ガンダムSEEDが始まらない。   作:捻れ骨子

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24・これはちょっと予想してない

 

 

 

 

 

 さて、色々ごちゃごちゃあったりしたが、肝心要の戦争の方はどうなっているかというと。

 

「膠着状態から続くなあ。願ったり叶ったり……と言いたいところだが」

「思った以上にザフトが粘って、思った以上に連合がぐだってますわね」

 

 一進一退の五分。戦術ディスプレイに映る戦況は、そのようなものだった。

 主に赤道付近に位置しているマスドライバーの取り合い。それを中核として各所で散発的に戦闘が勃発している。その状況自体は変わらないが、内容が大分変化を見せていた。

 まず連合がMSを量産し実戦に投入し始めた。【GAT-01ストライクダガー】。原作ではストライクの簡易量産型で、ストライカーパックなども運用できず単体の性能はジンを僅かに上回る程度の物だったが、こちらではバックパックにオプションを装備できるなど、正規生産型の【ダガー】に近い性能となっている。しかもアークエンジェルで鍛えられたGUNDAM搭載だ。その性能は推して知るべし……なんだが。

 どうにも劇的に戦況をひっくり返すところまではいかないようだ。

 理由は二つ。主にパナマで生産されているストライクダガー、それが配備され始めたのは、主にパナマとカオシュンとジブラルタル。連合側が保持しているマスドライバーの周辺であった。

 つまり連合は、ザフトを攻めるより現在所有しているマスドライバーの護りを固める事を選択したのである。戦力の消耗を嫌った、と言うよりは確実性を取ったのだろう。

 ()()()()()()()

 ……なんでかアラスカと旧イギリス領と太平洋艦隊にも配備が集中してるんですけどー。

 うん大西洋連邦、思いっきりユーラシアと東アジアに牽制始めてんじゃねえか。早速内ゲバ表面化させてどうすんだよ。

 ともかく防衛中心の戦術と、MS戦力の分散。これが『連合側の』戦況に劇的な変化を生まない原因だ。先に述べた確実性を取った、というのは理由の一つ。余裕ができ、それにより内側の方に目を向けだしたこと。さらには、中立国でブルコスを名乗る連中が好き勝手絶頂したせいで、ザフト勢力圏で活動しにくくなったこと。そういった諸々が原因で攻勢に出にくくなったわけだ。

 特に中立国でブルコスがやらかして、現地の反感食らいまくってるのがでかい。ラクス嬢の行く先行く先、つまりプラントに友好的な中立国でやらかすもんだからさらに倍。該当国はカチキレて、中には中立国の看板下ろしてザフトにつくべしと、議会が紛糾しているところもある。

 ……実のところラクス嬢への襲撃は、こじらせた人がブルコスの下っ端をそそのかしてやらせてる可能性がものすごくある。巡り巡って俺のせいとも言えるわけだが……これ色々な意味で公表できねえよなあ。おかげさまでブルコス内部も色々面倒なことになっているようだ。下手をしたら内部分裂を起こす可能性もあった。

 そのままただ瓦解してくれるんならこっちも楽なんだが、そう上手くはいかないだろうな。つか統制利かなくなって面倒なことになるかも知れん。

 ってな感じで表向き冷静さを保っているように見えてやっぱり連合の方はぐだってるんだが、これでザフトが調子に乗ったりするわけではなさそうだ。

 ザフトの方はザフトの方で、連合側に残ったマスドライバーへの攻勢を抑え、軍を再編成している様子が窺える。

 そもザフトの当初の作戦、【オペレーション・ウロボロス】は、連合側に属する全てのマスドライバーを占拠し、連合の勢力を地球に封じ込める事を目的としていた。原作ではパナマを残してあと一歩と言うところまで迫っていたが、この世界だと3つのマスドライバーを落とせず膠着状態に陥っていた。

 だがこの世界のザフトには余裕がある。うちからの支援、そして連合に反感を持った中立国の協力。何より原作より戦力がある。

 原作ではアークエンジェルとキラ君の大活躍()で、ザフトの戦力の幾ばくかが削られてしまった。その削られたのがよりにもよってバルトフェルド隊などの中核を成す部隊だったからさあ大変。地上戦力に統率力がなくなり、結果ザフトは追い込まれ、パナマへの総攻撃と見せかけたアラスカの連合総司令部を強襲する【オペレーション・スピットブレイク】を発動せざるを得なくなった。

