重い静寂。それを破ったのは、これまで様子見に徹していたハイネだった。
「理由を聞かせていただけますか。ラクス『様』」
あえての敬称か。そういう立場の人間だと自覚させるためと見た。果たしてラクス嬢は揺るぐ様子もなく。
「わたくしは、
「ブルーコスモスに、でしょうか」
「それもあります。ブルーコスモスの方にわたくしの考えとプラントの現状を。そしてプラントにはブルーコスモスの考えと、地球の現状を」
馬鹿正直に伝書鳩をやる……つもりではないようだが?
「ただ現状を知らしめるだけではありません。今自分たちが立っている世界がどれほど脆い物なのか、プラントに、地球に、
ふん、自身がこれまで得た情報を、余すところなくたたきつけるつもりか。プラント首脳部に対しても、だな。だが。
「貴女のやり方だと、それこそプラントもブルーコスモスも内紛が起こるぞ? 冷静になる者もいるだろうが、おのれの正義に酔っているものはそう簡単には鎮火せん。むしろ余計に燃えさかる。冷水をかけるつもりなのかも知れんが、火に油を注ぐようなものだ」
口を挟む。そこらあたりをどう考えているか理解しなければ、協力はできんからな。
「そこで冷静になれないのであれば、そも国や組織を運営するのに向いていないのではないでしょうか。そのような人間について行くのは考え物だと、わたくしは考えますわ」
「クーデターでも考えている、と?」
俺の問いにぎょっとした表情を見せる少年たち。しかしラクス嬢は首を振った。
「いえ。このまま戦いを続けるのは無理があると、訴え続けるのが先決。首脳陣が信用ならぬとなれば、まずは正当な手段で改善を図るべきでしょう。前線の兵にも厭戦感を持ち始めた方は多く、プラント市民も同様です。そのような方々の声を集めれば、無視できないほどの大きさとなる。ぶつかり合う前に言葉を尽くす。時間は無いかも知れませんが、だからと言って対話を諦めたくはないのです」
「いよいよ言葉が通じぬとなれば?」
「そのときは不本意ながら、起つしかないでしょう。どれだけの人間が賛同してくださるかは分かりませんが」
ただきれい事を述べているだけでもない、か。
「望んだ立場ではありませんが、それでもわたくしはある程度働きかけを行える立場にあります。それ以前に一人のプラント市民として、
思いつくことを全部やる、そういった覚悟か。原作とは状況が違うが、やはりラクス・クラインということだな。そして原作よりも状況は絶望的ではない。ザフトはまだ戦力を維持しているし、パトリック・ザラもまだあっちに行くほど追い込まれてはいない。ラクス嬢からなら話を持って行ける可能性はある。
それに……。
「その話、
ラクス嬢の自信……というか決断の後押しとなったのはそれだろう。バルトフェルドと対話して口説き落とし、賛同させた。原作でも彼はラクス嬢と行動を共にしたが、似たようなことが起こったようだ。そして現状ではバルトフェルド隊は健在であり、その多くが彼について行くことだろう。あるいは3隻同盟よりも規模の大きい勢力になることもあり得る。
もしバルトフェルドがラクス嬢の行動に難色を示していたら、全力で止めようとするだろうというところから予測したわけだが、ラクス嬢は少し驚いた様子で応えた。
「……よくお分かりですね。ええ、彼はわたくしの話に賛同してくださいました。元から地球での戦いに行き詰まりを感じておられたようです」
「だろうな。バルトフェルド隊長は地球で戦ってきた時間も長く、また現地との融和に尽力してきた人物だ。ザフトの中では戦況を理解している数少ない人間でもある。穏当に戦いを止める手段があれば、協力したいのではないかね」
まあ思うところがなければラクス嬢に賛同はせんわな。ともかくこれでラクス嬢はある程度の後ろ盾を得たことになる。他にはどれほどの後援を得ているかは分からないが、原作並みの勢力はあると見た方が良いな。最低でも時間稼ぎにはなりそうだ。
と、話を聞いていたハイネが、真剣な表情で口を開く。
「……自分はラクス様の判断を尊重し、協力したいと思っています。どれほど力になれるか分かりませんが」
「隊長!?」
驚いてばかりだなアスラン。ここまで来ればハイネがこう言い出すのは予想ができたんじゃないか?(←無茶振り)
「自分はザフトの兵です。であるならばラクス様のおっしゃる通り、プラントの益になるよう行動するのが本分。……などと言ってみましたが、戦力があるうちに停戦し、力を蓄えておければという打算もあります。このまま戦いを続けていればプラントが追い込まれるのは明白。それこそ補佐官のおっしゃるように自暴自棄になる可能性だってある。諸共滅びるというのは願い下げですから」
「……隊長、それはプラント上層部に弓引く覚悟があると言うことでしょうか」
イザークが静かに問いかける。ハイネは頷いた。
「場合によってはな。お前たちもこのままで良いとは思っていないだろう? ……とはいえこれは無理強いできる類いの話じゃない。賛同できないというのであれば、早急にプラントへ帰還できるよう手配しよう。もちろん身の安全は保証させて貰うし、上層部に報告してくれても構わない。よろしいですねラクス様」
「ええ、賛同していただけないなら敵、と言うわけではありませんから。そもブルーコスモスの方と対面できるかどうかもまだ分からない、霞を掴むような話ですし」
ハイネも思うところがあったのだろう。腹を据えてラクス嬢につくつもりのようだ。さて他の連中はどうするかな?
