何処に行っても牢屋ばかりで、牢屋地帯から抜け出せない。
ほとんど変わらない景色を五十分ほど見ており、そろそろ飽きた。
静かなここでは、俺の足音と壁に掛けられている松明の炎が燃える音がよく聞こえる。などと、どうでもいいことを考える。
まっすぐ進んでいると、両開きの鉄扉が見えてきた。
やっと見つけた牢屋以外の物で、俺はすぐにその扉を開いて中へと入ると、白銀の綺麗な体毛を持っている鹿型のモンスターがいた。頭上には赤文字で白銀のセイジャと書かれている。
俺はセイジャに見とれていると、セイジャがこちらに気付き、車以上の速度で突進してきた。
「やっべ!」
俺は慌ててインベントリから大剣を取り出し、セイジャがこの大剣の射程圏内に入った瞬間に、振り下ろす。
セイジャは大剣により、両断された。すると、ウィンドウが出現する。
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お知らせ
白銀のセイジャを討伐しました
レベルがアップしました
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俺はレベルが上がった事を喜ぶが、すぐに大剣をしまうと、長剣へと持ち替え、警戒する。
『ヒィィィィイイイン』
大きな鳴き声が聞こえると、無数の足音が響き、地面が揺れる。
「嘘だろ?」
奥からセイジャの大群が押し寄せてくるのが見えると、俺はすぐにそこを離れようとする。しかし、目の前にウィンドウが出現した。
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緊急クエスト:セイジャの大群を殲滅せよ
現在、ダンジョン内に出現した全てのセイジャが押し寄せてきます。
すぐに殲滅してください
殲滅しない場合、システムを失います。
残りセイジャ:342体
討伐数:0
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「……無理でしょ?」
俺は押し寄せる大群を見ながらそう呟く。そもそも、何故人間ではないのに緊急クエストが出るのだろうか。
しかし、システムを失う受けにはいかない。俺がこの世界に来たことによる変化がある可能性が少しでもあるなら。
……ああ、くそっ、やってやる。
高い壁?厳しい試練?ああ、何だってやってやるよ。
どんなに理不尽な事でも乗り越えてやる。
守りたいもの?そんな物は無い。頼れる人間?そんな物もない。
それでも。それでも、このクソみたいな世界を生き抜いてやる。
俺はそう決心し、その大群に向かっていた。
セイジャたちは強く硬かった。セイジャの後ろをとっても、蹴りで返され、中途半端な力では傷を与えるだけで、逆に攻撃を受けてしまうことも多々あった。あのセイジャを両断できたのは、大剣の重量と切れ味で思い切り振り下ろしたおかげだと実感した。
レベルが上がれば上がるほど、楽にはなったが、それでも疲労が100を超えているせいか、とてもきつい。
何故、動けているのか分からないほど、俺は肉体的に限界で、すぐにでも逃げ出したい気持ちではあったが、身体に鞭を打ってセイジャを倒し続けた。
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[称号:神使虐殺者]を得ました
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ザクッと最後のセイジャを刺し殺す。
「こ、これで…最、後……ハァハァハァハァ」
残りHPは17、疲労は114、MPは0。ギリギリだった。
最後の一体を倒し終わると、ウィンドウが出現する。
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緊急クエストの条件をすべてクリアしました。
報酬を確認しますか?
はい いいえ
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俺ははいを選択し、報酬を確認する。
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受け取る報酬を選んでください
次の報酬を受け取れます
報酬.1状態の完全回復
報酬.2能力値ポイント +15
報酬.3ランダム
全ての報酬を一括で受け取ります。
よろしいですか?
はい いいえ
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「…はい」
そう言うと、疲労や受けた傷が一気に無くなり、目の前に袋が出現する。
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[アイテム:毒袋の入った袋]
入手難易度:?
種類:毒
毒を持つモンスターに備わっている毒袋が入った袋です。どのモンスターの毒袋かは分かりません
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液体の毒か…粉より汎用性が低いが、毒には変わりない。かなり使えるだろう。
俺は、毒をインベントリに入れ、ステータスを確認する。
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ステータス
名前:国玉夜 レベル:23
職業:無し 疲労度:0
称号:武器の使用者
写し鏡
神使虐殺者
装備:無し
HP:2431
MP:492
―――
筋力:67 体力:42
俊敏:58 知能:43
感覚:31
―――
分配可能ポイント:15
―――
スキル
パッシブ
持久力
起死回生
アクティブ
俊足
隠者
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レベルは23か…インスタンスダンジョン攻略時の水篠さんより少し高いくらいか?でも、まだダンジョンに入ったばかりでこれだけレベルが上がるのか…ボスはどれくらい強いんだ?
