「それでは行ってきます!」
「はいはい、行ってらっしゃい」
朝から元気だな。と思いながら、言葉を返す。
「弟もハンター家業頑張るように!」
まあ、その元気なのはうちの姉なのだが。
うちの姉は性格さえ直せば、ほとんどのことは何でもできる美人なのだが…
「分かってる」
「んじゃ!」
そう言って、家を出ていく。
「さてと」
俺は今日の分のポイントを適当に振り分けて、すぐにC級ゲートの募集を探す。
「これか?」
多分、右京隼人の数合わせの募集を見つけ、電話を掛けた
国玉夜、現在のステータス
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ステータス
名前:国玉夜 レベル:32
職業:無し 疲労度:0
称号:武器の使用者
写し鏡
神使虐殺者
装備:無し
HP:6050
MP:1325
―――
筋力:100 体力:70
俊敏:90 知能:65
感覚:54
―――
分配可能ポイント:0
―――
スキル
パッシブ
持久力
起死回生
アクティブ
俊足
隠者
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あれ?水篠さんですか?」
「!!国玉…さんですか?」
「そうですよ?お久しぶりですね」
俺はたまたま、水篠さんと同時に着く。
「ど~も~!」
俺達が話していると俺達を見つけた右京隼人が優しそうな笑顔をして近づいてくる。
「右京隼人です。お二人の名前は?」
「水篠旬です」
「国玉夜です」
「お二人ともE級でしたっけ?」
右京隼人がそう聞くと、俺達は弱すぎて有名なため周りから声が聞こえる。
その後、右京隼人から渡された契約書にサインをした。
すると、派手な装備をした人物が近づいてくるので、俺はすぐに離れた。
俺、水篠さん、さっきの派手な装備をした人物、諸菱健太を抜いて、C級5人とD級以下が3人。
一応、俺の影響がないか来てみたが、人数や強さは変わりない。ただ、モンスターはまだ分からないので、ダンジョンは少し警戒しつつ行くか。
俺が水篠さんと所へ行くと、ヒーラー無しで行くことに驚いていた。
「あ、国玉さんも、水篠さんと同じように荷物運びをお願いします」
「了解しました」
俺は右京隼人に言われた通り荷物を持ち、ゲートへと進む。
「それじゃ、行きましょう!」
しばらく進んでいると、今までに見た事のないほど巨大なゲートが見えてくる。
右京隼人の近くにいる人物がここが本当にC級ダンジョンなのかどうか聞くが、右京隼人は巨大なゲートを見ながらも、協会がC級だといってるのだから、C級だと言う。
ゲートからダンジョンへと入る。
「コージ、明かりをつけてくれ」
「はい」
ダンジョン内は暗く、コージと呼ばれた人物が魔法を使用し、周辺を照らす。
通常のダンジョンならば、夜光石があり、ダンジョン内を照らしているはずだが、このダンジョンには夜光石がない。
それもそのはず。このダンジョンのモンスターは昆虫タイプのモンスターだからだ。
モンスターの足音が近づいてくる。
「昆虫タイプのモンスターです!!」
水篠さんが叫んだ。
水篠さんの言葉に、周りは騒然とする。
皆が近づいてくる音を聞くが、周りには無数の穴があり、何処から迫ってきているのかが分からない。
俺は影響を受け、変わった個体がいないか、感覚を研ぎ澄ます。
「上っ!!」
水篠さんがまた叫ぶと、頭上の穴から蟻の大群が押し寄せていた。
コージが魔法を使用し、蟻たちを落とすと、右京隼人が能力で蟻たちを惹きつける。
その後の戦闘は、流石C級ハンター。少し荒いが、隙のない連携で敵を殲滅していく。
この蟻たちの中には変わった個体はいなかったため、少し安心した。
蟻が全て殲滅されると、皆は嬉々として魔法石を回収し始める。
皆が蟻についていた傷に疑問を持つ。
剣でつけられた傷や、魔法でつけられたものではない、噛み千切られたような傷に。
右京隼人はそれを見てニヤリと笑った。
何かを感じた水篠さんは、諸菱健太に警戒を呼び掛けた。
ダンジョンの広さと、ランクが比例することは無い。
どれだけランクが高くとも、数時間もかからずボス部屋に着くことがあれば、ランクが低かったとしても、内部の把握だけで数日かかることもある。
今回のC級ダンジョンは、モンスターが蟻型という事から察せるが、迷路のような複雑な作りになっており、左手法や右手法は通用しない。まあ、迷路ではないので当たり前だが。
俺と水篠さんは荷物運びなので、あまり戦闘に参戦することは無い。
数合わせというのは楽だなと思った。
まあ、それは、レイドを組んだ人物達が悪人じゃなければの話だが。
おかしい。
皆はそう思う。
しばらく探索しているが、無傷のモンスターを一匹も見ておらず、居るのは死にかけか、死骸のみ。
右京隼人が何かに気が付き、コージにその何かを照らさせる。
