さて、件のお見合い襲撃だが、結構な余波があった。まあ郊外とは言え派手にやらかしたのだ。完全に隠蔽するなど不可能に近い。
だから
実際はまあいつものことかと、皆半ば呆れ返ったり諦観しているわけだが、他国が絡んでいる以上真剣に対処しているという姿勢は必要だった。いや真剣に対処しているんだけど、慣れって怖いよな。
ともかくそうやって敵対者をあぶり出し叩くという姿勢を見せたらば、真っ先に反応したのはなんとブルーコスモスだった。曰く「うちじゃありません。マジです本当です。なんだったら調査に協力もします」(要約)と、
他にもめぼしい国家や組織が無関係を主張したり、協力を申し出てきた。それらに対応したり根回ししたり後始末したりして、俺はしばらくあちこちを飛び回った。それも一段落し戻ってきたらば。
「……なんか随分と愉快なことになったな」
「貴様ほどではないさ」
モニター越しに、俺とギナは苦笑し合う。俺がお見合いとか返り討ちとかしている間に、宇宙でも騒動があったようだ。ギナたちはそれに対処していたらしい。
「仕事を邪魔されたミナはお冠だ。あれはコロニー再生資源化計画の要だったからな。アルテミスに殴り込みかねない勢いだった」
何が起こったのかと言えば、うちの宇宙開発局主導で計画していた破棄コロニー解体、資源化の事業。その試験でロウなどのジャンク屋が活動している最中、ユーラシア連邦の試作MS部隊が難癖付けて襲撃をかけてきたのだ。
コロニーを解体して資材別に分け、太陽光反射炉――特殊合金の鏡を使い、太陽光を利用して資材を溶解しインゴットとする真空溶鉱炉へと運搬する作業を行っている中での襲撃。当然ロウたちジャンク屋は武装していなかったが……作業の指揮を執っていたミナたちと警備に雇われていた劾たちはしっかりと武装していた。ミナにいたっては指揮を執っていたにも関わらず、作らせたばかりのゴールドフレーム2号機(まだ天じゃない)と試作武器を持ち出して暴れたらしい。ホントこの兄妹は。そう言うとこやぞ。
で、襲撃してきた連中のほとんどがジンだったので容易く蹴散らかされたが、1機だけやたらと強くて堅い機体がいて相当手こずったらしい。
まあ、いつか関わるかも知れないと予想はしていたが。
「【ハイペリオン】、ねえ。アルテミスの傘……光波防御帯シールド、【アルミューレ・リュミエール】をMSに標準装備させるとは、ユーラシアも何考えているんだか」
俺は
「バッテリー切れになるまで囲ってボコったらしい」
だそうだ。
確かにミナとロウと劾の3人がいれば、乗り手が『例の彼』だったとしても制圧することはできるだろう。生憎とレッドフレームとブルーフレームは、商会のバックアップにて常にバージョンアップを繰り返している。加えてミナの2号機は最新鋭のバージョンを反映させた物だ。原作よりも性能はかなり上。そうそう遅れは取らない。
で、撤退すら許さずにふん捕まえたということだった。ナイスというべき……なのかなあ?
「で、そいつらを差し向けたのは【アルテミス】の司令官か。早速こちらからユーラシアにきょうは……抗議を入れさせて貰おうか」
「今貴様脅迫と言おうとしただろうそういうとこだぞ」
後に、俺はこのことをネタに、ユーラシア連邦と交渉する気満々で連絡を取ったのだが、襲撃を命じた宇宙要塞アルテミスの司令官、【ガルシア】に全ての責任は被せられ、ユーラシア自体は「アホがやらかしてすまん、けどヤツが勝手にやったことやねん(意訳)」と全力で言い訳してきた。こちらも下手に刺激するつもりはなかったので、多少の
まあそれはともかくとしてだ。
「それで、ミナはどうしている?」
「ああ、捕らえたハイペリオンのパイロットを直々に尋問している。中々強情なヤツでな、並の相手では口を割りそうにない」
「まあ最新鋭機を預けられている人間だ、そう容易くはなかろうさ」
例の彼ならば、かなり気性の激しい人物だ。原作と幾ばくかの違いはあるかも知れないが、簡単に口を割るとは思えない。まあどうするにしろ、ミナたちにまかせてみるかね。
「こちらに被害はなかったようだが、計画はいったん様子を見た方が良さそうだ。また妙な横槍を入れられたらかなわん」
「コロニー解体の方はジャンク屋どもも関わっているから、遅れが出ても進めておく方向になる。残骸は引き取るだけ引き取ってラグランジュポイントの端にでも浮かべておくしかあるまいよ」
「一応哨戒だけはしておいてくれ。すぐさま金になるものではないが資源は資源だ。面倒が増えるが、頼む」
「良かろう。こちらの戦力も整いつつある。慣熟を兼ねて目を光らせておこう」
そして、他にも色々と話を詰めたあと通信を切る。そして一つ息を吐いた。
