クーロンズポートはただの宇宙港ではなく、交易のハブ拠点でもある。そのため商談や会合を行う施設も充実している。
その一つ、商会が直営するホテルの会議室を陣取り、俺は全体の指揮を執っていた。
「MSは一個大隊規模。大方はそれほどの練度ではないが、突出しているのがいくつか居るな」
「積極的に攻勢に出ているのはその突出しているもので、残りはそうでもありませんな。本命ではないということでしょうか」
「恐らくはな。本命が控えているんだろう。その前にもう一手くらいは打ってくる」
戦術モニターを見ながら参謀本部から借りてきた佐官と言葉を交わす。数で勝る向こうは艦砲を中心に攻め立てているが、MS部隊は一部を除き派手な動きを見せない。機体の性能差が分かっているというのもあるだろうが、今展開している部隊で決着を付けるつもりはないと見て取った。
となれば……。
「そろそろ動くか」
俺が呟くと同時に、オペレーターから声が上がる。
「ソナーに感! 敵艦隊方面より複数の物体が接近! 恐らくは水中戦用のMSと思われます!」
※ここから他者視点
ババが率いる小隊は、奇妙な形状をしたMSらしきもの――リヴァイアサンと交戦していた。
「あの図体でよく動く! しかもこちらの攻撃が通りにくいと来ている!」
乱射されるビームの砲火をかいくぐりながら、ババは毒づく。
量産型アストレイは堅牢な作りでありながら機動性に優れ、連合やザフトの空戦MSと比べても回避能力が非常に高い。加えて現在搭載されている改良型バッテリーは持続力、出力共に初期の物の倍近い性能となっている(主に某残念天才のせい)ため、継続戦闘力も秀でていた。
そのアストレイをもってしても、リヴァイアサンは強敵であった。鈍重そうに見えるがその動きは存外軽快で、しかも攻撃があまり通用していない。
実体弾はPS装甲(多分)に弾かれ、ビームも両腕のシールドらしき物にかき消される。何らかの力場が展開しているようだ。
その上。
「
放たれたビームをかろうじてシールドで受け流しながら悪態をつくババ。両腕のシールドはビーム砲も兼ねているが、そのビームが時々大きく湾曲してくるという、目を疑うような砲撃をしてくるのだ。
どうやらシールドの先端、ビーム砲の両側から生えている爪のような突起物が偏向器のような役割を果たしているようだ。確かに予測しにくいビームの軌道は回避しにくいが、逆に狙いも付けにくいだろう。設計者が何を考えているのかちょっと理解に苦しむ。
それはさておき、ババたちは攻めあぐねていた。そしてそれは相手も同じだ。
「くそっ! 何で墜とせない!」
「カトンボが! 鬱陶しいのよォ!」
苛立った仲間の声を聞きつつ、銀髪の男――【スウェン・カル・バヤン】
たかだか1個小隊に苦戦している。その事実に焦りのようなものを覚えているのだ。その理由は分かっている。彼らが駆るリヴァイアサンは確かにダガーなどよりよほど性能が良い。しかし非常に扱いにくかった。
元々突貫工事で仕上げられた機体に、これでもかと機能を詰め込んで、さらには活動時間の延長を図るため無理矢理山ほどバッテリーを積み込んだ。おかげでバランスが無茶苦茶である。
加えてメインの武装が扱いづらい事この上ない。
この武装はフォビドゥンのエネルギー偏向装甲【ゲシュマイディッヒ・パンツァー】とそれを応用した高出力ビーム砲【フレスベルグ】を元にしている。本来であればゲシュマイディッヒ・パンツァーは可動シールドと一体化した物で、フレスベルグはバックパック先端部に備えられていた。しかし元の設計のままだと多量に電力を消費するため、そのまま搭載するのは困難だと判断せざるを得なかった。
で、無茶振りをされた設計者たちは苦肉の策で、「両者を一体化し、攻防一体の武器として再設計する」という形で製作したのだ。
同じ技術を元としているので一体化自体はそう難しい物ではなかった。だが当然ながら防御と攻撃を同時に行うことはできない。それを補うために両腕装備となったわけだが、内装しているビーム砲はフレスベルグに比べかなり出力が落ちている。
加えてこのビーム砲、やたらと命中率が悪い。フォビドゥンにはこの偏向機能を使いこなすために専用の射撃管制プログラムが使用されていたが、リヴァイアサンのそれは突貫工事で組まれた急ごしらえの物。試射もろくにしていない未だ開発途中としか言いようのない物である。そりゃ当たるはずもない。
