※他者視点
発艦したストライクに続くのは、同じようにグレー系で塗装されたダガー。ストリームストライクと同様に、ジブリールの『後援者』から供給された機体だ。その性能は連合で正規採用されている物と同等以上である。
そして、ストリームストライクも。
「OSはオリジナルではなく、シグーのものを改良したのか。だがいい反応だ」
どうやらG.U.N.D.A.M.を入手することはできなかったらしく、ザフトのOSを加工して搭載しているようだ。しかしながらネオは十分な手応えを感じていた。
「むしろこちらの方が慣れている」
コーディネイター用のOSだが、ネオにとっては使い慣れた物であった。専用に調整されたこともあって、非常になじむ。後援者の仕事に満足感を覚えつつ、ネオは配下に命じた。
「総員聞け。我々は中央を突破し『荷物』を送り届ける。その後は敵の戦力を引きつけるぞ。敵の増援が現れる可能性もある。場合によっては作戦の中断もあり得るので索敵は怠るな」
『了解』
返ってくる返事には、揃って感情という物が乗っていない。訓練が行き届いているのか、それとも何らかの『処置』が施されているのか。どちらにしても、自分の命令に従ってくれるのであれば構わないと、ネオは思う。
(まあ、いざというときは私を後ろから躊躇いなく撃つ類いであろうがな)
信用していないしされていない。互いにそういう物だと理解している。元々ネオは世界滅亡させる勢いで無敵の人だ。世の中が自分の思うとおりにめちゃくちゃになってしまえば死んでも構わないと思っているので、今更背中から狙われていようがどうと言うことはなかった。
(それよりもリョウガ・クラ・アスハだ。ここで始末を付けられればいいが)
ネオの狙いはそれだ。この世界を大きく動かし、自分の企みを崩してきた男。彼を消すことが自身の目的を果たす事につながると確信している。
しかし簡単にはいくまい。これまで様々な窮地をくぐり抜けてきた男だ。恐らくはこの場でも十重二十重と策を巡らせているに違いない。場合によってはラクス・クラインやムルタ・アズラエルはおろか、本人ですらも偽者であったと言うこともあり得た。
もっともその可能性は低いと考える。リョウガ・クラ・アスハという男は、良くも悪くも自分で現場に赴きたがるタイプだ。そして自分自身を餌に罠を仕掛けることを躊躇わない。であれば影武者を用いることはしないだろう。十中八九本人がこの場にいると考えていい。
「そこまで届くかな? 私の運と技量が試されるところだ!」
言い放って、ネオはスロットルを開けた。
クーロンズポート。数キロ四方の大きさを持つこの海上浮遊施設は、マスドライバーを中核として様々な設備が存在する。
その中の一つ、船舶が停泊する港に、2機のMSが待機していた。
「激しくやり合っているな。押されているのか?」
「……いや。むしろオーブの軍が押している。無理に攻め入ってないからそう見えるだけだ」
一方は白と蒼のMSアストレイブルーフレーム。もう一方は蒼と黒を基調とした機体、量産型アストレイR装備である。
R装備は陸戦用オプションの一つで、機体各部に増加装甲を施し、増加バッテリーと追加武装のエクステンションを兼ねたバックパックを備える。そして最大の特徴は脚部に地上走行用のローラーを備えているところだ。これにより高速で地上を走行することが可能となり、バクゥに匹敵する機動力を得ている。急行(ラピドリー)を冠したコードを付けられた由縁だ。
バックパックにミサイルランチャーとビームカノンを増設したその機体を駆るのは、傭兵部隊サーペントテールに所属する【イライジャ・キール】。クーロン商会の伝で、実戦でのデータ収集と引き換えにアストレイを少々安価で入手したのだった。
コーディネイターであるが身体能力はナチュラルとほぼ変わらないイライジャは、『一般兵がアストレイを運用するデータ』の収集にうってつけだと思われたようだ。本人はそのことに少々複雑な心境であったが、それなりの腕がなければこのようなことを押しつけられはしないだろうと開き直っている。
そんな彼と会話しているのは、とうぜんブルーフレームに乗った叢雲 劾。彼のブルーフレームも、以前とは少々姿が変わっていた。
基本的な外装は、別の世界でセカンドと呼ばれた改装型とほぼ同じだ。だが背面にはエールストライカーと同様のフライトユニットを備えており、主兵装はライフル状に仕立てられたガトリングガン、【ハイブリッドガトリング】と腰に下げられた大型のブロードソード【ラミネートブレード】である。
本来であればフライトユニットとガトリング砲台に変形する大剣【タクティカルアームズ】が主兵装だったのだが、この時点ではまだ完成しておらず、その試作品である2つをテストもかねて運用していた。
