アクタイオン・プロジェクト。後の世で連合軍の特殊部隊が、アクタイオン・インダストリーを中核とした複数の企業に技術協力を受け推進するエースパイロット用MS開発計画である。
横取りとは言っても、そっくりそのまま成り代わるという事じゃない。俺はこの計画を先取りし、連合軍特殊部隊【ファントムペイン】とアクタイオンの動きを牽制、あるいは向こうの計画そのものを叩き潰す算段であった。
本来この計画に関わるはずだったヴァレリオがうちにいることで、すでに台無しになっているような気がするが、ともかくアクタイオン・プロジェクトで開発されるはずだった技術をこっちで先に作り上げ、実用化したりパテントとったりすることで向こうの開発を邪魔しまくる。何せファントムペインはDESTINYとかで散々引っかき回してくれる組織だし、アクタイオンはアクタイオンで色々とやらかしてくれるやつらだ。国的にも企業的にも敵となることは確実だし、先手を打たせて貰う。
それ以外にもこの5機を作った理由はあるがね。
「ともかく、これらの機体は連合の最先端技術を当商会で再現した物です。これを研究、検証し当商会の技術力を向上させる。その手伝いをあなた方にはお願いしたい」
つまり原作ガンダムの技術とロウの技術&発想力、劾の経験と技量をミックスして悪魔的発展を遂げさせようと考えたわけだ。
アクタイオン・プロジェクトやメタルなビルドじゃすまさない、その先を行く物。最先端の先を行き技術的優位を取る。そして技術開発競争を促す。
……で、それを見せ札にして
気がついたら民需の多くがうちの手による物になっていたとか、最高やん?
まあまだ今の時点では捕らぬ狸のなんとやら。まずは商会の技術力の向上だ。そのためにはロウの協力は必須だし、劾の協力も仰ぎたい。上手いこと乗ってくれれば良いのだが。
「つまりこれのテストパイロットでもしろと言うことか? あるいは模擬戦の相手を努めろと」
サングラスを指で押し上げつつ劾が問う。
「そうですね。叢雲氏にはそういったパイロットとして各種のテストを、ギュール氏はヴァレリオ君と協力して機体の機能や性能の向上、各種装備の開発に従事していただきたいと思っています。もちろんお二方にも都合があるでしょうから、手の空いたときで構いません。いかがでしょうか?」
「あ~、この機体を貸してくれるわけじゃないんだ」
俺の言葉に、ロウがいささか残念そうな様子で言う。俺は頷いて返した。
「流石にこれらを表沙汰にするわけにはいきませんのでね。まあいずれ連合内、ザフトにかかわらず情報は漏れるでしょうが、そのときにはもっと先にたどり着いておきたいと思っています」
原作でもユーラシア連邦とアクタイオン社はG計画やザフトの技術を流用して、【ハイペリオン】というMSを開発している。で、時期的にはもう開発が大詰めを迎えている頃だ。つまりすでに
「まあ流石にこれそのものと言うわけにはいきませんが、得られたデータを元に製造する予定の機体や装備を報酬として譲渡することも考えています。それ以外にも成果に応じて報酬には色を付けるつもりですが、いかがでしょうか?」
「本当か!? そりゃ良い条件だが……」
「以前から思っていたが、随分と気前が良い。俺達をかっているにしてもな」
うれしいが戸惑っているロウと、若干疑っている眼差しを向ける劾。ふむ、サービスしすぎたかね? 理由ならあるけど。
「それだけあなた方には
そういうわけだ。ただでさえこの二人の周りにはトラブルがつきまとう。こちらで抱え込むつもりはないが、手助けくらいはしておいても罰は当たるまい。サービス良くしておいてこちらの好感度も上げておけば、そうそう敵に回ることもないしな。
「そういうことならありがたく受け取っておくぜ」
「納得できる理由ではある。了承した」
素直に受け取るロウと、まだ微妙に疑っている様子の劾。この辺りは双方の性格がよくでている。
「あとミナとギナ、折角ですから二人にも手伝って貰いますよ。丁度機体の強化と新規の機体を望んでいるようですし、GAT-Xの技術をフィードバックさせるテストベッドには都合が良いですから」
