ラクーンシティ 中央通り 9月29日 午前五時頃
空が白み始めラクーンシティに朝がやってきた。
しかし、悪夢が覚めることはなく、生者の悲鳴は亡者のうめき声に塗り潰された地獄の街中を装甲車が爆走する。
「えーウソ?!あのハゲやっつけたんじゃないの?!」
警察署裏手に放置されていた装甲車を拾い、長女の指定したポイントまで出発したはいいものの厄介な相手に目をつけられていた。サイドミラーを覗き込んだクッコロの顔をから血の気が引く。中央通りの各所で擱座した車が紙切れのように空を舞う。
「ふぇぇぇっ!ゲームじゃやったか?は復活フラグだよー!」
拘束具も兼ねた防弾コートから解放された上半身は筋肉の肥大で一回り以上膨張し、人の胴ほどもある巨腕で障害物を薙ぎ払い直進するその姿はまさにジャガーノート。ロケットランチャーの直撃を耐えて復活したタイラントが深層姉妹たちを執念深く猛追する。
「ひぇー!お、追いつかれる~~」
警察署裏手に放置されていた装甲車はバリケード程度であれば問題なく踏破できるとはいえ横転した車を避けるために蛇行している間にタイラントに距離を詰められていく。
「ふぁっきゅー!ハゲはお呼びじゃなーい!」
バララララー!!
装甲車のキューポラから頭を出したとめるは装甲車まであと数メートルまで迫ったタイラントにサブマシンガンの連射で迎え撃つ。しかし、ホローポイント弾のシャワーは膨張したタイラントの筋肉の隆起だけでにすべて弾かれ怯ませることさえ敵わない。
バウ!
不意打ちで放った火炎弾は裏拳であっさり弾き飛ばされてしまった。準スーパー化とでもいうべき状態のタイラントは同じくラクーンシティで作戦中のネメシスに匹敵するほどの動体視力を会得していた。
「うそー!そんじゃライフルだライフル!」
弾切れになったサブマシンガンをなまほしちゃんに手渡して弾薬を装填してもらい、とめるはライフルに持ち替えてスコープを覗き込む。
「ふんっ!いくら筋肉モリモリでも頭撃てば死ぬっしょ」
何匹ものゾンビやリッカーを血祭にあげたスナイピングテクを披露すべく、岩のような無骨な顔面に照準を合わせて引き金を引く。
バシュ!バシュ!バシュッ!
狙いは正確無比だったがそれがイケなかった。コートこそ脱ぎ捨てたが、そのまま着用していた防弾性の手袋で顔をガードして弾かれてしまう。
「これもダメ?!あぁー!ロケランがあればー!」
おぉぉぉぉぉぉぉっ!!
とめるが頭を抱える間にもタイラントは雄たけびを上げ圧倒的な持久力で装甲車に手が届くところまで肉薄する。
「とめるちゃん!これを……!」
「おっ!それは……なまほしちゃんナイスゥ!」
護身用に持たせた閃光手榴弾を受け取るや否や空高く投擲したかと思うとサブマシンガンを受け取りフルオートで放つ。
バララララー!
カッと轟音と閃光が鋭敏化したタイラントの五感を麻痺させる。顔面を押さえるタイラントの隙をとめるは見逃さない。
「おらー!台湾パイナップル大盤振る舞いじゃー!」
手榴弾6つを同時に放り投げサブマシンガンで狙撃して次々と起爆させる。
ドン!ドン!ドン!ドン!ドガァーン!!!
強装手榴弾の連続爆破の衝撃をモロに受けて、ついにタイラントの足が止まったのを見計らって止めの一撃。
バシャァァァァ!!
硫酸弾をモロに浴びて苦悶の表情を浮かべたタイラントが膝をつく。間髪入れずに追い打ちでライフルの弾をありったけ叩き込む内に小さくなっていくタイラントに向かってとめるは中指を立ててキメ台詞。
「ざまぁみそかつどんぶりー!」
「やったね!とめるちゃん!」
難敵を退けたとめるとなまほしちゃんがハイタッチを交わすバックミラーから見てクッコロは微笑みながら現在位置を確認する。
(もう少しで中央通りを抜けそう、そしたら指定のポイントまであと少し)
あともう一息だとクッコロがハンドルを切ろうとしたその時、何かを轢いたような感触と同時にドンという轟音とともに凄まじい衝撃が装甲車に走り横転。視界が暗転した。
to be continued―