「自分にも協力させてください。最低でもプラントが行った事については我々に責任がある。そしてプラント市民を護る義務もある。ラクス様の判断は、プラントの未来につながると自分は思いますので」
真っ先に決断を下したのはイザークだった。多分すでに腹の中は決まっていたのだろう。そして決めたことは曲げない男だ。ここは予想範囲内。
「僕もお手伝いします。地球にも一部ですが僕のピアノを喜んでくれる人たちがいました。そんな人たちと戦いたくない。これは僕の我が儘ですが……それが叶えられるのであれば、賭けてみたいと思うんです」
続いたのは意外にもニコルだ。本質的には穏やかな人間だからか。どっかの熱気な人じゃないけれど音楽でわかり合うところがあったのかも知れん。
「……俺は、いや自分は、ラクス様のやろうとしていることが間違っているとは思いません。ですがプラントに刃を向ける気もない。ブルーコスモスと対話し、その結果を伝えプラント上層部を説得するところまでは協力します。しかし事を荒立てるのであれば、プラントにつきます」
神妙な顔で告げるディアッカ。そして。
「自分もディアッカと同じです。確かに和平に向かうのであればそれに越したことはないでしょうけれど、それが無理だからと言って武力に訴えるのも、違うんじゃないかと。……戦争やってて今更何を、と思われるかも知れませんが」
ラスティも同意見のようだ。間違っているからと言って仲間をぶん殴るのは気が引ける、と言うことだな。そういう考え方も理解は出来る。
「え~その、自分は会談の様子を見てから決めるって事で、保留で良いですか?」
なんか卑屈になってないか黄昏の魔弾。まあ迷うのも分かるわ。ラクス嬢の行動が正解というわけじゃないからな。やもすれば全てがご破算になる危険だってある。ただ俺を含めてほとんどの人間が止める気はないようだ。
残るは……。
「皆さんのお話は分かりました。もちろん皆さんの為したいようになさってくだされば。上手くいくなどとはとても言えない話なのですし。……それで、アスランはどうなさいます?」
ラクス嬢の問いに、渋い顔をしたままだったアスランは、重々しく口を開いた。
「……ラクス。君のやろうとしていることは正しいのかも知れない。だがまかり間違えば、状況は劇的に悪化するだろう。それが分かっているのか?」
「そうであっても賭けなければならない。もうそのような領域に来ているとわたくしは考えています」
どきっぱりと応えるラクス嬢。もうてこでも動かせない意思だ。
しばらく考え込んでから、アスランは再び口を開く。
「……分かった。君に協力しよう。だが……」
ぎっ、と鋭い目をラクス嬢に向ける。
「君がプラントに害を為すとなれば、俺が背中から撃つ。そのつもりでいてくれ」
苦渋の上の判断に聞こえるけれど、アスランだからなあ。結局有耶無耶になりそうな気がするんだが、それを口に出さないくらいの分別は俺にもある。
ため息を吐いて仕方が無いと言った風を装いつつ、俺は言う。
「話は纏まったようだな。では私は伝を使ってブルーコスモスに連絡を取ってみよう。だが上手く向こうが話に乗ってくれるか分からない。初手からつまずくかも知れないが、それは覚悟しておいて欲しい」
「無論。こちらは無理を言っている身ですので。お任せいたしますわ」
連絡取るだけならブルコスの盟主に直接取れるんだけどね。だが会談を受けてくれるかどうかは本当に分からん。今のアズラエルなら穏健派に話を通してくれそうな気がするが、やってみなければどう転ぶやら。
いずれにせよこの行動で状況が大きく動く予感がする。それが吉と出るか凶と出るか。……この世界だからどっちに転んでも『狂』としか出ないような気がせんでもないが、やらないで状況がさらに悪化するよりはマシ……と思いたい。
俺は一度話を終わらせてからラクス嬢一行を宿泊施設へ送り届けるよう命じ、次の行動へと移った。
もちろん、アズラエルに連絡を取るのである。
「…………いやもう、驚くやら呆れるやら」
