チート×チート×チート   作:スライム

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起きたらチートでした。

 気がつけば、箒を持ってかつて熱中していたゲームのNPC、大魔女様を見上げていた。

 

「揃ったようだね。私の弟子達よ! 久しぶりだねぇ……。街を発展させるも、世界に飛び立つも、ダンジョン攻略するも、あんた達の自由。あんた達に言うことは一つ。達者でやりな!」

 

 NPCは消えてしまった。

 空の中央は、故郷・東京とファンタジーな世界双方を移しており、周辺は五つの透明な扉が分かれていた。

 視線を下ろす。魔女のコスプレをした人や亜人が広場に寿司詰めになっている。街も何も、俺達がいる大きな広場、外周の壁、周囲5箇所と中央に大きな塔、塔の側に果樹。大きな建物、道と植木と区画整理された土地を覆う杭とロープ。掃除する自立箒。それ以外に何もない殺風景な場所だ。塔はどれも見覚えがある。なんども攻略したダンジョンだし、なんなら一つは俺が作ったものだ。

 そこで、腕に下げられた鍵束に気づく。

 

「住所ここだ」

 

 隣の人が進み出て、区画整理された土地に入ると、鍵が発光して光る板が現れた。

 

「うう、素材足りないよう……」

 

 なるほど、そういうシステムか。

 ふむ。ゲームには異世界から大魔女様に教えを請いに来ているという設定のNPCがいた。NPCじゃなかったわけだが。互いの国と接続してある国の言語と常識は頭に入っているようだ。

 思案している中、声を上げたものがいた。

 

「街作りに興味ある人ー!」

 

 大声で叫ぶ人が出る。

 

「素材を交換してくださ―い!」

「当方初心者です。援助お願いしまーす!」

「一緒にダンジョン攻略してくれる人―!」

 

 となると、俺も声を張り上げた。

 

「素材売りまーす! ただしお代は魔女コイン(ゲーム通貨)と大魔女コイン(課金通貨)、鍵限定!」

 

 もちろん、ショップが稼働しているのは確認済だ。

 2日ほど広場で頑張り、その後は売ってもらった広場激近の区画に素材を使って家を建て、朝から晩まで商売を続けた。

 一ヶ月して、魔女コインと大魔女コイン、鍵をがっぽり手に入れた俺は、店をすっぱりやめてダンジョン攻略へ赴く。

 素材などダンジョンからいつでも取れる。問題なのはもう手に入らないコインと鍵なのだよ!! 3年間、素材集めに奔走した。

 ライバルはいなかったわけじゃないけど、満足できる程度には稼げた。

 俺が儲けに走っている間、他の魔女たちはあるいは外に出て、あるいはダンジョンに行き、あるいは街作りに奔走していた。

 

 おかげで街と言える程賑わいが出来てきた。

 既に交易もされているという。外部から人を連れてくる者も増えた。

 この3年の間に、四世界の接続も完了していて、活発に出入りがされている。

 この街独自の通貨も発行されているが、それは日本の食材セットとパソコンを買った後はたまに食事で贅沢したり本を買ったりできる程度にしている。

 

 素材は流石に交換所でしか売れなくなったが、代わりに鍵の価値が上がり、大魔女コインで鍵が売れる。

 しかし、鍵の品も顧客の手持ちの大魔女コインも少なくなってきていた。

 ショップがいつ稼働停止してもいいよう、必要なものも既に買ってある。

 商売はここで打ち止めと考えるべきだろう。

 

 旅に出る準備をして、交易所に向かう。

 交易所を通さずとも行けるのだが、密入国になってしまうので非推奨となっている。

 盗まず、犯さず、殺さずがこの国の法律だ。幸い、魔女の弟子同士での殺し合いは起きてはいないし、アイテムボックスがデフォルトであるので盗みにもなりにくい。そして魔女はモテるのでわざわざ性犯罪を犯す意味もない。