 しかしこっちじゃバルドフェルド隊をはじめとする主戦力は健在。地上戦力はまださほど大きなダメージを受けていない。だったら余計にマスドライバー攻略を急ぎそうじゃないか? と思われるだろうが、ここでクルーゼ――『内通者』の存在が浮かび上がってくる。

 俺にも予想外の退場であったが、そうせざるを得ないほどに彼は情報を流出させすぎた。恐らくは原作より状況が上手くいっていないことに業を煮やし、情報を流しすぎたのだろう。流石に看過できなくなったわけだ。そして彼がどこまで情報を連合側に流したのか、ザフトの方でも把握し切れていないのだろう。ゆえに迂闊な動きができなくなったわけだ。

 余裕があり協力的な勢力も増えたことで、持久戦へと舵を切り始めたのかも知れない。あるいは首脳部の頭が冷えてきたか。ともかくある程度冷静な判断をするようになってきたらしい。

 とまあこんなわけで、膠着状態は続いているというわけだ。このままの状態を維持して、双方がこちらの言葉に耳を傾けてくれれば良いのだが……。

 

「どっかで爆発しそうな気がするなこりゃ」

「嫌なことを言わないでくださいまし……とは言えませんわね」

 

 リシッツァがため息をはく。彼女もどうやら俺と意見を同じくしているようだ。

 この膠着状態は仕方がないという面がある一方で、不満をため込んでいる人間も多いだろう。上層部だけではない、一般市民にもだ。何しろ双方天文学的な被害を被っている上、戦意を煽りまくって戦争に挑んでいる。下手に膠着状態が続けば暴動などが起きる可能性もある(もう起こってるところもあるが)し、大西洋連邦などは選挙にも響くだろう。いつまでも動きを停滞させているわけにはいくまい。

 加えてさっきも言ったが一族(ってかマティス)が裏で糸引いてるテロ。それが中立国を引っかき回している。で、ブルコスの下っ端と過激派の中でもアホな連中はやんややんやと大喝采で、もっとやれと煽りまくっているが、盟主を含む比較的まともな方は土下座行脚だ。この辺も亀裂が入りまくっている。これがこちらに都合のよいものとも言えない。何しろ頭ブルコスだ、どうはっちゃけるか分かりゃしないのだから。

 何よりクルーゼ。あれは単に脱走したのではなく、何者かに手引きされていた。それが事前に根回ししていた協力者なのか、それとも一族などの手による物か。そこまでは判別つかないが、生きているならやらかさないはずがない。絶対に迷惑なことするぞあの男。

 そういった状況を鑑みて、このまま収まりはしないと、俺は確信していた。

 問題は。

 

「どこが破裂するか。だな」

「どこが破裂してもおかしくない、と言うところが悩ましいですわね」

 

 俺とリシッツァ、そして周囲の面子はむう、と唸る。政府高官や軍関係者を集めた戦略会議。その真っ最中の話だった。

 

「どこに問題があるかを考えてたら、問題しかなかったってのは笑えん。俺達(オーブ)が介入してこれだ、しなかったらどうなってたか」

 

 大体原作になっていたわけだがおくびにも出さない。もう原作はたらればの話だ。切り替えていこう。

 

「ともかくだ、現状考えうる最悪の展開というヤツを片っ端から上げていこう。一つ一つ対処を考えていく」

「片っ端から、ですか?」

「ああ、全部だ。今夜は寝かさないゾ♥」

「欠片も心ときめかないお誘いですわね」

 

 げんなりとした表情になるリシッツァ。多分俺も似たような物だ。が、やらなきゃ光明は見えないのだ。最悪の状況を考え、さらにはその斜め上をぶっちぎる現実に対し覚悟を決める。やりたくはないけれどやらなきゃ詰み。俺達は嫌々ながらも今後の展開とその対策を討議し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、本当に予想外の展開から事態は動き出す。

 

「【ジョージ・アルスター】外務次官? ……ああ、そういえば外務省の誰かと縁をつなごうとしていたな」

「宇宙安全保障政策室のアーガイル室長ですね。セイラン家の派閥だと記憶していますが」

 

