ホントに暇がねえなあ。などと内心で愚痴っている俺は、現在クーロンズロックに赴いていた。
一応ここに来るときはロン・ヤアとして変装しているが、はっきり言って商会の人間にはほとんどバレてるし、関係の深い人間にもバレてる。
が、数少ないが
「あんたがロン・ヤアか。俺はロウ・ギュール。商会には色々と世話になっている。よろしく頼むぜ」
「……ええ、こちらこそよしなに」
固い握手を交わすロウは、全くもって気がついていない様子だ。
同席している彼の仲間は、「すみませんこの人こういう人なんです」とでも言いたげな視線を向けて来るが、うん分かってたさ。逆になんかこっちが気まずくなるわ。
まあバラしたらバラしたで、「へえ!? そうだったんだ!?」とか言う感じでしゃらっと流されそうな気がする。それはそれでむなしいので黙っておこう。
まあそれはいい。ともかく今回ロウと面会したのは、
彼が商会と契約してからまだ三ヶ月と経たないのだが……なんか彼のレッドフレームは、すでに色々とおかしな事になっている。具体的には日本刀っぽい得物が二ふり腰に提がってたり、鎧っぽい外装パーツが追加されていたり。
これ【戦国アストレイ】じゃねえか!? いやそのまんまじゃないけれど、なんか雰囲気がそっくりだ。ロウの元に預けた連絡員である【ジュリ・ウー・ニェン】からの報告は聞いていたが、すでにここまで魔改造が進んでるとは思わなかったぞ。
で、聞いてみたらば。
「ああ、デブリ内で活動するのには素のままだと防御力が低いんで、空間機動パッケージに増加装甲を追加してみた。それだけだと重くなるから、パワーパックとスラスター、それに補助アクチュエーターを内蔵してる」
原作にはなかった装備を元に開発したようだ。元ネタがあるとどんどん物作っていくなこの男。
報告に寄れば、ロウ一行は原作にあったイベントや、
これはアストレイの話で生じる技術を入手すると同時に、
そうなると俺も困る。彼らには色々と働いて貰わなければならないのだから。ゆえに
メインとなるのはジャンク屋界隈で流通するMSや武器の開発、販売。その辺りをほぼ独占状態にまで持っていく。独占禁止法? なあに子会社やダミー会社をいくつか設立して業務を回せばいけるいける。と、それはともかく、鍵となるのはロウの技術だ。彼は己の作った物や手に入れた物を惜しげも無く開示し、そのことがジャンク屋連中の武装化に拍車をかけたところもある。主にアストレイ流行らせたせいで。
だから彼が持つ技術をこっちで抱え込む。アストレイ関係も商会でガッチガチにパテント握ることによって、コピー品の横行を防ぐ。もちろん民間に売り出すが、基本性能はM1以下にデチューン。戦闘用に改装するためのパーツや武器、OSなどはかなりの割高にして販売する予定だ。連合との共通プラグ? もちろんオミットするよ。使いたきゃオプションで買ってね。すごく高いけど。
ここまでしてもジャンク屋という存在は、自分で勝手に魔改造してオラつきかねないが、原作ほどにアストレイが湧いて出るほどにはなるまい。あと武器とかMSとか高値で買うよ。独自に流通させても良いけど、そういう人間は商会からの扱いが悪くなるかもね? いや知らんけど。
とまあこんなことを考えているのだが、実はこれ、マルキオ導師や一部の組合幹部と協議した上で行おうとしていることだったりする。
協議した幹部としては、ある程度独立独歩の姿勢は保ちたいが、下手に国家から睨まれるのは避けたいという思考からだ。そしてマルキオ導師は、組合――ジャンク屋という存在を、
彼が俺より深く考えていた部分だ。ジャンク屋という存在は国家に属する恩恵を一切受けられないが、前歴など一切問われない。組合に登録すればいかなる人物でもジャンク屋でございと名乗ることが出来る。そういった環境を整えることによって、国家や組織に爪弾きにされたり居場所がなくなった人間にも、参入しやすい物にしようとしていたのだ。
