ウマ娘 ワールドダービー 凱旋門レギュ『4:25:00』 ミホノブルボンチャート   作:ルルマンド

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首 切 り 官 兵 衛

というのは置いておいて、Twitterで報告したことを一応報告します。メジロブライト実装まで一時、サイレンススズカチャートの更新を休止します。理由はスズカチャート読んでたら「あ、あのガバかぁ!」ってわかる、はず。
多分近々くるはずなので……


アフターストーリー:ブルボンの野望 天翔記

 犬ツーの前脚をとって、二足歩行させる。

 そんな遊びをして暇を潰していたミホノブルボンは、ごそりとこの部屋の主が動いたことを耳聡く察知して犬ツーの前脚をゆっくりと床に戻した。

 

「よし、できた」

 

「と言いますと」

 

 東条隼瀬、ミホノブルボンのマスター。彼は、基本的に平坦で静かな話し方をする。

 感情は感じられるもののその起伏は感じられない、平静を保つような感じのある彼の話し方が、ミホノブルボンは好きだった。

 

 聴いていて、落ち着く。多分そのあたりが理由だろうと思うが、理由なんてないかもしれない。

 

 そんな彼が珍しく勢いのある語気で手にとったそれを見て、ミホノブルボンはアホ毛を怪訝に歪ませた。

 

「お前がいっつも着けている手袋に代わる電子機器破壊防止装置ができたのだ」

 

 ミホノブルボンは、触れた機械を破壊する力を持っている。触れたもの尽くを、というわけではないが結構な確率で破壊する。

 これは彼女の意思によらないものであり、正直なところミホノパパボンも困っていた。

 

 

 お父さん。何もしていないのに壊れました。

 

 

 小さな頃の舌足らずブルボンからのそんな報告を聴いて、パパボンはまず思った。子供の言うことだから実際はなにかしてしまったのかもしれない、と。

 だがそれと同時に、こう思った。ブルボンは嘘をつくような子ではない、と。

 

 そして、娘に謎の機械破壊能力があることに気づいたのである。

 気づいてからというもの、パパボンは彼なりの努力をした。しかし原因は突き止められず対処法も無く、『電子機器を使わない』という抜本的ならざる方法によって娘の度を越した機械音痴ぶりに一定の対策を施した。

 

 そのおかげ、あるいはせいで、ミホノブルボンは機械というものに大いなる憧れを抱き、現在のサイボーグっぽい感じになっている。

 

 これは、トレセン学園に入ってからも続くだろう。

 そう思ったパパボンは素直で従順な娘にやむにやまれぬ事情以外での機械類への接触を禁止した。

 

 が、それはあっさり解決した。一昨年の春、東条隼瀬が生み出した金に飽かせた執念の産物――――生体電波シャットアウトビニールで作った手袋でミホノブルボンは、機械を壊すことなく機械に触れられるようになったのである。

 

 そんな感じで、ミホノブルボンは基本的にこの薄い皮膜のような手袋をして過ごしている。

 

「その名も――――」

 

 あっ、溜めたいんだ。

 そう察したミホノブルボンは、後のウマドル活動でも大いに発揮されるノリの良さをここでも発揮させた。

 

 デレデレデレデレー。

 テレビでよく聴くそんな効果音を、一音半句の乱れもなく発声してのけたのである。

 

「レルガン300!」

 

 ドラざえもんか、パフパフーというファンファーレか。

 そんな葛藤の後に、ミホノブルボンは前者を選び声帯で奏でた。器用なイヌ科ウマ娘目の生物である。

 

 有り体に言えば、珍獣。

 そんな彼女の前に出されたのは、彼女の心を笑死させる程にくすぐる銃型の装置と、長方形の形をした15個のカートリッジだった。

 

「……!! 形状確認完了。ロボミン300をモデルにしたものと推測します」

 

「そうだ。ではまず、使い方を説明する。手袋を外せ」

 

 指示に従い、ミホノブルボンは手袋を外した。一見白くて小さな少女の手には、どんな機械も爆発させる謎としか言えない力が宿っている。

 

「まず、お前が触れた機械はなぜ爆発するのか。俺はお前がリモコンを操作して遠隔でテレビを爆破していたのを見て、生体電気に問題があるのではないかと考えた。リモコンを通じてお前の生体電気が発射され、爆破しているのではないか、とな。そこで絶縁グローブを開発して防いできたわけだが……その原因となるものを吸い取ってしまえばいい」

 

 ブルボンがよくやる、掌を前に突き出す例のポーズ。

 その掌からみょーんみょーんと独特な電波を出しているのを観測し、彼はそれをカートリッジに吸い込ませることで抜本的な解決を図れるのではないかと勘付いた。

 

「ということで、カートリッジのプラグ部分を持ってくれ。横についているメーターがMAXになったら手を離す。わかったな?」

 

