ラクーン市警 屋上 午前2時半頃
「はははっ!これは景気がいい!!バーベキューは派手にいかないとな!」
溜まった憂さを吹き飛ばすようなドラム缶の大爆発を屋上から眺めて意気揚々でアイアンズはボルトアクションライフルから排莢して、爆発から庇うためになまほしちゃんに覆いかぶさったクッコロに狙いを定める。
「小鹿の次はメス虎か?!悪くない」
なまほしちゃんの逃走を許した時は怒りと屈辱で我を忘れたが思わぬ幸運にアイアンズは舌舐めずりをする。ターゲットが三人一堂に揃っているなどまたとないチャンス。
"S"からは三人は生け捕り以外の条件は聞いていない。両足をライフルで潰してふん縛って護送車にでも放り込んで"S"の指定した場所まで運べばいい。
大丈夫だ。まだツキは残ってる。アイアンズがほくそ笑みながら引き金に力を込めた瞬間ライフルのスコープが砕け散った。
バリーン!
「ぬぁぁっ!な、なんだ!あのガキ!」
アサルトライフルを構えたとめるが目を見開き口を四角に開いてとめるが怒りの咆哮を上げる。
「なまほしちゃんとクッコロちゃんをいじめるなぁぁぁぁっ!!ふぁっきゅー!!」
「おぉぉっ!舐めるなぁ!クソガキィィィ!」
スコープが破損して狙撃銃としては使い物にならなくなったライフルを躊躇なく投げ捨てるとサイドアームのリボルバー拳銃で撃ち返す。
バン!バン!バン!
「ばーか!当たんないよー!」
バララララッ!
屋上のフェンスにフルオートで放たれたホローポイント弾が当たり火花が散る。圧倒的な火力の差に怯むも、銃撃戦の間隙を塗って再び署内に逃げ混もうとするクッコロとなまほしちゃんの姿にそうはいくかと銃口を向ける。
「逃げるなぁ!クソアマァァァ!!」
「クソはそっちー!チャーシューになっちゃえ!」
バウッ!
フェンスに火炎弾があたりアイアンズのYシャツに炎が燃え移り、狼狽して慌てふためきリボルバーを闇雲に撃ちまくる。
「ぐぁぁぁ!くそぉぉぉっ!!」
バン!バン!バン
「きゃっ!」
乱射した弾丸の一発が署内に逃げ込む直前のなまほしちゃんを掠めたのを見てとめるの怒りが爆発した。
「ふぁっきゅー!きもデブおやぢー!これでも食らえー!」
バシャァァァァ!!
「なぁぁっ!さ、酸?!」
炸裂した硫酸弾の飛沫がズボンの裾に掛かり白煙を上げる光景に戦慄を覚えよろよろと後ずさる。さらに追い打ちで足元に転がってきた手榴弾に元から血色の悪い顔から完全に血の気が失われる。
「うりゃー!ふっとべー!台湾パイナップルー!!」
ズーン!
「がはぁっ!!」
咄嗟に地面に伏せてかろうじて直撃こそ避けるも炸薬を増強した強装手榴弾の爆風は贅肉がたっぷりついた身体を激しく軋ませアイアンズに命の危機を焼き付ける。
「ぴぎゃぁぁぁぁっ!ぶひぃぃぃぃっっ!!」
自分が”狩る”側から”狩られる”側であることを文字通り爆風で身体に叩き込まれたアイアンズは屠畜される前の豚の断末魔のような奇声を上げながら屋上から逃走する。
「ざまぁみそかつどんぶりー!」
無様なアイアンズの豚走に中指を突きたてると署内に退避した姉二人の元に向かう。
「とめるちゃん、大丈夫?あのおっさんどっか行った?!」
「うん、ぶひー!って言いながら逃げてった!」
「ともかく、これで一安心ですね」
ゾンビの発生で崩壊したラクーンシティで三姉妹揃って笑い合える幸せをかみしめて三人で熱く抱擁し合う。
「なんかこの三人で抱き合う図って百合営業とかに仕えそうにない?」
「うん!キマシタワーってみんな言いそう!」
「今度やる三人コラボでやってみましょう!」
こんな状況でも動画のネタを考えるVtuberの鑑。しかし、そろそろラクーンシティからの脱出を真剣に考えなければならない。
「街中を見てみたけど公共の交通機関はほぼ機能してないよ」
「てことは陸路は絶望的かー。ヘリとかの空路なら何とかなりそうかな?」
「クッコロちゃんとはぐれてから、なまほしちゃんも色々と署内を見て回りましたけど、STARSのオフィスはまだネット回線が生きていました」
「なまほしちゃん、ナイスー!それでセバスチャンと連絡が取れれば……」
「こういう時に頼りになるのは太い実家だよね」
前世とは違い素直に頼れる実家は心強い。絶望的な状況の中で活路を見出だした三姉妹とは対照的にアイアンズは小娘ごときに歯が立たなかった
屈辱の中で歯ぎしりをしていた。
「クソッ!”S”め!あんな化物を確保しろだと!無茶な!」
署内で最も安心できる己の城である署長室に逃げ込み、とめるとの戦闘でボロボロになった服を着替えリボルバー拳銃に弾を込める。命令を果たせなかった自分を"S"はみ話していることだろう。唯一の希望の綱も失い権威を笠に生きてきたアイアンズの精神は完全に均衡を失った。
「これで脱出の手段はなくなった……それなら最後に好き勝手に暴れてやる!」
自分より弱い相手のみ狙ってきたアイアンズに最早深層姉妹を狙う理由はない。さらに抑圧された心理を守るべく嗜虐心を剥き出しにしたアイアンズは次の攻撃目標をリストアップする。
「そういえば。警察署にバーキンの娘が鼠のように隠れていたな。せめてもの意趣返しだ。楽しんでやる……!」
確実に狩れるであろう弱い獲物に狩人の血が騒ぎ、景気づけに秘蔵のブランデーをラッパ飲みして戦意を高める。
しかし、十数時間後に無力な少女と思われたシェリーに顔を灼かれバーキンに胚を植え付けられて腐った臓腑を食い破られることになるがそれはまた別の話―
to be continued―