今回原作キャラの魔改造があります。
なんか一週間くらい寝てた様な気がするが、おかげさまですっきり快調だ。
色々周りから怒られたけどな! ……うむむ、どうにも前世からの習慣が抜けん。迷惑をかけるというのは分かっているんだが、働いてないと不安なんでなあ、特にこの世界では。
……うーん、世界が平和になるか、俺が倒れるのが先か、チキンレースじみてきたぞう。
「だから仕事を周りに振りなさいと」
俺の隣を歩くチヒロが呆れた様子で言う。うん、至極ごもっともな意見なんだけどな。
「
地雷を撤去しながら爆弾の解体をやってるような気分だ。今のところ上手くいっていても、一つのミスが大惨事を起こしかねない。全部放り投げて逃げ出したところで安全になる保証などあるもんか。まだ立ち向かった方が安心できる。
暗躍しなきゃ良いじゃんと言う意見もあろうが、正攻法だけでどうにかなるようであれば苦労はしない。俺がここまでやって何とかオーブへの侵攻を防げるかどうかってくらいだからな。いくら資金が豊富で人材も集めたとは言え、やれることには限度がある。スーパーマンじゃないんだ、一足飛びに全てを解決する方法なんてない。
「実際商会の運営は、お前さんにほぼ任せきりだろう。それだけじゃなくミナやギナ、リシッツァや氏族連中にも働いて貰っている。それでも十分とは言いがたいのが今の世界だ。嫌でも俺自身が動かにゃならんのさ」
原作における親父殿の気持ちも分からないではない。だがあのやり方では結局国を焼く羽目になった。そうさせまいと思ったら、後ろ暗く汚い手段を使い、身を削ってでも動く必要があった。それだけのことだ。
俺の言葉を聞いて、「この人は本当に」とか何とかブチブチ呟くチヒロ。悪いと思うがこれは譲れない。愛国心などないと思っていた俺だが、焼かせてなるかと思うくらいには執着があったらしい。なら自分が出来ることは全てやっておく。後で後悔しないために。
そういうのは前世で十分懲りたしな。
「ま、戦争が落ち着けば、休む暇も出来るだろうさ。そのためにも今は働いとくぞ」
「絶対嘘だこの人戦争が終わっても働き続けるわ賭けてもいい」
「何小声で不穏な台詞を言っているか。流石にすること無けりゃ俺だって休みたいわい」
「いーえリョウガ様みたいなタイプは働いていないと落ち着かないマグロみたいな生態の生き物です。なんだかんだ言って働こうとするに決まってます」
どきっぱりと断言しやがって。……まあ自分でもそうじゃないかなあと薄々思ってるけど、改めて他人に指摘されると腹立つな。
「くっそ覚えてろよ。絶対カウチでごろ寝しながら映画でも見つつピザを暴食してビールを痛飲して、挙げ句に泥のように爆睡してやるから覚悟しやがれ」
「どういう負け惜しみですか」
とか何とか会話しながら、俺達は目的地にたどり着く。
オーブ領内の諸島の一つ。そこにある小さな孤児院で、目的の人物は俺達を出迎えた。
盲目であるその人物が言葉を発する。
「お待ちしておりましたリョウガ殿、チヒロ嬢」
穏やかな様相で頭を下げるマルキオ導師に、俺達も礼を返した。
「リョウガ様リョウガ様ー! 少し背が伸びましたよー!」
「おー、確かにちょこっとでかくなったな」
「どんだけ頑張ってもビーム出ないんだよ。俺コーディネイターじゃないのかも」
「そういう頑張りはやめとけ。つーか俺が言ったのそういう意味じゃないから」
「今日こそあたしを嫁にしてもらう! せれぶなまだむにさせやがりください!」
「はっはっは、俺の嫁になりたくば、俺より稼いで俺に楽をさせろください。……いやホントに楽させて頼む」
「じゃああれか、となりのねーちゃんとか好みか」
「考えさせて」
「ノータイムかつガチ表情で言うかこの男」
纏わり付くお子様たちの相手を一通りこなしてから、俺は導師との会談に挑む。
「いつもいつもすみません。あの子たちはあなたが来るとはしゃぐのですよ」
「構いませんよ。子供はあれくらいで良い。自分のような人間が気晴らしになるのであれば、相手をした甲斐があったというものです」
チヒロよ、誰この人というような目を向けるな。俺だって敬意を向ける人間くらいいるわい。
マルキオ導師は軽く頭を下げる。
「痛み入ります。……ご面倒ついで、と言うわけではありませんが、今回はリョウガ殿にご助力願いたく連絡を取った次第です」
「……察するに、ジャンク屋組合関連の話でしょうか」
「話が早くて助かります。まずはこちらの資料をご覧ください」
導師が差し出した資料に目を通す。ふむ……
「