大分原作から乖離してきているようだ。この時期に起こることも作られたMSもかなりの違いがある。大筋ではともかく、最低でも外伝に関してはもう原作知識はあまり当てにはならない。まあ本来ハイペリオンと相対するはずだった少年は、遺伝子治療の被検体として商会系列の病院に通院しており、関わるフラグ自体がポッキリ折れてたりするのだが。
ともかくひょんな事からハイペリオンを入手することができた。これはうれしい誤算である。光波防御システムはこちらでも研究していたが、実物が手に入ったことにより開発は大きく進む。商会のアレな連中に任せたらどうなってしまうかという微妙な不安はあるが……必要な経費とか犠牲とかそういう物だと思って諦めよう。うん。(←さじ投げた)
まあ今回のことに関しては懸念もある。本来であればハイペリオンはマルキオ導師の指示によりザフトから持ち出された【ドレッドノート】という試作MSと相対するはずだった。だがマルキオ導師はそのような指示を出さず(出す理由がなくなった)、そもドレッドノートが開発されているかどうかも不明だ。多分十中八九開発されているとは思うが、ザフトに人を送り込んでいないからな。そちらの情報はどうしても後手に回る。
ドレッドノートが外部に持ち出されなかったことがどのような影響を与えるか。かの機体はNJC(ニュートロンジャマーキャンセラー)――NJの機能を無効化するシステムと核動力の実験機であり、ザフト製ガンダムの原型機とも言える機体だ。あるいはザフトの機体開発が加速度的に進むことになるかも知れない。それで大きく戦況が変わるとも思えないが……何事も世の中には例外があるからな。原作のキラのように。ザフトの動きに注意しておく必要があるだろう。油断ならんのはどこもいっしょだけど。
しかし一連の流れ、俺はほとんど関与してないなあ。いやだからなんだというわけではないが、気がついたら悪い方向に向かっているというのは勘弁して欲しい。ただでさえ安心できない世界だからか、細かいところが気にかかる。悪い癖だとは思うんだけれどな。
などと微妙な不安を覚えていたらば、別な方向からも動きがあった。
「襲撃、ですか」
「ああ。連日とまでは行かないが、行く先々でね」
バルトフェルドからの連絡。俺はそれをロン・ヤアとして受けていた。
一応盗聴などの対策である。この通信自体、俺は別な場所で受け答えしているように誤魔化していた。インフラ牛耳っているのって便利だよな。
それはさておき、どうやらラクス嬢一行は行く先々で襲撃を受けているらしい。襲撃自体は予想されたことではある。だが行く先々で執拗に、というのは想定以上だった。ザフト勢力範囲内、中立国内。全くお構いなしの連続は流石に参ったとバルトフェルドはぼやいている。
「襲撃者は全てブルーコスモスを自称していた。最低でも青き清浄なる世界といういつものお題目は唱えていたな。そしてほぼ全員が自決している」
「ほぼ? 捕らえられた者もいると言うことですか」
俺の問いに、通信向こうでかぶりを振ったような気配があった。
「いや、自爆テロじみた襲撃を見せ札に、狙撃を試みるということが幾度かあった。その狙撃犯は取り逃がしてしまったよ。明らかにプロの仕事だった」
「……妙ですね。いえ本腰を入れてラクス嬢を狙っているというのであれば、おかしな話ではないのですが」
ブルーコスモスの犯行にしては、なにかがこう、引っかかる。自爆テロは毎度のことだが、狙撃などという手を用いたのは初めて聞いた。それをするくらいならMSなどの戦力を送り込むのが彼らのパターンだ。しかしアスランたち赤服を相手にするのは分が悪いと感じたか、それともMSなどの戦力を送り込むことができなかったか。おかしな話ではないような気はするが、どうにもな。
「……連合の軍はどういう反応をしていますか?」
「我々が察知できる範囲では、大きな動きはない。そちらで知れる状況と大差はないだろう。もっとも極秘で動いている分は調べきれないがね」
ふむ、ラクス嬢襲撃と呼応している様子はないと言うことか。どうにもこれ――
「
「やはり貴方もそう思うか」
バルトフェルドも薄々そう感じていたようだ。ラクスという存在が地球にいるという絶好の好機、ブルコスのタカ派ならば、繋がりの深い大西洋連邦の軍を動かすはず。アフリカでやっていたような嫌がらせじみた自爆テロなどで済ますわけがない。
あるいはラクス嬢を護るのに神経を集中させているところで、ザフト支配域の要所に攻撃を集中させ落とす、くらいのことはやってもおかしくない。俺ならそうする。そういった軍事行動と連動していないというのは、あまりにもお粗末だ。
