ガンダムSEEDが始まらない。   作:捻れ骨子

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28・君たちの話も聞かないと分からない

 

 

 

 

 

 ラクス嬢の台詞に反応したのは、俺ではなく。

 

「ラクス! それは!」

 

 後ろに控えていたアスランだった。彼は泡を食ったような表情でさらに言いつのろうとするが。

「アスラン、やめろ」

「隊長、ですが! ……あっ」

 

 ハイネに咎められ、ここがどこだか思い出したようだ。「し、失礼いたしました!」と慌てて取り繕うアスランだったが……ふむ。

 

「そうだな……丁度良い。ヴェステンフルス隊長、少し提案があるのだが」

「は、なんでしょうか」

 

 軍人らしい態度は崩していないが、その目には疑念の色がある。まあ、別に大したことを企んでいるわけじゃない。

 ややあって。

 

「「「「「「………………」」」」」」

 

 場所を少々広い部屋に移して、会談は再開される。先ほどと違うのは、ヴェステンフルス隊全員が席に着いていること。彼らはなぜこうなったのかと戸惑っている様子だ。

 俺は口を開く。

 

「さて、君たちを参加させたのは他でもない。()()()()()()()()()()()()()()()()の意見も聞いておきたいと思ったからだ」

 

 その言葉に目を見開くアスランたち。その中でハイネだけが鋭い目を向けてきた。

 

「失礼、質問をよろしいでしょうか」

「良いだろう、何かね?」

「は、それでは……イザークとアスランは分かります。ですがその他のメンバーがそう言った立場の人間だとなぜお分かりに?」

 

 ミゲル(多分)が「いや俺違うんですけど!?」とでも言いたげな顔だったが無視して、俺は答えた。

 

「君たちは自分がもう少し有名人だと自覚していた方が良い。なあ『美少年天才ピアニスト』のニコル・アマルフィ君?」

 

 茶目っ気を乗せた俺の言葉に「……あっ」と何かを思い出したかのような声を上げるニコル。そうなんだよなあ。開戦前にプラントのイメージ戦略として、ネット上で才能のある人間のPVが流されまくっていたわけだが、その中にしっかりとニコルの姿があったりする。本人かわいい系なんで、かなり女性から人気だった。

 

「君の父上が評議会議員であることは知っている。ここまで来れば残りもそうなのではないかと推察できるさ。と言うより集められたのかな? 理由は推して知るべしというところだろう」

 

 最初から全部知ってるけれど、さも推理したような口ぶりで言ってやる。それでハイネは納得したようだ。

 

「慧眼ですね。出過ぎたことを口にしました」

「構わんよ。意見があれば遠慮無く言って欲しい。何しろプラントの未来がかかることになるかも知れない。君たちも他人事ではないだろう」

 

 彼らが望まない限り手出しするつもりはなかったが……今は彼らを巻き込むことがプラントへの切り口になる。そう俺は考えを改めたわけだ。うまくいくかね。

 

「では改めて。ラクス嬢の意見を聞かせていただこうか」

 

 俺が促すと、ラクス嬢は頷いて口を開く。

 

「はい。このままだと()()()()()()()()プラントは滅亡を免れない。わたくしはそう判断いたしました」

 

 ぎょっとした表情になる少年たち。涼しい顔をしているのはハイネだけだ。

 

「ラクス! 何を根拠にそんなことを言う!」

 

 真っ先に声を上げたのはアスラン。イザークも何か言いたげだったが遠慮があったのだろう。僅かに出遅れたようだ。

 感情にまかせた行動だが、俺を含めて誰も咎めない。ラクス嬢などは眉の一つも動かさず、淡々と答えた。

 

「根拠となるのはただ一つ。()()()()()()()()()()()です」

 

 そう、それが最大の問題だ。

 

「現状それを解決する手段はなく、婚姻統制などで少しでも改善しようとしていますが、効果は芳しくありません。それは将来的に人口が先細りになっていくと言うこと。その上戦争で次代を担う若い世代が多く亡くなっています。これだけでも十分危機的状況なのですよ」

「だ、だが、プラントの技術力を持ってすればその問題も解決するはずだ!」

 

 恐らくは自分でも信じ切っていないのだろう。アスランの言葉は揺らいでいるようだった。

 ラクス嬢はそれをあっさりと返す。

 

