ウマ娘 ワールドダービー 凱旋門レギュ『4:25:00』 ミホノブルボンチャート   作:ルルマンド

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RTAパートを書くのが難しいねんな……

123G兄貴、白河仁兄貴、yumeinu兄貴、raglaner兄貴、サピエンスだけどホモではないです兄貴、すまない兄貴、white2兄貴、初&見兄貴、メリィ兄貴、レイヴン兄貴、Noxlight兄貴、タイヤキ兄貴、化猫屋敷兄貴、ヒイラギ兄貴、mtys1104兄貴、何足道兄貴、ホモ兄貴、ろむ兄貴、光に目を灼かれたペニーワイズ兄貴、かぶと兄貴、すらららん兄貴、発狂ポテト兄貴、名無し兄貴、迫る影兄貴、ほっか飯倉兄貴、Fukki兄貴、Falc兄貴、ワットJJ兄貴、無(む)兄貴、レオニ兄貴、明日川兄貴、はやみんみん兄貴、障子から見ているメアリー兄貴、私は歩行者兄貴、ユウヨコヤ兄貴、Zenra兄貴、レンタカー兄貴、サヨリ兄貴、さんまたべたい兄貴、なのてく兄貴、アドナイ兄貴、酔いどれ地蔵兄貴、金曜日(うんのよさ)兄貴、ブブゼラ兄貴、せりせり兄貴、曼陀羅兄貴、Hey,sorry兄貴、夕莉兄貴、Guardi兄貴、パンダメント兄貴、ガトリング・ゴードン兄貴、夏野彩兄貴、Jupiter兄貴、斑ピクミン兄貴、主犯兄貴、Tukue兄貴、がんも兄貴、fumo666兄貴、サガリギミー兄貴、ライセン兄貴、青タカ兄貴、葵い兄貴、アペイリア兄貴、星ノ瀬竜牙兄貴、ハガネ黒鉄兄貴、風呂兄貴、白い未栄兄貴、クリストミス兄貴、朱ザク兄貴、FROSTY=BLAKK兄貴、ESAS兄貴、Hnzr兄貴、ふれんち兄貴、KAIKI兄貴、Jeci兄貴、必勝刃鬼兄貴、消波根固塊兄貴、バナナバー兄貴、蒸気帝龍兄貴、感想ありがとナス!

Lemon兄貴、エイブラース兄貴、水銀にーと兄貴、Dragases兄貴、yuuki100兄貴、rumjet兄貴、葵い兄貴、SPEW兄貴、zenra兄貴、彗星のカービィ兄貴、愛などいらぬ兄貴、智原愛兄貴、バタ水兄貴、師匠と弟子兄貴、PARKER兄貴、縊死兄貴、patvessel兄貴、評価ありがとナス!


サイドストーリー:耳ピト

「バーン! トウカイテイオー様だぞよー!」

 

 雷霆一閃。要は雷のようなうるささと稲妻のような速さで、トウカイテイオーは生徒会室に入った。

 エアグルーヴが居たらキレてるところだが、幸いにも副会長ふたりは留守にしている。

 

「カイチョー! カイチョー! ボクね――――」

 

 盛りのついた犬のような元気さで突撃をかましてきたトウカイテイオーは、ピタッと止まった。

 嗅ぎ分けたのは、医者と並ぶ天敵の香り。

 

「東条隼瀬……!」

 

「……ああ」

 

 突然突っ込んできた年下のガキ(面識:アリ)に、突然呼び捨てにされる。

 そんな状況にあっても、その芦毛の男は全く動じずに曲げわっぱの弁当箱の中に収められた料理を口に運び、咀嚼した。

 

「ガキか。どうした」

 

「が、ガキ……!? ガキ呼ばわりしないなら言ってあげてもいいけど!?」

 

「ああ……」

 

 もう色々めんどくさくなって、彼はすべての思考を放棄して弁当に向かった。

 非常に茶色いその弁当は、実に美味い。ボリュームも多すぎず少なすぎず、味も濃すぎない。

 

 ウマ娘の常として量は多く味は濃いというのが多いがあいつはそうでもないらしいと、東条隼瀬は密かに感心した。

 

「いいけど! いいけど!」

 

「別に言ってもらわなくともいい。先程の言葉は社交辞令だ。俺としては、お前に興味はまったくない。故に、言わなくとも構わない」

 

「…………実はね。ボク、カイチョーに」

 

「よし、俺の言い方が悪かった。うるさいから黙ってほしいんだ。わかるかな」

 

 ほしいんだ。わかるかな、というところに史上最高クラスの煽り――――というよりも心底からガキだと思われ、そういう扱いをされているという感覚――――を察知し、トウカイテイオーはピキッときた。

 

「ボクね! ありがとうを言いたいんだ! カイチョーはボクに色々気を使ってくれたからさ!! もうスピカのメンバーには言ったし、ネイチャとかにも言った! だからあとは、カイチョー! マックイーン! ブルボン! そのあたりかなーって!」

 

「それにしても春巻きは美味い」

 

「聴いてる!?」

 

