Thank God It's Friday!!!   作:ryanzi

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金曜日は無限に有限

あれから街を注意深く見まわしてみると、意外と入口が多かった。

一般人も魔法少女も、それぞれ忙しくて気づかないのだ。

まあ、神浜市がボロボロになったのに余裕なのは遠谷くらいなもの。

だから、現時点であの店を知っているのは彼と円環まどかだけだろう。

まあ、それ意外にもいるかもしれないが、遠谷には計り知れないこと。

そんな今日は金曜日。一週間の終わりだ。

それを思うと、またあの店に行きたくなった。

 

「あっ、遠谷くん。ちょっといい?」

 

遊佐葉月に声をかけられた。

 

「何ですか、葉月先輩?」

 

「この前からあやめがフライデーズって店に行きたがってるんだけどさ・・・」

 

彼女の言おうとしていることがわかってしまった。

 

「本当にあるのかって聞きたいんですよね?」

 

「・・・あやめに分けてもらったけど、味もちゃんとしてたし、

あの包装紙だってどこのファストフード店とも違うし・・・。

でも、ネットで検索しても一軒もヒットしなかったんだよね。

あまり遠谷くんのことを疑いたくないんだけどさ・・・」

 

「僕もあまりあの店のことを詳しく言えるわけではありませんが・・・」

 

遠谷はにやっと笑って言った。

 

「はっきりしているのは、あの店を見つけるのは意外と簡単だということ。

ただ、見つける余裕を皆が失ってるだけなんです・・・僕が言えるのはこれぐらいですね」

 

それを聞いた葉月は笑い出した。

 

「まあ、信じてもらえるとは思っていませんでしたが」

 

「違う違う、アタシが笑っちゃったのは・・・

ファストフード店すら見つけれないほど余裕がないんだなってこと。

そういう店って、気軽に食べたいときとか忙しい時に行くもんじゃん。

なのに・・・ちょっと可笑しく思えたというか・・・」

 

「まあ、立地自体が笑い話のようなものですからね。

あと、気を付けてほしいのは・・・少々割高なんですよね。

まあ、信じるか信じないかは葉月先輩次第です」

 

そう言って、遠谷は立ち去った。

葉月は彼の表情を見て、ちょっと納得した。

最近の彼は、確かに余裕がある顔をしているからだ。

 

「・・・なーんか、はぐらかされたような気がするけど」

 

さて、遠谷は人気のない場所に赴き、穴を見つける。

躊躇なく、その穴に飛び込むと、前と同じくらい空間に身を置いていた。

そして、一筋の光が星のように浮かんでいた。

だが、外から見ると、一人だけ客がいるようだ。

 

「おっ、アンタまた来たのか?」

 

店に入るや否や、あの男が声をかけてきた。

 

「ええ、ちょっとは落ち着ける場所なので」

 

「そうか・・・あっちのお嬢さんは話し相手が欲しそうだけどな」

 

一人の少女が手招きしていた。

彼女は遠谷の知り合いに似た雰囲気を持っていた。

だから、ちょっとためらった。

色々と嫌な予感がするからだ。

だが、こんな店では話し相手が欲しいだろうということもわかっていた。

遠谷はフィッシュ&チップスとオレンジスパイスホットティーを注文して、

彼女と同じテーブルの席に座った。

 

「やあ、魔法少女以外にも来るとは思ってなかったよ」

 

「どうも、僕は小野寺遠谷といいます。あなたは?」

 

「私は呉キリカっていうんだ。君もこの店に惹かれたクチだろ?」

 

「まあ、そんな感じですね」

 

遠谷はフィッシュをつまむ。

 

「ほっとできる・・・僕にとってはそんな場所です」

 

「ファストフード店だよ?」

 

「だからこそ、余計にほっとするんでしょうね。

なんといえばいいのか・・・一種の矛盾の狭間にいれるというか・・・」

 

「矛盾の狭間か・・・生と死、多忙と安穏・・・そんな感じかい?」

 

「ええ、そんな感じです」

 

それからは、お互いの注文したものをつまみながら、とりとめもない話をした。

お互いの出身地とか、学校とか、まあそんな話だ。

遠谷も最初は不安だったが、地雷を踏まなければいいとわかった。

その地雷と言うのは”織莉子”という少女のこと。

それでようやく、前世の記憶で該当する部分が蘇った。

まあ、だからといって恐怖が消えるというわけではない。

でも、他人と接するなんてそんなものだ。どんなに親しくても、無意識では恐怖がある。

 

「・・・私がよく言う言葉があるんだ」

 

「何ですか?」

 

「愛は無限に有限、この場所にぴったりと思わないかい?

どんなに無限に思える愛も、いつかはコレだ」

 

キリカは天井を指さした。

遠谷も同意するように頷いた。

 

「少なくとも、愛の終わりというか、世界の終わりというか・・・、

僕たちはそれを表す言葉をいくつも持ち合わせてた。

破局とか、離別とか、終末や末日やアポカリプス・・・。

でも、ここでは二つで済む。金曜日、フライデーズ。

・・・今、思いついたんですが、ここはかつて存在した世界の中心ですから、ここで愛を叫べば」

 

キリカは遠谷を制止する。

 

「おっと、陳腐な映画のタイトルを言うのはやめてくれないかい?」

 

「冗談ですよ。僕もあの映画は好きじゃない。

そもそも、タイトルの元ネタになった小説のリスペクトを感じられない」

 

「じゃあ、君はのっけから野球ドームでの銃乱射を見たいというのかい?」

 

「ははは、ご勘弁を」

 

遠谷は微笑みながらホットティーを一口飲む。

 

「・・・店長さんから聞いたけど、君はさっそく順応したそうじゃないか」

 

「ああ、あの人店長さんでしたか」

 

今さら知ることになった。

 

「今の君もずいぶんと余裕そうだ。

いったいどんな心持ちならそうなるんだい?」

 

「さあ?僕にもわかりません。

ただ、どれだけ忙しく生きてもフライデーズです。

だったら、余裕を持って生きたほうがいい。

少なくとも、僕は喜びを歌いながら生きることに決めました」

 

だって、この世界はソシャゲのマギアレコードで、明るい結末が待っているだろうから。

・・・なんてことはさすがに言えなかったが。

 

「感電するほどの?」

 

「そう、感電するほどの喜びを」

 

「・・・あはは!織莉子を君に会わせてやりたいよ!すっごく話が弾むと思うよ!」

 

お互い、完食すると別々の方向に帰っていった。

やっぱり、彼女も直感で帰れるのだろう。

 

「げほっ・・・まさか海中から出る羽目になるとは」

 

後日、南凪自由学園で「海底人間がやってきたぞ!」という記事が注目を集めた。

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