もちろん後ろ暗いどころか犯罪歴のある者に悪用され、犯罪の温床になるといった部分もある。組合にも独自のルールがあり、あくどい者は処罰されたりするが、どうしても手の回らないところがあり、ある程度目を瞑る必要もあった。
だからと言って各勢力から余計に目を付けられるような真似をする必要は無い。導師など悪影響を危惧している面々からすれば、俺の申し出は渡りに船と言ったところだろう。言い方は悪いがクーロン商会を利用して、目を付けられる要因を分散しようと言うことだ。
双方にとってWin-Winの取引と言って良いだろう。組合のMS関係を独占することによって
そう言ったわけで俺はジャンク屋業界に介入することにした。この先のことを考えると、この業界に影響力を持っておくことは役に立つ。ロウたちが起こす事件が何らかの形でこちらに飛び火することもあるのだ。用心しておくに越したことはない。
とはいえロウを縛り付ける気も無かった。彼は自由奔放でバイタリティあふれるのが持ち味であり、だからこそ様々な事件や障害を乗り越えられたのだ。ぶっちゃけ放っておけば勝手に色々と解決してくれる可能性が高い。
しかし世の中何があるか分からない物だ。大丈夫だろうと放っておいたらあっさりとロウが死んでしまうことだってあり得る。ゆえに彼とは協力関係を強め、あるいは彼がいなくなった場合でも対応できる策を取っておく。そのためにロウから可能な限りの技術を搾り取っておく……というのが
「良いのかよ、俺の作ったもんって、大体急場しのぎのでっち上げだぜ? 商品にはなんねえだろ」
「現場での創意工夫とは、これで馬鹿に出来ない物でしてね。例えば武器の接続プラグにエネルギーを逆流させて攻撃に転用するなんてアイディア、工房じゃ逆立ちしても出てこないものです。その一つ一つが次の開発へとつながる。我々にとっては千金の価値がある物ですよ」
「そんなもんかね」
俺の言葉にロウは眉を寄せる。普通だったらそこまで金を出してというものではないが、あんた普通じゃないからな? あんたがパチったり作り上げるもんって、大概とんでもないからな? そうは思ったが言わないでおく。
代わりにこう言う。
「それに……私も魔改造というヤツは大好きでしてね」
その台詞に、ロウはおお! と目を見開いた。
「分かるのか、あんたにも」
「ええ。分かりますとも男として。あなたの持つ物は商人としてだけではなく、1人のロマンを解する人間として実に興味深い。相当の対価を支払っても良いと思うくらいに」
うん、正直に言おう。こっちが本音だ。つーか本命だ。
ロウが生み出した数々の技術や武器。ロマンの塊とも言えるそれらを手中にしたいという欲が俺にもあった。もちろん前述したこともちゃんと真面目に考えている。考えた上で趣味にも走る。
……たまには良いじゃないか俺が趣味に走ったって。何も専用機を作ろうとか考えているわけじゃない。カスタムくらいは許されても良いと思うんだ。
「残念なことに私自身はメカニックの才能などこれっぽっちもありませんでしたが、アイディアだけなら売るほどある。我が商会の技術者たちはそれをかなり再現してくれましたが……あなたならそれらを超えた物が生み出せると直感しました。私に出来なかったことをやってくれるだろう人間がいる。投資するのに迷う理由はありますまい」
直感って言うか事実だけどな。まかり間違って死んだりしないうちに、ロウにはバンバントンデモ技術を開発して貰おう。俺は満足、商会は技術を得て儲かる。誰も損することのない素晴らしい交渉じゃないか。なんかロウの仲間は残念な物を見るような視線を投げかけてきてるが些細なことだ。ロウ本人は上機嫌だし。
「そこまで俺をかってくれるってのはむずがゆいねえ。……まあ他にも色々と思いついたもんはあるんだけどさ」
「是非拝見したい。何なら資金は出しますからすぐさまどんどん作ってくだされば」
「食いつき凄っ!? いやまだアイディアだけで具体的な図面とか全然出来てねえよ落ちつけ」
俺は落ち着いてる。単にこの機を逃すまいとしているだけだ。
と、そこでドガンと扉を開けて部屋に乱入してくる人物が。