機体の制御OSこそ非合法に入手した正規のG.U.N.D.A.M.であるが、そもこんな機体で運用するのを前提としていない。その上G.U.N.D.A.M.は正規のシステムと手段を用いなければ詳細な調整ができない代物だ。下手に手を出そうとすれば運用しているハードを巻き込んで自壊するという凶悪なトラップも仕掛けられている。結局は全力で稼働させるのは困難といったレベルで運用せざるを得なかった。もっとも全力で稼働させたらさせたで空中分解する可能性もあったので、結果オーライと言うべきかも知れなかったが。
ともかくこれがアストレイ一個小隊程度しか相手取れない理由である。いくらコーディネーターに匹敵する能力を持つスウェンたちといえど、全力を出せなければ苦戦もしよう。逆に言えば一般の兵ならこの機体を持て余し、早々に敗退していた恐れもあった。そして彼らがダガーを駆っていたとしてもそれは同じだ。アストレイを上回る性能も無く装甲を削ったダガーでは、リヴァイアサン以上の苦戦になったに違いない。
事実連合側は倍ほどの機体数を投入したというのに、何とか互角の戦いを繰り広げているという有様だ。中には早々に損傷を受け後退した者もいる。艦隊も同様で、数で上回っていながら攻めあぐねているようだ。
しかし苦戦しているのはともかく、オーブの戦力を引きつけているのは計画のうちだ。本命は
(……そろそろ動いているはずだ)
スウェンは、機体のバッテリーと作戦行動時間を推し量りつつ頭の隅で考える。時間的に次の手が打たれている頃合いだった。
その一手で形勢が変わるのかどうか。どうにも微妙な不安を覚える。顰めた眉を元に戻さぬまま、スウェンは巧みに回避行動を取った。
その姿に似合わない軽やかな機動で、彼のリヴァイアサンはビームを躱す。
海中。連合艦隊から複数の影がクーロンズポートへ向かう。
連合初の水中用MS【フォビドゥンブルー】……のコピー品である。名前の通りフォビドゥンをベースにした物であるが、実はアズラエルの下で開発されているそれはまだ未完成であり、そこから流出した不完全な設計データを元に作られた代物だ。
元々ゲシュマイディッヒ・パンツァーを応用して耐圧処理しているという無茶な設計で、バッテリーが切れると圧壊する危険性があるという欠陥があるが、このコピー品はその欠陥をそっくりそのまま受け継いでいる。その上不完全な設計を元にしているため、想定していた性能を満たしていないという残念ぶりだった。
こんなんばっかりだが、ジブリールの下で開発されている兵器は本人の無茶振りのおかげで開発が難航しており、現状で使える物をそれなりの数で揃えようとすれば、余所から持ってくるか突貫工事で仕上げるしかない。現場は頑張ったのだ。
そんなぽんこ……がらく……急造品を駆るのは、ブルコスキマった半分決死隊とも言える連中である。
「敵艦隊に斬り込むぞ。空の化け物に加担する連中に思い知らせてやれ。青き清浄なる世界のために」
「青き清浄なる世界のために」
自分たちもまた本命ではないと知らぬまま、彼らはオーブ艦隊へと迫る。
しかし。
「ソナーに感!? 潜水艦……いや、違う。なんだこの反応は」
オーブ艦隊周辺から現れた反応に、部隊長は声を荒げる。海中は音響や振動を監視するソナーが索敵の手段として用いられるが、彼らが捉えた反応は今までにないものだった。
大きさはMSサイズ。しかし反応がおぼろげというか、妙な振動波を発しており、全体像がはっきりとつかめない。モニターの画像はメインカメラからの映像を補正した物で、可視の距離は短く先まで見通せない。モニターに表示されたソナーからの情報が頼りだった。
「オーブも水中用MSを開発していたというのか。だがこちらの方が性能は上だ」
展開されたゲシュマイディッヒ・パンツァーは水中での機動性をも確保し、理論上最大で100ノットほどの速度を出すことも可能だ。本来の設計より能力は落ちるとは言え、それに近いレベルで動き回ることができる。水中戦では圧倒的な優位を得ることができるはずだった。
しかし。
「っ!? 向こうも速い! こちらと同等の機体だとでも言うのか!?」
驚愕する隊長。その睨み付ける先、フォビドゥンブルーコピーの群れに相対するのは、蒼を基調としたカラーリングのMS部隊であった。
アストレイM装備。水中戦用のオプションだ。原作におけるアストレイブルーフレームの【スケイルシステム】。その完成形とも言える。
