ガンダムSEEDが始まらない。   作:捻れ骨子

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30・とんとん拍子にはいかない

 

 

 

 

 

 忙しい。超忙しい。

 言うまでも無いがラクス嬢とブルーコスモス穏健派(アズラエル付き)の会談が決まってしまったからだ。その場を用意する羽目になってしまったので色々と準備しなければならないことが多い。

 加えて各方面への対応だ。情報戦は基本。たとえ友好的な相手であっても全ての情報を開示するわけには行かないから、扱いは慎重にならざるを得ない。それでいて時間には限りがあるから急ぐ必要もある。つまりてんてこ舞いだ。

 ……で、その上に普段の仕事もしなきゃならないわけで。

 

「終わらないよう仕事がいつまでも終わらないよう……」

「殺して……いっそ殺して……」

 

 目のハイライトが消えて幽鬼のごとき雰囲気を纏った職員たちが這いずるように動き回り仕事をこなしていく。総合庁舎は地獄であった。

 

「その地獄を生みだした人が何言ってやがりますか」

「ここでやっとかないと後に響く。反省はしてるが後悔はしていない」

 

 目の下に隈ができてるチヒロが言って俺が答える。多分俺も目の下に隈ができてるのだろう。まあ寝ないと怒られるから皆よりはマシだ。(←そもそも仕事の速度が速いので他の数倍仕事してる人)

 

「それはそれとして、商会の方は滞りなく。根回しの方は政府のアプローチとあわせると二度手間になりましたが」

 

 中立国や関連勢力に対する根回しを、オーブ本国と商会双方から行う。一見確かに二度手間に思えるが、建前上二つは別の組織であると見せて置かねばならない。理解している者にも()()()()()()()()()()()と匂わせるのも兼ねている。本当に一枚岩ではないのかそれとも、などと考えて貰おう。こう言った細かい仕掛けもやっておくのとおかないのでは違うからな。面倒でも一手間、だ。

 

「よろしい。特にクーロンズポート周辺の情報管制には注意させろ。今回はわざと情報を流出させるのは無しだ」

「まーた悪いこと企んで。今度はなにやらかすつもりですか」

「……壁ドン?」

「いやそっちの方向違くてってかやめてくださいおねがいします」

「冗談だから一瞬で距離取るな」

 

 海老のようにすごい速度で後ずさるチヒロ。単純にからかってるわけじゃない。最近反撃(顎クイ)したら、こいつ所々でポンコツ(具体的には勝手に妄想してイヤンイヤンとかくねる)になるようになってしまったので、こうして時々我に返してやってるわけだ。姫さんにそそのかされたせいもあって意識してるんだろうが、仕事はきちんとして貰わないと困る。

 

「諸々一段落ついたら構ってやるからしゃんとしろしゃんと」

「構って欲しいような言い方ァ!」

「なんだ構って欲しくないのか?」

「いやそういうことじゃなくてですね……なんかどんどん質悪くなってきてませんかこの人」

 

 はっはっはそっち方面で押されてばっかだからいい加減ストレスたまってるぞ俺ァ。……そんな本音はおいといて、冗談抜きでそろそろ女関係のこと真面目に考えんとなあ。いつまでもこのままってわけにもいかん。体面が悪いどころじゃない。

 まあ状況によってはもっと体面が悪くなるんですがねー! まずは姫さんの暴走をなんとかするところからだ。でなきゃマジでハーレム形成することになる。確かにロマンだろうが身が持つかこん畜生。

 それもこれもこれからの困難を片付けてから、だ。

 

「冗談はさておいてだ。今回は姫さんの時みたいな事を起こすわけにはいかん。あん時だって姫さんに戦闘力が無ければ危なかった。そしてラクス嬢とアズラエル氏は戦闘力皆無(のはず)。同じような展開は期待できない上、五体満足で返さにゃならん。絶対に戦闘に巻き込めない」

「下手をすればザフトとブルーコスモスが同時に敵に回りますからねえ。クーロンズポートでの戦闘は避けなければ」

 

 立ち直ったチヒロはそう言うが。

 

「いや戦闘は起こるぞ」

「……は?」

「起こるぞ」

 

