ガンダムSEEDが始まらない。   作:捻れ骨子

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25・転んでもただでは起きない

 

 

 

 

 

 思い切った判断。そして()()()()()()。そう感じながら俺は話を続けた。

 

「普通に考えれば悲壮なる覚悟を持って、と言ったところだろうが……このご時世だ、『それがどれほどの枷となるか』、信用できかねる。大昔の戦乱の世でも、親子が殺し合うなど珍しくなかったんだ。ましてやこんな世の中ではね」

 

 めっちゃ効果があるんだろうがな! あえて気づかなかったふりをしてやる。こっちとしても簡単に受けていい話じゃないし。

 

「ごもっとも。何の保証も無しに信用しろと言われて、ハイそうですかと頷くのは阿呆のやることです。ですので他に担保を預かっていただきたいと」

「ほう? 何かな」

「私の持つアズラエルグループの株。その半分をオーブに預けようと思います」

 

 なるほどな。目に見える形で己の『力』を差し出そうというわけか。アズラエルグループは彼の一族経営だ。保有する株はかなりの割合になる。つまりグループへの影響力が減少すると言うことだ。もちろんこんなことアズラエルの思いつきでできるわけではない。この対談を行うに当たって準備していたと考えるべきだろう。

 グループだけではない。財力を下地にした各方面への影響力も低下するはず。下手をすれば今の立場を追われる可能性だってある。さらに言えば、益々ブルーコスモスの制御ができなくなるのではと思うが。

 俺の考えを読んだかのように、アズラエルは続ける。

 

「私の行動は、見る者が見れば()()()()()()にも見えるでしょうね。あるいは()()()()()。私が後ろ盾をしていた連中は、さぞかし慌てることでしょうねえ」

 

 底意地の悪い笑み。

 

「当然、押しかけてくるでしょう。どういうことかと問いただしに。そこでぶちかますわけですよ。『何者かの介入があり、ブルーコスモス末端の制御ができなくなっている』と。そして、『その責任を取ることも考えている』とね」

 

 マティスの暗躍に気づいた……わけではなさそうだ。はったりか。恐らくはブルーコスモス内で煽っている連中、ジブリールあたりを生け贄にする腹だろう。同時に今の立場から退くことを匂わせ、支援している者たちの危機感を煽る、と。

 オーブに接近すると思わせるだけで、色々勘ぐる者は出てくるだろう。周囲の判断力を低下させ、状況を自分の思うとおりに動かそうと画策する。ふむ、思った以上に策士だな。

 だが……。

 

「しかしそのやり方では、ブルーコスモスの勢力を低下させることにもなる。貴方も本気で退陣しようというわけではないだろう?」

 

 このやり方だと、ブルーコスモスの内紛は確実に起こる。これを機にアズラエルは自分の意に従わない者を追い落とす、あるいは処理するつもりなんだろうが、その結果ブルーコスモスの勢力は弱まる。これまでと同じような影響力を維持できるとは思えなかった。

 そう考えていたらば。

 

「いえ、退陣は本気で考えています」

「……どういうことだ? ブルーコスモスは貴方の一族が大きく関わっている。政財界にも深く食い込んでいるはず。簡単に立場を捨てられるような物ではあるまい」

 

 嫌になって全部投げ出し妻子と共に隠遁する。そう言ったことをやり出しかねない状況にはあるが、まだその段階ではないだろう。どういうつもりだ?

 

「多少の犠牲を払ってでも組織を整理する必要があるのは当然ですが、その責任を取らねばならない立場に私はいます。状況によっては盟主を退くのも選択肢に入るでしょう。……というのは表向きの理由でしてね」

「ほう?」

「正直、今のブルーコスモスはイメージが悪くなりすぎている。大西洋連邦内ならまだしも、中立国での行いが致命的すぎます。私は中立国自体は取り込むべきだと考えていましたから、むしろ末端の行動は邪魔でしかありません。彼らの行動で中立国に圧力をかけていける、などと考えているのは先の読めない者ですね。どちらにしろ害にしかならない。これらを排除できず組織の立て直しを図れないようなら、一度解体するのも手かと」

