クーロンズポート。普段は官民問わず――と言うか金を払う者なら大概は使用可能なギガフロート宇宙港は、現在厳しく立ち入りを制限され半ば閉鎖状態となっている。
ジャンク屋協会のメガフロートが稼働を始めたからできる荒技だ。民間の便は全てそちらで請け負って貰い、公的な物はオーブの
そして、現在クーロンズポートはオーブの領海内にあった。その周囲にはオーブ海軍艦隊が展開していたりする。名目上は大規模演習のためであるが、あからさまに何を目的としているか丸わかりだろう。
「ここまでしているのに来ますかねぇ?」
「来るぞ。絶対に自分が勝てるという自信があるからな」
港で海原を見つめる俺の傍らにはチヒロとリシッツァ。揃って『客』が到着するのを待ち構えている。
アズラエルからの情報によると、ジブリールは軍部の過激派を焚き付け戦力を集めたらしい。後期GAT-Xシリーズはアズラエルの派閥が押さえているが、データを盗み出してコピー品くらいは用意しているだろう。あるいはブーステッドマンをも繰り出してくるかも知れない。自信を持つのも頷ける。
が、当然こちらもそれくらいは考えていた。
「向こうさんの期待通りの展開にはしてやらんさ。……傭兵の配置は?」
「ご要望通りに。海上および海中で戦闘できる方は限られておりますから、ほとんどがポート上で待機しておりますわ」
「よろしい。彼らの出番になったら大詰めだ。かなり派手になることを覚悟しておけ」
クーロンズポートの直衛を任せた傭兵たちに出番があると言うことは、ポート自体が戦場になると言うこと。そしてそれは決定事項だ。
「客が到着次第、君たちも配置に付け。状況がパターンGになったら構わず脱出を優先しろ」
「承知しました」
「心得て」
二人がそれぞれ返事をすると同時に港で動きがあった。
入港してきたのは超伝導推進の潜水艦。お客が到着したようだ。俺達は出迎えるために歩み始めた。
※ここから他者視点
超高度を飛行する偵察機からの映像。そこにはかなりブレてはいるが、サングラスをかけた金髪の男性の姿があった。
ついで送られてきた映像には、こちらもサングラスをかけたピンク髪の女性らしい姿が映し出されている。
間違いないと、ジブリールは確信を得た。
「情報の通りか。ふん、油断したな。……予定通りに作戦を開始しろ」
「は、ですが目標はオーブ領海内にあり、付近には演習の名目でオーブ艦隊が展開しておりますが」
「構わん。アズラエルとラクス・クラインさえ始末してしまえばあとは何とでもなる。それにたかだか20隻もない艦隊だ。抵抗してきたとしても突破は容易だろう」
オーブも本格的に連合と事を構えるほど馬鹿ではあるまいとたかをくくっている。それに自分が用意したのは艦だけでも40を超える。MSも集められるだけ集め投入し、その中には水中戦用の物もあった。戦力としては十二分だろう。
仮に反撃すればすればで、オーブに攻め入る理由となるという考えもあった。自分に同調しない以上、ジブリールにとって中立国は敵でしかない。これを機に目障りなオーブを叩き潰しその技術を手中に……などと、捕らぬ狸のなんとやらを目論んでいた。
「さあ、裏切りの始末、付けさせて貰おうか」
モニターの明かりに照らされたジブリールはほくそ笑む。彼は現場に赴かず、己が拠点で高みの見物を決め込んでいた。その自信は揺るぐことはない。
……はずだったのだが。
現れた連合の艦隊に対し、オーブ軍はまず警告を放つ。
「こちらはオーブ海軍。連合艦隊に通告する。貴官らは許可無くオーブ領海内に侵入しようとしている。直ちに進路を変えられたし。指示に従わない場合は領海侵入として対処させて貰う」
割と喧嘩腰である。対する連合艦の反応はというと、これまた喧嘩腰で。
「当方は特殊任務遂行を目的として編成された連合艦隊である。そちらの領海にて停泊中の『船舶』クーロンズポートにて、連合の情報漏洩を目的とした会合が行われるとの情報を入手した。当方の目的はその当事者の身柄を確保することである。これは連合軍司令部より下された正式な作戦であり、我々の行動は正当な物だ。邪魔立てをするのであれば実力をもって排除させて貰う」