「名代ー! 出来たよ出来ましたよ出来たのだよ! やはり私の才能は素晴らしい! この感動を是非とも共に分かち合い勝利の美酒に酔いしれようじゃございませんかー!」
「良いところで邪魔しないように」
俺はちょっと青筋立てながら、部屋に飛び込んできたそいつの股間に一撃食らわせた。
「ひどくない!? いきなり股間とか酷くない!?」
「ああでもしないとあなた止まらないでしょうが。何回このやりとりやったと思ってるんですか」
股ぐら押さえながら俺に文句を付けてくる人物。一見容姿端麗だが全体的に残念な空気を纏っているこの男の名は【ヴァレリオ・ヴァレリ】。そう、知っている人は知っていると思うが、アストレイの話の中でロウを一方的にライバル視していた人物である。
原作では己の才能を世に誇示するためにプラントを出奔し、暗黒メガコーポ【アクタイオン・インダストリー】の技術主任に収まっていたはずの人物なのだが、なんでか
人格的に問題はあるし全体的に残念な人物だが、その技術力は図抜けている。そして原作でやらかしたようなことを防ぐ意味もあって採用したのだが……こんな性格だったかこの男? 残念ぶりが加速しているんだが。
残念ついでにこいつ、俺の正体に全く気づいていないと来ている。いや変装したら口調とか変えてるけどさ、普通気づくだろ。まあ他人のことなどどうでも良いから気にしないだけなのかも知れないけど。
ともかく、人が交渉してる最中に何の用だと問うてみれば。
「前に言っていただろう、
マジか。この短期間で
ちらりと視線を向けてみれば、なんのこっちゃと言わんばかりの表情をしたロウたち一行。それを見て俺は一瞬考える。
……そうだな、
で。
「なぜ我々も呼び出されるのか」
「むしろ何でここにいるんですかあなたたち」
ヴァレリオの後をついて行くメンバーが増えていた。ミナギナ姉弟に叢雲 劾だ。
劾はブルーフレームのデータを提出するために寄った(彼も色々とイベントをこなしているようだ)らしいが、ミナギナは何でいるのか。つーか仕事はどうしたお前ら。
俺のジト目に、二人はどことなく視線をそらして言う。
「うむ、ロウ・ギュールと共に刀の製法覚えたり色々したし、折角だからゴールドフレームの改良をしようと思ってな」
「私が自分の機体がないというのもなんだし、改めて作って貰おうかと」
「何やってるんですかギナ。そして実は羨ましかったんですかミナ」
いつの間にかギナはロウのイベントにちょこちょこと付き合っていたらしい。何やってんのホント。そしてそんなギナを見てたら自分もMSが欲しくなったらしいミナ。人があちこち飛び回って忙しいというのにこいつらは。
まあこいつらが忙しくなるときは国がピンチと言うことだから、余裕があるのは良いことなのだが。基本的な仕事はちゃんとこなしているようだしな。(※注 リョウガ視点で基本的な仕事。つまり普通に忙しい)
「それにしても……貴様が敬語で喋るのは違和感がありまくるな」
「全くだ。何というかこう、不気味というか怖気が走るというか」
「ここではこういうキャラで通しているんです。慣れてください」
そんな俺達の会話を聞いているはずだが、一歩後ろを歩む劾は眉の一つも動かさない。色々と理解しているはずだろうに、大した度胸だ。彼の仲間やロウの仲間は全力で聞いていないふりをしている。まあ普通こういう反応だわな。俺達の目の前で言葉を交わしているヴァレリオとロウの方がおかしいんだから。
「素晴らしいアイディアだ! ナチュラルというのが惜しいな!」
「ばっかおめえよく考えて見ろ、コーディーの技術作ったのはナチュラルだぞ? 発想力と技術で劣るわけないだろうが」
「っ! ……そう言われれば、そうか。うむ、私もまだまだ未熟と言わざるを得ない」
「あんたが開発した物は、あんたがコーディだったからじゃねえ。
「痛み入る。……ところでこういうアイディアがあるのだがな」
「……おお、そいつは面白れぇ! じゃあこういうのはどうよ」
「なんと! これは趣味的だが、だがそれが良い!」