 当然の話だ。ジブリールが敵に回るのであれば、ヤツは絶対に過剰なまでの戦力を投入してくる。加えてマティスだ。確かあの女は特殊部隊も率いていたはず。どんな手を使ってでも潜入させようとしてくるだろう。つまりクーロンズポートでの戦闘は前提条件となる。

 

「いやそれ危険でしょう!? ラクス嬢とアズラエル氏巻き込まれること必然でしょう!?」

 

 泡を食ったように言うチヒロ。ふむ、まだまだだな。俺がこういうときにどう考えるか読み切れてないと見える。

 

「なに策はある。要するにだな……」

 

 説明してやった。話を聞くうちにチヒロの目は丸くなり、次いで眉を寄せ、最後には頭痛を堪えるように額に手を当てていた。

 

「……やっぱり貴方大魔王か何かでしょう。何ですかそのえげつない策は」

「はん、人が折角和平の糸口掴もうかってところを邪魔する連中になんぞ手加減してやるものか。遠慮無く全力で叩き潰してやるさ」

「うわあ、なんて言うか、うわあ……」

 

 なぜそこで引く。可愛いもんだぞ俺が企んでる程度の策なんぞ。人類滅亡ビーム(ジェネシス)コーディー絶対殺すビーム(レクイエム)よりかは遙かにまともだろう。

 そう言ったわけで来たる会談に対する方針は決まった。確実に起こるであろう襲撃への対策も含めて。なぜか関係者はほとんどチヒロと同じようにドン引きしていたが。

 しかしこれは序の口、まだ始まったばかりである。いいや()()()()()()()()()。本命である会談までにどれほどのものを積み上げられるか。どれほど強固にできるか。それができて初めてスタート地点に立ったと言える。俺達の戦いはまだこれからだ……で終われたら良いよなあ。現実は非常に厳しい。

 

「あおりを受けて我々もごっつい忙しいんですけれど?」

「すまないと思っている。だが俺は謝らない」(ぺったんぺったんぺったんぺったん)

 

 しばらく後、今度はリシッツァが愚痴ってきた。馬鹿め一蓮托生だ、俺が忙しくなったら君らも忙しくなるわ。つーか逃がさん。

 

「謝らなくても良いですから時間をくださいません事? 1日96時間くらい」

「そんなことができるんなら俺がやってる。……まあそれはさておいてだ、状況はどうなってる?」(ぺったんぺったんぺったんぺったん)

「ご要望通りCSSを通じて傭兵を集めていますけれど、玉石混淆ですわね。ここからまともな人間を選抜するのは手間でしてよ?」

 

 会談に当たってオーブの戦力を回すのにも限界がある。ゆえに傭兵を集め戦力を補強することにしたのだが、リシッツァは不服のようだ。だがね。

 

「いや、選抜する必要は無い。ある程度の実績があるなら多少怪しいところがあっても構わん」(ぺったんぺったんぺったんぺったん)

「は? そんなことしたら不穏分子入りまくりじゃありません事? 情報抜かれるどころか後ろから撃たれますわよ」

「時間が惜しい、数を揃える。……()()()()()()()()()()。信用できる連中以外は当てにはしとらんよ」(ぺったんぺったんぺったんぺったん)

「傭兵を集めること自体が『仕掛け』と言うことですのね? 相変わらず性格の悪い」

 

 肩をすくめるリシッツァ。確かに内側から食い破られる危険性はあるが、それも織り込んでのことだ。もっともめぼしい面子を()()()()()()()ので、対策は取れるんだがな。

 とは言ってもそれで全ての傭兵をマークできるわけでも無し、原作知識に頼りすぎてしっぺ返しを食らうと言うこともあり得る。最悪全ての傭兵が敵に回るくらいのことは想定しておかんと。

 

「ところで……その書類、ちゃんと目を通してますの?」

 

 不意にリシッツァがジト目になって問うてきた。

 

「これもちょっとした速読の応用だ。つかちゃんと理解してないと後が怖い」(ぺったんぺった

んぺったんぺったん)

 

 そう、先ほどから響いてるのは、俺が山積みの書類に片っ端から目を通し、承認印を押している音だ。端から見るとほとんど中身も見ずにぺたぺた判子押しているように見えるだろうが、ちゃんと理解してるぞ。

 

「その証拠にほれ、これを見て見ろ」

 