どう考えても無茶苦茶であった。特殊部隊を一つ二つ投入するのであればともかく、艦隊を展開する必要などあるはずもない。明らかにオーブと一戦交える事を想定している。
「クーロンズポートは
クーロンズポートのような移動可能なメガフロートは、実のところ船舶扱いである。それぞれ船籍を持っているが、当然のようにクーロンズポートはオーブの船籍であった。こういうときに国が抱え込めるからであるが、最初から無法を為そうとする輩には通用しない。
「再度告げる。我々は正規の作戦行動を遂行しており、この行動は正当な物だ。邪魔立てするのであれば実力を行使する」
言うだけ言って切られる通信。オーブ艦隊司令【トダカ】一佐は苦笑を浮かべた。
「こちらも多少煽ったとはいえ、リョウガ様の想定通りの反応をするとは」
「あまり当たって欲しくない想定でしたが、さもありなん、と言ったところでしょうか」
副官である【アマギ】一尉も似たような表情である。彼らを含む軍部は、最初相手は大戦力を展開せず、特殊部隊などを送り込む程度だろうと考えていた。だがリョウガや一部の人間は相当の戦力を送り込んでくると予想しており、それを前提として対策を考え実行に移した。
結果これである。ご丁寧にリョウガは相手の反応まで予想して見せた。屁理屈こねてごり押ししてくるだろうと。もう苦笑いしか浮かばない。
「色々と思うところはあるが……まずはここを凌いでからだ。総員第一種戦闘配備。各MS部隊は発進準備。相手が動いたところで迎撃を開始する」
「了解! 総員第一種戦闘配備! 空戦部隊を順次カタパルトに上げろ! 敵の発砲が確認されるまで出すなよ!」
にわかに動き出す艦隊。空母では艦載機がフライトデッキに上げられていく。
白と朱色を基調にしたその機体は、【アストレイF装備】。ストライクのエールストライカーを基にしたフライトユニットを装備したものだ。単純に飛行能力であればストライクを上回り、PS装甲がない分稼働時間も長い。量産機として、そして空戦MSとして完成度の高い機体であった。
今回駆り出されたのは2個中隊24機。現在オーブ海軍はMS搭載に対応するように空母などを改装している最中で、まだ全ての艦がMSを搭載できるわけではない。今回艦隊に加わっている空母は早々に改装の終わった2隻。それぞれが一個中隊12機を積んで今回の戦いに臨んでいた。
「初の対MS戦闘になるか。……シミュレーション通りにはいかんだろうな」
デッキに上げられた1番機のパイロットは【ババ】一尉。戦闘機乗りから転向した彼は、いち早くMSの操縦に適応しF装備の開発段階からテストパイロットとして従事していた。プロトアストレイに関わったジャンク屋や傭兵や宇宙軍司令を除けば、もっともアストレイを知り使いこなせるパイロットであろう。
「1番機より各機。向こうさんが手を出してきてからの発艦になる。船は回避行動を取るがそれは外れることを保証するものじゃない。流れ弾に当たるなよ」
「「「了解!」」」
小隊の部下が呼応する。ババは機体を歩ませカタパルトに足を乗せた。
「リョウガ様も無茶をおっしゃる。……だがこの程度はこなせなくてはな」
アイドリング状態で待機する中、ババは猛る心を抑え時が来るのを待つ。
仕掛けたのは連合艦隊からだ。とは言っても攻撃を始めたわけではない。
侵攻をする艦隊のど真ん中。そこにいきなり
「敵艦隊からの砲撃と判断。総員、迎撃を開始せよ」
慌てず騒がず司令官が指示を下す。当然ながらこれは連合側の仕込みだ。先に攻撃を受けたという体にするため敵の砲撃を装ったのだ。
連合艦隊が砲撃と共にミサイル群を放つ。同時に空母から艦載機が発艦していく。
主立った機体はアストレイと同じくフライトユニットを備えたダガー。この世界のダガーは最初から簡易ながらもストライカーシステムに対応しているが、今回用意されたのは急ごしらえのコピー品であった。正規品より性能が落ちるため、機体の装甲を一部外し軽量化を図っているなんて代物だ。
それらが飛び立ったあとにデッキへ上がってくるのは異形の機体。
「……アレは使い物になるのだな?」
「技術屋どもは十分な性能だと太鼓判を押していましたが……所詮は急造です。この作戦が終わるまで保てば良い方でしょう」
