――――目が覚めた。
「ッ!ハァ、ハァ……」
すぐに記憶の確認をする。
…欠けた記憶は…多分、無いか。ここは…病院?左腕と、腹から右肩にかけての傷は無い。…ああ、そうか。プレイヤーになれたからか。
俺は転生時以来、初めてこの世界に感謝する。
目の前にメッセージウィンドウが出現するが、確認する前に、病室の扉が開く。
「気が付かれたようですね」
俺の病室に入ってきたのは、黒服を着た二人の男だ。
「すみません、どなたでしょうか?」
まあ、ハンター協会の監視課だろうが。
「こういう者です」
そう言って渡された名刺には俺の予想通り、日本ハンター協会監視課と書かれている。
「ふむ。それで、監視課の方が何故ここに?」
俺は監視課の人たちから説明を受ける。
まず初めに、俺が三日間眠っていたことを知らされた。まあ、ここは三日以下の間眠っていたのなら別によかった。四日を超えると、恐らく俺と水篠さんの力に大きな差が生まれてしまう。だから、三日以下だ。
力の差が開いてはいけない理由としては、まず、俺という世界にとってのイレギュラーだ。俺がプレイヤーになったことにより、この世界に何らかの影響を与えるのは確実。その影響により水篠さんだけで対応できない、ナニカがあれば、俺がその何かに対応できるようにするためだ。
三日眠っていたことを知らされると、次に今回の二重ダンジョンについての説明を受けた。
二重ダンジョンには俺と水篠さん以外、何もなくなっていたとのこと。
「ちなみに、これは我々の予想ですが、国玉ハンター、覚醒後の覚醒。所謂再覚醒をしたのではないですか?」
どうやら俺に再覚醒したのではないか?という疑いがあるらしい。
俺は魔力測定器を前に出され、手をかざしてくださいと言われ、言われたとおりにする。
まあ、恐らく、魔力は10。プレイヤーになった後の初期ステータスは全て10。そして、予想だが、魔力は知力に依存するはず。そうじゃなければ、レベルに依存だと思う。まあ、違うとしても、詳細を知るすべはないが。
「どうです?再覚醒なんてしてませんでしょう?俺は最弱ですよ?」
「え、ええ。そうですね」
自信満々に最弱と言う俺に監視課の人は困惑していた。
俺の魔力測定が終わると、監視課の人達は帰ったが、それと入れ替わるように違う人物が入ってくる。
「やっほー、弟よ!愛しの私が来たぞぉ!!」
「うるせぇ…、何?姉さん」
「うわぉ…さすが私の弟。気が付いたばかりというのにいつもよりクールだぜぃ……」
何故かうんうんと頷くその人物は、俺の姉だ。
名前は国玉…
「ねぇねぇ、弟?お姉ちゃんの
……うぜぇ…
「いや、特に無いかな。俺はその三日の間眠っていたから三日ぶりという感じはないし」
「えー、辛辣ぅ…あ、そういえば近くのコンビニで弁当買ってきたんだけど、どう?要る?」
「病人がコンビニ弁当喰えるわけ無いでしょ」
「え?病人なの?」
「……三日眠ってたやつにコンビニ弁当食わすなよ」
「はーい」
そう言って姉はコンビニ弁当をここで食い出す。
「いや、ここで食うなよ…っていうか、用が済んだなら早く帰って欲しいんだけど」
「くっ、三日も眠っていたから、少しは弱気になった可愛い弟が見られると思ったのに、いつも通りとは……。んじゃ、帰るね~」
騒がしい姉は、バイバーイと言って病室を出て行った。
俺はようやく、メッセージの確認ができる。
「メッセージを開く」
多分、念じるだけでもいいのだろうが、一応、声でも開けるのかを確認したかった。
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メッセージ
プレイヤーになりました
(未承認)
デイリークエスト:強者を超えるためにが届きました
(未承認)
デイリークエスト:弱者を超えて強者を目指してが届きました
(未承認)
スペシャルクエスト:王への道標
(未承認)
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プレイヤーになりました は別にいいとして、この下の三つだな。
「「強者を超えるために」を確認」
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デイリークエスト―強者を超えるために
目標
―腕立て伏せ 0/500
―腹筋 0/500
―スクワット 0/500
―ランニング 0/30㎞
注意―すべて完了できない場合、ペナルティーが科せられます。
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…うん、やりすぎはよくないと思うんだよね、俺。というか、何で水篠さんよりもきついんだ?いや、別にきついのはどうでもいんだが、出来れば水篠さんよりも簡単なやつにしてほしかった。出来るだけ人目に付かずやりたかったからな。
俺はメッセージに戻り、もう一つのデイリークエストを確認する。
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デイリークエスト―弱者を超えて強者を目指して
目標
―夢の回廊の攻略 0/1
夢の回廊へ行きますか?