「それは()()()()()?」

「い、いつとはっきりは言えないが……」

「この問題に関して、わたくしははっきりとした進展を耳にしたことはありません。いつか、必ず。そのような言葉ばかりで具体的な方法、方策などは一向に示されない。進展がないのではと疑うのはおかしい事でしょうか?」

「む、むう……」

 

 ラクス嬢の言葉に、アスランのみならず仲間たちも唸ったり難しい顔をしたりしている。それぞれやはり思うところがあったのだろう。気づいていても指摘するのは怖かった、と言ったところだろうか。

 アスランの反論が止まったと見たラクス嬢は、さらに畳みかける。

 

「今の戦争に敗北すれば、当然これまで以上の圧政をプラントは強いられる。そうなった場合連合がこの問題に目を付けないはずがありません。人口の管理に利用するでしょうね。……たとえ勝利しても、プラントの上層部は出生率改善の方策となるナチュラルの受け入れを、決して認めることはないでしょう。大多数の市民も同様であることは明らか。いずれにせよ戦争の勝敗は問題の解決にはなり得ないのです。劇的な技術か意識の改善が無い限りは」

 

 その言葉に反論の声は生じなかった。容易に想像でき、なおかつ否定できる要素がない。鉛のような空気がザフトの若人たちの間に漂っていた。

 ……助け船、というわけではないが、少し口を挟ませて貰おうか。

 

「その問題についてだが、我が国でも独自に調査を行った事がある。何しろ我が国は他に比べてコーディネイターの人口が多いのでね。やっておくべき事は多かった。……で、その調査過程で色々分かったことがある」

 

 ナチュラルとコーディネイターが共存するオーブ。軋轢を減らすためにも『双方に大した差は無い』という証明が要った。ゆえに協力者を募り色々と調べさせて貰ったわけだが。

 

「結論から言うと、コーディネイターの能力が高いほど、一部の感染症やアレルギーに関わる免疫力などの身体的機能が極端に低くなる傾向にあると言うことが分かった。……その中には、()()()()も含まれる」

 

 実はこの結果、調査グループはある程度予想していたようだ。彼らはコーディネート技術の『ある限界』を仮定しており、その証明のために協力したという経緯がある。そして、それはある程度分析が進んでいる。

 

「今の段階ではまだ仮説を検証している段階だが……その原因については、大方目処が立っている。聞いておくかね?」

「差し支えなければ、ぜひ」

 

 戸惑うアスランたちを尻目に、ラクス嬢が食いついた。まあそう来るだろうなと思いつつ、俺は話を続けた。

 

「原因として考えられているのは、『遺伝子情報の偏り』だ。コーディネイター技術とは遺伝子を効果的に組み換えると言うだけで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どこか突出した能力を得るよう手を入れれば……必然的に()()()()()()()()()()()。そう言う理屈らしい」

 

 俺の前世の時代でも遺伝子組み換えという技術はあったが、残念ながらそこまで詳しくはない。しかしながらこの時代のコーディネイター技術という物は()()()()()()()()()()()()()()()ようだ。能力のいかんに関わらず、全体的に生殖能力が低下しているところから、それが窺える。

 ……なんか意図的な物を感じずにはいられないがひとまずおいておこう。ともかく現状では劇的な改善策はないと言っても良い。

 ラクス嬢は、それを理解したようだ。

 

「コーディネイターとしての強さは、生物としての弱さと引き換えにした物。そう言うことですのね」

「それがはっきりするにはまだ膨大な研究、検証が必要となるがね。そのためにもプラントと協力体制を築きたいところだ。それは君たちプラントの民にとっても益となる。そうではないか?」

「わたくし個人としては是非とも……と言いたいところですが」

「そう簡単にはいくまい。何よりプラント上層部がこの事実を認めるとは思えんね」

 

 いくら正確なデータや証明を示しても、虚偽だと取り合わないのが目に見える。それもあって先にラクス嬢たちに話しておこうと思ったわけだ。

 

「出生率の問題を解決するのに手っ取り早いのは、プラントがナチュラルを受け入れることだ。が、ラクス嬢が先に言ったとおり、勝っても負けてもそれが受け入れられるとは思えん」