 わざと大声で――――ウマ娘特有の強靭な心肺機能を活かした大音量で喋り散らかすトウカイテイオーをちらりと見て、参謀は気づいた。

 

(重心が纏まってきている)

 

 左脚を日本ダービーで折り、右脚を天皇賞春で折る。だからといって、『あら、両足が折れてバランスが良くなりましたわね』とはならない。

 

 かつてとある野球選手は、アキレス腱を切ったときにいった。どうせならもう片方も切れたほうがバランスがよくなる、と。

 しかし無論、そんなことはない。アキレス健も骨も、折れないことに越したことはない。

 

(流石、やるな。いや、年上のトレーナーに思うことではないが……)

 

 トウカイテイオーの利き脚は、右である。

 それが当初は妙に、左脚が鍛えられていた。たぶんそれはルドルフがウマ娘では特に稀有な左利きだったからだろうが、そのせいで負荷が左脚にかかって、ダービー後に折れた。

 その結果折れていない右脚――――本来の利き脚を鍛えて大阪杯に臨み、ダービー以前より強い走りで勝った。そしてそのまま春の天皇賞に臨み、右脚を折った。

 

 常にどっちかに傾いていた重心がここに来て矯正されたのは、ひとえにスピカのトレーナーが組んだ練習メニューとそれを忠実に守るトウカイテイオーの努力の成果であろう。

 

「ねぇ聴いてる?」

 

「聴きたくない。今気づいたが、俺はうるさいやつと話すと耳が痛くなる」

 

 理性的な初代、名前通りの二代目、おとなしい三代目と、彼と関わってきたのは全員静かなウマ娘である。

 一番うるさいのが比較法でシンボリルドルフだという時点で、改めてそれまで恵まれていたことをひしひしと自覚した。

 

「あのさあのさ。さっきのレースでミホノブルボンが不調だったってホント?」

 

「本当だ」

 

 割と律儀なところを発揮して、参謀は答えた。

 

 肉体的にはともかく、感覚的には不調であったことに変わりはない。

 URAはいつから機械が走ることを許可したんだい?などというコメントをされることもあるが、ミホノブルボンは立派なウマ娘である。きっと、たぶん。

 

 更に言えば最近、自我も出てきた。それが競技者として良いことなのかどうかはともかくとして、個人としては良いことなのだろうと参謀も思う。

 

 あまりにも抜けているというか、ポケーっとしているというか、歳の割りに幼いというか。

 当初はそれほどでもなかったが、最近は娘を心配するような心持ちになりつつある。

 

「走ってるところを見ると、不調には見えなかったけど。なんでラップ走法を捨てたのさ」

 

 お茶――――なんの変哲もないただの麦茶――――をガラスのコップに注ぎ、口を濡らす程度に飲む。

 

「淹れる人間でこうも差が出るものかな。たかが麦茶だというのに」

 

「ねえ。ひょっとして無視しようとしてる?」

 

 何が悲しくて仮想敵にこうもペラペラと好不調がどうたらこうたらと話さなければならないのか。

 不調であったことをバラすのはいい。ブラフに使えるから。だが、有益になるであろう情報を話す気にはならない。

 

「好不調の波が激しくないというのはある。だがそれは、不調が存在しないということではない。いつか来るだろうと思っていた」

 

「それインタビューで言ってたことじゃん! というか答えになってないしさぁ!」

 

「お前、見てたのか」

 

「そりゃそうだよ。このテイオー様を負かした相手のインタビューなんて、そう何回も見られるもんじゃないしね」

 

 自信8割虚勢2割の二八蕎麦ウマ娘。

 そんなことが頭に浮かび、春巻きを頬張る。皮はパリッと、中はしっとり。実に外面と内面の差が鮮やかで、中身の彩りも美しい。

 

「ねぇ聴いてる!?」

 

 机に両手が叩きつけられ、弁当が5ミリジャンプした。

 遠目に見たことしかないし、まともに関わったこともあんまりない。だがそれにしても、元気になったものである。

 

「お前、調子良さそうだな」

 

「あ、わかる? わかっちゃう?」

 

 そう、ボク調子がいいんだよ。朝起きたらなんというか天気が快晴ッ!て感じでさ。晴れ上がった空を久々に見たなぁというか、新しい目標を手に入れることの重要さを見たというか。

 ミホノブルボンも言ってたけど、夢は形を変えていく。ボクにとっての夢はカイチョーだったし、今もそれは変わらない。

 だけど夢って、ひとつだけにしなきゃいけないわけじゃない。カイチョーみたいなウマ娘になる。カイチョーに認められるウマ娘になる。カイチョーに勝てるウマ娘になる。それに加えて、マックイーンに勝てるボクになる。んで、ミホノブルボンにも勝つ!