「ほう、分かっているではないか」
「我々もモルモットに使おうとはいい度胸だが、その分期待はさせてくれような?」
そろってにやりと笑う姉弟。まあ【
この一連の流れを見て、ヴァレリオはなんかうんうん頷いている。
「素晴らしい。全くもって素晴らしい。この私が高みに登るための実験体……こほんモルモット……ごほんごほん協力者としてこれほどの人間がそろうとは。これは私も張り切って……と、失礼」
ぴりりとヴァレリオの懐から呼び出し音が鳴る。一言断ってから格納庫の端に移動した彼は、端末を取り出してこそこそ会話を始める。
「私だ。いま良いところ……なに!? それは本当かね!? 分かった、すぐに行く。絶対に引くんじゃないぞ!」
途中からいきなり声を荒げたヴァレリオは、真剣な顔で俺に言う。
「すまない名代! ちょっと緊急の要件が入った! 後は任せる!」
言うだけ言って、彼はものすごい速度で格納庫を去った。唖然とした顔で皆が見送る中、俺の脳裏に何やらきゅぴんと働く感覚があった。
厄介ごと、いや、
種割れの感覚とは違うであろう、もっとささやかな、電光のような何か。俺はこの勘働きに幾度か助けられている。よく分からん何かだが、まさかニュータイプ技能でもあるまい。
それはともかくとして、ヴァレリオが向かった先に何かがあることは間違いない。彼が説明とか放り出すくらいだからよほどのことだと思うが……。
ふむ。
俺は好奇心が鎌首をもたげるのを止められなかった。
呼び出したチヒロに後を任せ、俺が向かったのは企画開発部。工房が魔窟であるとするならば、ここは魔界と言って差し支えないだろう。そこでは現在、3つの勢力が睨み合っていた。
一つは重機およびMS開発部門。筆頭であるヴァレリオがなんか変なポーズで立ち、ゴゴゴゴゴという効果音を背負っている……ように見える。
二つ目がシステムエンジニアリング・OS開発部門。その責任者である【ジャン・キャリー】が眼鏡を押し上げつつ、ドドドドドという効果音を背負っているように見える。
そして最後が深宇宙探索および次世代推進機関開発部門。そのチームリーダーである【セレーネ・マクグリフ】が腕組みしてズズズズズという効果音を背負っている。
うん、なんかここに居てはおかしい人間がいるように見えるが、スカウトしたり【D.S.S.D】を実質上買い取ったりしてたら集まっちゃった。おかげで特許とかの収入がすごいことになったけど、まあそれは良い。
さてこの3部門、別に仲は悪くなかったはずなのだが、一体何事……と思ってたら、原因は彼らが睨み合ってる中央に居た。
椅子に座り、所在なさげにオロオロしてる少年。ふむ、三次元になってもはっきりと誰か分かるその人物は、間違いなくキラ・ヤマト。本来の主人公様である。
……なんでここにいんの。
「どういうことだか、説明してもらえますかね?」
緊迫した空気の中、俺は傍らのエリカに尋ねた。
彼女は頭痛を堪えるような表情で答える。
「以前人材発掘のために行われたネット上のイベントで、優秀な成績を収めた子が企業見学に訪れたのですけれど……どの部門を見学するかで、対立が起こりまして」
「順番に全部見せれば良いでしょうに、何やってんですか」
「よっぽど優秀だったらしくて、それぞれが是非とも引き入れたいと全力でアピールする姿勢でして。むしろこの時点でよそにやってたまるかと言う勢いです」
そりゃまあ確かに優秀だからなあこの子。その能力を知ってりゃ引き入れたいと思うわな。
ちなみに俺は積極的にキラを引き入れるつもりはなかった。前にも言ったかも知れないが、彼ら――
……話がそれた。ともかく主人公だからと言う理由でキラを戦いに引きずり込むつもりはないと言うことだ。そもこの少年は気質が戦いに向いていない。無理矢理原作通りの展開にさせたところで上手くいく保証など何もないし、大体原作の状況だって綱渡りじゃすまない奇跡の連続だ。なぞったところであっさりキラが死んでしまいましたとかいう事になってしまったらしゃれにもならん。
それに無理矢理戦いに参加させたりしたら、下手をするとこっちの敵に回ってしまう可能性だってある。最悪主人公力が炸裂して俺が危険にさらされるだろう。本末転倒どころじゃない。