 突然持ち込まれた話に、俺は半ばすっとぼけながら考えを巡らす。

 ここでジョージ・アルスターの名前が出てくるとは。原作のヒロインが一人、【フレイ・アルスター】の父親であり、親馬鹿こじらせて援軍の艦隊に便乗した挙げ句クルーゼ隊に始末されてしまった人物だ。ヘリオポリスから一連の原作展開がすぽーんと無くなってしまったおかげで、関わることはほとんどないと思っていたが。

 

「ふむ、そんな人間がセイラン家ではなく俺にコンタクトを取ろうとしてきたか。しかも内密にと来た。ろくでもない話の予感がひしひしとするな」

 

 俺の台詞に秘書官(チヒロではなく代表首長補佐官付きの男性)が、すました顔で応える。

 

「日頃の行いでしょう」

「言ってくれる。……ウナトに話は通してあるか?」

「は、ウナト様も寝耳に水の話だったようで。アーガイル室長に確認してみるとのことです」

「となると、『商談』ではないか。パイプすっ飛ばして話を持ち込んでくるってことは、『できうる限り人には聞かせたくない類い』の話だろうな」

「外交関係ではない、と?」

「あるいはたれ込みの類いかも知れん。たしかアルスター氏はブルーコスモスのシンパだったろう。内部で何かあって、情報を手土産にこちらへ擦り寄ろうとしているのかもな」

 

 この話自体が何らかの罠、という可能性もある。ブルーコスモスの過激派から見れば俺は目の上のたんこぶだからな。何とかして排除しようと考えてもおかしくはない。

 嫌な予感は、する。とは言っても危機に陥る類いじゃなくて、面倒くさそうな懸案エアーがばりばりと匂う。しかし面倒くさいことを乗り切らなければ道が切り開けないのがこの世界だ。あえて火中の栗を拾いに行かなければならない時もある。

 これを逃せば、後々もっと面倒なことになる。そう感じた俺はため息をはきながら決断を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お初にお目にかかります。リョウガ・クラ・アスハ補佐官殿。本日は無理を聞いてくださり、誠にありがたく」

「初めまして、M()r().()()()()()()。正直貴方が直接対話を望むとは思っていなかったよ」

 

 モニター越しに俺と会話をしているのは、金髪のやや童顔な男性。そう、盟主王ことムルタ・アズラエルである。

 アルスター氏がコンタクトを取ってきた理由がこれである。彼を通じてアズラエルは俺に非公式の会談を申し込んできたのだ。いくら何でもこれは予想外。何しろ今アズラエルが俺と対話する理由という物が見えてこないからだ。

 いまブルーコスモスは混乱している。しかしだからと言って我々(オーブ)に助力を請うことはすまい。明確な敵ではないが、コーディネーターを受け入れている我が国をブルーコスモスの多くは潜在的な敵対者と見ているだろう。まあ上の方は利用価値があれば利用するくらいは考えるだろうが、まだ堂々と交渉するほどの関係性はない。原作ではアズラエルとサハク家は結構繋がりが強かったが、こちらではさほどでもないのだし。

 それにサハク家やセイラン家を飛び越して直接俺というのが分からない。原作ほどでは無いにしろ繋がりはあるのだ。そちらから伝を頼ってと言う形でもよかっただろうに。ふむ、よほど余人を関わらせたくないのか、それとも。

 思考を巡らす俺。モニター向こうのアズラエルは神妙な様子で言葉を紡ぐ。

 

「筋を曲げてでも貴方と対話する必要があった。そうご理解いただければ」

「ほう? 理解して事に臨んでいると言うことは、それなりの理由があると見たが」

「はい。すでにブルーコスモスの現状は聞き及んでいるかと思います。信じられないことだと思いますが、今の状態は私の望んだ物ではありません」

「貴方は方々にそう訴えていたが、それは本心である、と?」

「ええ。正直今のブルーコスモス末端は、まるで制御できていない。お恥ずかしいことですが、盟主たる私の言葉も響いていないようなのです。その原因の一つは分かっているのですが」