「なるほど、()()()()()()()()()()()ことも視野に入れているわけか。使えそうな人間は引き抜いて」

 

 大胆な判断だ。だが分からないでもない。ブルーコスモスのような組織に出資しているような人間は、その組織が使えないと分かった途端距離を置こうとするだろう。そして別によりよい組織があればそれに乗り換えることを躊躇わない。要は何でも良いのだ。それが『都合よく利用でき、かつ己の正義を満足させる物』であれば。

 恐らくはすでに国防企業連合や軍産複合体(ロゴス)には働きかけている。自分の会社(アズラエルグループ)も手を入れ始めているのだろう。ブルーコスモスの矯正ができなければ……と言うつもりらしいな。

 いやはや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、よくもまあここまで大鉈を振るう気になる物だ。いやだからこそか。原作で彼の家族関係ははっきりしなかったが、こっちではかなり状況が違っているらしい。でなければブルーコスモスの盟主という立場を投げ捨てる覚悟など持つものか。こういう部分は好感が持てないでもないがね。演技かも知れないけれど。

 まあ、もうちょっと付き合ってやるか。

 

「そこまで私に明かすのは、少々サービスが過ぎるな。何を期待している?」

「いえいえ、こちらの事情もしっかり説明しておくのは、誠意という物ですよ。先に言ったとおり、私はオーブと敵対する意思は今のところありません。ですのでもしオーブにちょっかいをかける、ブルーコスモスを名乗る者がいるとすれば、それは『名を騙る偽物』でしょう。お好きに処理していただければ」

 

 おいおいぶん投げやがったぞこの男。先に警戒させて、結果的に妻子の周辺の安全を図ろうって腹なんだろうが。 

 

「正直今語った諸々のおかげで、オーブを敵に回している暇はないと言ったところでして。いい加減今の戦争も、落とし所を探る頃合いですし」

「意外だな。貴方はコーディネイターを滅ぼしたいほど憎んでいる物と思ったが」

「ええ、憎んでいますよ。特にプラントのコーディネイターは絶滅してしまえと思うくらいには。……ですがね、それでは()()()()()()()()()()。個人的な感情はともかく、商売人としては許しがたいことです。連中には是が非でも損失を補填してもらわねばなりません。はらわたが煮えくり返るようですが、滅ぼすわけにはいかないのですよ」

 

 ふむ、原作よりはまだ商人としての損得勘定が勝っているということか。プラントの持つ技術力、生産力を丸ごと失うのは大損だという認識があると見た。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()開戦が早まり、我々は後手に回ってきました。もう後れをとるわけにはいかない。そのためにも大西洋連邦内……いえ、連合内の不安要素は排除しておきたいところです」

 

 血のバレンタインは自分の思惑ではなかった、そう主張しているが、それはあまり信用できんな。どちらかといえば、核攻撃でおとなしくなると思ったら手痛い反撃(ニュートロンジャマー)食らわせてきて計算が狂った、といった方がすんなり納得がいく。話半分、と思っておこうか。

 いずれにせよ、これまでとは方針を大幅に変えることには違いなく、そしてそれは全て妻子を守るためであろう。そのためにオーブを利用する腹だ。こちらとしてはアズラエルの弱みを握られるが、妻子に何かあれば即座に敵に回る。この話を受けなくても同じ事。積極的に攻勢に出はしないだろうが、敵になることには違いない。

 さて損か得か。俺の判断は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この話、受けるべきだと俺は思う」

 

 会議の席で、俺はそう主張した。

 ざわつく首長連中と有力氏族当主。驚いている……わけではなく。

 

「今度は何を企んでいる……リョウガ殿が」

「謀る気満々といったところですな……リョウガ殿が」

「大方利用するだけ利用しようという腹なのだろう……リョウガ殿が」

 

 ある意味信頼度高ぇなおい。ちっとは別な方面で訝しがれや。

 愉快な連中の様子を見回してから、親父殿が咳払いを一つ。そして俺に問いかける。

 