味方に引き込むのであれば、本人が望んだときだけ。彼らに対してはそういうスタンスを取る。だから積極的なスカウトはしない。今にもやんのかコラとか上等だコラとか言い出しそうな連中の間に、パンパンと手を叩きながら俺は割って入った。
「はいはいそこまで。その子怖がってるじゃないですか。何威嚇し合ってるんですあなたたち」
俺の言葉にセレーネとジャンははたと我を取り戻すが、ヴァレリオだけはむふんとドヤ顔だ。
「何を言っているのかね名代! 彼ほどの才能を持つ人間ならば是非とも引き入れたいと思うのが人の業! 私はそれに従っているだけに過ぎん!」
どこぞのラスボスみたいなことを言い出しましたよこの人。
「何しろこの少年、私が全力で作ったMSの伝達制御機構に関する問題を解いたどころか改良点まで指摘してきたのだからね! 今すぐにでもスカウトしたいくらいだ!」
「待ちなさいあなたそれ社外秘でしょう」
何やってんの。ホントなにやってんの。そんな目でヴァレリオを見てみれば……なぜかジャンとセレーネがふい、と視線をそらした。
「……あなたたちはなにをやったんです?」
「ちょ、ちょっとG.U.N.D.A.Mの構成と、セキュリティのハッキングについての問題を……」
「電磁推進機関を用いた軌道計算に関する問題を出しただけですよ。ええ」
「全部社外秘じゃないですか」
こいつらは。……たぶんキラがすらすら問題を解いたので興が乗って、思わず自分のところの難しいヤツ出してしまったんだろうが、限度ちゅーもんがあるだろう。
キラが小さく「なんか難しいと思ってたら……」とか呟いているのを聞かなかったことにして、俺はため息を吐き彼に向き直った。
「当商会の社員が申し訳ない。代わって謝罪します」
「い、いえその、大丈夫ですから。……それでその、あなたは」
「……おっと、申し遅れましたね。当商会の会長名代を務めております、ロン・ヤアと申します」
「あ、はい。初めまして、キラ・ヤマトです。……どっかで見たような」
うっかりロン・ヤアとしての姿をキラの前にさらしてしまったが、どうやら彼ははっきりとは気がついていないようだ。一応、セーフか。ギリアウトのような気もするけど。
「って会長名代!? それって事実上のトップじゃ……」
「たまたまこちらに顔を出していた物で。気になさらないでください」
「は、はあ」
色々と衝撃が強すぎて感覚が麻痺しているのだろう。まあ原作よりはマシだと思って欲しい。
「では、あなたの案内は私がすることにしましょう。まあ他に適切な人間がいないからですが」
「「「え~! 名代ずるい~!」」」
俺が宣言した途端、とたんにIQが下がったような台詞を放つ部門代表3人。女子高生かこいつら。ヴァレリオなんかずびしと指を突きつけて言いがかりをつけてくる。
「そうやって優秀な人間を手元で囲い込もうというのだろう!? 私は知っているんだぞこの前ドラマで見た!」
「あなたたちに任せると不安だからでしょうが。むしろドン引きされて逃げられそうです。当たり障りのない案内が出来る人間は今手が離せませんし」
本来ならエリカ辺りに案内させたいところだが、彼女は急ピッチで進むアストレイの生産でてんてこ舞いだし、もう一人の適任者であるチヒロはロウたちの相手を代わって貰っている。他に任せられそうなのは今出払っているし、消去法で俺しかいなかった。
俺の傍らに居るエリカは、「確かにそれしかなさそうですね」と諦めたかのように言った。あんたもかまいたかったんかい。
とにもかくにも、俺はキラを引き連れて各所を案内して回ることと相成った。
緊張しながら歩くキラを隣に俺は考える。果たしてこの状況は偶然なのだろうかと。
(……いや、そうとも言い切れんな)
運命のような物、あるいはその効果なのかも知れないが、それ以前にこの状況は
原作にはなかったクーロン商会とひょんな事から関わり合いを持ち、その上でヘリオポリスの崩壊などなく学生生活を続けていた。将来的なことを考えれば、そろそろ就職かアカデミーに残って研究を続けるか、選択肢が浮かんでいることだろう。関わり合いを持つ企業から誘いを受ければ、見学の一つもしてみようかとも思うはずだ。