 それに加えて、出来るだけ密入国はしない、出来るだけ騙さない、出来るだけ他所で暴れない、というのがある。

 なにせ、俺達を取りまとめるものはいないし、罰するものもいない。

 ただ、互いに何が出来るかわかるので、出来るだけ敵を作りたくない。

 それゆえに、復讐される恐れのある度を超えた悪事は決して行わないという抑止力が働いていた。

 問題は、外部から入ってくる人だが、これも厳選された者か国から委託を受けた者のみが入ってくるのであまり問題は起きていないし、起きたら叩き出されている。

 噂によると、ここで力を得て向こうで大暴れした挙げ句公衆の面前でカエルにされたのもいたらしい。

 魔女は絶対に敵に回してはいけない。俺も公正な取引を心掛けている。

 

「クロウィ!? どうしてここへ!?」

 

 ガタンと立ち上がる交易所の当番魔女。ちなみに給料は接続された世界の国と街作りチームの自腹である。

 

「貯蓄もできたし、食事も恋しくなったし、そろそろ故郷へ顔を出そうかと思って」

「そ、そうか。あまり暴れてくれるなよ?」

「クロウィさん、初めまして。日本への滞在日数と予定はお決まりですか?」

「大きなダンジョンを作りたいなって」

「そ、それは……スタンピードは起きるタイプですか?」

「いや、それだと管理が面倒くさいから」

 

 その言葉に、役人は大いに安堵したようだった。

 

「それは良かった。補助金を利用されますか?」

 

 なんと。補助金? 補助金出るの?

 

「死者が出ないタイプ、もしくは配慮されているダンジョンだと最高1兆円の一時金が出ますが」

「ぬ”っ」

 

 死者が出ないタイプのダンジョンはめちゃくちゃ高価である。ここのダンジョンがそうなのだが。もちろん、俺はそんなダンジョンを作る予定はない。高すぎるもん。

 だがそれにしたって、一兆円は凄まじい額だ。子々孫々ごと遊んで暮らせるではないか。

 

「……既にあるのか?」

「ありますね。大人気ですよ。他の国どころか世界からも人が来てます」

「あるんだ……。どんなダンジョン? 作り主は?」

「クロウィさんと同じ五大魔女のロイドさんの作られたダンジョンで、パンフレットがこちらです」

「へぇ」

 

 大魔女様の教えを最後まで受けた五人の魔女を五大魔女という。1人は異世界出身で、4人は現代出身である。ロイド、ミーア、流水、俺が現代出身。ウェルツは異世界出身だ。

 パンフレットを見た。めちゃくちゃガチなやつじゃないか。これより凄いのは作れないだろう。確かに、一兆円の価値のある事業だ。そういえば、奴の作った魔法体系も正統派ファンタジーって感じだったしな。

 ちなみに、俺達五大魔女は、ダンジョンを一つ、魔法体系を一つ作っている。それと世界扉一つを開く権利。これらは、それ以外の魔女にも権利を開放されている。

 適性さえあれば、ダンジョン前の果樹を食べればその魔法体系を得られるのだ。

 中央のダンジョン前の果樹は魔女様の作った魔法体系のものであり、中央のダンジョンは基本的に協力して攻略するダンジョンである。

 パンフレットを見ると、誇らしそうに笑うロイドのインタビュー記事が載っている。

 ロイドこういうの得意だしな。

 

「他にも、魔女さんの活動パンフレット見ますか?」

「助かる」

 

 パンフレットを見せてもらう。

 

「ダンジョン、牧場に農場、竜の交通網、レース……法律が許す国では闘技場も。そりゃ、俺程度が思いつくのなんて皆やってるか」

 

 ロイドは大迷宮、ミーアは……建国ぅ!? 現代っぽい世界を繋いで、大怪獣で更地にして、魔法で人間ペット動物は助けて脇に避けて、自分好みの街を建築してそこに住ませて、仕事を割り当てて私の国!って、ええええええええええええええ!? 費用も凄いが、それより魔法の技術が凄すぎだろう。なんやかんやで上手くやってるらしい。国民の満足度98%とか。すげえ。怪我人も病人も高齢化社会も纏めて魔法で解決したから、むしろ住みたい人が多いらしい。ひぇぇ。俺は度肝を抜かれてしまった。ま、負けた……。ミーアの魔法は、魔法少女的なやつで、センスが物を言う。ミーアはセンスが飛び抜けているから、そんな事もお茶の子さいさいなのだろう。

 

 流水は……無人惑星を繋いで、惑星開拓ごっこに興じていると。奴の魔法体系は呪符である。色々準備とか計画とか好きな奴だから、楽しんでるんだろうな。

 