はい いいえ
注意―完了できない場合、ペナルティーが科せられます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
夢の回廊とは何だ?というか、攻略?無理では?初期ステータスだよ?いや、初期ステータスでも攻略できるようにできてるのかもしれないが。
ただ、今日はペナルティークエストの報酬が知りたいので、ペナルティーを受ける……、あれ?二つのペナルティー受けたらどうなるんだ?…俺大丈夫かな。
俺はペナルティーに少しの不安を抱きながらも、いいえを選び、もう一つのクエストを確認しようとする。
「「王への道標」を確認」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
スペシャルクエスト―王への道標
現在はクエスト内容が確認できません。
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どうやら、スペシャルクエストを確認することができないらしい。
しかし、現在は、だ。
つまり、レベルを上げることや、特定の職業を得ることで内容が分かる可能性がある。
まあ、分からないのなら、分かるまで待つだけだ。
俺は確認を終えると、ウィンドウを閉じ、すぐに眠りにつく。
ペナルティークエストのために。
――
「げふっ!」
俺はペナルティークエスト開始と同時に、重力により砂へと叩きつけられる。
「漫画と同じで砂漠か…」
そう言うと、近くの砂が盛り上がり、巨大毒牙砂ムカデというモンスターが現れる。
ピロンッと音とともにウィンドウが出現した。
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クエスト案内
ペナルティークエスト:生存
目標
ペナルティー時間まで生存してください
ペナルティー時間:10時間
残り:9時間 59分 55秒
涙の慈悲を受けることができます。
涙の慈悲を受けますか?
はい いいえ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
……今回の教訓。二重のペナルティークエストは受けないようにしよう。
俺はすぐに涙の慈悲を受け、走り出した。
「くそがあああぁぁぁぁ!!」
涙の慈悲
プレイヤーの能力値にペナルティー終了まで+15する代わり、ペナルティーエリアに出現したモンスターの数を倍にする。
現実の世界。
国玉夜の病室にある時計は、午前5時を指そうとしていた。
すると、5時になった瞬間、ザッと病室ではなるはずのない砂の音と共に、国玉夜が帰ってきた。
「ッ、ハァハァハァハァ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……ゴホッ」
国玉夜が息を荒げていると目の前にウィンドウが出現したが、それを確認する体力は無く、国玉夜は死んだように眠った。
その日、十一時ほどに起き、色々と検査され、ペナルティークエストの報酬を確認できたのは、正午だった。
ペナルティークエストは涙の慈悲が無ければ、4時間以上、生き残れなかっただろう。
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ペナルティークエストの報酬が支給されました。
報酬を確認しますか?
はい いいえ
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俺ははいを選択する。
「さてと、ペナルティークエストの報酬は何だ?」
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受け取る報酬を選んでください
次の報酬を受け取れます
報酬1.状態の完全回復
報酬2.能力値ポイント
報酬3.アイテムボックス
報酬4.ランダム
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ん?報酬の表示の仕方が水篠さんと少し違う?システム外クエストか、特殊条件によりプレイヤーになったせいか?
俺はそう思いつつも、報酬を受け取る。
「全報酬を受け取る」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
受け取る報酬を選んでください
次の報酬を受け取れます
報酬1.状態の完全回復
報酬2.能力値ポイント
報酬3.ランダムボックス
報酬4.ランダム
全ての報酬を一括で受け取ります。
よろしいですか?
