Thank God It's Friday!!! 作:ryanzi
現代日本にしてくれと頼んだのは確かだ。
そして、ろくでもないことが起こっても巻き込まないでくれと頼んだのも確かだ。
だけど、よりにもよって魔法少女まどか☆マギカの世界だとは思わなかった。
唯一の救いは、ここがマギアレコードということであろうか?
それに気づけたのは、キュゥべえの姿を見れてしまったこと。
当然、気づかないふりをした。アレに気づかれると厄介だからだ。
「・・・天気、悪くなってきましたね」
おそらく、ワルプルギスの夜とやらが来ているのだろうか?
前世で一時期Pixivとかでマギレコの絵を見ていたが、正確な知識ではないだろう。
だが、彼女たちは勝つ。それだけは知っている。
「はあ、早く市外に逃げたほうがいいんでしょうけどね・・・」
ふと、路地裏に穴が現われているのを見つけた。
それは建物に、ではなく、空間に開いているのだ。
「・・・ちょうどいい。避難させてもらうとしますか」
なんでこんな判断に至ったのか。彼自身もよくわからなかった。
ただ、ちょっと刺激が欲しかっただけなのかもしれない。
何しろ、転生してからの十三年間は平穏に過ぎてしまったのだから。
穴に入ると、一筋の光がある以外には真っ暗な空間だった。
それに、どことなくふんわりと漂う感覚を覚えた。
その光に向かって行くと、TGIフライデーズという店が見えてきた。
TGIフライデーズ、何だか懐かしい響きだった。
それはまるで、ココ壱番屋を今回の人生で見つけたときと同じ感覚だった。
おそらく前世に存在していたのかもしれないあの店は、この暗い空間でも温かみを感じられた。
そうそう、言い忘れていたが、彼の名前は小野寺遠谷という。
「いらっしゃいませー・・・」
日本ではありえないような、退屈しきった店員の態度。
だが、とくに遠谷も古い良きアメリカっぽいこの店にきちんとした態度は求めていなかった。
アメリカ人といえば日本人より怠慢だというイメージは前世から変わらないのだから。
「では・・・このフライドモッツアレラとマンゴーピーチレモネードスラッシュを」
窓際の席を選び、そこでゆっくりと食べることにした。
フライドモッツアレラは、とてもおいしかった。
窓の外は暗く何も見えない。真っ暗だ。でも怖くはなかった。
むしろ、どういうわけか受け入れられる気がした。
「ようこそ、宇宙の墓場FND404店へ。アンタ、こういったのは初めてだろ?」
一人の店員らしき男がそう話しかけてきた。
「宇宙の墓場・・・ですか。確かに他に星は見当たりませんね。
ここだけ、星が密集していない、ということでしょうか?」
「おっと、そういう意味じゃない。ここは宇宙全体の墓碑なんだ。
アンタ、MG2011宇宙の出身だよな?なんとなくわかんだよ。
失礼に聞こえるかもしれんが、アンタの宇宙は良くも悪くも狂ってる。
当分の間、アンタの宇宙は死ぬことはないだろうな。
でも、この宇宙は結局死んじまった。そしてフライデーズになった」
遠谷はモッツアレラをくわえながら、逡巡した。
そして、一つの結論に辿り着く。
「・・・つまり、この店はかつて宇宙だったと?」
「そういうこった。宇宙の墓場ってのがよくわかっただろ?」
遠谷は笑った。
「おいおい、笑うことないだろ?」
「・・・だって、あまりにも滑稽な終末論ですからね」
「アンタの宇宙だって、あのモフモフがいなけりゃフライデーズだぜ?」
「最悪・・・でもありませんね。少なくとも、死後にこの店は残せたじゃないですか」
「そういう境地に一番早く辿り着けたのは現時点でアンタを含めた数人だけだ。
さてはアンタ、一回死んだことがあるだろう?どれもそんな奴だった」
遠谷は微笑んで何も答えなかった。
「まあそういう奴が来るのも珍しくないさ。
まあ、なんたってアンタの宇宙からは女神さまがたまに来るから」
「女神さま、ですか・・・」
なんとなく誰なのかを察することができた。
「アンタの宇宙とこの店は隣接してんだ。
だから、意外とアンタの宇宙からの客が多いんだ。
まあ、ゆっくりと休んでいきな。アンタの世界は大変だろ?
魔女も魔法少女もいない場所だからな、ここは。
まあ、たまに女神さまがやってくるけどな」
フライドモッツアレラを食べ終わった後、少し寝てしまった。
すっかりぬるくなったジュースを飲んで、代金を支払う。
店を出て、また暗い空間を歩こうとするが、また店に戻った。
ちょっとくらいお土産にテイクアウトしてもいいだろう。
ハンバーガーをいくつか注文して、代金をまた支払う。少々高いが。
光も何もないが、どこを歩けばいいのかなんとなく理解できた。
「よっこらっしょっと・・・まさか瓦礫の下から出る羽目になるとは」
「えっ、遠谷⁉どーして瓦礫の下から⁉」
同級生の三栗あやめに見つかってしまった。
だが、問題はない。お土産があるからだ。
これで問題の本質から目を逸らさせることができる。
「ちょっと道に迷ってしまってね・・・これでもどうですか?」
フライデーズチーズバーガーを差し出した。
「いいの⁉」
「いいですよー・・・それにしても、酷いことになっていますね」
街がなんかボロボロだった。やっぱりワルプルギスの夜だったのだ。
あのよくわからないファストフード店で寝てなければ大変な目に遭ってただろう。
原作介入を望む転生者からすれば、遠谷の行動はドジそのものだろう。
でも、遠谷にとってはもう原作など、どうでもいいものだった。
キュゥべえが何かやらかせば、どうせ一週間が終わるように宇宙が終わるのだから。
何を達成しようと、後に残るはフライデーズというよくわからない店。
だけど、なぜか逆に遠谷は日常を大事に生きようと思った。彼自身もよくわからなかった。
(・・・また機会があれば行ってみますかね)
「これおいしい!どこの店で買ったの⁉」
「フライデーズです」