「そうだろうな。私も同じだよ」
一通り話を聞いたアズラエルの反応は、絶句からだった。まあまともな神経をしていれば思いつかない発想である。そうなるのは当然だろう。
「テロリストの片棒担ぐ分際で、そう言いたくなるところですが。……ふん、穏健派は食いつくでしょうね。自分たちが戦争を止める一助となった、そういう成果が得られれば、勢力の拡大にもつながる」
歯に衣着せぬ物言いだ。アズラエルの立場からすればこういう意見にもなる。
「これが停戦のきっかけになるかどうかは分からんがね。むしろ話がややこしくなることもありうる。まあ穏健派とならば双方戦いを止めたい立場だ。妥協点を見いだせるかも知れんが……
対話の結果を自分の勢力に伝え、そこから説得できるかどうか。何度も言うが内部分裂から内乱ということも考えられる話だ。余計に話がぐだぐだになるかも知れなかった。
普通に考えれば。
「そうですね。会談を行うだけでも穏健派はある程度の勢力拡大が可能……かも知れませんが、今の流れを覆すほどの力は持てないでしょう。ブルーコスモスから離反し、反戦運動と合流すればまだしも芽が……ふむ」
話の途中でアズラエルは何かを考え始めた。この話を利用して上手く立ち回ることを企むとは思っていたが、早速思案しだしたか。
ややあって、アズラエルはにやりと笑みを浮かべた。
「……この話、
そう来たか。予想していたパターンの一つだ。
大体考えていることは分かるが、一応問うてみる。
「危険だと思うが、どういうつもりかな?」
「なに、『一石二鳥の策』を考えましてね。場合によっては二鳥にも三鳥にもなりうる」
「……
「ご名答。僕の意に反する連中を釣るには丁度良い。当然貴方、いえオーブには多大なるご協力をしていただくことになりますが」
「こちらとしても協力を惜しむつもりはない。対策も考えているしな。……しかし貴方が話に加わると、ブルーコスモスの総意と取られてしまうかも知れんが」
「そう思わせれば都合が良い場合もありますよ。それに、ラクス・クラインという女性。何を考えているか僕も興味がある」
決して好意的なものではない興味だろうな。対談に参加することで色々と仕込む気満々だ。自ら囮になるだけではない、
二鳥三鳥とはよく言った物だ。恐らくは
「貴方の要望は分かった。場所はこちらで用意させて貰う。それとマルキオ導師を立ち会いに加えさせて貰うが、構わないな?」
「無論構いません。彼は傑物と聞いています。そちらにも興味はある」
「もしかしたら気が合うかも知れんよ。あるいは徹底的にそりが合わないかも知れんが」
「それは楽しみだ、と言っておきましょう」
互いに腹を探り合いながら、話を纏めていく。簡単には覆せない現状を覆す一手。この会談がそうなるとは限らない。だがこの会談自体を利用することはできる。俺はそれを目論んでいるし、アズラエルも同様だ。
会談を状況打開の場と考えているラクス嬢には悪いが……いや、彼女も中々強かだ、状況が変わればそれに対応して動くだろう。それくらいはやってのける。
一筋縄ではいかないだろうこの会談が、どのような影響を及ぼすか。俺は様々な展開を予測しながら、対策を練っていく。
RGのHi-νガンダムを仮組みしてみた。
もうこれでいいんじゃね? ってなった。いや最近のキットは出来が良いね。とりあえず積みプラが一つ片付いたと言うことで。プライドなんぞ犬に食わせろ捻れ骨子です。
さあて遅くなりましたが更新です。ほっとくとキャラが勝手にしゃべくりまくろうとするのは何とかなりませんかね。荒ぶる連中を脳内で押さえ込むのに一苦労しました。そのうち乗っ取られるかも知れません。(おいおい)
そして水星の魔女の話書きたくなる欲が邪魔をします。ボブ活躍させてえ。エラン4号きゅん助けてえ。シャディク曇らせてえ。だがここで負けてしまうとただでさえ進まない話がもっと進まなくなるので必死に堪えてます。止まるんじゃねえぞ。
ともかくSEED相当の話が終わるまでは何とか頑張りたいと思います。つー事で今回はこの辺で。