「国玉さ~ん!こっちです!」
水篠さんが俺を呼ぶ声が聞こえた。その方向を見れば、二人の男女が立っている。
「お!あれが弟のハンター友達かな?」
「まあ、うん」
俺はなんだか少しむずがゆくなった。
姉はかなりおしゃれして来ており、美人…というより、美少女の方が近い気がするが、美人のため、とても目立つ。俺は姉にカッコいいからこれ着てみて!と無理矢理着させられた服だ。
「やあ、初めまして。私は国玉夜もとい弟の姉、国玉青空っていいます!よろしくね!」
「はい、初めまして。俺は水篠旬といいます。国玉さんにはいつもお世話になっています」
「あ、えっと、初めまして。水篠葵です」
水篠さんに続いて、水篠さんの妹さんが挨拶をするが、少したどたどしい。
すると、姉が俺と水篠さんを交互に凝視し始める。
「…うん!やっぱり弟の方がかっこいいね!」
「……は?なんで?」
「ん?顔だよ?」
「いや、そういう事を聞いてるんじゃない。というか、脈絡が無さすぎる。何で急に比べ始めたの?」
「葵ちゃん、お話しよ~」
「えっ?」
「聞けよ…!」
俺は着いたばかりなのに自由奔放すぎる姉に振りまわされる。20年ほど姉と一緒にいて、俺はまだ姉を理解できていなかった。そもそも、俺の方がかっこいいというのはありえない。
「水篠さん、すいません……」
「ハハ…、大変そうですね…国玉さん」
「まあ、はい。俺が弟のはずなのに、おっきい子供をお世話してる気分になりますよ」
目の前で楽しそうに、水篠さんの妹さんと喋る姉を見ながら、そう話す。
突然、姉が振り返った。
「ねえねえ、弟。ややこしいから、水篠さん呼びじゃなくて、下の名前で呼んでくれないかな?ついでに、旬くんも弟を国玉じゃなくて、夜と呼べ!」
……何故、水篠さんに対しては命令口調なのだろうか…?
「ハリーアップ!」
「……旬…さん」
「えっと、夜……さん」
「よろしい!」
俺達はこれまでお互いの苗字で呼んできたのに、急に名前で呼ぶことになって、ちょっと気恥ずかしい。…水篠さんには本当に申し訳ない…。
俺達四人が席に着くと、ウェイトレスがメニュー表を持ってくる。
「メニューはこちらになっております。コースをご希望の場合、こちらのコースがおすすめとなっております」
全員がそのおすすめのコースを選び、その後は特に何事もなく進んだ。
そして、改めて思ったのは、やはり姉は喋らなければ、美人だという事。というか、喋るなと言いたい。姉は料理を食べるその姿さえ、華があるのだから。
ただ、ワインを飲んでしまった結果、華が無くなったが。
「今日はありがとうございました」
「いえいえ、お礼をしただけですので」
俺達は食べ終わり、レストランの外へ出た。
俺が旬さんへお礼をしていると、
「えーい!」
「キャッ…」
酔った姉さんが、旬さんの妹さんを俺の方へと突き飛ばす。
「っと、大丈夫?」
「は、はぃ……」
俺は嫌わているのだろうか?話しかけると、すぐに下を向いてしまった。
「ごめん、すぐ離れるね。……ちょっと、姉さん!」
俺はすぐに旬さんの妹さんから離れると、何故かニヤニヤとしている姉さんに話しかける。
「ん~?どした、弟よ~」
「いや、さっき、旬さんの妹さんを突き飛ばしただろ」
「旬さんの妹さんて、名前覚えてないの!?」
姉さんがわざとらしく驚く。
「いや、そういうわけじゃない。名前は憶えてる。って、そうじゃなくて、危ないだろ」
「でも、弟が受け止めてたから、危なくなかったじゃん」
「いや、俺が受け止めてなかったらどうするんだよ」
「それは無いね!だって弟だもん!」
「何だよその自信は……。ともかく、危ないから、ああいう事はするな」
「りょうかーい」
姉さんが軽い返事をし、家へと帰っていく。
「すいません。それでは」
俺は軽く会釈をすると、姉を追いかけて行った。
「……そういえば、ドッペルゲンガーって二体いるのか?」
プレイヤーになって約一ヶ月後、または、ディナーの日から約二十日。デイリークエスト中にそんな事を言った。
一体のドッペルゲンガーを倒し終わった後に思ったのだ。
デイリークエストを二倍こなすと、シークレットクエストになる。しかし、俺が試したのは、強者を超えるために のみ。ならば、弱者を超えて強者を目指して だとどうなるのだろうかと。
俺はとりあえず、探しに行く。
暫く探すが、一向に見つかる気配がない。
まあ、ただの思い付きなので、別に居ても居なくてもどちらでもいいのだが。
俺はウィンドウを開き、はいを押して帰還しようとすると、黒い影がこちらへ向かっているのが見えた。しかし、俺の手はもう、はいを押してしまっており、黒い影が俺に攻撃す前に、家へと戻る。
「は?ちょ、待って…、居たじゃん…。もう少し探していれば……」
少し悔しいが、これは明日にしよう。
俺は報酬を受け取る。
すると、電話が鳴った。表示されているものを見れば、協会からの連絡だった。
緊急招集を受け、その集合場所に近づくと、話す二人が見える。
恰好からして、一人は旬さんだ。もう一人は腕を失っているので、馬渕さんか……
俺はその二人が見える後方で歩き、集合場所へと着く。
「君は…国玉くん…か?」
俺に気付いた馬渕さんに声を掛けられる。
「ああ、はい。そうですよ。馬渕さんもお元気そうで何よりです」
「いやはや、二人がこんなにも変わるとは……」
二人…というのは、俺と水篠さんか。
「そういえば、腕はどうしたんだ?」
「俺にもわかりませんが、気づいたら治ってまして」
「そうか。水篠くんにも言ったんだが、回復して本当によかったよ。君たちは私と違って先が長いからな」
そう言って、馬渕さんが笑う。
他のメンバーは、あの二重ダンジョンの時のメンバーだ。
他のメンバーがこちらを向くが、俺は会釈をするだけで、特に会話をしない。
旬さんと観月さんが話し始める。
「いや~、熱いね~」
離す二人を茶化す声が聞こえた。
ワンボックスカーから降りてきたその声の主は、オレンジの囚人服を着て、手錠をかけている。
三人の囚人が降りてくると、協会の男が静かにしろと注意をした。
馬渕さんはあの囚人らはどういう事かと、俺、馬渕さん、旬さんの三人を手続きすると駆け寄ってきた協会の女性に聞く。
話を聞くと、どうやらこの区域のハンター数が減ったので、俺達と一緒にレイドに参加する代役服役者らしい。
彼らは滅刑目的で代役服役をしているので、危険行為をしないはずだし、B級の監視課の道門も参加するので安心してほしいとのこと。
旬さんが、不安と言って、観月さんに参加を見送るのを進めるが、旬さんが自分は参加する。と言うと、観月さんも参加すると言う。
俺達は、かなり不安なメンバーで、ゲートへと向かった。
この作品では数ヶ月を一ヶ月ほどにしておきます