タブレット見せ合いしながら熱く言葉を交わしてる二人は、なんかやたらと仲が良くなっているようだ。原作とは違う出会い方だったとは言え、意気投合するの早すぎない? まあ俺にとっては都合が良いけどさ。
とか何とかやっているうちに、目的の開発区画へとたどり着く。
この区画はヴァレリオをはじめとする奇人変人たちの『魔窟』と言っても良い。可能な限りの予算を突っ込み、俺のアイディアを含めた様々な技術を開発させている。タメトモを設計させたところ、と言えば大体のアレっぷりが分かるのではないだろうか。
その搬入口シャッターを前に、むふんとヴァレリオは胸を張る。
「さてお立ち会い! これよりお目にかけるは私が一月ほど寝る間も惜しんで作り上げた一品! 刮目してご覧じろ!」
そう宣って、彼は壁面のカードリーダーのスリットにカードを通す。
がごん、と重々しい音を立ててシャッターが開いていく。その奥、開発区画のハンガーに居並ぶのは5体のMS。その姿を見たミナギナは呆れたような声を出す。
「お前、ホントお前」
「何をしているのだまったく……」
まあ、二人が呆れるのも無理はない。居並んでいるのは【ストライク】、【デュエル】、【バスター】、【ブリッツ】、【イージス】。初期GAT-Xシリーズ
「私もまさか一月で組み上がるとは思わなかったのですけれどね」
こうもあっさりやってのけられるとなんか色々と悟ったような気分になる。技術力高すぎだろうち。
同行してきたロウや劾もしばし言葉を失っていた。
「……こいつは、確か連合の!?」
「データを破棄していなかったのか」
二人の言葉に、ヴァレリオはふふんと鼻を鳴らす。
「確かにこれらは連合の試作機に見えるだろう。……しかしきちんとデータは全て破棄したし、パーツの一つも残っていなかったとも」
「は? じゃあどうやって作ったんだよ」
ロウの問いにヴァレリオは大いばりで答える。
「
「はあ!?」
これだよ。この残念イケメン、
「まあ303……イージス以外はアストレイのフレームを流用しているがね。イージスもSWRから設計を組み直している。中身は別物だよ」
つまりGAT-Xのガワを被ったアストレイに近い。だから短期間で済んだとヴァレリオは言うが、それでも十分おかしい。
「苦労したのはPS装甲の再現だが、この私の手にかかれば造作も無いこと! 正直電力の消費から考えて割に合わないような気がするがそこは習作ということで目を瞑ろう! ブリッツの【ミラージュコロイド】だってちゃんと備えているぞう! まあこれは以前からあった技術なのでちょっと改良しただけなのだがね!」
「おいこの兄ちゃんめっちゃ機密喋ってないか」
最早呆れを通り越してげんなりしているロウの言葉に、俺はすまして答えてやる。
「うちの機密じゃなくて連合の機密なのでセーフです」
「セーフじゃないが」
「むしろスリーアウトだろう」
ミナギナがツッコミ入れるが今更だ。予定は早すぎるが、もとよりこうするつもりだった。
別に趣味でこんな事をさせたわけじゃない。これらはある企みのために必要なことだ。
何を企んでるかって? まあ簡単に言うと。
【
盆前後が一番忙しいってどういうことなの……(白目)
まあどっちみちこんな状況で帰省なんぞ出来はしないのですがね。親戚の子らに一方的にお小遣い渡すイベントもないから財布に優しいしね。
人生とは虚しさを抱えて生きる物です捻れ骨子です。
はあい大分遅れましたが更新です。前回から引き続きジャンク屋対策~と見せかけて残念イケメンのエントリーだ! いや出したかったんですよヴァレリオさん。キャラがおかしな事になってますが原作よりちょっとはっちゃけてるだけだから俺的にはセーフ。
そしてやっちゃいました原作主役機のコピー。ホント自重しねえなうちの主役。そしてまたなにやら企んでるようですよ。ヴァレリオさんもこっちにいることだしアクタイオン社大ピンチかも知れません。彼らに明日はあるのか。
そんなこんなで、多分次回も遅れるんじゃないかな~と戦々恐々としつつ、今回はこの辺で。