「……それで、なぜその判断に至ったのか、理由を聞かせてもらおうか」

「そうだな、ムルタ・アズラエルという人間は信用できんが、この件はきっかけになり得る。オーブが介入するきっかけにな」

 

 アズラエルは言った、落とし所を探る頃合いだと。これは停戦交渉をも視野に入れていると言うことであり、それを俺に伝えたと言うことは、仲介を期待していると言うことだ。アズラエルもブルーコスモス関連に手出しをするなとは言ったが、戦争に関わるなとは言っていない。さらにはブルーコスモスの解体も視野に入れているという話。あれを交渉条件に盛り込んでくることも考えているのだろう。

 もちろんプラントを敵視することをやめるという事じゃない。使いにくくなったブルーコスモスを生け贄に、プラントの油断を誘うという腹だ。後は新設した組織で色々画策するのだろう。一石何鳥にするつもりやら。

 ……ってなことを皆に説明してやる。まあ彼の本心は、妻子を護ることが最優先だなんて言っても余計に信用できないだろうし、それだって俺の勘だ。説得力は無い。

 会談の締めくくりに、俺はこう言った。「己の築いてきた物と、家族を天秤にかけるかね」と。その言葉に、アズラエルはこう答えた。「あなたには、分からないでしょうねえ」と。ふっと気障ったらしい様子で宣った台詞だったが、俺は彼の背後に血涙を流して悔しがる? 顔が見えたような気がした。そこに本心があると俺は感じたが、それが余人に分かるとは思えん。そこら辺はおくびにも出さずに、あくまでオーブの利となる点で説得する。

 

「アズラエルがオーブと接触したという事実。そして保有するグループの株の半分をオーブに移したと言う事実。この二つだけで連合の政財界はてんやわんやになるだろう。表でも裏でも『付け入る隙』が生じる。彼は()()()()()()()()()()()()()()()()。もちろん彼が俺達を謀っているという可能性はある。だが自ら動こうと言うほどの謀りだ、動きは大きいし、嘘があれば必ずぼろが出る。そこに付け入るのは難しくない」

 

 俺がこれまでやらかしてきたことが、ここで説得力を生む。アズラエルが何か仕掛けてきたとしても乗り切れるという説得力が。俺はぐるりと会場を見回した。

 

「リスクはあれど、乗る価値はあると俺は見た。……皆の意見を聞こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、アズラエルの要望は叶えられることとなった。

 上手く利用される形となったわけだが……流石と言うべきか、転んでもただでは起きない類いの人間だったようだ。あくまで自身の本心を隠し、目的を果たすために大胆な手を打つ。そしてそれに複数の意味を持たせるなど、中々できることではない。

 甘く見ていたつもりはないが、思った以上に厄介だな。敵に回すのは上手くないが、さりとて味方にできるかどうか。妻子を出汁にするというのは悪手だな。下手をすれば虎の尻尾を踏みかねない。余計な手出しは無用と、徹底的に周知させておかねば。

 ともかく、アズラエルと繋がりを持つことができた。これをどう生かすか、手腕が問われるところだ。

 面倒が増えただけのような気がするが、虎穴に入らずんば虎児を得ず。乗り切らなければ明日は来ない。

 さて、どう悪巧むかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 水星の魔女も始まるというのに、ウルズハントはどうなってるんだよ音沙汰無いぞ。
 まさかこのままフェードアウトするんじゃあるまいな。ってSEEDの映画もどうなってんだよ説明しろ苗木ぃ! 唐突に関係ない人に無茶振りする捻れ骨子です。

 はい更新です。今回は盟主王と喋ってるだけ。色々言ってますがこの人妻子のことしか考えてないぞ。下手したら全てなげうってオーブに亡命しかねんのじゃなかろうか。それはそれで面白くなりそうだと筆者のゴーストが囁いていますがどうしよう。
 まあ相変わらずのノープランなのでどう転ぶかは分かりません。コーディネーター嫌いが治っているわけじゃありませんし、ザフトの方もどう反応するやら。
 先行き不透明なまま次回へ続きます。行き先はキーボードに聞いてくんな。(無責任)

 そんなこんなで今回はこの辺で。
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