「随分とプラントのことを気にかけてくださるようで」

「こちらとしてもプラントの技術や宇宙のみで生成可能な素材は惜しい。プラントにはできれば滅んで欲しくないと言うのが本音だ。何とか和平、最低でも停戦に持っていき、徐々にでも意識改革していって欲しいところなんだが」

「『できれば』、ですのね」

「ああ。『できれば』だ」

 

 ラクス嬢は正確に俺の意図を酌んだようだ。つまりぶっちゃけた話、最悪の場合プラントが滅んでしまっても構わないと()()()()考えている。そういう事である。もっともそうなると待っているのは連合三国の潰し合いなので、より酷いことになるのが目に見えているわけで。できれば迎えたくない結末だった。

 望ましいのはプラントも弱体化した状態で国家となり、休戦状態でバランスを保つことなんだが……この世界じゃ絶対上手くいかねえってのは分かってるからなあ。火種はあちこちにありまくりやがるし。いっその事裏で火種を潰しまくる組織でも作っちゃろかい。

 ……おっと、思考がそれた。

 

「まあ要は、君たちにもプラント上層部を説得する一助となって欲しい、と言うことなんだ。とは言っても簡単に納得できる物でもないと思うが、どうかな?」

 

 アスランたちの方を見て言う。戸惑い顔を見合わせる少年たちの中、()()()()違う態度を取る者がいる。

 一人はハイネ。余裕というか、部下の反応とこちらの様子を窺っているようだ。黙って事の成り行きを見守っている。

 そしてもう一人は――

 

「発言を、よろしいでしょうか?」

 

 意を決したように声を上げたのはイザークである。「良いだろう」と俺は彼を促した。

 

「ありがとうございます。……補佐官殿は、プラントをできれば滅ぼしたくないとおっしゃりましたが、それは、同情からの物という意味も含まれているのでしょうか」

 

 ほう、俺がプラントに哀れみのような感情を持っていると、そう思われたか。プライドの高いイザークらしいと言えばらしいのか? そう聞こえたのなら悪いが、生憎そこまで上から目線で考えられんのだよ。

 

「少々誤解させてしまったかも知れないな。先も言ったとおり損得勘定で考えてプラントの存続を望んでいるというのはオーブの多勢だが、私個人としては()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「脅威、ですか?」

 

 目を丸くするイザークに、俺は頷いてみせる。まあこれまでの俺のやり方から考えればにわかには信じられんだろうが。

 

「私がプラントの立場であれば、地球を滅ぼすプランの一つや二つ思いつく。ましてや追い詰められてなりふり構わないとなれば、それこそ死なば諸共と無理を押し通しもするだろう。そうなればたとえ止められたとしても甚大な被害は免れん。あるいは本当に人類が滅んでしまうかもな。……そう考えると、とてもではないが滅ぼしてやろうとは思えん。ご機嫌取りとまでは行かないが、友好的な関係を築いておこうと考えるのはおかしな事かね?」

 

 俺がプラントの弱体化を望んでいても滅ぼすことまで考えていないのは、こういう理由である。何しろ原作でもジェネシス作ってブッパしでかした連中だ。あそこまでしなくとも某赤い彗星の真似して隕石をいくつか地球に落とせば事足りる。で、やけになったら絶対やらかすだろあいつら。そういった逆の意味での信頼があった。

 ……って、なに俺の発言に引いてるのこの子ら。

 

「サクッと地球滅ぼすプラン出てくるとか言い出したぞこの人!?」

「そりゃあ、俺達も連合と戦争してるけどさあ、滅ぼすとかそういうのはちょっと……」

「た、タカ派の人たちもそこまで考えません……よねえ?」

「………………ウンチチウエモソンナコトカンガエナイトオモウヨ」

「アスランなんで明後日の方見て棒読みで言うの」

 

 

 なんかごじゃごしゃ失礼なこといってないか? そこまでおかしな事言った覚えはないが。(←後の歴史も知ってるせいか感覚がおかしい)

 どん引いている仲間たちには目もくれず考え込むイザーク。ややあって彼は再び口を開いた。

 

「……自分は、補佐官殿のお考えもある程度理解できます。我々ザフトは今までに無い奇策、新兵器を用いて連合と互角の戦いを繰り広げることができた。それだけでも確かに脅威と捉えることができるでしょう」

 

 感情を抑えたのか、理性的な物言いだ。イザークのキャラからすると、今度は()()()()()ように見える。

 