「はい、マスター」

 

 カートリッジのプラグを手で持つと、ものの数秒でメーターがMAXまで近づく。

 それを6個ほど繰り返し、ついにメーターが止まった。

 

「これで吸い込みは完了したはずだ。つまり、機械に触れても爆発することはない。理論上はな」

 

「なるほど」

 

 ぺたぺたと、ひっそりとマスターから距離をおいて携帯しているスマートフォンを触るブルボン。

 確かに、爆発することはない。彼女は彼女自身の爆発で怪我をしたことはないが、それでも自身の引き起こす現象が平穏とは程遠いものであることを知っている。

 

「そしてこのカートリッジを装填する。そして……」

 

 というところまで言いかけて、東条隼瀬は立ち上がった。

 

「ここでは場所が悪い。移そうか」

 

「……? わかりました」

 

 わからないけど、わかりました。

 そんな犬っぽい彼女がまた立ち上がったのを察知して、すわ散歩かと犬ツーが脚にまとわりつく。

 

「犬ツー、オーダー。おすわり」

 

 そんな動物を一言で静かにさせ、ミホノブルボンはガチャリとケージの中に搬送して座ったままの犬ツーを安置した。

 

「ここらでいいだろう。誰もいないし」

 

 やってきたのは、坂路施設。ミホノブルボンにとっては見慣れた、そして久しく行っていない、そんな風景が目の前にある。

 

「懐かしいですね、マスター」

 

「ん……まあ、そうだな。懐かしい」

 

 まだちゃんとサイボーグやっていたころのミホノブルボンとの思い出が、ここには詰まっている。

 最初から結構犬っぽかったが、少なくとも今ほどではなかった。

 

「では、実演試験を開始する。まずここにストップウォッチを置く。ブルボン」

 

「はい」

 

「お前は照準を合わせて狙ってみろ。俺が離れてからな」

 

「了解しました、マスター」

 

 結構な――――ブルボンアイによると425メートルくらい離れたストップウォッチ。

 それにロボミンサイトで狙いをつけ、引き金を引いた。

 

 ミーン。

 

 そんな軽い電子音と共にカートリッジのメーターが1つ消え、ストップウォッチが爆発する。

 

「おお、やはり。リモコン爆撃と同じことができるわけか」

 

「ロボミン300……!」

 

 カチカチと連打してカートリッジを空にしたブルボンがそそくさと装填し直してまた空にするのを見て、東条隼瀬はうんうんと頷いた。

 

 ミーン、ミーン、ミーン、ミーン、と。

 彼女にとっては結構聞き覚えのあるであろう音が、静かな坂路施設に鳴る。

 

「その調子で、撃ち切ってくれ。明日になったらまた、カートリッジに触れて充電。そうすることで、お前の機械音痴はなんとかなるはずだ。あと、念の為人に向けるなよ」

 

「危ないからですか?」

 

「まあ、そうだな」

 

 ブルボンの謎生体電気は、機械にしか作用しない。いつぞやも言ったとおり、彼女は触れることで電気を流し、電気を流した機械をレンチンするような感じに破壊する。

 謂わば極端に静電気がたまりやすい体質のようなもので、その静電気の発生は睡眠によってもたらされる、とのことだった。

 

 だから、起きた瞬間にカートリッジへの充電を行えばこれまでのように手袋にお世話にならなくても済む。

 

(実のところ、銃型にしなくてもよかったわけだが、こういうかっこいい形にしたほうが日々のルーティーンを楽しめるだろうからな)

 

 悪用すると割とシャレにならないブツであるが、このわんこ型サイボーグウマ娘がそういうところに気を回せるとは思えない。

 

「それにしてもマスターは器用ですね」

 

「本来、俺はシンボリの家の執事になるはずだったんだ。それくらいはできるさ」

 

「なるほど。私は上流階級のことをよく知りませんでしたが、執事というのはすごいのですね」

 

「ああ。主人の求めるところをある程度こなせなければな。特にウマ娘はランニングマシンとか、そういった機械系のものを使うだろう。最後の追い込み中に機器が故障したとなれば、業者を呼ぶ時間の余裕もない。そういうときにちょこっとでも直すことができれば、主人の役に立つ」

 

「なるほど。概念『執事』をインプットしました」

 

 運転、料理、裁縫、掃除、模様替え、日曜大工、機械修理、改造、あとトレーニングメニューの作成と敵チームや敵ウマ娘の情報収集、ダンス、歌唱、弱点をつく戦略の立案。

 

 ウマ娘の名家の側に仕え、役に立つ為にできることのすべてを、彼はある程度こなすことができた。全てにおいて重要視される対人関係の構築能力が壊滅的なだけに、他の能力は恵まれていたのである。

 

