ギルドJupiterの物語 作:サファリパーク管理者
「ようこそ、ギルドJupiterへ!」
そう僕に挨拶をしてくれたのは一人しかいなかった。
別に残念という訳ではない。そもそも玄関だし、出迎え自体がいることが意外だった。
「靴脱いで入ってきてねー。そこのスリッパ使っていいから。」と言って、彼女は中の部屋に引っ込んでいった。
元春がやっているように自分もスリッパに履き替えて、扉を開けた。
パーン
軽快なクラッカーの音が響き渡った。遅れて紙吹雪も落ちてくる。
「「「ようこそ!!」」」
そこには沢山の見たことのない量の料理と7人の男女が座っていた。
「ようこそギルドJupiterへ、私がギルド長の橋本 楓じゃ」
「皆からは、バアバって呼ばれてるから、そう呼んであげて、樹」
「お姉ちゃん?」
「はいはい、樹くんのお姉ちゃんの結ですよー」
「お姉ちゃんってもう死んだんじゃないの?」
「ここに保護したんだよ。彼奴らに目をつけられれば大凡逃げれねえが、ここは別格だからな。バアバたちのおかげで結構太いパイプとかもあるしな。まあ、それでも大っぴらに活動はできねえけどな。名乗り遅れた、翡翠 結月だ。よろしく頼む」
「お姉ちゃんも結構頑張っているんです。ここに呼べたのはお姉ちゃんのおかげですからね。感謝するなら私にしてください。こんな無愛想な悪ガキじゃなく、わたしに、してください。私は頑張ったんですからね。」
「ありがとうお姉ちゃん。」
そう言って久々会えた喜びに浸っていると、部屋の中が突然暗くなり、部屋の入口の扉が輝き出した。
ご ご ご ご ご
といった不吉じみたおとをならして扉が開き、大きな剣を持った血がついた白衣姿の男性が出てきた。
「ウェルカムプレゼントだ! 神のお告げに従って歩いていったら遺跡に入って引っ張ってきたよ! まあ、調整は必要そうだから明日二階の僕の部屋まで来てね。じゃあ三徹で疲れてから寝るね、おやすみ。」
「おやすみ〜」
あっけにとられる、そんな感覚だった。めっちゃ変人だった。このギルドって、実際はそんなにきつくない?むしろやばいギルド?そんな思いが湧いてくる。
「彼は、このギルドきっての変人だから彼を基準にしないでくださいね。あれ以上はこのギルドにはいませんから。あんな奴でも鍛冶とか魔術とかの腕だけは一流なんですけど。彼のことを私たちはガイって読んでるけど、そもそも本名を知らないのよね。まあ、ガイって呼べばいと思うわよ。」
僕の思考を読めたかのようにお姉ちゃんが話してくれた。お姉ちゃん僕の思考読めるの?なんて考えてしまう。
「当然です。大事な大事な弟くんなんですから。わかるに決まっているでしょう。」
「おどろくからあんまりしないでほしいかな」
そういった感じで楽しい宴会は過ぎていった。
宴会が終わって、与えられた自室でのんびりしていると、突然部屋がノックされた。
「誰ですか?」
「お姉ちゃんです。ギルド長がお呼びです。案内するので付いてきて下さい。」
「わかった。チョット待ってて。」
ドアを開けるとやっぱりお姉ちゃんが立っていた。
「少しゆっくり話そう!」
そう言ってお姉ちゃんは部屋の中に僕を押し戻してベッドに座った。
椅子に座った僕に一言、「迎えに入れるのが遅くなってごめんね」
そう前置いてぽつりぽつりと僕と別れてからの話を話しだした。
両親が借金を残して逃げたこと。
そのせいで、お姉ちゃんも追われたこと。
二人じゃ逃げれなくなって知人の家に僕を預けたこと。
そして闇金の人から逃げ回っていたこと。
その途中で彼らを検挙しようとしていた翡翠姉妹と出会ったこと。
そんな彼らのおかげで借金は実際の金額より多くふっかけられていたことがわかったこと。
彼らのギルドに協力するという形で借金を肩代わりしてもらったこと。
樹のことを相談したらギルド長が受け入れてくれることになったこと。
元春のことを別のメンバーが推薦して引き抜いてきたこと。
やっと自分なりのけじめが付いて向かい入れられる状況になったこと。
そう言って話した僕らの距離は以前よりも少し遠かったけど、それでも僕は嬉しかった。お姉ちゃんが僕を捨てたわけでないとわかったから。
「じゃあ行こっか、ばあばのところへ。」
そう言って僕らは歩き出した。
宴会をやった隣の部屋に僕を連れてきたお姉ちゃんは、外で待っているから、と僕を和室に送り出した。
「座椅子に座りなさい」
そうギルド長が言ってくる。
「では失礼します。」
「礼儀なんて気にしなくていいんだよ。どのみち君たちなんか私達からしたらガキでしかないんだしね。そもそも子供が大人に気を使う必要なんてないんだよ。」
そう言ってギルド長が話し始めた。
「君を引き入れたのは、占いの結果それが最良の結果を導くという事がわかったからだ。申し訳ないが、君を遊ばせておく余裕はない。だからこそ君が本気で挑まないならば我々はスペアプランを使用するだけだ。まだ時間的な余裕は残っている。我々のスペアプランは確かに代償が大きすぎるが、人類滅亡と比べればマシだと推察しただけだ。だから、実行しないならそれ良いだけなのだ。」