はい いいえ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺がはいを選択すると、体の疲れが一気に取れ、目の前に二つのボックスと、白い可愛らしい髪飾りが出現した。ステータスを見れば、分配可能ポイントが5に増えている。
二つのアイテムボックスからは、壊れかけの木剣と、ボールペンが出てきた。
ペナルティークエストの報酬は、恐らくデイリークエストで得れる報酬。俺の場合は二つ分だ。
俺はさっさとアイテムをインベントリにしまうと、ステータスにポイントを分配する。
水篠さんがインスタンスダンジョンに潜るまで今日を合わせて、後、三日。
まあ、今実用的なのは、筋力と俊敏のみだ。
俺はポイントを全て俊敏へと分配する。
デイリークエストの残り時間を確認した。
タイマーがどれだけの時間で設定されているかは分からないが、タイマーは警告を示すかのように黄色くなっている。
それを見ると、すぐにデイリークエスト、強者を超えるために を始める。
「ハァ、ハァ、ラスト一周!!」
俺は最後の力を振り絞り、ラストスパートをかける。
俺がデイリークエスト、強者を超えるために が終わったのは、俺がやり始めてから二時間後の事だった。
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デイリークエスト―強者を超えるために
目標
―腕立て伏せ 500/500
―腹筋 500/500
―スクワット 500/500
―ランニング 30/30㎞
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺はデイリークエストのウィンドウが閉じ、報酬を受け取ったというウィンドウが出た瞬間、全ての報酬を受け取る。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
クエストを完了しました。
次の報酬を受け取れます。
報酬1.状態の完全回復
報酬2.能力値ポイント
報酬3.ランダムボックス
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「全…、ほ、報酬、を、受け、と、る」
言葉は途切れ途切れだったが、認識されたのか疲労が回復され、目の前にボックスが二つ現れた。
俺はとりあえず近くのベンチに座り、ボックスから出たアイテムをインベントリへと入れる。
今回のアイテムは、魔力のこもった長剣という名前の剣と、氷月花の髪飾りというアイテム。
二回連続で報酬から髪飾りが出てくるというのは、俺が髪飾りに好かれているのだろうか。
そんな冗談は置いといて、俺は人の目に着かない所へ行き、もう一つのデイリークエスト、弱者を超えて強者を目指して を確認する。
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デイリークエスト―弱者を超えて強者を目指して
目標
―夢の回廊の攻略 0/1
夢の回廊へ行きますか?
はい いいえ
注意―完了できない場合、ペナルティーが科せられます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
弱者を超えて強者を目指して のタイマーを見ると、赤くなっており、あと少しで針が一周しそうだ。
しかし、それに焦り、はいを選択するわけにはいかない。
弱者を超えて強者を目指して の目標は夢の回廊の攻略。攻略という事は、ダンジョンである可能性が高い。もし、ダンジョンであるのなら、夢の回廊のランクによって、完了せずにペナルティークエストを受けたほうが生存率が高い、または、死なないだろう。
ただ、このクエストを食わず嫌いするわけにもいかない。
俺は夢の回廊をダンジョンだと予想し、帰還石が受け取れる事を願いながら、はいを選択した。
そこは黒かった。
先は何も見えず、暗黒が延々と続く。
ただ、何故かこの世界は昼のように光に照らされていた。
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夢の回廊へようこそ!
夢の回廊へようこそ。ここ、夢の回廊では、ドッペルゲンガーというモンスターが、あなたに合わせた能力値に変化し、襲ってきます。
夢の回廊の攻略方法は一つ。
四時間以内にドッペルゲンガーを討伐してください。
この世界はあなたの世界の60倍の速度で時間が過ぎます。
ただ、時間感覚は変化しません。
夢の回廊
目標
ドッペルゲンガー討伐 0/1
制限時間:4時間
残り:3時間 59分 57秒
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パッとウィンドウが出現する。帰還石は無かった。
どうやら、俺に合わせた強さできてくれるらしい。
俺はとりあえず安心し、辺りを見渡す。
しかし、何処を見ても黒、黒、黒。一切景色が変化しない。
一応、インベントリから、俺の鉄剣を取り出す。一万程度の鉄剣だが、他のハンターが持っている武器と比べると、かなり安い。
『んぴゃ…』
俺は気持ちの悪い声が後ろから聞こえると、咄嗟にその場を離れる。
『むじゃ…んひゃ…んみゅみゅみゅ…』
俺だけかもしれないが、気色悪く、ただただ、気分を不快にさせる声を発するソレは、全身が真っ黒な人型の何かだった。恐らくこいつがドッペルゲンガーなのだろう。
全身が黒いのに、この世界でも見えているのは、ブラックホールのような辺りの景色と違い、光を反射する黒だからだろう。
俺はすぐに鉄剣を構える。
すると、ドッペルゲンガーも剣の形をした黒い物を持ち、構える。
どうやら、この世界は黒が大好きらしい。
そんな関係ないことを考えながら、ドッペルゲンガーへと向かっていく。