ウマ娘 ワールドダービー 凱旋門レギュ『4:25:00』 ミホノブルボンチャート   作:ルルマンド

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マスターデュエルはじめました。フォローされる意味もフォローする意味もわかってない初心者ですが、一応ID晒しておきます。対戦のときは手加減してください。

768-439-848です。


アフターストーリー:不変

 ――――新アオハル杯中距離路線初戦、勝利おめでとうございます

 

 ――――ありがとうございます

 

 ――――ミホノブルボン選手の1年ぶりの復帰戦でもありましたが、不安はありませんでしたか?

 

 ――――不安はありませんね。1年間の休養は身体を作り直すためで、怪我をしたわけではありませんから

 

 ――――よろしければ、何故1年間もの間の作り直しが必要だったのかお聞かせ願えますでしょうか?

 

 ――――ブルボンは三冠を取ることが夢でしたが、それ故にデビューを急ぐ必要がありました。つまり、完成を待って挑んでも多士済々のBNWは警戒対象が多すぎて負けかねない。ブライアンとまともにやれば負ける。しかしライスシャワー世代では、菊花賞のライスシャワーを警戒し、そこをゴールにしていけば三冠は取れると判断したわけです

 

 ――――なるほど

 

 ――――なので当然、2年で菊花賞で勝てるように即効で基礎を仕上げていきます。ですが速さを優先せざるを得なかったという都合上、基礎工事が不充分なところがありました

 

 ――――な、なるほど?

 

 ――――凱旋門賞とURAファイナルズは辛くも勝ちましたが、思いました。ここらが限界だろうな、と。なので1年間かけて基礎工事をやり直したわけです

 

 ――――その結果が現在ですか

 

 ――――ええ。今のブルボンは1400から3400まで、芝の和洋不問、バ場状態不問で安定した強さを出力できます。ミホノブルボンというウマ娘は、寒門出身です。故に、傑出した才能がない。つまり必殺の勝ちパターンでの対決になると負けます

 

 ――――ステイヤーズミリオンを制覇したライスシャワーを相手に長距離を走ると負ける、ということでしょうか?

 

 ――――はい。なので誰にでもできる技術を極めることによって、どこでも、誰とでも、どんな環境でもある程度戦えるようにしました。スペシャリストがその傑出した才能を発揮する場では不利になりますが、他では相対的に有利に立ち回れる。スペシャリスト相手の不利は私がなんとかするとして、有利な相手には普通に勝ってくれるでしょう

 

 ――――それが、今回というわけですか

 

 ――――はい。ダイワスカーレット選手の勝負根性とスペ……シャルウィーク選手の歴戦の豪傑らしい対応力には驚きましたが、ブルボンの対応力が勝ちましたね。実況さんの言うとおり、伊達ではない強さでした

 

 ――――これから1日目最終戦、長距離がはじまりますが、3連勝。期待してもよろしいでしょうか?

 

 ――――ブルボンのように環境に適応するのではなく、環境を支配すべく恐竜的進化をした3人のうち2人が出ますからね。勝てる目算はあります

 

 ――――ありがとうございます! 東条隼瀬トレーナーでした!

 

 

 そう、勝てる目算はある。

 なにせ、皇帝が出てくるのだ。

 

 ミホノブルボンは、古代で言えば人間的な進化をした。対応力を上げた。上げざるを得なかった。傑出した決め手というものに欠けるが故に、である。

 

 だが確かな決め手というものがあるウマ娘は、その勝ちパターンを通せるような成長をする。

 

 例えばサイレンススズカなら、逃げてから差す。

 シンボリルドルフなら、レースを支配して有力なウマ娘の勝ちパターンを潰しつつ打つ手を無くさせ、ハナ差で勝つ。

 ナリタブライアンなら、末脚を爆発させて圧勝する。

 

 そういう連中は得意なペースがあり、そして得意な距離がある。そして長距離というのはその距離が長いが為に駆け引きが多発する。即ち、シンボリルドルフにとっては有利なフィールドであると言えた。

 そしてスペックゴリ押しが信条――――というわけではないが基本的に圧倒的なスペックで圧殺するような勝ち方をするナリタブライアンにとっても、長距離は有利なフィールドである。

 

 なにせ、距離が長ければ長いほどスタートからゴールまでの時間は長くなり、時間が長ければ長いほどに彼我の戦力差が積み上がり続けるのだから。

 

「おい、アイシングが控えめなんじゃないのか」

 

「お前がそういうことを気にするのは珍しいな」

 