 ストップウォッチの残骸を手に持つビニールで回収するのも、ある種手慣れたものだった。なにせ、触れた機械を爆弾に変えるミホノブルボンがその弱点を克服するまで、結構な確率で彼がその後始末をしてきたのだから。

 

(ただ……)

 

 少し、ミホノブルボンは疑問に思った。

 彼女は彼が自分の失敗を過大に、それも露悪的に言う反面、自分の能力を過小評価することを知っている。

 というわけで、彼女は公明にして正大な視点を持っている人の下にその真相を訊きに行くことにした。

 

「ということなのですが、執事とはそんなにもすごいのでしょうか」

 

「そんなわけはない。執事とは国家における宰相のようなもので、主から投げかけられた質問の内容に通じている人間を答えられればいい。必ずしも全てに精通している必要はないし、実際できる必要もないのだからね」

 

「なるほど」

 

「それにしてもお祖父様は……なんでも飲み込んで理解するものだから、加減ができなかったと見えるね。困ったものだが……飲み込んでしまえる方も大概か。なんでもできるから、なんでもやる。それでは結局立ち行かなくなるというのに」

 

 こののろけのような愚痴に、エアグルーヴは眉を困ったように顰ませた。

 

(なんでもできるから、なんでもやる。それは他ならぬ、会長もなのでは……)

 

 腹心がそんなことを思っているとは露知らず。シンボリルドルフはなにか思うところのありそうなエアグルーヴに話を振った。

 

「エアグルーヴ。君もそう思わないかい?」

 

「ええ……? え、ああ……そうですね。なんでもできるのはいいことだとは思いますが、志を共有する者からすれば、頼ってほしい。そう思うのもまた確かです」

 

「まったく、その通りだ。参謀くんは何より、休むことを覚えるべきだな」

 

 困ったものだ、困ったものだ。

 そう言いつつその優秀さと勤勉さを好まずにはいられない。

 

 そんなルドルフは、ほんの些細な生徒同士の諍いごとや食事メニューの味の注文などに目を通して素早く要約した後にパソコンに打ち込んだ。

 

「エアグルーヴ。次の投書を持ってきてくれ」

 

「……会長。何も隅から隅まで見る必要はないと思われます。重要な投書は私の判断で取り分けておきますので、少し自分の時間を持たれてはいかがでしょうか?」

 

「いや、私や君からすれば些細なことかもしれないが、投書した当人からすれば重要なことかもしれない。直接見なかったことによってその些細ならざるものを感じ取れないとすれば、それは私の怠慢になる。私は無能と言われるのはいいし、怠惰であるのもまあ、いいだろう。だがそれによって他のウマ娘に迷惑をかけるのは、嫌だ」

 

 そんなわけでまたも山と積まれた投書に集中力の大半を割きはじめたルドルフを見て、エアグルーヴはため息を吐いた。

 

 憧憬、尊敬、忠誠。そして心配。

 そんな4種の色が混じった視線を【皇帝】に向ける【女帝】に同情するように、ミホノブルボンはポツリとこぼした。

 

「……似た者同士ですね、副会長」

 

「わかってくれるか、書記」

 

「はい。マスターは、基本的に自分の仕事を他人に任せません。自分以外信用していないというのでは……ないでしょうが」

 

「私もそうだが、基本的に会長という基軸あっての生徒会だ。会長ならどうするか、というのを第一に考えてしまうし、その思考には本人ではないが故のズレが出る。そのズレを見越した上で、任せられないと言うよりも自分でやりたい、というのが本音なのだろうが……」

 

 そんな二人の鬱々とした会話になんの反応も示さないほどに集中していたルドルフの鹿毛のギザ耳が、ピクリと動いた。

 

 バカみたいに規則正しい、足音。それがしばらく続いて、樫の木の扉が開いた。

 

「ルドルフ、今日は投書箱の開封日だったな。忙しかろう」

 

「ああ。それなりにね」

 

「だろうな。皇帝陛下はなにせ、一人で抱え込む癖をお持ちでしょうから。で、手伝わせてもらえるかな?」

 

「うん。君の思う通りにしてくれ」

 

「では、そうさせてもらおう」

 

 人格的にはともかく、能力的にはルドルフの分身。

 対人関係やカリスマなどに致命的な欠陥を抱えているものの、その視座や見識は【皇帝】に並ぶ。

 

 本人はなんとなく臣下ムーブをしているが、実質的には友人と言ったほうが近い、そんな二人である。

 エアグルーヴもこうなりたいとは思いつつも、まだ並び立てそうになかった。

 

 第一彼女には、まだ任された仕事があるのである。それは投書ほどルドルフ的な視座を要求されないものではあるが、それでもエアグルーヴにしかこなせない仕事ではある。

 

 その点で、シンボリルドルフは実にうまくタスクを割り振っていると言えた。




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