下っ端が勝手に動いているのであれば、おかしな話でもないように思えるが、どうにも不自然さが目につく。ブルーコスモスの名を借りた何者かと考えた方がつじつまは合う。となれば誰がそれをやらかしたかということだが……心当たりはあった。
「……バルトフェルド殿、貴方は一族という存在を耳にしたことはありますか?」
「一族? いや聞いたことはないが、何者かな?」
「歴史の影に隠れ存続してきた、世界の調律者を自称する勢力……らしいです。冗談のような話ですが、そういった輩が存在するのは確かなようで」
自分で言ってて何だが酷いな。まあこの世界そのものが色々と酷いから、今更一つや二つ酷いのが増えたところで変わりはないけど。
それは置いといて、俺は一族の仕業であろうと当たりを付けた。というか連合以外の勢力でしつこく彼女を狙うところなど他にはあるまい。なにしろラクス嬢はプラント評議会議長の娘であるが、
で、中立国の多くはザフトを敵に回すつもりはないし、
「にわかには信じがたい話だが、貴方はくだらない嘘を言う人間ではないだろう。一応信じさせて貰う」
「痛み入ります。……とはいえ、我々も一族の全貌を掴んでおりません。オーブにもテロを仕掛けた疑いがあり、目下全力で調査している最中なのですが、逃げ隠れするのは得意なようで」
長きにわたって歴史の影に潜んでいた連中だ。早々簡単に尻尾を出すものではなかった。
だが、俺もただ手をこまねいていたわけじゃない。
「幸いと言って良いのか、一族と関わりのあった人間と接触できそうです。そこから少しでも情報を得られると良いのですが」
蜘蛛の糸はたぐり寄せた。そこからどう転ぶかはまだ分からん。この機会を上手く利用できるかどうかが今後の鍵となる……かも知れん。
俺の交渉力次第なんだろうがな。上手くいけばいいがはてさて。
「お手並み拝見……といきたいところだが、こちらはその情報を待っている余裕はなさそうでね」
「でしょうね。ですから、CSSを通じて信用できる傭兵を斡旋しましょう。流石にただというわけにはいきませんが、勉強はさせていただきます。それと、襲撃者に関しての情報が入れば、随時お知らせするようにいたします」
「……こちらとしても助力を要請するつもりだったが、随分とサービスが良いな?」
「貴方には借りがあります。それにラクス嬢はまだ死んで良い人間じゃない。たとえ運命がそういう方向に導いても抗うべきかと」
俺的にはまだ利用価値があるしな。おくびにも出したつもりはないが、そのような空気を感じ取ったのだろう。苦笑の気配があった。
「そういうことにしておこう。いずれにせよありがたいことだ。礼を言う。お返しというわけではないが、今後もクルーゼに関しては情報を流すようにさせてもらう」
「毎度ごひいきに」
そのあと色々取り決めて穏やかに会話は終わった。ということでラクス嬢のあたりにてこ入れすることになったが……こちらも俺が直接関わることはなさそうだ。うん良いんだけど。問題はないんだけど。
考えてみればアークエンジェルも放りっぱなしだしなあ。あの艦は大西洋(海の方な)を中心にあちこちこき使われまくっているらしい。本来の運命よりはマシなんだろうが。
どうにも、物語から置いてかれている感がある。アークエンジェルやキラ君目線からじゃないとこういう物なのかも知れないが、なんだかなあ。
……まあ俺の気分の問題だ。切り替えていこう。俺は次なる手を打つため、行動を開始した。
しばらく後。
「このような形で申し訳ない。今はまだ正体を明かすわけには行かなくてね。……とは言っても薄々分かっているだろうとは思うが」
「あらご謙遜。先にこちらを調べ尽くしてから交渉に挑んでらっしゃるのでしょう?」
変声機越しの会話。初っぱなから腹の探り合いをしている相手は、かつて一族の党首候補であった人物。自称紳士のオネエ、【マティアス】だった。
エアガンを買いあさりすぎて貯金がMG42の弾丸のように減っていく。
いい銃を買ったからと言って上手くなるわけではないと分かっちゃいるけどやめられない。反省しろ捻れ骨子です。
自業自得で金欠に陥りかけているアホのことはさておき更新です。なんかリョウガさんの知らん間に色々進んでいるというお話。うん核融合炉で電力がまかなわれてきたならば、危ない橋を渡ってドレッドノートパクる必要ないよね、ってわけでこんな事に。なお某儚げな美少年は多分このあと出てきません。つーか何人出てこない人間いるかなこの話。
ともかくリョウガさんがあまり関わらないところでも事態は進んでいると言うことです。当然ですが、全てに手を出すわけには行かないからね。仕方ないね。
そしてついに自称紳士のオネエさんと接触。果たしてどうなるのか読者の皆さんの予想通りなのか。事の顛末は次回にて。
それでは今回はこの辺で。