だから、とギルド長は続けた。
「君が戦わないのは特段不思議じゃない。辛いことから逃げるのもまた人間の本性だ。」
「覚悟はある。僕は戦う。」
「その意志があれば貴方はもう大丈夫。試すような発言は悪かったね。少し深いところまでお話しようか。帝国についても多少話そう。
ある程度説明すると、北の方に人類と1500年前戦いあった神の中で、最も人類に敵対的な神たる魔獣の神いて、そいつが魔獣を生み出し続けている。そして彼自身は侵攻の機会を伺っていると推測されている。この国は結界は終焉神と呼ばれるものが核となって作られた。ただ、あくまでこの結界は補助的なものだ。魔獣たちの生命力を弱め、侵入をある程度拒む結界。この結界自体はあと数百年は持つ。だが最も重要な中央大結界がもうじきに機能停止になる。この結界は帝国より南にある神聖中央国の首都に結界の核があり、その結界が多くの機能を担っているが、最も肝心な機能である魔獣の神などの侵攻に即して彼らの権能を弱める機能なども備わっている。帝国上層部や神聖中央国上層部なども同様の意見を持っている。もはや侵攻は時間の問題で人類絶滅は確定的だと。
だがら人には英雄が必要なのだ。かつての英雄なども現状ここに残っているのは5人だけだ。ただ、神と相対することだけに英雄が必要なわけでない。神を殺しきっても潜在的な敵である竜種や残党魔獣、挙げ句には人類で世界大戦すら起きかねない。それらに対する抑止力としても英雄の存在は必要なのだ。」
「若者に過酷な運命を背負わせてしまっているのは、非常に申し訳なく思う。だってこれは1500年以上前に我々が成し遂げるべきことだったから。ただ守るものが多くなり、必要な準備も増えてしまった。ただどうか我らの悲願を達成するために力を貸して欲しい。」
そんな難しいことを言われてもわからないっていうのが本音としてある。でもそれでもなにかしたいと思えるんだ。
「僕の夢は、お姉ちゃんと再会することでした。そんな願いをあなた方は助けてくれた。そして、貴方はただ真摯に人の為を思って動いているし、お姉ちゃんも協力している、なら僕が助けるのはそれで十分です。」
お姉ちゃんも元春もみんなで暮らせる世界、そんな世界を守りたいっていう意志が伝わってきたし、みんなここにいて後悔はしていないようだった。なら僕にとってはもう十分すぎるくらいな理由だった。
「ありがとう。明日から鍛錬をしてもらおう。チョット待っててね。」
そう言ってギルド長は電話をして誰かを呼び出した。
少し重い話も入っていたために息が詰まっていたかのようだったが、ふっと見回すと本当によく手入れされた部屋だった。
「この家の中でライトがこの部屋をいたく気に入っていてね。だからまた起きるまで私が守っているのさ。この家も築1500年ほど建っているがいい家だからね。大切に使っておくれ」
懐かしい思い出を思い返しているんだろう。とっても優しい顔だった。
扉の絵や壁掛けの絵を眺めて自分にもこんなふうに待っていてくれる人がいるのかなあなんて思っていると。
バーン
大きな音を出して横戸が思いっきり開け放たれた。そして長髪で白髪の男が入ってきた。
「エムリスだぞー。こと剣の腕に関しては誰にも負けるつもりがないからな。よろしく、樹くん。」
「入ってきてそうそうふっかけない。彼はエムリス、このギルド創設メンバーの一人でかつて神と戦った英雄の一人だよ。まああまり硬くならずに付き合えばいい。ここには年齢や強さでとやかく言う人間はいないからね。」
その名を聞いて大凡の人は驚くだろう。エムリスの名前は聞いたことがある。たしか英雄譚で当時最強パーティーの一つと言われていた「覇者の集い」で戦い抜いた英雄の一人で、その足取りは東の皇国で途絶えたと言われていたはずだ。
「東の皇国で仲違いをしてね。まあ強い敵と戦いたい私にとってあまり強くない昆虫が大群を生して攻めてくるんだが、僕の役目はもっぱら魔術師の護衛だったからねえ。僕の魔術も群れなどを相手するものではないし、彼らだけでもどうにかなりそうだったから抜けさせてもらったのさ。幸い強いものだったし、寿命もあまり関係ないしね。そもそも僕らのように特定の種族、つまりアルブやエルフ、他にも竜人といった種族は寿命が人の数十倍は長いし、神や妖精のように寿命なんて概念がない種族もあるからね。そういった意味で時間は人よりはたくさんあるんだ。」
「だから強い敵と戦う事ができるここは最適だし、その結果人の営みを守れるなんて最高なんだ。だって僕は人が好きだからね。だから君にも期待してるよ。」
「早速明日から色々と鍛錬を指導していくよ明日の朝食はバカが7時半から作っていると思うからそこで詳しいことは話すから。」
そう言って彼は僕を部屋の外に出した。
部屋の外で座っていたお姉ちゃんと一緒に部屋まで帰って、翌日に備えて寝ることにした。