俺ガイル~別れ、そして出会い~君の一番星に【城廻めぐり編】 完 作:慢次郎
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結衣は、勇気を振り絞って言ってきた。
「あ、あのあの、あのね、クッキーを…」
言いかけて八幡の顔をちらっと見る。八幡もああそうかと思い、廊下へ向かう。
「比企谷君、空気が読めるのね」
「あのな、俺はこの空気が読めないほどバカじゃねぇよ。何か飲み物でも買ってくるわ」
「ごめんなさいね、私は【野菜生活100%いちごヨーグルトミックス】でいいわ」
「わかった」
八幡はそう言って廊下へ出る。廊下を歩きながら
「特別棟の1階には自動販売機はあったはず」
廊下を歩きながら何かを思い出していた。
「そう言えば、綾音のために病院の自販機に何回往復したかね…」
八幡が好きな飲み物、MAXコーヒー、だがもう飲んでいない。綾音が亡くなってから、一度も飲んでいない。いや飲んでいないのではない。飲めなくなったのだ。
MAXコーヒーは、八幡と綾音が共に好きだったのだ。
だが今の八幡は、飲めない。飲むと胸が苦しくなり、目から涙がこぼれてしまう。
だから、甘くないブラックコーヒーか、緑茶を飲んでいる。
1階の購買部の横にある自販機の前まで来た。この自販機には、おかしな紙カップに詰まった謎のジュースがある。
イチゴおでん
ヤシのみサイダー
学◯都◯の自販機のヤツかと、八幡はツッコミたくなる。
しばらく、自販機に売られている商品を品定めをしていると、突然視界が手の感触共に暗くなり
「だーれだ?」
「はぁ~、あのな綾香だろ?」
「正解、なんでわかったの?」
「この学校で俺に目隠ししてくる女子なんて、お前しかいないって」
八幡にそんなことをする女子なんか、総武高校内では、皆無だろう。何故綾香がこんな人気の無い特別棟にいるのか疑問であった。
「何で、こんな人気の無い特別棟に?」
「八幡お兄ちゃんの姿が見えたから、来ただけです。それに元気の無さそうに見えたから」
「まあ、俺に元気の無い事が分かる女はお前だけかも」
「……それは嬉しいですけど、それでも…」
「それでも、何だ?」
「八幡お兄ちゃん、大丈夫?まだお姉ちゃんの事を?」
「まあな。綾音の事をどうしても思い出してしまう…。好きだったMAXコーヒーも飲めない…」
「MAXコーヒー、お姉ちゃんも好きだったな…。八幡お兄ちゃんとの思い出の味って言ってましたし」
「そうか、アハハ、アイツらしいな。思い出の味か……」
「八幡お兄ちゃん、私がその悲しみを埋めてあげるよ」
「馬鹿!そんな生意気言うヤツに育てたつもりはないぞ」
「私は…!」
八幡は、自販機に500円を入れて、野菜生活、カフェオレを購入し、自分の分のお茶、そして、綾香の分のカフェオレを購入して、渡す。
「ほらっ、綾香の好きなカフェオレだ」
「あ、ありがとう、八幡お兄ちゃん!って緑茶はお兄ちゃんの分で後の2本、野菜生活とカフェオレって誰の?」
「1つは、部活の部員に分、後は依頼者の分だな」
「女?」
「す、鋭いな。まあ、そうだな」
「危険……」
「はぁ?危険?馬鹿、そんなことはない。アイツらは、俺の事を嫌っているからな」
「じぃ~」
八幡は、綾香のそれを見ると、綾音に似ている。やはり姉妹だと思った。ジト目をする反応とか似ているなと。すると綾香を探している人物が現れる。
「雪柳さん、こんなとこにいた!」
「ごめんなさい、ちょっと喉が渇いて」
「そうだったんだ。あ、比企谷君じゃないの。雪柳さんと話したんだ」
八幡と綾香に話しかけたのは、吹寄だった。
「まあな」
「2人ってどんな関係?」
「こいび…!」
綾香が何を言わんとしてたから、口を塞いで
「ただの幼なじみだよ」
「ふーん~」