 ミホノブルボン。

 当世最強と呼ばれるウマ娘。その強さの源とはすなわちレース前後の入念な準備にある。

 

 それを知っているからこそ、そして自分の姉とその仲間が怪我に泣かされたからこそ、ナリタブライアンは少しその、手抜きとも取られかねないアイシングの短さが気になったのである。

 

「言葉遊びはいい。それでいいのか?」

 

「いい。触ってみたらわかる」

 

 なるほど、確かに熱が抜けている。しかも冷たいわけではなく、平熱といった感じ。

 

「何かしたのか」

 

「ブルボンの勝負服を見なかったのか?」

 

「ああ……あの格好いい翼がどうかしたのか?」

 

「ブライアンさん。これはフィンファンネルです」

 

「違う。放熱板だ。屈腱炎はウマ娘が走るときに生まれる熱エネルギーが脚に悪さをして起きるから、熱を逃がすことで事前に防ぐ。そのための放熱板だ」

 

 だから、アイシングが少なくて済むのだ、と。東条隼瀬はそう言った。

 

 確かに分離した上でそこらに転がっているブルボンの翼のようなパーツは、相当な熱を持っている。

 

 そしてその発言は、ブライアンにとって聞き捨てならないものだった。

 

「そんなものができていたのか」

 

「ああ。作った」

 

「効果は立証されているのか?」

 

「さあ……屈腱炎の原因にしたって、仮説だからな。患部が走ることによって発生する熱に度々晒されることによって発症するのではないか。競技による再発リスクが高いのは、走ることによって熱を持つからではないか。普通にしていれば再発しないのは、走ることによって熱を保たないからではないか。そういう仮説がある。だから、一応放熱板をつけた。そういうことだ」

 

「フィンファンネルです、マスター」

 

「はいはい」

 

 それは誰にでも使えるものなのか。

 そういうことを訊こうとして、ブライアンは首を振って部屋の外に出た。

 レースの前に、これ以上深入りすべきではないと思ったのである。

 

 大きく息を吸い、吐く。

 

(アレがあれば、姉貴も再発を防げる……のか?)

 

 そんな思いをため息とともに吐き出して、頷く。

 

 まずは、勝つことだ。

 そういう認識が、ブライアンにはあった。

 

 

 そして一方、室内では。

 

 

「勝てると言っておきながら、微妙な顔をしているね」

 

「まあな」

 

「私からすれば、君の策は別に悪くないと思うが」

 

「俺も悪くはないと思うが、どうにも」

 

 釈然としない。

 思いついたときはテイオーを封じられるいい案だと思ったし、勝てると思った。

 今も勝てるだろうと思ったのは変わらないが、テイオー封じを思いついたと喜んでいたあのときの高揚感はない。

 なんとなく嫌だという、得体のしれない嫌悪感がある。

 

「まあ、君の予想外に関しては私が対処してみせるさ。前は、ずっとそうだったじゃないか」

 

「それはそうだがな」

 

 スピカは長距離に戦力を傾けている。

 トウカイテイオーとメジロマックイーンのダブルエースに、なんかよくわからないゴールドシップ。

 

 トウカイテイオーに関してはよく知っているからこそ、怖い。

 ゴールドシップは知らないからこそ怖い。

 

 マックイーンに関してはやや力が落ちているから、さほど警戒はしていなかった。

 そもそも不治の病である左脚繋靭帯炎から復帰するというのが驚異的であるから仕方ないとも言えるが、メジロマックイーンに爆発力はない。

 彼女の戦法は豊富なスタミナを活かして先行策をとり、ハイペースを作り出して競り潰すという極まった逃げに近いものである。

 これはずば抜けた安定感こそあれど、安定感がずば抜けているからこそ爆発力に欠ける。

 

 爆発力のあるウマ娘が力を目減りさせるのは、まあよくある。しかし力を爆発させるときに結局戻ってくるから、それは預金みたいなものである。

 しかし安定感のあるウマ娘が力を目減りさせるとなると、それは明確な劣化だと言えた。

 

 故に完調を果たすであろう2年後ならともかく、今のマックイーンはさほど怖くない。無論、今年のウィンタードリームリーグ長距離を制した実績を見るに、今もその力が傑出していることは間違いない事実でもあるのだが。

 

「で、ゴールドシップについての情報はなにか掴めたのかい?」

 

「いや、なにも。しかしわかることはある」

 

 それは非常に、珍しいことだった。

 ルドルフは彼がその情報網をどうやって作ったのか、どうやって維持しているかは知らないが、その正確さは知っている。

 そんな彼が何も掴めないというのは、不気味を通り越して異様ですらあった。

 