「しかしながら、その原動力は血のバレンタインとそれ以前から続く圧政に対する憎悪。そして自分たちが滅ぼされるかも知れない、滅ぼされてたまるかという恐怖。それらがモチベーションとなってザフトを、プラントを動かしていると自分は感じました」

 

 あっれぇ? なんかものすごく理性的なキャラになってきてるんですけれど!? アスランたちは唖然として、見守っているハイネは感心したような様子を見せているが、俺は内心驚きまくりなんですけど。(←顔に出さないように努力してるので表面上は変わってない)

 

「自分は地球に来てから様々な経験をさせて貰いました。地球の人間にも、話の分かる者はいる。打算やなにやらもあるでしょうが、和平を模索することも不可能ではないと思います。……ですが、プラントは積もりに積もった憎悪と恐怖を捨て去り戦いをやめることができるのか。自分はそれを危惧します」

 

 ……ああなるほど。原作と違ってストライク(キラ)に憎悪を募らせたまま地球に降りたわけじゃないから、もう少し落ち着いて周りを見ることができるようになって、視野が広がったのか。これはうれしい誤算……になってくれると良いなあ。

 

「ふむ。いざ和平に動き出そうとしても、国民の感情がそれについてくるかどうかは別問題。反対と非難の声は確実に上がり、下手をすればプラントは分裂する。そう見ているのだね?」

「は、その通りです。最低でも自分は、母を説得できる自信がありません」

「なるほどな。……イザーク・ジュール君はこのような意見だが、他の者はどうかね?」

 

 そう他の少年たちに話を振ってみると。

 

「え? うぇっ!? ……あ、その俺、じゃなかった自分の親父、父は急進派ですんで、和平に対してはいい顔しないんじゃないかなと……思います」(←突然話を振られて動揺するディアッカ)

「その、自分のところも無理っぽいです。自分の父は開戦当初からパトリック氏の側近ですんで……」(←気まずそうなラスティ)

「……僕の父はどちらかと言えば穏健派ですが、急進派の意見に同調するところもあります。諸手を挙げて賛成とはいかないでしょうね」(←落ち着いてきたというか開き直り気味のニコル)

「すんません一般人ですホントすんません……」(←すごく肩身の狭いミゲル)

 

 それぞれの意見はこんなところだった。しかし素直に答えるもんだね。まあザフトは正式な軍隊じゃなく義勇兵だから、そう言うところは緩いのだろうが。

 仲間の意見を聞いたアスランは複雑な表情を見せた後、おずおずと口を開く。

 

「自分は……血のバレンタインで、母を失いました。それを忘れることはできない。イザークと共に地球で過ごした間、怒りや憎しみは薄れたと思いますが、心のどこかにこびりついている。父は……いや、あの惨劇で身内を失った者たちも同様に憎しみを抱いている。そして地球の実情を知らない分、彼らの憎悪が薄れることはないと思います」

 

 要するに説得は難しいと、そう考えているようだ。地球に来て、現地人と接触し彼ら自身は大分考え方も変わっているようだが、上層部へ働きかけるのは二の足を踏むところもあるか。

 大方予想通りではあるが、さて。

 

「君たちの意見は分かった。……それを踏まえてラクス嬢。貴女はどうする?」

 

 黙ってアスランたちの意見を聞いていたラクス嬢は穏やかに微笑んだままで。

 

「はい、皆様の話を聞いて、やはりブルーコスモスの方々と話をするべきだと思います。当然これはわたくしの独断となりますが」

 

 やっぱりか。果たしてどういう判断を下したのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ボブ、生きろ。もうお前だけが希望なんだ。
 2期で例のガンダムに乗ってくれることを希望捻れ骨子です。

 はい今年最後の更新です。リョウガさんMCの十代しゃべり場になりましたが、アスランと愉快な仲間たちの変化もそろそろ見せておかないとなあ言うことでこんなことに。
 特にイザーク。なに良い子になってんだよ貴様。(理不尽)まあ原作みたく苛ついてなきゃ単なるツンデレですからねこの子。地球で苦労して丸くなった物と思ってください。
 そしてラクス嬢は揺るがない。はたして捻れ骨子はこのラスボスをどう対処するのか。次回以降の展開をお楽しみに。考えてないけど。(おい)

 そんなこんなで今回はこの辺で。
 皆様、良いお年をお迎えください。
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