レベルがこれだけ上がるという事は、それだけ相手が自分より高いという事。ならば、ボスはどれだけ強いのだろうか。
俺はセイジャの角とセイジャの秘薬を集め終わると、気を引き締めて、ダンジョンの探索を始める。
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[アイテム:セイジャの角]
入手難易度:なし
種類:がらくた
セイジャの大きな角
インベントリに保管することも、ストアで売ることもできます。
[アイテム:セイジャの秘薬]
入手難易度:B
種類:粉薬
セイジャの角を特別な製法で粉状にしたもの。稀にセイジャが死んだ仲間から作った物を持っている。
HPを50%回復し、疲労を25回復させる代わりに、MPを10%消費する
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このダンジョンは層毎に出現するモンスターが限られていた。
俺がセイジャと戦った場所を一階層として、二階層には大きな腕を持ち、体高が二メートル以上ほどの人型モンスター、豪腕のクルガが出現し、三階層は異常に発達した二本の灰色の牙を持ったウサギ型のモンスター、
二種類とも、セイジャよりは強いが、名前は白色。それでも、倒せば経験値はもらえるので、レベルを上げながら進んでいる。
そして、現在のレベルは25。これ以上倒してもレベルが上がりにくくなり、俺はレベル上げよりも探索を優先して進む。
しばらく四階層を探索していると、豪華な装飾がされている大きな両開きの扉を見つける。
俺はインベントリから長剣と短剣を出し、短剣を腰に差すと、警戒しながら、その扉を開き中に入った。
中は古びているが、王に謁見するための部屋といった感じで、とても豪奢で煌びやかだ。
床にはレッドカーペットが敷かれており、そのレッドカーペットの両サイドに等間隔で夢の守護者という騎士のようなモンスター?が六体程並んでいる。
そのモンスターか人か分からない騎士たちの名前は、オレンジ色。しかし、それよりもヤバいのが、玉座に座っている単眼で人型のモンスター、名前が赤色の単眼のサクナだ。
俺のレベルは現在25。かなり強くなったと思ったのだが、単眼のサクナはそれよりも強い。というか、周りの騎士が要らないくらい強い。
まあ、それでも、一矢報いる。
そう意気込んだ瞬間、単眼のサクナが手を掲げた。すると、騎士たちが動き出す。
俺はすぐに剣を構え、戦闘態勢をとる。
騎士たちは統率の取れた動きで俺に攻撃し、反撃の隙を与えない。
俺は一度離れて態勢を立て直そうと、後ろへ跳ぶが、いつの間にか後ろに居たメイスを持った騎士に吹き飛ばされる。
ゴォォォオオンと大きな音をたて、壁にぶつかった。
「カハッ…ゴホッ、ゴホッ…」
俺は砂埃が立つ中、胃液を吐き、咳き込みながらもすぐに立ち上がる。
やっぱ俺以上か。
HPは…残り1206。
フゥゥ……冷静になれ、力ではあいつらに絶対勝てない。
だから―――自分の感覚を信じろ。そして、今、限界を超えろ。
スキル――俊足、隠者、発動。
騎士たちの足音が近づいてくる。
…そこか
俺は近づいてきた騎士たちに奇襲をかける。
砂埃から飛び出すが、隠者のおかげで気付かれない。俺を吹っ飛ばした騎士に狙いをつけ、隙間から首を刺し殺す。
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夢の守護者を討伐しました
レベルアップがしました
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残り5人。
すると、周りにいた騎士たちが突然死んだ仲間を見て、警戒する。
騎士たちは俺を見つけるため、すぐに砂埃から離れる。
その間に俺は殺した騎士からメイスを奪い、インベントリに入れ、その場を離れた。
キョロキョロとし、俺を探している騎士たちの一人に飛び上がって、インベントリからメイスを取り出し、振り下ろして騎士の頭を潰した。
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夢の守護者を討伐しました
レベルアップがしました
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残り4人。
その時、他の騎士たちが俺に気付くが、俺は騎士が行動する前に、もう一人の首を刺し、殺しておく。
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夢の守護者を討伐しました
レベルアップがしました
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残り3人。
俺はインベントリからボールペンを取り出し、一人の騎士の目があると思われる場所へと投げつける。
当たりだったのか、その騎士は怯む。
俺はその隙に殺そうとするが、他の二体から攻撃される。
すぐに避けると、二体に短剣と直剣を投げつけメイスを取り出し、ボールペンで怯ませた騎士を殺そうとするが、その騎士は剣で受ける。
しかし、俺が振り下ろしたメイスの威力に耐えられず、剣ごと頭を潰される。
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夢の守護者を討伐しました
レベルアップがしました
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残り2人。
恐らく後二人には、もう目くらましは効かない。
一人の騎士が、連携が武器のはずなのに、一人で俺に突進してくる。
騎士は俺に槍で攻撃する。が、俺はその攻撃を足場にし、槍を取り出して同じように首を突き、刺し殺す。
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夢の守護者を討伐しました
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残り1人。
最後の騎士は、仲間が倒されてすぐ俺に攻撃を仕掛けてきた。俺は攻撃が届く前に槍を捨て、落ちている長剣を取ると、騎士の攻撃を受ける。
「ぐっ…」
騎士の攻撃は重く、足が床に埋まり、じりじりとHPが減っていく。
『ウオォォォオオオオ』
長剣がピキッと音をたててひびが入る。騎士はそのまま圧し斬ろうと思っているのか、大声を上げて更に力を入れる。
チッ…この長剣はもう寿命か?
俺は剣を斜めにし、身体を横にして、騎士の攻撃を受け流す。そして、埋まった騎士の剣を足場にし、最後の騎士を殺した。
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夢の守護者を討伐しました
レベルアップがしました
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騎士を殺して、レベルアップをしたのが5回。現在30レベルか…それでも、単眼のサクナの名前はオレンジ。
理不尽でも乗り越えるとは言ったけどさ……
「これはちと早すぎだろ……」
国玉夜は苦悩する。