「というと?」

 

「あいつの身体はメジロマックイーンに似ている。背丈とかではなく、構造的にな。つまり一瞬の切れ味ではなく、ロングスパートで勝負するタイプ――――いや、勝負をせざるを得ないタイプだ」

 

 ふむ、と。

 頷いて、思考を回す。ロングスパートを仕掛けられない脚質というのは、ない。

 身体構造がロングスパートに向いていると言って道中どこで待機しているか、どこで仕掛けるかを見極めるのは至難である。

 

「で、今のスピカのメンツ。トウカイテイオーもメジロマックイーンも先行策を得意とする。つまりゴールドシップがメジロマックイーンと同じような身体構造をしているからという理由で脚質が先行であると読めば、前に固まりすぎていることになる」

 

 ではマックイーンをより前にした感じ、即ち逃げかといえばそうでもない。これも前に固まりすぎているからだ。

 ロングスパートを逃げに転用するといえば、メジロパーマーであろう。彼女は宝塚記念を制すなど、メジロとしては異端な逃げ戦法で多大な成果を上げている。

 

「となると差し、追込。後方脚質か」

 

「そうだ。で、ここからは正直どちらか見極めることはできない。故にトレーナーの方に目を移すと、スピカの沖野T。彼は追込の名手だ。一時期どこかへ行っていた彼が戻ってきたのは、第二のシービーを見つけたからではないかと思う」

 

「なるほど。だが……」

 

 脚質こそ同じだが、タイプが違う。

 ミスターシービーはロングスパートというより、一瞬の爆発力で突き抜けるタイプだったのだ。

 

 話半分に聴いておこう、と。

 シンボリルドルフはそう思いつつ、彼の立てた戦略に則した戦術を組み立て終えてからふと呟いた。

 

「それにしても、君が何も掴めないというのはめずらしいな」

 

「登録もマル外ではないし、国内出身であることに間違いはない。となると、掴めないはずはないのだが」

 

「では、未来からでもやってきたかな。となると、私としては君と共有する夢がどうなったのか聴きたい気もする」

 

 シンボリルドルフにしてはキレのいい冗談を聴いて、曖昧に東条隼瀬は頷いた。

 情報を掴めなかったというのは、彼の失策である。それを冗談めかしく茶化して負い目や引け目を感じないようにしてくれているの言うのは、わかる。

 

「だが、未来など存在しないさ。ファンタジーやメルヘンじゃないんだから」

 

「ん……そうかな」

 

 殊更存在を肯定しないが、否定もしない。

 そんな中庸の立場に立ったシンボリルドルフは、断定形の言葉に首を傾げた。

 

「そうさ。過去はあるし現在はあるが、未来はこれから俺たちが作るものだ。まだ作り終えていない料理を、そこにあるとは言わないだろう?」

 

「確かに。君らしい言い草だ」

 

 そう考える方が、生きる活力も湧いてくる。

 壁に立てかけられた時計に素早く目をやり、シンボリルドルフは椅子から立ち上がった。

 

「さあ、いこうか」

 

「仰せのままに」

 

 恭しく一礼し、東条隼瀬は扉を開けた。

 既に扉の横の壁に凭れるように、ナリタブライアンが待機している。

 

「いくぞ、ブライアン」

 

「ああ」

 

 なんの気負いもなく頷く。

 天下無敵の三冠ウマ娘と参謀を引き連れて、シンボリルドルフは戦地に赴いた。

 

 これまでとは違い、参謀は観客席へ。

 そしてふたりの三冠ウマ娘はターフへ。

 

 そこで、トウカイテイオー、メジロマックイーン、あとはゴールドシップを迎え撃つ。

 ゴールドシップは知らないが、トウカイテイオーの恐ろしさとメジロマックイーンの強さは知っている。しかしそれを知った上で、彼女の杖は作戦を立案した。

 

 そして彼女がその右手に杖を握っている限り、レースに負けることなどあり得ない。

 

「カイチョー」

 

「やあ、テイオー」

 

 万感の思いが、両者の間にはある。

 初の激突となる天皇賞秋ではトウカイテイオーの調子が最悪を極めていた。その後ぶつかるはずだった宝塚記念では3度目の骨折に激突を阻まれ、そしてURAファイナルズでも4度目の骨折で競い合うことはできなかった。

 

 そして4度目の復活を果たして、トウカイテイオーはここにいる。

 