アストレイ原作の話に出てきた、マスドライバーを有するメガフロートの建設計画。クーロンズポートという同様の施設が存在している現状では、不要に思えるものだが。
「はい。現在各国家所有のマスドライバーはザフトと連合の取り合いで、民間人は使用できないか、法外な使用料を取られるという状況です。数少ない例外はオーブのものとクーロンズポートですが、それも利用者が集中し列を連ねている様相。……それにリョウガ殿は、
流石に読まれているか。導師の推測通りで、オーブのマスドライバー――と言うかマスドライバーを理由にオーブ自体が狙われるようであれば、クーロンズポート自体をくれてやる事も考えていた。かの施設はそのために作ったと言っても良い。自国以外のマスドライバー使用料でがっぽがっぽと考えていたのも事実だが。
ここまでの話で分かるだろうが、俺は導師にクーロン商会の事実を明かしている。この人に関しては、その方が都合が良いからだ。まあそれはさておいて。
「否定はしませんよ。前にも言いましたが、自分の基本方針は先ずオーブという国を守ること。クーロンズポートもそのための手段の一つです。……ですがそうしてしまうと益々マスドライバーの使用が制限されていくことになる。組合としては死活問題になると言うことですね?」
「ええ、その通りです。もちろんリョウガ殿の方針を咎めているのではありません。必要なことだから行ったのでしょう? それを止める権利など我々にはありません。ですが組合としては移動が制限されるままというのは困りますので、独自にマスドライバー施設を建造し、共有したいと」
概ね予想通りの理由だ。今はまだ余裕があるが、将来的には不安があると組合の上層部は判断したのだろう。原作ではオーブが落とされてからギガフロートは建造されたようだが、この時期に計画が立ち上がっていてもおかしくはない。
そして
「我々としても組合が勢いをなくすのは困る事です。協力できることがあればいたしましょう」
これは本音だ。ジャンク屋組合は一部国家にも匹敵するような勢力を持ち、犯罪の温床になっている部分も確かにある。しかし
そういった仕事に手を出すのは物好きか、『訳あり』だ。国家という枠に居場所がなくなった者、表世界を見限った者、後ろ暗い者、様々な人間がジャンク屋として身を立てている。そういった人間がジャンク屋業に汗を流して働いてくれるからこそ、破棄物やデブリの処理は進み、地球近海や航路の安全は保たれるのだ。おろそかにしていいものではない。
マルキオ導師は俺と同じようなことを考えた上で、さらなる思惑を持ってジャンク屋組合の創設に尽力した。国家という後ろ盾のあった俺なんかより、1から人を集めて説き伏せて、一大組織を築き上げたこの人の方が、よっぽどとんでもないと思う。
そんなとんでもない人物から頭を下げられる。原作知識を元にやらかしまくった立場としては、ちょっと複雑な気分だ。
「感謝を。あなたの技量であれば、この程度の計画など乗っ取ることも出来たでしょうに」
「今でさえ泣き言を言いたいのに、これ以上の荷物を背負い込む事などしたくもありませんよ。オーブという国一つで精一杯ですから」
割と本音な俺の言葉に、導師はふふ、と小さく笑って見せた。
「やはりあなたも【SEEDを持つ者】だと、そう感じます。その行動と結果でそれを示していると、私は思うのです」
「自分の都合の良いように状況を回しているだけなんですけどねえ」
導師と相容れないところって言うか、買い被りすぎと感じるのがこういうところだ。
原作にも出てきたSEEDを持つ者という概念。導師の提唱するそれは、どうにも
SEEDと呼ばれる能力、『優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子(Superior Evolutionary Element Destined-facto)』はこの世界でも学会で発表されている。が、導師はそれについて、単に能力的なものを意味しているのではない、と言う。
『現状を打破する意思、行動。それに伴う結果。それを導き出す因子、あるいは運命を引き寄せる何か』。遺伝子によるものではない、潜在的な能力ではない、人が持つ可能性。導師はSEEDをそういう物だと捉えている。そしてそれを引き出せる人間、最先端に、最前線に立ち人々を導ける者がSEEDを持つ者だと、そのような思想があった。
「導くというのは、何も人の上に立つことを示しているのではありません。何らかの働きで人々の心に訴える。死に物狂いで未来を切り開く。未来のために行動し、希望を見せること。多くの人を揺り動かす何かを示す、そういったものだと考えています」