「疑われてる?」
「別に?」
「はちまんおにいちゃん、手をどけて!」
「すまん」
八幡は綾香の口から手を放す。一方、吹寄は綾香を水泳部に勧誘しているらしい。ただ綾香は、1年生の中で人気があるようで、どの部活も狙ってるらしい。
それと、1年生の間では、綾香は男女共に人気がある。だからこその競争なんだろう。
「それではいきましょう、雪柳さん」
「じゃあ、また後でね、八幡お兄ちゃん!」
そう言うと吹寄と綾香は、特別棟から出ていった。
「綾香のヤツ、昔は地味目だったけど、1年のアイドル的存在か…」
八幡は、立派に育ったと感心しつつ、1年のアイドル的存在には、不安感もある。つまりは、変な男がつかないか不安でもあるが、綾香自身は八幡にしか興味がないからどうなることか。
「さてと、俺も戻るとするか」
八幡は、奉仕部のある教室へ戻る。
奉仕部の扉を開けると、雪乃が
「遅い、寄り道谷君は、どこを寄り道してたのかしら?」
雪乃はそう言って野菜生活をひったくって、ストローを刺すと飲み始める。八幡は貶す事はできても、礼の1つも言えないのかと思った。
残った飲み物でカフェオレと緑茶で、カフェオレが誰のものなのか、結衣は気づいて
「はい」
結衣はそう言ってポシェットみたいな小銭入れから100円玉を取り出す。
「別に入らない。俺の奢りだ」
八幡は、結衣の100円玉を受け取らず、カフェオレを両手に乗せる。
「あ、ありがとう」
結衣は小さな声でお礼を言って、嬉しそうにカフェオレを両手で持ってはにかんでいた。
八幡は本題に入るために雪乃に話しかける。
「ところで、雪ノ下、話は終わったのか?」
「ええ、貴方がいないおかけで、スムーズに話が進んだわ。ありがとう」
「それは良かったな。で、何をするんだ?」
「家庭科室へ行くわ」
「あ、そう家庭科室にね」
「もちろん、比企谷君も来るのよ」
「家庭科室?」
八幡は、本日2回目の家庭科室に行かされることに。
本日は家庭科室の確率が高いのか。
何故だろう?
ただ誰も答えてくれるわけはない。
八幡は、家庭科室で何をするのか聞いてみる。
「家庭科室で何をするんだ?調理実習でもやるのか?」
「調理実習じゃないわ。クッキーを焼くのよ」
「クッキーか…。まあ妥当かな」
「由比ヶ浜さんは、手作りクッキーを食べてほしい人がいるのそうよ。でも、自信がないから手伝って欲しい、というのが彼女のお願いよ」
「なるほどな」
「う……、そ、それはその……、あんまり知られたくないし、こういうことしての知られたら多分馬鹿にされるし、こういうマジっぽい雰囲気、友達とは合わない、から」
由比ヶ浜は、視線を泳がしながら答えた。ふっ、と小さくため息をついてしまった。
八幡は、結衣がどこの男子にクッキーをプレゼントしたい。だが内輪の連中には知られたくはない。
「つまり、お前は、その相手の為にクッキーを作りたいんだな?」
「うん」
「まあ、男子ってもんは女子から貰うものは、嬉しいものさ」
「本当に?」
「ああ…」
結衣は、パッと笑顔になった。
「俺達は、由比ヶ浜を手伝うって形でいいんだよな?」
「ええ、そうよ。私達はあくまでも手助けをするだけだから」
「ああ」
八幡、雪乃、結衣の3人はクッキーを作るため家庭科室へ向かった。
今回はクッキー作りですね。
綾香は、1年生の中でいろはと二大美少女と格付けていきますね。
参考までに、to be continue後の世界は何が良いですか?
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1ーありふれた職業で世界最強。
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2ー魔法科高校の劣等生(優等生も含む)