ウマ娘 ワールドダービー 凱旋門レギュ『4:25:00』 ミホノブルボンチャート   作:ルルマンド

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待たせたな!(カイチョー並感)
昨日だけでTwitterのフォロワーが20人くらい増えてて草。まあこれからも進捗についてはTwitterで発信しますのでフォローしてくれた期待は裏切らないと思います。

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サイドストーリー:トリ娘キッチンダービー

「こ、ここ」

 

(トリ娘になったか)

 

 芦毛とか鹿毛とかではなく、鶏タイプのトリ娘。

 

 ゴツンという音に意識を傾けながらも特に興味が湧かない男と、ゴツンという音が耳に入っていない少女。

 男の方が麦茶を口に含んだ瞬間、少女――――トウカイテイオーは激発した。

 

「恋してたの!? カイチョーに!」

 

「ああ。だが恋が熱を伴うものならば、どちらかといえば愛ではないかな」

 

 別に恥ずかしがる風もなく、誤魔化す気もない。ある意味堂々と、東条隼瀬は頷いた。

 

「簡単に認めないでよ! そこはちょっと恥ずかしがったりとするところでしょ! いや、そんなことは……とかさ! 駆け引きがあるでしょ!」

 

「好きになって恥ずかしくなるような女ではないだろ、あいつは」

 

 人格も立派なものだし、そんなに気にしたこともなかったが、見た目もおそらく立派なものである。

 実はくだらない相手に惚れてた、とかならば恥ずかしがる必要も感じるが、この場合その必要を感じない。

 

「当たり前じゃん! カイチョーなんだから!」

 

「それに、過去の話だ。今は女性としてではなく、人間として惚れている」

 

 異性としての愛と、友人としての愛の融合体。さほど恋愛経験はないが、おそらくは普通の愛よりも上質なものであろうということは感じている。

 

「……ねぇ、恋ってなんなのさ」

 

「それにしてもこの春巻きは美味い」

 

「ねぇ! 愛ってなんなのさ!」

 

 何故、よく知らん相手と色恋の概念について話さなければならないのか。

 よほどそう言ってやりたかったが、ブルボンの調子の変化を言外に告げてくれた恩もある。

 

「恋とはその人を尊重したくなる気持ちだ。少なくとも、俺はそうだ」

 

「尊重?」

 

 恋はダービー。

 その持ち歌の通り、トウカイテイオーにとって恋は競走だった。誰よりも速く、誰よりも魅力的な走りで手に入れるべきものを自分の物にする。

 

 惹きつけて、離さない。

 それが恋というものだし愛というものだと、トウカイテイオーはなんとなく感じている。

 

「相手の気持ちを識り、沿い、護る。手となり脚となり、雨風を防ぐ覆いとなり、羽翼となる。そういうことだ」

 

 それはまさしく、彼がシンボリルドルフにやっていたことだった。

 トレーナーとしての当たり前以上の熱心さと献身を、彼は彼女と彼女の夢の為に傾けていた。

 

「それはさ。夢とか色々なことを肯定してあげる、っていうこと?」

 

「ああ。だが、肯定するだけではいけない。時には諌めもするし、間違っていれば正す。そういうことをしてやりたくなるのが、愛という感情ではないのか」

 

「自分の物に、自分だけの物にしたいとか、ないの?」

 

「ないな。お前はあるのか?」

 

 トウカイテイオーは、答えに窮した。

 自分の物にしたい。好きな人には、自分だけ見てほしい。

 

 執着。独占欲。

 トウカイテイオーが持つ感情の泉の底には、それがある。恋人にもライバルにも憧れにも、自分だけを見てほしい。

 

 だがその感情がひどく子供っぽいものに思えて――――真に相手を想っているのかと疑問に思えて、彼女は少女らしい青さで口籠った。

 

「ホントに自分の物にしたいとか、そういうことはないの?」

 

「俺は人付き合いが苦手だし、病弱だ。天才とは言い難いし、後々に迷惑をかける可能性が極めて高い。結果的に不幸せにしてしまう可能性が高い以上、そうすべきではない。だから、しない。そういう思考だな」

 

「……すごいね。ボクにはできないや」

 

「すごくはない。このトレセン学園では誰しも与えられた役割に応えようとしているし、それ以上の働きを見せようとしている。俺のこの思考は、トレーナーとしての教育が根底にあるだけだ」

 

 運命というものを、信じている。

 貴門に生まれた以上、信じざるを得ない。

 

 トレーナーに必要なのは、私心の無さと献身だ。そう教えられた。そのためには、何もかもを惜しむべきではないと。

 

「君の独占欲はウマ娘として正しい判断だ。いかに優秀なトレーナーと言えども、1日は24時間しかない。睡眠時間や食事を加味すれば20時間。俺はこの20時間のうち殆どを、ブルボンのことを考えて生きている」