 

 そんなことを瀑布の様な勢いでまくしたてる、この子供。

 

(ライオン丸に似ている……)

 

 テールヘアー。尻尾と同じように髪を後ろで1つに括って垂らす髪型を、ライオン丸――――シンボリクリスエスはしていた。

 初恋の――――そして未だに崇敬の対象である彼女の影をこんなちんちくりんに見てしまい、参謀は心の中でため息をついた。

 

「だから勝つから! ミホノブルボンに!」

 

(元気そうで何より)

 

 ツインターボに近い何かを感じる。このやかましさ。

 

 そんなことを思いつつ、参謀は少しだけ思考を真面目なものに寄らせた。

 このトウカイテイオーというウマ娘にライバル扱いされるというのは、この上なく光栄なことである。なにせ、才能だけならばシンボリルドルフに勝るとも劣らない――――いや、劣る。

 まあ劣るが、それでもブルボンのよりも遥かに優れた質と量の才能を持つ。中距離ウマ娘の完成形のような存在が、このトウカイテイオーというウマ娘なのだ。

 

「ボクはジャパンカップでは負けたけど、有馬記念では勝つよ!」

 

「本人に言ったらどうだ」

 

「……『そうですか』としか言われなかったんだもん」

 

「なるほど。言いそうだな、それは……」

 

 好戦的ならば、『負けません』とか言うだろう。『次も勝ちます』ともいうかもしれない。

 

 しかし宣戦布告されて『そうですか』と流すのは、いかにもブルボンじみている。

 

(……ということは闘走心に折り合いを付ける術を掴んだ。もしくは掴みかけている。そういうことなのか)

 

 いつものブルボンという概念は、今となっては貴重である。闘走心を身につけてから急速に情緒的な成長を見せている彼女のいつもは、かつての『いつも』とは大きく異なる。

 

「とにかく! ボクは新しい戦法も閃いたんだから!」

 

「ほう」

 

 これまでのトウカイテイオーは、好位抜け出し――――所謂、王道の中の王道たる『ルドルフ戦法』しか使わなかった。

 ルドルフ本人は割とその戦法をポイ捨てすることが多かったが、やはり彼女の軸には王道たる好位抜け出しの戦法がある。

 

 抜群の駆け引きセンス、ずば抜けた洞察力、俯瞰するような状況把握能力。何よりも、圧倒的な基礎能力。

 開幕からの逃げも、王道たる好位抜け出しも、脚を溜めての差し切りも、最後方からの追い込みもやろうと思えばできるからこそ、シンボリルドルフは王道をとった。

 

 そのことに気づいたからこだわりを捨てたのか。あるいは、気づいていないがこだわりを捨てることに成功したのか。

 前者であればまだ与しやすいが、後者であれば厄介である。

 

「このテイオー様にしかできない変幻自在の戦法で、ボクはカイチョーがほんの少しでも衰える前にカイチョーを倒すんだ!」

 

「衰え。ルドルフが?」

 

「そう。カイチョーは絶対だし永遠だけど、それでもやっぱり限界はある。その前にボクが――――」

 

「いや、ルドルフは劣化なんてしないよ。あいつは永遠に全盛期だ」

 

 ――――ユタカは劣化なんてしませんわ! 永遠に全盛期なのです!

 

 ひどく凡庸な守備ミスをしたとある選手を見て「衰えたな……」とか言ったおっさんに向けて、マックイーンはそう言った。

 

 そのあとは気圧されたおっさんを巻き込んで大応援――――このときなぜトウカイテイオーがいたのかと言えば、連続安打記録がなんたらということでマックイーンに野球観戦に誘われたからである――――をして事なきを得たが、割と鮮烈な記憶として残っている。

 

 なんたらユタカと言う野球選手の熱狂的ファンであるマックイーンと、東条隼瀬は同じ目をしている。

 

(あれ……もしかしてこのひと、カイチョーのファンなのかな)

 

 そう考えると何となく、親しみが湧いてきた。

 今まではカイチョーのそばにいるよくわかんない無表情な男という認識だったし、なんとなくな苦手意識があった。

 今回話しかけたのだって、他に誰もいなくて暇だったからだ。

 

「あのさ。キミって、カイチョーのこと好きなの?」

 

 訊き方がまずかったかな、と。

 言った瞬間、トウカイテイオーは自戒した。割とこう、誤解を生みそうな質問である。

 

 その細かい表現のミスを正そうと口を開きかけた瞬間、生徒会室の豪奢な樫の木のドアの向こうで、何かがピトッとくっついた。

 

「ああ、好きだよ」

 

「え」

 

「その心も、立ち振る舞いも。ああいう大きな夢を描き、他人をその絵の中に載せられる。ああなりたいと思うが、俺にはああはなれない。だからこそ、その在り方を美しく思う」

 

 ――――今は尊敬に変わったが、初恋がクリスエスなら、2番目はあいつだろうな。中身だけ見て見た目をまったく見ないのもどうかと思って、言わなかったが

 

 樫の木の硬い部分に額をゴツンとやったような音が、廊下と生徒会室の中に響いた。




設問1
以下の問いに答えなさい。
Q:なぜこいつは生徒会室で弁当を食べているのか
Q:なぜ生徒会室にルドルフがいないのか
Q:なぜ生徒会室に副会長二人がいないのか

答え:次回

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