形状としては曲線多めの増加装甲を全身に纏っている重装型に見えるが、その装甲表面は無数の鱗のような物で覆われている。この鱗状のパーツを振動させることによって推力を得たり防御に転用することができるという、従来の水中用MSとは設計思想の異なる物だった。これとメイン推力である水中ジェットを組み合わせることによって、水中でも高い機動性を得ている。
また装甲から生じる振動波は、敵のソナーに対して「ぼやけ」のような反応を生じさせ、索敵を混乱させる効果もあった。副次的な物であるが、この効果のおかげではっきりとした機影を捉えることができず、武装の照準も攪乱させる。水中戦において優位に立つことができた。
原作のM1アストレイと違い、バイタルパートを含めた機体各部が頑強に作られている量産型アストレイをベースとしたこの機体は、それなりの深度でも活動が可能だ。ゲシュマイディッヒ・パンツァーで無理矢理水圧に耐えているフォビドゥンブルーコピーに比べて、基本性能で勝っている。
そんな機体を駆る海軍の選抜パイロットたちは、初の対MS戦に際して僅かながら緊張した様子であった。
「上の予想通り連合も水中用MSを開発してきたか。楽はさせてくれんようだ」
中隊長が愚痴るように呟く。何事もなければ敵艦隊を引き込んだ上で、M装備の部隊が艦隊を襲撃する予定であった。もっともその可能性は低いとされていたが。
「形状に反して速い、速度は互角以上か。PS装甲くらいは備えていそうだな。こちらの武器でダメージが与えられるかどうか不安だが、やるしかあるまい」
撃破や鹵獲を命じられていないのが救いだと、中隊長は苦笑する。今回の任務はあくまで防衛。よほどの性能差でなければ、上手く立ち回れると判断した。
M装備の武装は6発の魚雷を装填したランチャーと、硬金属製の銛を打ち出すスピアガン。そして格闘戦用の
初の水中MS同士の戦闘が、幕を開けた。
そう言った戦況を確認して、ネオは不敵に笑む。
「上手いこと噛み合ってくれたようだな。そろそろ出番か」
そう言うが早いか出撃の指示が下る。彼は機体をカタパルトデッキに上げた。
現れるのは濃いグレーの、ストライクによく似た機体。カラーリングはPS装甲がダウンしたままにも見えるが、細部に別の色が現れているところを見ると作動しているようである。
エールユニットよりもごついフライトユニットと、でかい複合火器に頑丈そうなシールドを備えたその機体は、カタパルトに乗り身構えた。
「【ストリームストライク】、ネオ・ロアノーク出るぞ!」
狂気の男を乗せた機体が、大空へ舞う。
オリ機体設定
アストレイM装備
量産型アストレイに水中用のオプションを施した物。本文で語っているとおりブルーフレームのスケイルシステム、その完成形。
スケイルシステムを備えた重装甲で全身を覆われており、Gセルフの高トルクパックと似たような外観となっている。この重装甲は水圧に耐えるのと増加のバッテリーを搭載するためで、鈍重そうに見えながら水中での機動性は高い。またスケイルシステムを防御に転用することで、高出力のビームなどにもある程度耐える。加えて本文にも記したが、スケイルシステムが放つ振動波は水中では一種のジャミングとして働き索敵を阻害するため、ステルス性とは別種の隠蔽能力を持つ。霧や霞を発生させて姿を追い隠すような物と考えてくれればいい。
基本性能は既存の水中用MSどころか完成したフォビドゥンブルーよりも上だが、ビーム兵器を備えておらず火力で連合の機体に劣る……と見せかけているだけで別にビーム兵器が使えないわけではなく、状況によっては普通に装備する。つまり割と強い。
修羅場が終わりを見せねーよ。
これからあと数ヶ月続くのかと思うと宇宙猫になりそうな気がしますが去年よりはマシ。……と自分を誤魔化してみても仕事は減らないんだよなあ捻れ骨子です。
さ、鬱な気分を吹き飛ばしつつ更新ですが、話進んでねーよ。やっと狂う……げふんげふんネオさん出撃しただけだよ。まあここまで引っ張ってきたM装備は出ましたが。出ただけですが。
ともかくジブやん&一族(?)は色々ぶっ込んできました。ぽんこつなのがジブやんのところ製でまともなのが一族(?)製だと思ってくれればいいです。だってジブやん無茶振りするから。
どんな酷い目に遭うかは次回以降。まだ罠のわの字も出てませんしねえ。果たしてどんな仕掛けがありますやら。……次回までに考えつくんやろか。(おい)
そんなこんなで今回はこの辺で。