ロウが発案したアストレイ改装計画。それはまだ完全ではなかったが、今回の仕事のために突貫工事で仕上げたのだ。まだ正式に機体の名は決まっていないが、強いて言えばブルーフレームセカンド’(ダッシュ)と言ったところだろうか。ともかくその機体の調整もかねて、劾はこの仕事に赴いている。
「どうやら海中でも派手にやり合っているようだ。あの様子からすると、こちらもオーブが有利に見える」
沖合で派手に上がる水柱を見て、劾は水中の戦況も推測している。オーブも連合も水中用のMSを投入すると聞かされていたが、海上に姿を見せない様子を見ると、双方本格的な物を開発したようだ。劾は試作段階のスケイルシステムしか見聞きしていないので、M装備がどれほどのものか知らない。が、クーロン商会のアレだが優秀な開発陣を知っているので、かなり高性能な物だろうと当たりを付けていた。そしてそれは大体正しい。
戦況は、オーブ軍が連合を押さえ込んで膠着状態に見える。しかしそろそろ新たな動きが生じるようだ。
「敵艦隊から新手? 戦場を突っ切ってこっちに向かってくる!」
オーブ軍のレーダーシステムとリンクした索敵管制からそれを読み取ったイライジャが声を上げる。
「いよいよ出番か。ここで直接戦闘なんてことになったら大詰めだって話だが」
「……いや、もう一波乱ありそうだ」
劾の眼差しが、鋭く上空に向けられる。
風切り音。そして。
「何が起こった!?」
思わず声を張り上げるネオ。突撃を敢行しようとした矢先に起こった出来事。敵艦隊からの砲撃……ではない。大破した空母は艦隊の後方に位置しており、オーブ艦隊の攻撃は届かない。よしんば届いたとしても、一撃で空母を大破させるほどの兵器など無かったはず。そして水中では苦戦しているものの、まだ抜かれてはいない。そしてほかに潜水艦や機雷などの反応も見当たらなかった。そも一撃で空母を大破させるような魚雷や機雷などもないが。
索敵範囲内からの攻撃ではない。であるならば。
「上か!」
ネオが上空を睨み付け、それと同時にレーダーに感。
彼方に生じた点。それは徐々に大きさを増し、翼を持つ何かだと見て取れる。
ハガクレ級ネームシップハガクレ。アメノミハシラより直接降下してきたそのカタパルトデッキが開放されていく。
「閣下、『彼女』を先行させてよろしいので?」
「本人たっての希望だ。無下にするわけにも行くまい」
自機のコクピットで、苦笑しているギナがブリッジからの問いに答える。
「それにたまにはリョウガの度肝を抜くのも面白かろうさ」
「承知しました。ご武運を」
言葉を交わすギナの前で、1機のMSがカタパルトから飛び出す。その機体は最大加速で一直線に降下。ビームを連射しネオたちを狙う。
「くうっ! 各機散開しろ!」
増援の登場に、後退を命ずるしかないネオ。急降下してきた機体は、クーロンズポートを護るかのごとく、彼らの前に立ち塞がった。
白を基調とした機体。背中にはフライトユニットを背負い、腰回りにはスカートのようなスラスターが増設されている。
アストレイをベースにしたその機体は、右手の武器――ビームライフルと実体剣を組み合わせた武器【シュラークシュヴェールト】を真っ直ぐに敵へと向けた。
そしてそれを駆る人物――
「我が名は【レーツェル・プリツェスィン】!
悪を討つ剣なり!」
※リョウガ視点
ごん、と音が響く。俺が頭をテーブルに打ち付けた音だ。
即座にがばりと身を起こし、俺は思わず叫ぶ。
「なにやってんの!? ホントなにやってんのあのお姫様はァ!?」
予定にないどころじゃねえよ! しばらく関わってこないと思ってたらよりによってこんな場面で介入してきやがった! 本来ならば
ああもう混乱している場合じゃねえ! 俺は回線を開いた。
「姫さん! あんた何してんだ!? 実戦に出てきていい立場じゃねえだろうが!」
怒鳴るような詰問に対し……ってなんなのあの仮面!? ふって格好付けて笑ってる場合じゃないでしょお!!(←大混乱)
「ふ、問われて名乗るのもおこがましいですが、私はレーツェル・プリツェスィン。謎の助っ人です」
「いやそうじゃなくて」
「レーツェル・プリツェスィン。謎の助っ人です」
……OK話聞く気ねえな? 俺は回線を開き直す。
「ギナああああああああ! 何で姫さんぶっ込んで来やがったあああああ!!」
ギナに通信をつなぐと同時に吠える。通信向こうのギナはすました顔で。
「まあそう興奮するな。これにはやむにやまれぬ事情がある。いや我々も最初は止めたのだぞ?」
「どういう事情があってこんな爆弾放り込むんだよ!」
「私とミナを含めた、アメノミハシラに駐留しているエース級のパイロット全員に模擬戦で勝ったら言うことを聞いてやると言ったら、ホントに全員を倒したのだよあのお姫様は」
「おいオーブ軍筆頭パイロット。おい」
ギナとミナに勝つだとぉ!? ってかいつの間に何やってやがった。油断も隙もねえなあ!
