とめハザ   作:はらだいこ

8 / 21
ゾンビの群れになまほしちゃん危機一髪!しかし、とめるちゃんが居るから大丈夫!しかし、敵はゾンビだけではなくて……ラクーン警察署編佳境!


第八話 姉妹の再会

ラクーン市警 メインホール 9月29日午前2時頃

 

署長室から抜け出したなまほしちゃんは一階のメインホールへと降りた時点で体力の限界に達して息切れを起こし、やっとの思いでカーテンの陰に隠れた。

 

「はぁはぁはぁっ……つ、疲れたぁ……」

 

病弱な身体で入退院を繰り返す生活で運動不測の身体は限界で肺が軋み、頭のこめかみがジンジンと疼く。本音ではソファーの上で横になりたいが、この状況で無防備に寝転がっていては頭に血の昇ったアイアンズの格好の餌食だ。

 

「はぁはぁ、う、動かなきゃ……逃げなきゃ」

 

緊張で乾いた喉にストロング・ゼロかトマトジュースが欲しい。しかし、現在の状況では望むべくもなく息が整ったらどこに隠れようかきょきょろと雑多に物資が積み上げられたメインホールを見回していると爆音がなまほしちゃんの耳を打った。

 

ドガァァァァン!!

 

「はっ!この音は……」

 

とめる自慢のロケットランチャーの音だ。以前一度だけロケットラチャーの試射を見せてもらった時と同じ爆音。

 

「とめるちゃん……ひょっとして、ここに来てる?!」

 

疲弊した身体に希望という名の活力が満ちる。爆音のした東側に向かってのもつれながらも駆け出し、ほんのわずかなシャッターの隙間に小柄な身体を活かして潜り込んでいく。

 

「わぁぁっ!ゾンビがいっぱい!」

 

おぉぉぉぉぉ……!

 

とめるが暴れていたのは主に西側のオフィス付近で東側のオフィスにはまだゾンビがたむろしていた。天井には”Welcome to Leon”の横断幕が掛かり中止せざる得なかったサプライズパーティーの名残が伺える。平時にはなまほしちゃんを快く迎え入れた警官達もゾンビと化した今はただ単に動きが鈍い肉の塊としか認識せず足を引きずりながら追いかけてきた

 

「多分、ば、爆発がしたのは外……こっち側に行けば……」

 

小柄ななまほしちゃんには手が届かない歯がゆさを示すように強力な胃酸を飛ばしてくるゾンビたちを必死に躱しながら発電室に滑り込み、震える手でドアのチェーンを外すと外に飛び出した。

 

「ひぇぇぇ……ゾ、ゾンビが……!」

 

ドアの向こうにはゾンビが三体。フェンスを叩いていたり徘徊していたゾンビたちが一斉になまほしちゃんに白濁した視線を向ける。

 

おあぁぁぁぁ……!

 

背後からもゾンビのうめき声、もはや退路はない。なまほしちゃんの絶望に追い打ちをかけるように細い足首にぬらりと冷たい圧力がかかる。

 

「きゃぁぁっ!!!」

 

地面に横たわっていたゾンビが這いずりなまほしちゃんのを足を鷲掴みにして渾身の力で地面に引きずり倒す。もはや自立する力すら残されておらず、このまま栄養不足で餓死して他のゾンビの餌になるだけの運命に抗おうとなまほしちゃんのふとももに牙を剝く。

 

「いやっ!いやぁっ!!たすけて!とめるちゃーん!」

 

現実はヒーロー番組じゃない。都合よく助けが来ることなんてありえない。頭ではわかっても叫ばずにはいられない。

 

「いやぁっ!あぁぁっ!」

 

なまほしちゃんの抵抗も限界に達して、飢え渇くゾンビの歓喜を表すように口が耳元まで裂け目の前のごちそうにかぶりつこうとしたその瞬間。

 

バシュッ!

 

ゾンビの頭が弾けて赤い大輪の花が咲く。撃ち込まれたアサルトライフルの弾で頭蓋骨が真っ二つに割け赤黒い果肉をボロボロとこぼしながら地面に突っ伏す。

 

「えっ……これって……」

 

うぉぉぉぉ……!うぅぅぅぅ……!

 

バシュ!バシュ!バシュ!

 

這いずりゾンビに独り占めはさせまいと迫るゾンビの頭が立て続けに弾けてドミノ倒しのようにバタバタと倒れて三体の躯が積み重なる。

 

「危なー!もうちょっとでなまほしちゃん、ゾンビにガブリだったじゃん!」

 

屋上からアサルトライフルの弾倉を変え額に浮いた汗を拭う妹の姿に不安と恐怖で青ざめていたなまほしちゃんの顔に安堵の色が広がる。

 

「とめるちゃーん!」

「なまほしちゃーん!よかったー!無事だったー!」

 

姉の無事に歓喜したとめるは屋外階段を駆け下りて華奢な足首に食い込んだ手を引き剥がしたなまほしちゃんに駆け寄り、熱い抱擁を交わす。

 

「大丈夫?ケガしてない?」

「大丈夫です。とめるちゃんも元気でよかった。それよりちゃんとお風呂入ってます?生乾きの雑巾

みたいな匂いですよ」

「えへへ。今日で三日目ー。この町から脱出したら一緒にお風呂入ろ」

 

再会の感動を分かち合う二人の元に遅れてクッコロも駆け寄る。

 

「二人は相変わらずだね。なまほしちゃん、痛くしてない?おぶってあげようか」

「は、はい。お願いします」

 

極端な疲労からなまほしちゃんは素直にクッコロの提案を受け入れ、とめるは二人の護衛役を買って出る。

 

「二人とも任されて!ゾンビなんて敵じゃないんだから!」

「とめるちゃんっ……気を付けて下さい。”敵”はゾンビだけじゃありません……」

 

すっかり得意気なとめるの耳になまほしちゃんの忠告が届く前に一発の銃声が響くと同時に屋外階段付近のドラム缶が爆発炎上した。

 

to be continued

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。