ラクーンシティ 中央通り 9月29日 午前五半時頃
謎の爆発で横転した装甲車に近づく一つの影。まんまと罠に引っ掛かった間抜け共の様子を窺いほくそ笑む。
「”S”の連絡通りにノコノコきたな。ちょろいもんだ」
細面に似合わない貪欲な光が灰色の双眸に宿っている油断ならない男の名はニコライ・ジノビエフ。U.B.C.S.のD小隊B分隊隊長というのは仮の姿で真の任務は派遣された地域でのアンブレラにとって都合の悪い人物の抹殺。現地に投入したB.O.Wの情報収集が裏の役割だ。
「しかし、こんな小娘どもを確保するだけであれだけの報酬とは……ボロい仕事だ」
雇用主のことなどその場の損得勘定であっさり見限る金の亡者であるニコライにとって”S”からの提案されたアルバイトはまたとない副収入となった。
なまほしちゃんを庇って横転の衝撃をモロに受けて失神したとめるを車内から引きずり出して、ひょいと肩に担いでその場を後にしようとすると背後に気配を感じて振り向く。
「ふん、やめておけ。おまえには何もできない」
「とめるちゃんを……離してください!」
細腕を震わせながらサブマシンガンを構えたなまほしちゃんが歴戦の軍人と相対する。なまほしちゃんの勇気をニコライは鼻で笑うと、拳銃の神速の早撃ちでサブマシンガンを弾き飛ばす。
バンッ!
「きゃっ!」
衝撃で無惨にコンクリートの上にひっくり返るなまほしちゃんの姿をニコライは嘲笑う。
「ふん、三人確保すれば報酬は上がるが……この状況下で複数人を一度に拘束するのはリスキーだ。心配するな。用が済めば解放する。さすがに子供を殺すのは気乗りしないからな」
もちろん必要があれば引き金を引くことに躊躇いはないが、人を必要以上にいたぶる趣味もない。ニコライの行動原理はただ一つ。べては金、金、金だ。
早くもなまほしちゃんから関心を失ったニコライは”作業”のために安全な場所に移動した。
「クッコロちゃん!大丈夫ですか!?」
自分の力ではどうしようもないと上下逆さまになった運転席でうなだれているクッコロの肩を揺する。
「うぅーん。はまほしちゃん……?」
「よかった……意識はあるみたいですね」
一時的に気を失っていたものの大事なかったクッコロにほっと胸を撫でおろす。
「今のって地雷……ありゃりゃー装甲車がお釈迦だぁ」
地雷で大破して短い付き合いとなった装甲車に早々と見切りをつけ、とめるの武器を回収する。
「使い方はさっきのお茶会の時に最低限教えてもらったけど……まぁ、なんとかするしかないっしょ」
「とめるちゃんを浚った軍人の男?はあっちのホテルの中に入って行きました」
なまほしちゃんの肉球付きの手袋の指先が示したのはホテル”アップルイン”。R.P.D同様亡者の巣とかした人外魔境へと末妹を救うためになまほしちゃんとクッコロは身を投じる。
「ちっ!もっと痛めつけて心をくじいておくべきだったな」
ホテル・アップルインの施設警備室を一時的な拠点とたニコライは"S"から送られてきた特殊な浣腸の準備をしながら外の様子を窺うと深層姉妹の二人が懲りずに妹を救出しにアップルインのエントランスをくぐる姿を監視カメラ越しに見て見て舌打ちをする。
こんな場所に長いする気は毛頭ないが万が一にも妨害されては溜まらない。しかし、思考が金を儲けることに直結しているニコライは妙案を閃き薄い唇を歪に歪める。
「ははは!ちょうどいい。”S”から貰ったプレゼントを使おう」
ニコライは携帯端末を操作してアップルインの裏口前に止めた軍用トラックの荷台の特殊合金製のカプセルを解放する。
計6個のカプセルの外殻が開くと中からまず剣呑な鉤爪が覗き、続いて亀のような甲殻に覆われた人と爬虫類が入り混じったような異形の怪物が姿を現す。
怪物のコードネームは”ハンターβ”。ハンターシリーズの一種であり反射神経を強化された量産型。既にターゲットをインプットされ。小さな双眸に残忍な光を宿し、群れを成して狩場と化したアップルインの中に雪崩れ込んだ。
「くくく。お荷物が一人いてこいつらとどう戦う?」
生まれながらの狩人(ハンター)の咢に掛かる哀れな獲物の姿に嗜虐心を煽られ、ニコライは残酷ショーを観賞しようとモニター覗きむニコライの背中をとめるは薄目を開けて見あげる。
(ふぇぇ!何なのこの状況?起きたら全裸だし、なまほしちゃんとクッコロちゃんがこっちに来てるの?)
ニコライが”作業”しやすいようにとめるは身ぐるみを剝がされてテーブルの上に雑に転がされていたとめるは意識を取り戻してそうそう泡を食う。
(こいつ、とめるをすぐ殺す気はない……まだチャンスはある!)
とめるは狸寝入りをしてニコライの隙を伺いながら脱出の好機を待つ。自分を助けにきてくれた姉二人の無事を祈りながら。
to be continued―