とめハザ   作:はらだいこ

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警察署編完結です。次回から新章突入です。アークレイのハーブは料理本もあるくらいなので経口摂取でも効能を得られるはずです。


第十話 長女からの通信

ラクーン市警 STARSオフィス 9月29日 午前三時半頃

 

プシィィィィッ!!

 

「あーそこそこっ!痛みが引ぅぅぅぅっ♥」

 

とめるはクッコロがドラム缶の爆発で吹き飛ばされた際にできた擦過傷や打撲傷にグリーンハーブ+レッドハーブの調合ハーブの粉末を詰めたスプレーで塗布していく。

 

「ふむふむ、ブルーハーブには解毒効果。レッドハーブと組み合わせることで身体を丈夫にすることができるると……」

 

赤十字のポーチの下がったデスクからハーブの教本と各種調合道具を取り出し新しい調合法を次々試していく。

 

「なまほしちゃん、手ぇきよー。あたしには無理だわー」

 

出来の良い姉に感嘆の溜息を尽きながらクッコロの次はゾンビやリッカーの返り血を浴び続けて三日は風呂に入らなくても平気なとめるでも眉を顰める凄まじい悪臭を放っている配信服ににスプレーを香水替りに浴びせて爽やかな香りで身を包み袖に鼻頭を埋めて犬のように鼻を鳴らす。

 

「多少はマシになったかな。この町を出たらセバスに新しい服買ってもらおー。経費で」

「あっ!電子ケトル!ねぇ、何か飲まなーい」

「それならハーブティー何てどうです?経口摂取の方が効能が高まるらしいですから」

「えー!なに、こんな状態でお茶?女子会!よっしゃぁ!あたしカップ用意するねー」

 

極度の緊張が解けると忘れていた喉の渇きや空腹感が肉体を苛む。腹が減っては戦は出来ぬと食い意地の張ったクッコロがデスクを物色してビスケットやチョコレートをかき集め、とめるが三人分のSTARSロゴ入りのマグカップを用意する。公共施設への不法侵入に窃盗と非常事態にしか許されない狼藉に酔いしれた後、なまほしちゃんが淹れたハーブティーで乾杯する。

 

「「「かんぱーい!!!」」」

 

カンカンとマグカップとマグアップが小気味いい音を立てかち合いお互いの無事を祝福する。

 

「いやー。起きて打ち合わせの場所に行こうとしたら大家さんがゾンビになって取り立てにきてさー。ほんと、びっくりだよー」

「今日……じゃないもう昨日か、打ち合わせ場所のバーって酒が数百種類もあって醤油の豆のスープ?が名物メニューだって聞いて楽しみにしてたのにぃ」

「ラクーン郊外の洋館で化物が出るから肝試し企画ってセバスは言ってたんですけど、まさか町がゾンビだらけなんてなまほしちゃんびっくりです」

 

STARSオフィスにはなぜかゾンビの類が侵入した形跡が全くないことから茶を飲みながらくつろぎながら雑談しつつ、知恵を出し合い脱出プランを練り始める。

 

「なんか街の出入り口に米軍が救助に着てるってニュースてでやってたから陸路でもワンチャン脱出できるかも……でも問題はゾンビだよねー」

 

アメリカ特有のでかくて体に悪そうな色合いのチョコバーをぼりぼり咀嚼しながら頭を搔くクッコロの隣でとめるがインテリぶって顎を扱く。

 

「地下鉄とかどう?地上よりは被害が少なそー。あー、でも地下にはヤバいクリーチャーが出るっていうのがゲームじゃお約束だもんねー」

 

ラクーンシティ全域の地図とラジオの情報を照らし合わせて頭を捻るも開策は一向に出せずにうーんと唸る妹をよそにSTARS御用達の通信機器で外部との連絡を取ろうとしていた。

 

 

「特殊部隊専用の通信設備ならDWUお姉さまに連絡できるはず……」

 

深層家の情報収集力ならば現在のラクーンシティの惨状は把握している。おそらくヘリの一機くらいは既に孤島と化したラクーンシティに派遣しているだろう。ネット回線が麻痺した現状での唯一の頼みの綱に希望を託す。

 

「すごい。なまほしちゃん、無線も使えるんだねぇ」

「さすほしちゃんだよー」

 

キュルキュル……ザー!……ザザー!

 

「あー、あー、マイクテストー。聞える―?」

 

スピーカーからエロゲ声優特有の艶っぽい美声がノイズ交じりで聞えてきた。

 

「わー!わぁぁぁぁー!!きた!きたよー!」

「Dちゃんの声だー!やったー!」

「お姉さま……深層家の子になってよかった」

 

スピーカー越しでも妹たちの黄色い声に得意気になっている長女の雰囲気が伝わってくる。

 

「可愛い妹が困っているとあっては長女として放っておけませんものねー。ヘリを派遣しましたから指定のポイントまで来て下さるかしらー」

 

DWUから指定されたポイントとそこまで行くルートをクッコロが地図に書き写していく。ちょうどお菓子も食べつくし女子会もお開きと溜め込んだガンパウダーを組み合わせて各種グレネード弾やなまほしちゃんの護身用の閃光手榴弾を調合して弾薬の補充と銃の点検を並行して行う。

 

「万が一のことがあるかもしれないので救急スプレーも持っていきましょう」

 

緑色の十字のマークが入った救急スプレーが入ったポーチを下げる。アンブレラ製の救急スプレーの効果は即効性でグリーンハーブ+レッドハーブ、グリーンハーブ×3に匹敵する回復作用がある。

 

「よし、こんなもんかな。みんなはどう?」

「あたしはばっちりー。なまほしちゃんのハーブティー美味しかったー」

「なまほしちゃんもOKです」

「よし!脱出したらみんなでお風呂入るぞー!お泊り会だー!」

「それ楽しそー!人狼やろ人狼ー!」

 

柄にもなく殊勝なことを言うとめるに賛同するなまほしちゃんとクッコロ、そしてスピーカー越しに陽キャの血を騒がせる長女と深層姉妹の心が一つになる様子をハッキングした通信機器から盗み聞きした"S"はほくそ笑む。

 

「そうだ。簡単にやられてはつまらないよね」

 

寒々しいほどに冷房の利いた薄暗い部屋で淹れたてで舌が焼けるほどにベトナムコーヒーを煽りながらエスニック系メイドに次の指示を出す。

 

「アイアンズなど最初から期待していない。小手調べだ。次の刺客は既に用意してある……」

 

本当に怖いのはゾンビではなく人間。そんなB級ゾンビ映画の幕引き台詞のようなことを考えながらショーの第二ステージの開幕を待った。

 

to be continued―

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