 全部の書類に判子押してるわけじゃない。却下されるような書類は別口で【棄却ボックス】と書かれた段ボール箱に放り込んでいた。その中から一枚を取りだしてリシッツァに差し出す。訝しがりながらそれを受け取ったリシッツァは目を通し――

 何とも言えない表情になった。

 

「……わたくしの目がおかしくなっていなければ、これ婚姻届に見えるんですけれど。しかもイリアン嬢との」

「ああ、こういうのがあるから油断できん」

「不意打ち過ぎません事!? しかもどうやって紛れ込ませたのか……」

「協力者になりそうなのが一人いるだろうが」

 

 脳裏に浮かぶのは天真爛漫ガンギマリお姫様。リシッツァも同じ人物を思い浮かべたようで、渋い表情になる。

 

「いつの間に繋がりを持ったんでしょうかあの方」

「アズラエル氏の身内にコネ作っておいて損はないと考えたんだろうな。コネの作り方が問題だが」  

 

 まあまかり間違ってこの書類に判子押したところで不受理になるだけなんだが。それが分かってやってるのだろう。イリアン嬢のキャラをよく理解していると見える。

 

「この程度の悪戯は問題にもならん。イリアン嬢に対する適度なご機嫌取りと考えれば妥当なところだろう」

 

 俺に対するアプローチをしたと思ってフンスと胸を張るイリアン嬢の姿が目に見えるようだ。そして背後で煽っている姫さんの姿もな。で、却下されたと知ってイリアン嬢がorzるとこまでセットだ。

 本格的に邪魔にならないと分かっててやるところが質悪いよなあ、あの姫さん。

 

「ともかくこういうのを含めてあほなのは弾いているから安心しろ。最低でも君らに余計な手間は取らせん」

 

 再び書類に判子を押す作業を始める俺。リシッツァは深々とため息を吐いた。

 

「問題ないとおっしゃるのであればそれで。……全然意識していないとかそれはそれでムカつくんですけれどもぉ

 

 後半聞こえてんぞー。つか()()()()()()()言ってるだろ。この間の顎クイからこっち、リシッツァは表面上普段通りだったが、時折こんな風に小声で愚痴って恨みがましい目を向けてくることがある。実害はないので放っているが。

 だから今手を出してる暇とかないつーの。っとにもう、真面目に女性関係考えようとした端からこれだよ。まあ俺に当たってちょっとは溜飲下げられるんならそれで構わんがね。ため込みすぎて爆発するよかマシだ。

 

「諸々終わったら構ってあげるから我慢しなさい」

「構って欲しいような言い方ァ!」

「……チヒロにも同じこと言われたが、流行ってんのかそれ」

「おんなじようにぞんざいに扱ってるからですわきっと!」

「ぞんざいには扱ってないぞ。ぞんざいにとは俺が親父殿に対する時のようなことを言うんだ」

「威張って言える事じゃありませんわよそれ」

 

 処置無しとばかりに再びのため息を吐き出すリシッツァ。愚痴りながらでも良いから今は仕事をして欲しい。ホント頼むから。

 修羅場は続く。果てしない道のようにも思えるが、少しずつでも進んでいることには違いない。書類を片付け、方々に連絡を取り、根回しをして頭を下げてなだめすかして恫喝して時には拳で語り股間を襲撃する。一つ一つ、石を積み上げて城を築くように準備を整え策を練り上げ仕込みをしていく。

 とんとん拍子には行かない。しかし進まねば道は切り開けない物だ。ゆえに俺達は進み続ける。僅かに見える明光を頼りに。

 ……最終回ぽいがまだまだ終わりは見えないんだよちくしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 またこれから忙しくなる季節がやってまいりました。そして早々にGWの仕事が決定。
 神は死んだむしろ俺がヤりに行く。いやGWでも普通に働いている人はいるんですがそれはそれなんだよわかれよ捻れ骨子です。

 はい愚痴から始まりましたが更新です。今回何やら色々仕込んでる話。何を仕込んでるのかは次回以降に明らかになると思います。まあ前代未聞の会談なんかやるから忙しくなるよね、と。戦争やって無くてもCE地獄じゃねえか。最後の台詞は筆者の魂の叫びでもあったりして。
 いよいよ次回から会談となるわけですが、当然一筋縄では終わりません。一波乱も二波乱もあるはずです。さあ酷い目に遭うのは誰だ。

 そう言ったわけで今回はこの辺で。
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