 ウェルツは……世界創造を試みているらしい。だろうな。めちゃくちゃ勉強してたもんな。秀才って感じで、学ぶのは得意だけど発想力がない感じで、それでも五大魔女にのし上がった傑物だ。魔法体系は使い魔創造。ただし、創造した使い魔はウェルツの使い魔図鑑に掲載され、ウェルツがいつでも複製できるという恐ろしい仕様だ。頭いいよな、ウェルツ。使い魔魔法については、複製した使い魔も製作者が探知できたりという、ライン繋がってるんじゃね? 的な不安点があるので、俺は使っていない。色々アドバイスはしたけど。微生物や虫を甘くみるな、とか。

 

 

 

 はぁー。

 

 

 

 皆凄いなぁ。俺だけ1人ダンジョンでちまちま素材狩りかよ。

 っていうか、ミーアが凄いわ。インパクトがありすぎる。なんならウェルツよりパンチ効いてるわ。これに勝てるって無くない?

 

「いやいやいやいや、一番乗りは無理かもしれませんが、まだまだ需要はありますよ! 既に問題は洗い出されているので、国からサポートも出来ますし! 皆さん、とても人生楽しんでらっしゃいますよ!」

「だろうな! ああ、遊園地と協賛してアトラクションまで……」

 

 俺より出来ることの少ない魔女ですら、こんな大事業をドンドン立ち上げているのか。ああ、巨大ロボット開発とかもしてる……。新しい魔法開発も? いいじゃん、この変身魔法とか異能とか忍法とか。まじで俺が思いつくのは全部やられてるわ。金儲けに走ったのは後悔してないが、どうしよう、これ。

 二番煎じはなんとなくやりたくないな。これでも五大魔女だぜ?

 

「そうですね。悩まれるのでしたら、ひとまず、旅行して回るのも宜しいかと思います。自分だったらこうする、自分もやりたい! そんな物に出会えるかもしれません」

 

 さっとパンフレットを出してくる。

 

「そうだな。旅行してみようかなぁ。日本とミクセル帝国と、あと……ロイドが……戦国時代系?で、ミーアが現代系で、流水が無人惑星、ウェルツが素材盛りだくさんの無人惑星? ふぅん……」

「是非是非! 今日出発の6世界名所巡りツアーが、一人分空いておりますよ!」

「でもお高いんでしょう?」

「いえいえいえいえ。このパンフレットにある規則の遵守と、三回まで大きな事をする前に何をしたいかご相談下さるだけで結構ですよ。各地で使える通貨もご用意します!」

「ただより高いものはないんだろ?」

「力のある魔女さんの行動を事前に把握できるのはそれだけで利益です。相談していただける権利もありがたいです。実際、クロウィさんだけですからね。まだ手の空いてらっしゃる強大な力を持つ魔女さんは。二つ下のランクの魔女さんまで、全て長期に渡るお仕事を確認済です。その下のランクの魔女さんも、事業主率は大変に高いですね」

「なんと」

 

 えっ どういう事? ちまちま素材狩りしてたの、俺だけってこと?

 そりゃ、人がいない気はしたよ? 素材が思ったより売れるなぁとか思ったけど!

 

「皆さん、張り切って事業を立ち上げております。強大な魔女さんが護衛なく1人で出歩かれるよりは、国といたしましても、万全のサポートのもと、事業に専念していただいたほうがありがたいのです。独り歩きしてトラブルに巻き込まれ、大事になるという当人も周囲も不幸な事故の事例もありますし、事業主になることでトラブル率もぐっと減り……」

「わかったわかった。一人旅されるよりツアーのほうがそっちも安全ってことか」

「そうです」

「じゃあ、宜しくおねがいします」

「かしこまりました。あっ 美人のお姉さんはつけますか?」

「いらないです」

「ハニトラはなしのコース、と。かしこまりました」

 

 そんなわけで、俺は旅行に出ることになったのだった。

 




大魔女様は現代ではゲーム内で、ファンタジー世界では夢の中で弟子を募った模様。
その後、転生先を操作して魂をすべて集め、魔女の国を作った。
エルフもいたので、寿命が尽きるまで、つまりゲーム終了から目覚めるまで数百年経ってる。
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