以前俺がSEEDのことを問うたとき、導師はそう答えた。そして俺もまたSEEDを持つ1人だと持ち上げてくる。
……種割れした覚えないしなあ。大体俺のやってることは原作知識というズルを使った卑怯極まりない手段だ。人を導けるようなものとは、とてもじゃないが思えない。
ともかく、導師の考えは原作とは微妙に違い、そしてそれを
これも詭弁の一つだと、導師はそう宣っている。己の信仰、理念すらも人々に説くための道具であり武器なのだと。
「私は語ることしか能の無い坊主崩れでしかありません。ですから思想を、思考を研ぎ澄ませ、人々に納得して貰うだけの言葉を投げかけられるように努めてきました。信仰も理念も、言ってみれば話の引き出しに過ぎない。詐欺師のような物ですよ」
あるいは信仰に酔わないように自制しているのかも知れない。導師の言葉には己に言い聞かせているような理性が垣間見えた。
言い方は悪いが口車だけでジャンク屋組合を築き上げ、プラントにも地球にも多くの賛同者を得ているのは伊達ではない。この人は
と、そんなことを言ってみれば。
「そうであれば良いと思いますし、そうなりたいとも思います。まだまだ道半ばというか、先は見えませんけれどね」
臆面もなくそう答える。いやはや、大した人物だ。信奉者が多いのも分かる。やってることはとてつもないが、穏やかに気負い無く等身大。俺には真似できない在り方だ。
ゆえに俺は導師に敬意を表する。まあ持ち上げてくるのは勘弁して欲しいが。
「ともかく、設計はこちらに任せて貰いましょう。実際の建造は組合を主軸として行う形で?」
「そうしていただけると助かります。組合としては建造のノウハウを蓄積したいと考えておりますから」
「いずれは第2、第3のマスドライバーをと?」
「この戦争とマスドライバーが自由に使えない状況が続けば、と言ったところでしょうね。それでも合わせて数基の建造にとどまるでしょう。あまり多くあっても管理と維持費で干上がってしまうでしょうから」
「そうなれば本末転倒。なるほど。……よろしい、大体のお話は分かりました。チヒロ君?」
「はい、今の話を元に、当商会からの条件を纏めた物です。ご確認を」
俺達の話を聞きつつ文章を作成していたチヒロが、音声データとして編成した要求書の草稿を、タブレットごと提出する。
導師はそれを受け取りながら言う。
「流石に早い。良い人材に恵まれましたね」
「全くです。自分にはできすぎた配下ですよ」
俺はそう答えるが、チヒロは心にもないことをと言いたげなジト目を向けてくる。
結構本気なんだがな~。チヒロだけではない。リシッツァや商会の面々、ギナとミナをはじめとする氏族や名家、そして親父殿。いずれかがいなければ、あるいは協力を得られなければ、俺の企みは成り立っていない。皆のおかげで今の俺はある。
……こんなことを口にすれば、今度は何企んでんだという目で見られるので言わんが。自業自得だってのは分かってるよ。
と、要求書の内容を一通り聞いた導師が、問いを投げかけてきた。
「随分と組合に有利な要求ですが、これでよろしいのですか?」
「ええ、実は組合に
「ほう、大口の仕事ですか。よろしければどのような物か聞かせていただいても?」
導師の言葉に、俺はいたずらげな笑みを持って答える。
「
さあて、俺のお大尽アタックはここからが本番だぜ。
職場でも家庭菜園でもダニががががが。
家庭菜園はともかく職場は金がねえんだよ! 湧いてくんな! といったところでダニさんは聞いてくれません。いっそ焼き討ちしてえと切に願う(危険思想)捻れ骨子です。
はいマルキオ導師登場の回~。見ての通りうちの導師は魔改造されております。まあちょろっと違う程度ですが。
具体的に言うと、ただ善人なのではなく己の信仰をも道具として利用する強かな人物としています。これくらいの癖が無きゃ海千山千のジャンク屋や関係者を説き伏せたり出来ないでしょうし、リョウガさんも敬意を表したりしないでしょう。そう考えてこんな感じに。
そしてSEEDに対する考え方も違います。多分この話のマルキオ導師が原作のSEED発動を見たら、心眼センサーフルオープンを見せつけられた感だと思います。
「これがSEEDなのですね! 導師!」
「……ちょっと違うんじゃないかなあ」(困惑)
ってな具合でしょうか。まあ盲目なんで見えませんけど。
そしてリョウガさんまたなんか企んでいるようです。それが日の目を見るのは果たしていつになるのか。そも日の目を見る機会があるのか。
そういったところで今回はこの辺で。