司令官と副官が、微妙な表情で言葉を交わす。その機体は何というか、直立して翼の生えたロブスターにも見える外観のゲテモノだった。
開発コード【リヴァイアサン】。アズラエルの下から流出した後期GAT-Xシリーズのデータを元に急遽開発されたものである。3種の機体の能力を全て兼ね備えた……物を目指したらしいが、TP装甲などのコピーした技術は不完全。出力も不足し全ての機能が中途半端という、試作機の域を出ないものであった。
が、ダガーを上回る性能があるのは確かだ。ジブリール配下の技術者たちは、実戦でのデータ収集を目的にこの機体の投入をねじ込んだ。必要なデータさえ収集できればあとはどうなっても構わないと言わんばかりに。
投入されたリヴァイアサンは3機。それを駆るのは――
「コーディどもに加担するって言うなら、俺達の敵って事で良いんだよなあ!」
好戦的な笑みを浮かべる、眼鏡をかけた黒人男性。
「攻撃してくるのは全部片付けろってさ。派手で良いねえ」
派手なメイクを施した、鋭い目つきの女性。
「…………」
そして銀髪の、寡黙な青年。
この3人はジブリールのてこ入れで新設された秘匿部隊、【ファントムペイン】の隊員である。まだ新兵であるが厳しい訓練を受け選抜された者たちだ。『それなりの成果』は求められているが、海の物とも山の物ともつかない機体でどこまでやれるのか、現場の士官たちはあまり期待はしていないようだ。
投入された秘匿部隊は彼らだけではない。艦隊の後方、一隻の空母では、少々毛色の違う連中が待機していた。
「我々の出番は戦場が混乱してからだ。直接クーロンズポートを襲撃し私以下上陸部隊を送り届ける。そして私たちが目標を討つまでの間、MS部隊は周囲を制圧。離脱までの時間を稼げ。向こうの傭兵に協力者がいる。助力になるだろう」
女性指揮官の声を聞きながら、コクピット内でほくそ笑む男が一人。
「ふふ、リョウガ・クラ・アスハの命もついでに狙えるか。彼がいなくなれば、オーブもさぞ混乱することだろう」
長い髪をうなじでくくり、ゴーグル状のサングラスをかけた男。【ネオ・ロアノーク】という偽名を名乗るその男は、ジブリールの『協力者』から推薦され編入してきた人物だった。
賢明な者にはその正体は明白で、恐らくは指揮を執っている人間にも察せられているだろうが、本人は一向に構わないようだ。あるいは自分の正体が流布し、それを知ったザフトに混乱をもたらすこともできるだろうという思惑もあるのかも知れない。
そんな彼が乗るのは、PS装甲がオフ状態で灰色の機体。どうやらストライクをベースにした物のようだが、細部が異なり装備もかなり物々しい。
狂乱の男を乗せた機体が静かに時を待つ間、海上では激戦が繰り広げられようとしていた。
久々にオリ機体設定
YMSF-X1リヴァイアサン
劇中で語られているようにアズラエルの下から盗用した後期GAT-Xシリーズのデータを元に製作された機体。
どうも盗用したデータが部分的だった模様で、それぞれの機体を再現することができず、「だったら混ぜてしまえばいいじゃない」と言う発想で組み上げられた。
MAとMSの中間的な機体で、一応手足を折りたたみ飛行形態になることもできる。正式な後期GAT-Xシリーズに比べれば中途半端な性能だが、ダガーやジンなどの量産機に比べれば高性能。
外観はフォビドゥンをほそっこくして翼とカニのハサミのような両腕アーマーと尻尾のようなスタビライザーを付けた感じ。
後のMAやデストロイの基礎となった……という勝手な設定の機体。
AC6の発売日が決まって狂喜乱舞している今日この頃、皆様いかがお過ごしですか。
その時期になったら更新が遅れるものと覚悟しておいてください(おい)捻れ骨子です。
はいそんなわけでして更新です。いよいよジブリールの手勢がカチコミかけてきました。どっかで見たような人間や違う人物名乗ってる人が混ざっていますが、活躍できるかどうかは不明。だってリョウガさんが仕掛けてるんやぞ? 絶対悪辣な罠が待ち構えてるわ。
果たして何人無事で済むのか。そんな不安を抱えつつ今回はこの辺で。