結局、
こうなったら仕方がない。まずは商会がどういう物か見て貰うとしますかね。
施設内を見て回りながら、俺とキラは言葉を交わす。
商会の概要。事業の内容。各部署の説明。それらを語る合間にキラから色々と聞き出す。
家族のこと、アカデミーでの生活。将来の展望。そして、戦争に関すること。
話してみて感じたが、やはりこの子、戦いには向いていない。今の戦争を憂う様子はあるが、それをどうにかしようという気概がないのだ。いやありすぎても困るのだが。
だが当たり前と言えば当たり前なのだ。原作の状況がおかしかったのであって、今のこの子にぽんと銃を渡したりしたら狼狽えるだけだろう。戦いに使わない状況でMS動かして良いって言われたら、目ェキラッキラさせて喜ぶだろうけどな。
スカウトするにしても、いきなり兵器開発系はないなと算段する。となればセレーネのところが妥当なのだが……彼女は彼女でなんかぶっ飛んだ性格だ。原作あんなんじゃなかったような気がするんだがなあ。ちょっと躊躇する。
まあそれはそれとして、ついでだからロウや劾、ミナギナにも会わせてやった。どうやらロウやミナギナにも気に入られたようで、彼らから冗談半分で誘いを受け、キラはあわあわしてた。おいやめろ。別の物語が始まっちゃうからやめろ。
とか何とかしているうちに案内を終え、キラの去る時間が来る。
「どうでしたか、我が商会は」
「思ったより色々なことをやっているんで驚きました。軍需産業を始めたって聞いていたから、もっと兵器の開発とかに重点を置いている物かと」
大分慣れてきたようで、意外に遠慮のないことを言うキラ。
「商品の一つに過ぎませんからね、兵器という物は。人が生きるためにはもっと大切な物がいくつもある。そっちの方が儲けられますから」
すまして答えてやった。彼がこの商会で何をどう見て、そして俺の言葉に何を感じるのか。どう捉えたにしろ判断するのは本人だ。俺は無理に誘導することはしない。
どういう道を選ぶのかはキラ次第だ。敵に回らなきゃ良いとは思うが、この先何がどう転ぶかは分からない。それでも彼自身に選択させる方がいいと、俺は感じていた。ま、いつもの勘だがな。
「ですが君の言ったとおり、この商会は兵器も扱っています。それはつまり間接的に戦争と関わる可能性があると言うこと。それをよく考えて、道を選ぶがよろしいでしょう」
「他の皆さんとは違って、ヤアさんは是非ともと誘わないんですね」
「うちに来てくれるのでしたら、自分で選んで貰った方が快く仕事をして貰えそうですからね。願わくば縁があれば良いのですが、それは君次第でしょう」
俺は手を差し出し、キラと握手を交わす。
「どのような選択をするにしても、後悔のない道が選べることを願っていますよ」
「はい、ありがとうございます」
こうして、俺はキラと別れた。
この邂逅が未来にどのような影響を及ぼすのかはまだ分からない。
しかし、何か一歩踏み出せたことは確かだった。
ファイザーよこせええええええ。(怨霊風味)
何で地域の予防委接種の予定が延びてんだよ打たせろよ! 俺にヤクを打たせろよおおおお!(問題発言)
戦々恐々としている捻れ骨子です。
はいすいません更新が遅れております。多分しばらくペースダウンですファッキン。仕事増えたんなら金よこせよ。(荒んだ目)
まあそれはそれとして、アクタイオンプロジェクト横取りからのキラ君登場。おまけに二人ほど見たことがあるような人物がいますが。煌めく凶星「J」? 知らない子ですね。
で、無理矢理勧誘とかしないで普通に案内してます。勢いよすぎてドン引きされたら逆効果だと直感したようですリョウガさん。
はいなんかニュータイプ技能っぽいのに覚醒してます。人の考えとか死人の声とか聞こえないので多分違うんじゃね? と本人思っていますが。多分いっぺん死んで転生したせいで霊的ななんかが強化されてんでしょう。(適当)
ともかくキラ君との邂逅でこの話はどのような方向に進むのか。もちろんノープランだぞ期待すんな。
と言ったところで今回はこの辺で。