア軍がハッキングした通信衛星群の破壊作戦を行う。掌握したと考えている情報通信系統が破壊されることでエルジア側は大きく混乱するであろう」
「そこに差し込んで交渉を有利に勧める」
「その通りだ。首都陥落後にエルジア群を孤立、混乱させ。終戦に向けての動きを有利に進めるためだ。しかしそれはあくまで首都制圧後の話。この戦いの主役は君たちだ」
かつてベルカが提唱し、世界の基軸となった大空戦時代。
その結果もたらされた数多くの超兵器は、戦闘機乗りたちの活躍により全て灰となった。
戦闘機が中心となって回るこの世界において、俺たちは国の切り札に等しいのだ。
「何か質問は」
「はい。アーセナルバードはまだ1機残されていますが、エルジアがこれを首都に向ける可能性はあるのでしょうか」
「可能性は限りなく低いと考えられる。軌道エレベーターを占拠し、アーセナルバードのコントロールを奪ったとはいえ、アーセナルバードの本分は軌道エレベーターの防衛だ。基本骨子であるそのプロトコルをエルジアが解読しているが、下手に触れば誤作動が起こるため二の足を踏んでいると情報部は掴んでいる」
つまりアーセナルバードは来ない。
これだけで作戦の成功率はグッと上がる。アーセナルバードとミスターXの二足のわらじは流石に応えるなんてもんじゃない。
「エルジア軍も必死の抵抗を行うだろうが、首都制圧を必ず成功させ、この戦いを終わらせよう」
「「「了解!」」」
「結構。幸運が君たちの上にあらんことを」
ーーー◇ーーー
「整備は万全。キャノピーや翼の空色もピッカピカだ!」
「ありかとうおやっさん」
「今までで一番のチューンナップだ。これさえあればトリガー坊主は誰にも負けやしねえ。あのミスターXクソ野郎にもな」
頼もしい限りである。
フリューゲルの空色もついてる。戦意充分、機体も万全。あとは俺の腕次第だ。
「オペレーション・ライトハウスキーパーを思い出す。あの時トリガー坊主を送った時は元大統領と帰ってくることを疑いもしなかった」
「うん」
「もうお前とは会えねえと思っていたし、本気で軍をやめてやった。だけどまたトリガー坊主に会えたし、ついでに伯爵野郎ともご対面だ。戦闘機で世界が広がったと思ったが。世界は狭いって感じたよ」
「戦場の空なんて何時だって狭苦しいよ。今でも戦場の空は好きになれない」
戦争が終わったら心ゆくまで空を飛んでみよう。
もしかしたら本当に、空と一つになれる場所が見つかるかもしれない。
「では行ってきます、おやっさん」
「あの時話した秘蔵の酒は今でも残してある。今度こそ一緒に飲もうぜ、トリガー坊主!」
「ええ、必ず」
ヘルメットを被りタラップを駆け上がってコクピットに入り、キャノピーを閉じる。
各計器チェック完了、エンジン始動。格納庫を出て誘導路から滑走路へ。
おやっさんを含めて整備士が総出で手を振ってくれている。
必ず彼らの下に戻る。そしてラリーとの約束を果たすんだ。
「ストライダー隊、進路クリア。グッドラック、ストライダー1!」
「誘導感謝する。トリガー、出撃する!!」
翼を広げたF-22Aが空に上がる。
来たる最終決戦が、いま幕を上げた。
どうも、みんながエースコンバット8をやってる時にエースコンバット7で機体縛りプレイを続ける男。作者のブレイブです。
現在Mig-35Dをプレイ中。この機体が終われば次はトップガン機体です。コンプリートまで後わずか。
今回はインターミッション回。ミハイとトリガーのピザパーティー。あとしれっとラリー生きてました的な奴です。
あの捻くれ者が死ぬわけねーよなー!
して、今作はフリューゲルという異物を差し込んだ作品ですが。シュローデルさんもフリューゲルに脳を焼かれた者の一人です。ベルカ人はみんな脳焼かれてますからね!
はてさてどう動くのやら。頑張れ未来の私。
今回のお話が良かったら高評価、コメントを宜しくです。
次回、ミッション15スタート! 運命の日は近い。お楽しみに!