再会
『はぁ、ここにもいないのか』
ボソッと呟いたその一言は夜闇に溶け消えていった、視界を闇で塗りつぶしたかのような深く不快、そんな夜の闇を一人歩く少年……いや、青年と呼ぶべきであろう男がいた。
『こーんな辺境の山まで来たっていうのに全然痕跡すらないってんだから嫌になっちゃうよねほんと』
『いくら僕がかわいいかわいい弟分だからってこんなに厳しくすることは無いと思わない?』
『こんなことならめだかちゃんでも呼んでくるべきだったかな〜』
『全くもう何時でも帰って来れるならすぐに帰ってきてくれればいいのにね!』
不可逆が可逆になった今、どこからかひょっこりと顔を出してもおかしくないはずの少女を探しながら、一人やかましく空っぽな笑顔で騒ぎ続けている。
『まあ、僕が絶対見つけ出してみせるけどね。』
いいセリフを括弧つけて言いながら、一歩、また一歩、と闇の中を進んでいく、ゆっくりと、ゆっくりと、後に残るのは彼の足音、木の葉の擦れる音、そして、
彼の周りには15匹はいるだろうかという野犬の群れ
『あーあ、最悪だよ! 服が汚れちゃうじゃないか!』
『全く嫌になっちゃうよ、僕はただ
そんなことを喚きながら何かを取り出そうとポケットに手を入れた瞬間、
岩に押し潰され生命活動を終えたはずの彼は、そんなことは初めからなかったかのように気持ちの悪い、例えるなら軟体動物のような動きで立ち上がりながら先程までと同じように、ニコニコと笑いながら立ち上がる。
野犬たちは、確実に死んだはずの獲物が起き上がるという、異常に対して、近づいてはいけないと告げる本能に従い我先にと夜闇へと消えていく。
全力で逃げ去っていく野犬たちの後ろ姿を見つめている彼の姿には岩が飛んでくる前の登山には似つかわしくない黒いパーカー姿から変化はなく、元々岩など飛んできていなかったかのように傷跡も汚れも
そして、静かになった夜の森に、鈴の音を鳴らしたような綺麗な声が響き渡る。
「はぁ、何度言わせるつもりだい球磨川くん、僕のことは親しみを込めて
『あれれ? この声は
『そんなことよりもこんなところまで探しに来てあげたんだから誠意とかないのかい? 今なら全開パーカーで許してあげるぜ?』
「おいおい、君は感動の再会とかそういうのが出来ないのかい? それに僕は君に探して欲しいなんて頼んでないぜ、しかも今は時間が無いんだ、そういう話は、また今度にしてもらいたいね。」
『2年ぶりに会えた弟分に随分な言い草じゃないか! まあ、安心院さんらしいといえばそうだけどさ』
『ねぇ、安心院……さん……?』
彼が嬉々として喋りながら振り返った先にいたのは、安心院さん……に似た格好をした幼女だった。
『えぇ? そんなスキルも持ってたの?』
普段からへらへらしている
「確かに僕は、幼女になるスキル【
『ふーん、前までは出来ないこと探しとかしてたのに、簡単に見つかるものなんだね!』
「おいおい、誤解がないように言っておくけど、別に出来ないわけじゃないよ、球磨川くん、めんどくさいからやらないだけさ、本気でやろうと思えば片手間に終わるよ」
『その手間を惜しんでるってことは、それくらい余裕がない状況ってことなのかな?』
「君にしては珍しく鋭いじゃないか、その通り、今の僕には時間と余裕がない。そんな事情があるのだから、今から君にすることだって仕方ないことだと許してくれるだろう?」
『?』
彼が首を傾げると、彼女が指を鳴らした、するとらどこからか飛来した、大きく分厚く重く大雑把な鉄塊が、彼の胸を貫いた。
貫かれている部分から、意識ごと溶けていくような、どこか心地よい不思議な感覚を味わいながら、彼が最期に聞いた言葉は
「球磨川くん風に言わせてもらうなら、『僕は悪くない』」
それだけだった
エタる予定です……