とある敗者の敗北宣言   作:かつおのたたき

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『人間は無意味に生まれて、無関係に生きて、無価値に死ぬ』
戯言遣い


 八月二十日、朝。

 

 

「みそぎ! この子飼いたいんだよ!」

 

 どこからか拾ってきた三毛猫を両手に抱え球磨川に頼むインデックス。

 

『いいよ』

 

「やった! いいの? ほんとに? 嘘は無しなんだよ!」

 

 二つ返事でYESを返す球磨川。

 

『でもインデックスちゃん、厳しいことを言うようだけど本当に君に飼えるのかい?』

 

 腰に手を当て猫を指さし球磨川は言う。

 

『この猫は人間と違って必ずお世話が必要なんだよ? トイレを教えなきゃいけないし、ご飯だって用意しなきゃいけない』

 

『君に命を背負う覚悟があるかい?』

 

 独特な雰囲気を出しながら圧をかける。潰れてしまうんじゃないかと思うほどの暗く重い圧力をインデックスはそれに押し潰されそうになりながらも口を開く。

 

「もちろん、あるんだよ!」

 

『ならもちろんいいよ!』

 

『名前は考えてるのかい? 僕は善吉とかいいと思うんだけど!』

 

 先程までのプレッシャーは何処へやら、打って変わってノリノリで名前決めをしようとする球磨川を見て拍子抜けする。

 

「ほんとにいいの……?」

 

『もちろんだよ。でも言った通りしっかりお世話しなかったら……口に出すのも恐ろしいことをするからね』

 

「それは困るんだよ! 絶対ちゃんとお世話するから安心して欲しいかも!」

 

「名前はもう決まってるんだよ、この子は今日からスフィンクス! なんだよ!」

 

 胸を張り宣言するインデックスと何を考えてるか分からない笑顔の球磨川。

 

 ふと球磨川が時計を見る。

 

『おっと、ごめんインデックスちゃん! 僕もう行かなきゃ!』

 

「え! ごはんは!?」

 

『作り置きがあるからチンして食べて!』

 

「わかった! レンジが爆発しても怒らないでね!」

 

『おっけー! 怪我はしないでね! いってきます!』

 

「いってらっしゃい!」

 

 

 


 

 

 予定していた小萌との特別夏期講習を終え、公園のベンチに座り込み週刊少年ジャンプを読みふける球磨川の前に()()は現れた。

 

「おや? おやおやおや? これはこれは禊さんじゃないですか」

 

 柵川中学の制服を身に纏い白梅の髪飾りを着けた少女。

 

『君は……!』

 

 その名前は、

 

『どちら様?』

 

「どちら様?! 今どちら様って言いました!?」

 

佐天涙子のことを忘れたと!?」

 

『えーと、佐天涙子、無能力者(LEVEL0)で身長は160cm、体重は秘密、血液型AB型rh、スリーサイズは推察する限り上から……』

 

「いやいやいや! やめてくださいこんな所で! 覚えてくれてるならいいんですよ」

 

 

 閑話休題

 

 

『久しぶりだね涙子ちゃん』

 

「久しぶりですね〜! 最近見かけないからどこかで事故とかにあってないかと私は心配で心配で仕方なかったんですよ」

 

『それもお得意の戯言かい?』

 

「やだな〜本心に決まってるでしょ? 禊さんなんていつどこで怪我したっておかしくないくらい弱々しいんですから」

 

 久々に会ったにしてはいつも通りな2人。それもそのはず、2人は幼馴染である。

 

『あははっ、それは否定できないね』

 

「でしょ? まあ、禊さんのいい所は耐久性の高さなとこありますからね! 多少の怪我はあっても死んだりはしないでしょう!」

 

「万が一があっても私が守ってあげますよ!」

 

 シュッシュと虚空にジャブを打つ真似をしながら言う。

 

「せっかく久しぶりに会ったんですし、お茶でもします?」

 

『うーん、行きたい気持ちは山々だけど早めに帰んなきゃなんだよね』

 

「そうなんですか? じゃあ仕方ないです! 飲み物奢りで許しますよ!」

 

『仕方ないなぁ、可愛い後輩が奢って欲しいって言うなら……。140円までね』

 

 そんなことを言いつつ自販機の前まで行き佐天は気づいた。この自販機、おかしなのしかない。きなこ練乳、いちごおでん、etc……。

 