 

 体調。心理状態。精神の成長具合はどうか。肉体の成長具合はどうか。その日の性質を見極め、機嫌を見極め、食事メニューを考える。練習メニューを調整する。

 

 考えだせばキリがない。それこそ、20時間では足りないほどに。

 

「……す、すごいね、それ」

 

「それもすごくはなく、当然のことだから話を戻そう。では、これが二人になればどうだ。10時間ずつになり、その娘に割けるリソースは半分になる。無論質を向上させる努力をするだろうが、それにしたって限度がある。チームを率いているトレーナーは、掛け値なしに優秀だ。だが、一時間あたり『100』の性能を持ったトレーナーが10時間かければ『1000』。凡人というべき『50』でも20時間かければ追いつける、ということになる。

無論、チームを率いていることのメリットもある。併走トレーニングのしやすさ、ノウハウの流用。だが単純に考えれば、ウマ娘としてはトレーナーを独占した方が強くなれる。即ち」

 

「ボクの感情はウマ娘として当然、ってこと?」

 

「そうだ。だから別に反省したり、改めたり、比較して凹むことはない」

 

「なるほどー……」

 

 耳を左右にピコピコやってしきりに頷くちんちくりんが黙ったのを見て、続ける。

 

「それに別に、理屈があろうとなかろうと自分の感覚を卑下することはないのだ。君は俺の意見を正しく思ったのかもしれないが、別に答えというものはないんだからな」

 

 そうして、白米を口に入れた。

 今、相談には本気で答えた。しかし乗ったのは、あくまでも答えを諭して黙ってくれないかな、という下心からである。

 

 この平穏は、6分4秒続いた。

 

「あのさー」

 

「やかましいやつだな、お前は」

 

「なんでクラシック路線で勝てたの?」

 

(こいつ、この短時間で進化している……)

 

 こっちの文句を無視して質問を投げてくるようになった。キャッチャーが構えるのをボイコットしてるから豪速球を腹に向かってぶん投げて、無理やりに捕球させるかの如き会話術。

 

 やはり天才か……と、その底知れぬ才能に戦慄しつつ、取り敢えず参謀は冷静にぶん投げられた言葉を捕球した。

 

「本人の努力だ」

 

「でも、ボクも努力してたよ」

 

「ああ……」

 

 そういうことかと、薄々勘づいていた疑念が確信に変わった。

 ここで『実力の差だ』と言えばそれはそれで会話は終わるのだろうが、それは答えとして適切ではない。

 

 耳も尻尾もしゅんとしているあたり、常々疑問に思っていたらしい。

 いつかどこかで訊こうとしていて、いつかが今で、どこかがここだったのだろう。

 

 トウカイテイオーの長所は、関節の柔さ。バネの強さ。

 関節の柔さが可動域の広さに繋がり、関節の柔らかさと可動域の広さがバネの強さに繋がる。バネの強さはスパートに入った時の加速力に繋がり、それらすべての長所が骨に多大な負担をかけた。

 

「ルドルフより速いウマ娘はいる。ルドルフより持久力があるウマ娘はいる。ルドルフよりパワーのあるウマ娘はいるし、ルドルフより根性のあるウマ娘はいる。だが、それらすべてを兼ね備え、かつ自分を最大限活かせる頭と、頑丈な身体を持っている」

 

 すべてがトップクラスではあるが、トップではない。それらを複合させ、敵に勝つ。

 

 ブルボンもそうだ。

 ブルボンよりもサクラバクシンオーの方が速い。ブルボンよりライスシャワーの方がスタミナがある。ブルボンと同じくらいの根性を、ライスシャワーは持っている。ブルボンより賢いやつも勿論居る。総合力では全く以てトウカイテイオーに及ばないが、特化させればトウカイテイオーに勝てる。

 

「お前は長所によって夢を叶える寸前まで来て、その長所によって夢を叶えることはできなかった。ウマ娘とは誰しも長所によって栄え、長所によって滅ぶのだ」

 

「短所によって、じゃなくて?」

 

「短所とはつまり、長所の裏側だ。お前の長所である関節の柔らかさがなければ、お前の短所たる骨の脆さは発生しなかった」

 

 トウカイテイオーは自分の長所も短所も、指摘される前に知っている。

 バネがありすぎて、ぴょんぴょんと跳ぶように走ってしまうのだ。その結果として、骨に負荷がかかってよく折れる。

 だがそれを今から矯正するとなればそれは即ち、短所ごと長所を消すことになりかねない。

 

 そこらへんは、割とどうにもならないのだ。

 どうにかなるならスピカのトレーナーがやっているし、怪我をしないために本気を出さないで負けるというのも本末転倒だと言える。

 