あ~もう、あーもう! 俺はがしがしと頭をかきむしってから、深呼吸して口を開く。
「言いたいことは色々あるがそれは後だ。ギナ、予定通り引っかき回してやれ。……俺だけ度肝抜かれるのは不公平ってもんだろ」
応えるギナは鼻を鳴らして。
「もうすでに我々も度肝を抜かれた後なのだがな。まあいい、精々連合の肝を冷やしてやるさ」
不敵に笑む。それを確認してから再び回線を開き直す。相手は仮面の姫さんだ。
「……姫さん、もう多くは言わん」
半分諦めだが、確信もあった。
この女は、
だから。
「信じるぞ」
一言だけ告げてやった。
さすれば返ってくるのは、仮面越しでも分かる、花もほころぶような笑み。
※再び他者視点
「……任されました」
万感の思いを込めてそれだけ返し、通信を切る。
だめだ、にやにやが止まらない。クリスげふんげふん謎の助っ人レーツェルは、テンション爆上がり状態であった。
惚れた男から信を寄せられた。これが奮起せずにいられようか。もう何が来ても負ける気がしない。巨大な要塞とかビーム砲とかずんばらりんとやれちゃいそうな勢いである。
仮面越しの鋭い眼差しで前を見据える。艦隊に仕掛けられた謎の攻撃と、ハガクレの奇襲によって敵は混乱していた。この好機、逃しては女が廃る。
「我がシュラークシュヴェールトの前に潰えなさい!」
白き機体は、勢いよく眼前の敵に挑みかかった。
オリ機体紹介
ストリームストライク
謎の組織()によって作られ、ネオに提供された機体。
ジブリールんところのコピー品より完成度が高く、オリジナルのストライクを上回る性能を持つ。OSはザフトのを改良したもので、操作性は悪いが使いこなせれば機体の性能を十分に発揮できる物となっている。
武装は実体弾のアサルトライフルとビームライフルを組み合わせた複合火器と、大型ビームソードなどを内蔵した複合シールドのみだが、ネオの技量も相まって驚異的な性能を発揮する……はず。
アストレイR装備
作中にあるとおり量産型アストレイの陸戦用オプションの一つ。(L(ランド)装備でないのはこれ以外にも陸戦用装備があるから)戦場で即座に展開するためのもので、脚部のローラーにより高い機動力を誇る。某ビルドシリーズ外伝のあれを、重装甲にして武装を抑えた感じ。
なお初期ロットはオーブ軍に配備されており、イライジャに提供されたのはセカンドロット以降の品。つまり実は完成度が上がっている。
アストレイ【ブルームゲシュテーバー】
謎の助っ人()レーツェル・プリツェスィンが駆るアストレイのカスタム機。
量産型アストレイをカリカリにチューンし、スラスターを増設して機動力を高めている。もちろんまともな人間には扱えないじゃじゃ馬。一応やんごとなき人の乗機なのでPS装甲とビームコーティングなどを追加し防御力も向上しているが、それをいいことに戦場のど真ん中に突っ込む気満々。
なお機体名はドイツ語で「花吹雪」の意味。
あともうちょっとで仕事に区切りがつくってところで豪雨。
神はよほど私が嫌いなようだな。などとガンダムの仮面キャラっぽいこと言ってたら雨止んだ。マジか。
イケボに生まれたい人生だった捻れ骨子です。
はい更新です。今回も話進んでない……と思わせといて姫さんのエントリーだ! いえね、最近まともに出番がないなあと思ってましたらいつの間にかこんなことに。勢いって怖いですね。二十行前までは姫さん登場予定無かったんだよ。信じれ。
おかげさまでリョウガさんの計画だけじゃなく筆者の考えていたストーリーもぐしゃぐしゃになりましたわ。マジでこの顛末がどうなるか予測不可能です。どうしよう。(途方暮れ)
なお姫さん転生者っぽい偽名と台詞ですが、素です。ノリと勢いだけであのキャラクター生み出しました。筆者が。この先どう動かしたもんだか。主役食うって言うか主役じゃねえかコレ。フリーダム登場オマージュっぽいしな。むしろダイゼンガーか。
そんなこんなで今回はこのあたりで。
2023/07/02追記
阿井 上夫様からいただいた、レーツェル・プリツェスィンのイラストを追加いたしました。ありがとうございます!
パイスーが実に素晴らしいですね。