光に照らされ、見えたのは蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされている蟻たちと、糸で覆われたボス部屋の入口だ。
一行は、警戒しながらボス部屋へと足を進める。
「こ…これは!」
「すげぇ!」
壁一面にびっしりとくっついたマナ石に皆が驚愕した。
魔法石よりも魔力が弱く、あまり値はつかないが、これだけの量があれば、一億は軽く超える。
ジンと呼ばれていた人物が右京隼人の弟の話をするが、まあ、どうでもいいだろう。
すると、諸菱健太が法律には詳しいと言って、右京隼人に抗議しに行く。
「すいません、ちょっといいですか?」
契約書には魔法石の分配についてのみ書かれているので、マナ石は十等分するべきではないのかと。
少し邪険な雰囲気が漂うが、右京隼人は公平に分けましょう、と笑顔で言う。
「ですがその前に、あれを始末しないと」
右京隼人の視線を追うと、そこには、巨大な蜘蛛型のモンスターが眠っていた。体の色が漫画と違って赤黒い。
恐らくこのダンジョンのボスだろう。
ボスを倒すと、ゲートが閉ざされるため、倒す前にマナ石を運び出さないといけない。と言い、ジンに装備はどうしたのかと聞くが、俺たちの持つ荷物に採掘道具があるにもかかわらず、車に置いてきたと言う。
「申し訳ないですが、そこの三人でここを見張っててもらえませんか?」
右京隼人達は装備を取りに行くと言い、俺、水篠さん、諸菱健太の三人を残して、ボス部屋を出ていく。
突然、ボス部屋入口が、大きな音をたてて爆発し、塞がれた。
「い…入口が!!」
諸菱健太が慌てたように声を出す。
「あいつらに裏切られました!これっぽっちのマナ石のために僕たちを殺そうとするなんて!」
言っておくが、一億円を超えるマナ石をこれっぽっちとは呼べない。
まあ、入口は別に塞がれても、出ていけるので問題はないが、ボスの方は問題だろう。
漫画でのボスの色は黒。しかし、俺がこの世界に転生したこと、または俺がプレイヤーになった影響か、何故か体色が違う。
ボスがこちらへと近づいてくる。
諸菱健太が俺たちを庇う。
「あいつは俺が殺る」
しかし、水篠さんが短剣を出現させながら言った。
その言葉に、諸菱健太は驚愕し、水篠さんには不可能だと言う。
諸菱健太のいう事は当たっているかもしれない。ボスの実力は漫画では水篠さんが勝てる程度だったが、今回はどうだろうか。麻痺や出血の効果があるが、それでも勝率は低いだろう。
だからこそ今回、俺の仕事は水篠さんの援護をする。ここはC級ダンジョン。古城で戦った奴らよりも、あのボスは弱いはずだ。足を数本斬ったりすればよいだろうか?
そんな事を考えていると、戦闘が始まった。
ボスの突進に合わせ、水篠さんは短剣を突き刺していく。
隣を見れば、諸菱健太が顔を青くしている。
水篠さんは、巨大な蜘蛛型のボス相手に、無駄のない動きで応戦していく。
しかし、表皮が硬いためダメージを与えられていない。
水篠さんはボスの目を見る。
突然、ボスが酸を吐き出した。
水篠さんはそれを避けるため、俺達がいる所まで下がってくる。
「水篠さん、手伝いましょうか?」
「いえ!大丈夫です!」
俺は水篠さんに笑顔で言うが、速攻拒否される。
スキルを使用したのか、水篠さんの速度が上がり、死角に潜り込む。
そして、何度も攻撃を仕掛けていく。
攻撃していくうちに、疲労度が高くなっていっているせいか、少しずつ速度が下がる。
スキルのおかげで、多少カバーはしているが、それでも体力は持たないだろう。
突然、水篠さんの動きが止まると、ボスの払った脚が直撃し、地面に叩きつけられた。
しかし、水篠さんのHPはまだ残っているはず。
ボスが止めを刺そうとする。
攻撃が当たる直前、動けるはずのない水篠さんがこれまで以上の速さで動き出し、ボスからの攻撃を避けると、ボスの顔まで行き、短刀で目を突き刺した。
恐らく状態の回復を受け取ったのだろう。
そこから水篠さんは一方的に攻撃を仕掛けていく。
ボスはもう倒されるはずだった。
『――――――――――――ッ!!』
ボスが何とも言い表せない咆哮を放った。
途端に俺たちは動けなくなり、ボスは水篠さんを狙って攻撃をしようとする。
どうやらあの咆哮には麻痺状態のようなものを付与する効果があるらしい。
ボスの脚が水篠さんへと接近していく。
俺の麻痺状態が解けた。
すぐに水篠さんを回収する。
「危なかったですね」
俺はそう言って、大剣を取り出し、攻撃してくるボスの脚を斬る。やはり、大剣というのは扱えるだけの筋力があれば、扱いやすい武器だ。
しかし、止めは刺さない。
それは俺ではなく、水篠さんの仕事だから。
「国玉さん、ありがとうございます」
水篠さんは麻痺状態が解けたらしく、俺に感謝を伝えてからボスへと駆け、ボスを倒した。