「禊さん、もしかしてこの自販機の品揃え知ってました?」

 

『もちろん! 涙子ちゃんの好きな飲み物にしていいよ?』

 

 ジト目で疑いの目を向ける佐天に一切の悪意を感じさせない無邪気な笑顔を向ける。

 

「たまには冒険するのも大事ですよね! じゃあこれで!」

 

『じゃあ僕はこっちにしようかな』

 

 ボタンを押す。

 

 自販機はうんともすんとも言わない。

 

『これ……』

 

『いやいや、さすがにね?』

 

『僕今二千円札入れたんだけど……』

 

「あんま気にしちゃダメですよ。ほら! 地雷ドリンク飲まなくて済んだって考えればね?」

 

 頭を抱えそうなほど落ち込む球磨川をなんとか慰めようとする佐天。落ち込んだ雰囲気の中、後ろから声をかけてくる影。

 

「アンタ達、って佐天さん?」

 

 常盤台の制服を身に纏った学園都市に7人しかいない超能力者(LEVEL5)の1人。

 

「あれ? 御坂さんじゃないですか!」

 

 第三位、超電磁砲(レールガン)。御坂美琴その人であった。

 

 


 

 

「ふふ、それで二千円呑まれたの?」

 

「そうなんですよ〜」

 

 事情を説明する佐天と、それを聞き笑いを堪えきれない御坂。耐えきれず、あははと声を上げながら口を開く。

 

「バカね〜、自販機にお札なんて入れちゃダメじゃない。こうやって呑まれることもあるんだから」

 

「は〜笑った笑った。そんな落ち込まなくてもいいわよ。私が助けてあげる」

 

『本当かい! ありがとう御坂ちゃん!』

 

 女子中学生からパンツを見せてもらえると聞いた時と同じ勢いで御坂の手を握る。

 

「わかった、わかったからちょっと離れなさい!」

 

 顔を赤くしながらそう言うと自販機に手を当てバチバチと電撃を流した。途端にガコガコと溢れ出す飲み物。

 

「あちゃー出すぎてますね」

 

 呑気にそんなことを言う佐天と思ったより出たことに少しビビる御坂。それを見ていつも通りの笑顔を見せる球磨川。

 

 

 閑話休題

 

 

「前々から思ってたんだけど、佐天さんといるとどうにも能力の制御がしづらいのよね〜」

 

 大量の缶を三人で抱えながらベンチに戻ると御坂がそう切り出した。

 

『涙子ちゃんの()()()()のせいじゃない?』

 

「え! 私のせいだって言いたいんですか? 禊さん!」

 

()()()()?」

 

 頭に「?」を浮かべる御坂に笑いながら説明を始める。

 

「私、無能力者(LEVEL0)ではあるんですけど、スタイルって言う能力? 技術? が使えるんですよね〜」

 

 えへへ、と笑いながら舌を出すと見える刻まれた「戯」の文字。

 

「一応、戯言遣いって言うんですけど。そんな役に立つものでもなくて、周囲を少し上手くいかなくするんですよ」

 

「こういう感じで」

 

 そう言って球磨川に目を向けると、あぁ……と言いながら吹き出したおでんソーダを一身に受ける姿。

 

 それを拭こうと御坂がポケットからハンカチを取り出すと手を滑らせハンカチや持っていた缶を落とす。するとそれが破裂し御坂のスカートもいちごおでんに染まる。

 

「まあこんな風に上手くいかなくなるんですけど、よく考えたらみんなに説明してなかったですね」

 

 生まれた惨状を前に少し申し訳なく思う。

 

「よ〜く分かったわ、あまり人前で使わないで」

 

「もちろん! わきまえてますよ!」

 

 胸を張り御坂から目を逸らしていく。良いことを思いついた! と声をあげると球磨川の手をとり御坂に押し付けて言った。

 

「禊さんの過負荷(マイナス)で綺麗にしてくださいよ!」

 

 球磨川はため息をつくと佐天の手を握り直し、諭すように言う。

 

『いいかい? 涙子ちゃん、なんでもかんでも能力に頼っちゃいけないんだ。そんなことばかり繰り返してたらダメな大人になっちゃうだろう?』

 

 何気なく自分1人だけ服を綺麗に整え直た球磨川がいけしゃあしゃあと言うのを聞き、電流を迸らせる御坂。

 