「……ラクス・クライン。彼女の存在か」

「その通り。わざわざ地球くんだりまでやってきて友好国を巡る、そんなことをやらかしてくれたおかげで、血気に逸る者たちが勇み足を踏み、それに続く物が続発する始末。さらには一部の幹部がそういった者たちを煽って、最早収拾がつかない有様です。私としては不愉快極まりない」

 

 やるんだったら自分の指示の下完璧に、とでも思っているのか。思い通りに事が運ばなくて苛ついているのが言葉の端から見て取れる。

 その血気に逸ってる連中は某面倒くさい女の差し金で踊らされてるんだけどな~、と思っただけで口にはしない。ちょっと盟主王がかわいそうすぎる。まあそれはさておいて、まだ俺に繋ぎを取った理由が見えないな。

 

「貴方の現状は分かった。それに納得がいかないのもな。……しかしなぜ私と相対しようとする? 私に……オーブに助けを求めようとするならば、それは『悪手』だ。ブルーコスモスの盟主としても、大西洋連邦の経済界重鎮としても、国防産業連合理事としても。どの立場においても露見すればただではすむまい」

 

 オーブと大西洋連邦の間柄は表だって敵対関係ではないというだけで、決して味方ではない。むしろ互いに最大限の警戒を抱いている間柄だ。そんな状況で連邦の上層部にも影響を与える人間が周囲を出し抜きオーブに助力を請うような真似をして見ろ、露見すれば蜂の巣をつついたような騒ぎになる。アズラエル自身の立場どころか、命すらも怪しくなるだろう。

 そういった俺の考えを、アズラエルは()()()()()()()()

 

「ええ、()()()()()()()()()()()。むしろ悪手でも打たなければ、この状況を覆すことはできない。そう考えてのことですよ」

「なんと?」

 

 何を考えている? いや、なんとなく読めては来たが、確証がない。僅かに眉を顰めた俺を見て、アズラエルは得たりとばかりににやりと笑う。

 

「今の戦争に我々は勝たねばならない。これは前提条件です。そのためには足下のぐらつきを正さねばならない。ユーラシアや東アジアとの対立、これはまだ許容範囲です。いずれは雌雄を決せねばならない相手。むしろこれを機にイニシアチブを取るよう動けば良い。ですが大西洋連邦内部で足並みが乱れるのは座視できない。下手をすればブルーコスモス排斥の動きすら起こりかねないと私は考えます。盟主としても、それ以外の立場からしても、現状を改善させる必要がある」

「その直接的な手助けを……と言うわけではなさそうだ」

「話が早くて助かります。現状を変えるにしても、中立国の助力を仰ぐのはあり得ない。それを機にブルーコスモスの中央に介入するきっかけを与えてしまいますからね。……私が貴方に望むのは、不介入。最低でもブルーコスモス内の諍いに首を突っ込むなと、そういうことです」

「釘を刺しに来た、ということかね」

 

 それだけではないと分かっていて、俺は言う。さすれば答えは。

 

「もちろんただで、とは申しません。私の勢力の及ぶ範囲で、オーブには手出しをさせないと約束しましょう。もちろん言葉だけでは信用できないでしょうから……」

 

 僅かに勿体ぶって、アズラエルは言葉を紡いだ。

 

「療養の名目で、()()()()()()()()()()()()()。その意図は理解していただけるでしょう?」

 

 なるほど、そう来たか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 リコリコは、良いぞ……っ!
 久しぶりに円盤買いたくなるアニメに出会いました。よし注文だ。
 こうしてまた財布が軽くなる捻れ骨子です。

 はいやっとの事で更新。8月中は死ぬほど忙しかったのでそも文章書いている余裕がありませんでした申し訳ない。最近になって余裕ができたのでサバゲにでも行ってこよう文章書くんと違うんかい。
 それはさておき盟主王との直接対決です。初っぱなから怪しい空気が漂ってますがまだ序の口。次回はとんでもない展開が貴方を待つかも知れませんが保証はできかねます。返品は受け付けておりません。果たして盟主王はどんな無茶振りをするのか。あるいはされるのか。普通の交渉? そんなもんがこの話にあるわけないじゃない。そんな常識的な期待しちゃダメですよ。

 と言ったところで今回はこのあたりで。
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