 短所の克服は埋め立てのようなもので、克服するために長所という山が削れていく。その点で、スピカのトレーナーの方針は正しかった。

 

 ただまあこれからも、トウカイテイオーは怪我はするだろう。

 シンボリルドルフやミホノブルボンにはない強さを、トウカイテイオーは持っている。

 その強さの裏側にあるのは、怪我しやすさ。自分の力が暴走気味になって自らを損なうというところを見れば、サイレンススズカやナリタブライアンに近い。

 

 その結果、怪我して能力を元に戻し、怪我して能力を元に戻す。その繰り返しになってしまっている。

 

「長所で身を滅ぼすっていうのは、ブルボンも?」

 

「いや、幸いにしてあいつにそこまでの才能はない」

 

 これは嘘であり、真実でもある。

 ミホノブルボンの長所はメトロノームの如き抜群の精度を誇る体内時計と、メジャーの親戚としか思えない程の距離感覚、ゲームボーイのような耐久性、修行僧じみた精神力、犬のような忠実さ。

 だがそれらは、単体で身を滅ぼす類の長所ではない。

 

 ゲームボーイのような耐久性、修行僧じみた精神力が組み合わさればオーバーワークに繋がり、裏返りかねないが、無論彼はそうさせる気はない。

 そうさせない従順さを彼女は持っているし、他の長所に関してもいくつか手を打っているのだから。

 

「待たせたな、参謀くん!」

 

 パカーンと、話の終わりを見計らったようなタイミングで生徒会室のドアが開いた。

 精悍な立ち姿を見ればかっこいいことはかっこいいが、片手でむんずと掴んだ日本茶がそのかっこよさを減衰させている。

 

「随分遅かったな」

 

「うん……」

 

 テイオーが何かを言う前に、文句とも言えないような文句――――たぶん、単純な感想――――を言われ、ちょっとしょんぼりしたルドルフは淹れてきたであろう日本茶のポットを置く。

 早速注いで飲み始めた男をチラチラと見ているカイチョーから言われた言葉を飲み込みながら、トウカイテイオーは耳をぴょこんと立てて、また伏せた。

 

「で、お前はどこで道草食ってたんだ」

 

 微妙に日本茶冷めてるし、ほっぺたになんかの模様がついているし。

 そんな言葉になっていない言葉を察したのか、シンボリルドルフはいかにも予想していましたと言った風に髪を靡かせ、答えた。

 

「三献茶、という逸話がある。私は淹れた日本茶が君の飲みやすくなるような温度になるまで、そこらへんをフラフラしていたんだよ」

 

「なるほど。それはそれは愉快な光景だっただろうな。お茶ポットを片手に徘徊する生徒会長というのは」

 

 たぶんこいつ、嘘ついてるな。

 そんな感覚を覚えつつ、東条隼瀬は注いだ日本茶を一気に飲み干した。

 

 ちらりとトウカイテイオーを見て、シンボリルドルフを見る。

 ちょっとしっとりしているトウカイテイオーに比して、シンボリルドルフはルンルンとしていた。

 顔はやや上気しているし、最近管制下を離れることが多いとはいえ、尻尾がとんでもないことになっている。

 

(ははぁ……感想を求めているのか)

 

 最後の春巻きを食べて、文字通り噛み締めて味わう。

 美味しかった。掛け値なしに。彼女は弁当を作ると茶色くなるとかなんとか言っていたが、色など気にならないレベルの美味しさである。

 

 彩りとはつまり、見た瞬間に料理を美味しく感じさせるためのもので、実際のところ美味しければ彩りが地味でも構わないのだ。

 

「実に美味かった、ルドルフ。腕を上げたな」

 

「うん。君の舌にあって良かったよ」

 

「え?」

 

 トウカイテイオーは、カチーンと固まった。

 今まで食べていたものを指して、美味しかった、と感想を言う。その相手がカイチョーということは、つまり。

 

「礼としては不相応だと思ったが」

 

「いや、相応の物だ。繰り返しになるが、実に美味かった。ついでに言えば、最近金欠なものでな」

 

 トレーナーってどいつもこいつも金欠なのかな。

 そんな場違いな感想を浮かべつつ、トウカイテイオーはフリーズした。

 

 ――――これ、両想いなんじゃないの?

 

 という疑問がぐるぐると頭の中を回り、気づいたときには去っている参謀。

 

「それにしても、元気になったようでなによりだ。テイオー」

 

「う、うん。カイチョーはさ……」

 

「まさにテイオーの体を為す、だな」

 

 ははッ、と。妙に調子が良さそうに笑うシンボリルドルフを他所に、トウカイテイオーは再び固まった。

 無論先ほどとは違う意味で、である。




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