「いいから、綺麗にできるならして」

 

『はい』

 

「禊さんに大人しく言うことを聞かせるなんて、やりますね!」

 

「はぁ、佐天さんも少しは反省してちょうだい」

 

「うっ、ごめんなさい」

 

「よろしい!」

 

『涙子ちゃん』

 

「なんですか?」

 

『女子中学生が軽率に異性の手を握るのはあまり良くないんじゃないかな?』

 

「それには同意しかねます」

 

『え? なんで?』

 

「なんでもです!」

 

 少し顔を赤くしながら理由を話そうとしない佐天、それを肯定も否定もしない微妙な表情の御坂。

 

『まあ、僕は紳士だから何もしないけど。他の人にはやめときなよ』

 

「そりゃもちろん!」

 

 よく分からないと首を傾げつつも年上としてしっかり注意を促す球磨川。

 

『うん、いい返事だね』

 

「じゃ、偉い私にいつもの頼みます! 禊さん!」

 

『いつものね、はいはいえらいえらい』

 

 ぽんぽんと頭を撫でられながら目を細める。幼少の頃からの習慣となった至福の時間。手のひらから伝わる温もりを楽しんでいると不意に視線を感じた、視線の先を見ると御坂さんが羨ましそうにこちらを見ている。少し悩むところだったが、1人で楽しむのもずるいかと思い、仕方なく禊さんの手を御坂さんに差し出す。

 

「名残惜しいですが、次は御坂さんの番です!」

 

 佐天が球磨川の手を取りいざ御坂の頭に乗せようという瞬間。

 

「お姉様!! おやめくださいまし!!!」

 

 ツインテールにお嬢様口調、最も目立つのは御坂さんと同じ常盤台の制服。御坂さんに抱きつこうと動き始める瞬間、球磨川からの声掛けにピシッと固まる白井。

 

『あれ、白井さんじゃないか』

 

 声をかけられた白井は「うげっ」と今にも声を出しそうな表情で、というか実際にもっと汚い声をあげて後ずさる。

 

「なんであなたがここにいるんですの……?」

 

『なんでって、ねぇ?』

 

 佐天と御坂にアイコンタクトを送ると堂々と胸を張り口を開いた。

 

『それはもちろん、2人とお付き合いしてるからさ

 

「んなわけないでしょうが!!」

 

 すかさず入る御坂さんの鋭いツッコミ、佐天は別にお付き合いしてるってことでもいいけどな〜、なんて思いつつ一歩下がる。

 

「ムキィィィィ! お姉様! 黒子よりもこんな精神異常敗北者を選んだんですのね!」

 

『フッ、悪いね白井さん』

 

「あんたも何信じてんのよ!」

 

 バチバチと電流がほとばしりだす。

 

「いい加減に、しなさい!!」

 

 怒りのままに放たれた電撃に禊さんと白井さんら2人仲良く撃たれる。うわ、骨見えてる痛そ〜──と思いながら一歩引いた位置で見ていると起き上がった白井は球磨川を見ながら言う。

 

「ううっ、いいですの? 世の中には言っていい冗談と悪い冗談がありますのよ!」

「次は許しませんわ! 覚えてなさい!」

 

 そんな小悪党みたいな捨て台詞を吐いてテレポートでどこかに行ってしまった。一体何をしに来たのか……。

 

 ふと腕時計を確認すると初春との約束の時間が近づいている。球磨川との時間は名残惜しいが、親友との約束を無下にするのも忍びない。

 

「禊さん! 御坂さん! そろそろ初春との約束の時間なのでお先に失礼しますね!」

 

『またね、涙子ちゃん』

 

「これ1本持ってくといいわ、佐天さん」

 

「またね」

 

 御坂から受け取ったヤシの実サイダーを両手に持つと、御坂の可愛らしい笑顔に見送られ走り出す。

 

「じゃあ、また明日とか!」

 

 少し離れたところで止まり、球磨川譲りの別れの挨拶を済ませると、後ろ髪を引かれる思いを振り払うように走り去って行った。

 

 

 

 

 その背中を見送ると、不意に背後から聞こえた声。

 

「お姉様」

 

 振り向くとそこには、御坂美琴と()()()()()()が立っていた。




原作3巻の内容を始めます。

姫ナントカさんもいずれは……
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