「ボク……負けないから」

 

 無邪気の中に確かにある、静かな闘志。

 何度も何度も折れて、そして復活してきたが故に得られた不屈の闘志。

 

 それを感じて、ルドルフはやや獰猛に口の端を上げた。

 

「いいレースにしよう」

 

 念願のレースだというのに、一言二言の短い会話を交わすだけ。

 そんな皇帝と帝王を見て、ナリタブライアンはふと空を見た。

 

(覚醒を果たした姉貴を病み上がりの身で倒した、トウカイテイオー)

 

 今回も病み上がりではあるが、まるで油断できない。なにせ、彼女は病み上がりでない時より病み上がりであることの方が多い、稀有なウマ娘なのだから。

 

(仇というわけではないが)

 

 潰えた姉との有馬記念で得られなかった競うことの愉悦を、ここでもらう。

 冷静そうな顔の内に闘志を秘めて、ナリタブライアンはゲートに入った。

 

 レースがはじまるまでの微妙な時間を呼吸を整えることに費やし、ゲートが開いたその瞬間に外に出ることのみを考える。

 そこからはあいつなり、ルドルフなりが考える。

 

(待つことだ)

 

 それが今回の自分に課せられた役割であることを、この聡明で繊細なウマ娘は知っていた。

 

『さあ、アオハル杯1日目、最終戦。リギル、銀河帝国からはまさに銀河レベルのスターである二人、シンボリルドルフとナリタブライアンが出走登録されております。対抗バであるスピカはメジロマックイーンが1枠1番、トウカイテイオーが大外。未デビューのゴールドシップも、ウオッカとダイワスカーレットの奮闘から見ても経験を積むためにここに来たわけではないでしょう』

 

 スター揃いの対決。メンバーだけならばおそらくは有馬記念すら凌駕するレベルの質と量。

 

『さあ、スタートしました!』

 

 そのスタートは、その質と量の重みに耐え切れなかったウマ娘の暴走からはじまった。

 シンボリルドルフの両隣が与えられるプレッシャーに耐えかねて逃げ出すように加速し、1枠1番という好位置を与えられたメジロマックイーンの進路を潰すように駆けていく。

 

 そしてシンボリルドルフはスタートが重要な東京レース場の特性を知り尽くしているが故に、むしろわざと脚を緩めた。

 

 スタート後、すぐにコーナーがある独特の形状。序盤の位置取りが順位に直結しかねないここで、わざと脚を緩める。

 それは、自殺行為である。

 

 しかしこの場合、そうではなかった。

 弾かれたように急進する皇帝の両隣のウマ娘の異様さもあり、他のウマ娘たちはなんだとばかりにルドルフを見たのである。

 

 そして瞬間、彼女らは速度を感知する感覚を狂わされた。

 

 ルドルフのスタートが遅い。

 無論それはシンボリルドルフ自身が脚を緩めたからなのだが、他のウマ娘たちは勢いよく急進していくふたりのウマ娘とシンボリルドルフを見比べて速度を錯覚した。

 

 というか、ルドルフが錯覚させた。

 シンボリルドルフが、敢えてセオリーを無視して不利を甘受するとは思えない。

 

 ならば自分たちが速く走ろうとしすぎている。

 無茶なスタートをしたあの二人、皇帝の隣の二人に釣られる形で速度を上げすぎている。

 そう、彼女たちは考えた。

 

 長距離レースで速度を上げすぎれば、スタミナが尽きる。スタミナが尽きれば、絶対に負けることになる。

 この瞬間、シンボリルドルフは杖をひと振りした。即ち、彼女はレースのペースを決める信頼を得たのである。

 

 大外で不利を受けているトウカイテイオーも、進路を潰されたメジロマックイーンも、そのペースに反することはできない。テイオーは現在の極端に横に広がった状態での外枠であるが故に、マックイーンは頭を抑えられているが故に――――どちらも、進むべき道がない。

 故にこの二人は、皇帝のペースに従うことを強いられた。

 

 結果、このレースで皇帝に叛するものは二人。

 バ群の後尾につけたナリタブライアンと、そして大出遅れをかましたゴールドシップだけである。

 

「やだー、ゴルシちゃんうっかり! 遅刻遅刻ぅー!」

 

 わざとらしい自分の出遅れをバカみたいに笑いつつ、ゴールドシップは心の中で不敵さを失わない程度に頬を引きつらせ、笑った。

 

(にしてもやべーな開幕から。昔のことは美化されるって言うけど、あいつらの強さは不変だわ)




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