『え? ここどこ?』
気づけば彼はそこにいた。
先程までいたはずの暗い森とは違う、ジメジメとしたどこかの路地裏。
『うーん、とりあえず僕の
道に転がる適当な石ころを
初めて来るはずの土地、知っているはずもないことがわかるのだ。
彼は、ふと、目を瞑った。
球磨川禊本来の記憶とは違う、この世界で生きてきた
幼少期より不運に見舞われ、陰湿なイジメや暴力を受ける毎日、科学の街ならば敗北体質である球磨川禊を治してくれると信じ、学園都市に送り出してくれた両親。
この世界の球磨川禊は両親にだけは恵まれていたらしいが、やはり球磨川禊である、敗北とは切っても切れない縁がある、どの世界であろうと敗北の星は彼の上で燦々と輝いているようだ。
『
記憶によれば、この世界の球磨川禊の能力として、過負荷に関する能力である
スキルのみを見れば圧倒的な強さを持つ球磨川禊のレベルが低い理由は彼が球磨川禊であるということだけでも十分だろう。
一応こちらの球磨川も、安心院さんに出会い、
元の世界の彼との違いといえば、この世界の球磨川禊は産まれた時から改心後と同じ程度の過負荷しか背負っていなかったということだろう、それにも色々と理由はあるが、説明はまたの機会にとっておこう。
『ま、いっか! とりあえず帰ろ! 先生も待ってるみたいだし!』
記憶を頼りに帰宅することを決めた彼は取りだした携帯でどこかに連絡すると路地裏を後にした。
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うっすらとタバコの匂いがするボロアパートの一室で、唸る幼女と球磨川は向き合って座っていた、机一つ挟んだ向かいに座る幼女がその幼さに似合わずうんうんと唸っている中、球磨川は呑気にもたい焼きを食べている。
たい焼きの腹を割り、中身をぶちまけて味わうという一風変わった食べ方で、である。
うんうんと唸る幼女と、たい焼きを一般的ではない食べ方で味わう青年、この光景を
うんうんと唸るのをやめた幼女は、意を決したように球磨川に声をかけた。
「球磨川ちゃん、全然分からないので答えを教えて欲しいです……」
『えー、分からなかったんですか? ショックだなー月詠先生ならわかってくれると思ったのになー』
「不甲斐ない先生でごめんです……」
小萌先生と呼ばれたこの幼女、外見年齢は12歳程度だが、中身は立派な大人である。見た目は子供、頭脳は大人を地で行く彼女は、学園都市七不思議のひとつにも数えられているほどだ。
そんな彼女を悩ませていたのは、一緒に住んでいる球磨川から届いた一通のメールのせいだった。
そのメールには、[『今から帰りまーす! 僕の変化に月詠先生は気づいてくれますよね! 気づいてくれなかったら僕……』]などという不穏なメッセージが書かれていた。
こんなものは明らかに悪ふざけの類だろう、だが月詠先生は生徒思いの熱血教師、例え嘘であろうと生徒を見捨てることなどしないし出来ない、根っからの
『正解はですね……』
『僕の中に異世界の僕の記憶があることです!』
「えぇ??」
無駄に引っ張った末の答えは、思わず「分かるわけないだろ!」と言いたくなってしまうようなものだった。
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