そして今回推奨戦闘BGM 、Gジェネのアストレイ系戦闘BGMで。
※またもや他者視点
クーロンズロックの索敵範囲ぎりぎりの距離。そこから監視の目を向ける2隻の艦がある。
ナスカ級高速駆逐艦【ヴェサリウス】、ローラシア級フリゲート【ガモフ】。同じ隊に属する2隻は、2日ほど前に先任と交代しクーロンズロックの監視任務に当たっていた。
「まだ動きはないか」
ヴェサリウスのブリッジで、ザフトの上級士官に当たる白い制服を纏った男が言う。その言葉に黒い制服を纏った人物、ヴェサリウス艦長【フレデリック・アデス】は応える。
「パッシブレーダーと長距離望遠しか使えないところがネックですな。四六時中気を張っていなければなりません」
「仕方があるまい。ドローンの類いは接近した途端に対空レーザーで撃ち落とされる。まるで要塞だよ」
肩をすくめる白服の男。肩の辺りまで伸ばした癖のある金髪に、なぜか口元を露出した仮面を被ったその男は、この部隊の指揮官【ラウ・ル・クルーゼ】である。
「あれでは人員を潜入させることもできん。遠間から見張るぐらいしか手はない」
「どの道クーロン商会の施設に対して、下手なことは出来ませんがね」
「全く厄介な連中だよ。プラントに恩を売りつけた上で、連合などとも商売する。呆れた節操のなさだ」
大体お前らのせいだよ、と遠くで誰かが文句を言っているような気がするが、ここで気づくものは誰もいない。
「しかし連合の兵器を開発しているのであれば、奴らの艦船が寄港しそうなものですが……一向にそのような様子はありませんな」
「民間の船をチャーターするか偽装するか、それくらいはしてのけるだろう。新造艦、しかも機密兵器を搭載した船を、単艦で行動させると言うことはありえん」
連合はやっちゃうんだなあそれが。もちろん神の視点を持たないクルーゼらには分かるはずもないが。
「
「艦長、目標より出航する船があります。数は3。うち一つは見たことのないタイプです」
「なに? ……モニターに出せ」
オペレーターの報告に、アデスが指示を飛ばす。すぐさまモニターに映ったのは望遠カメラからの映像。大気のない状態なので、船影はくっきりと見える。
「先頭の船、確かに見たことのないものだ。砲台を備えているところからすると、戦闘艦に間違いない。これは当たりか?」
「航行シグナルから、あの船の船籍は分かるか?」
「確認します。……先頭のものはオーブ船籍。その他はジャンク屋組合と、民間のもののようです」
ふむと考え込むクルーゼに、アデスは意見を述べた。
「偽装であれば商会の船籍なのではないでしょうか。あれは外れなのでは」
「……いや、追うぞ。当然向こうもこちらがそう読んでいると考えた、そういう可能性もある。監視されている状況下だ、私ならそういう裏をかくからな」
それが適当にでっち上げた理屈に聞こえて、アデスは少し眉を顰めた。
「仮にオーブの船であったとしても無視はできんさ。国防委員長はかの国の軍備拡大を懸念している。いずれ中立宣言を破棄し、敵に回るのではないか、とな。危険を冒してでも彼らの戦力を測っておくべきではないか?」
「そうなると本来の目的を逸脱することになります。火中の栗にしても、いささか火遊びが過ぎるかと」
「責任は私が取る。なに、深追いはせんよ。逃げるようなら逃してやるさ」
そう嘯いて指示を出す。一通りの命を下し、後をアデスに任せてからクルーゼはMS隊の指揮を執るために身を翻した。
ブリッジを出たクルーゼの口元には、薄い笑みが浮かんでいる。
(オーブの船だったとしても、新型艦ならその能力は連合のものに準じているはずだ。戦闘データは無駄にはなるまい。それにオーブを戦争に巻き込むいい理由となる。……このことで私が処罰を受けることになっても、戦争の火種は拡大する。どうせ
まるでやけっぱちになったような思考だが、彼はやけっぱちに
最初から人類を滅亡させる勢いでやけっぱちである。
何が悪かったのかと言えば、多分運とか巡り合わせとか、そういう物だろう。
にわかに活気づくMS格納庫。居並ぶザフト製MS【ジン】が、出撃の準備を整えている。
「ようやく出番か、待ちくたびれたぜ!」
そう言いながらコクピットに飛び込むのは、褐色の肌に金髪の少年、【ディアッカ・エルスマン】。シートベルトを締めるのもそこそこに、機体を立ち上げていく。
「潜入工作をしないですんだのは良かったですが、結局戦闘になるんですね」
同じように機体を立ち上げながら愚痴るように呟くのは、幼げな容貌の少年【ニコル・アマルフィ】。
「こっちはマシンガンと重斬剣でいい! 対艦装備はガモフのチームに任せろ!」
がなるように整備兵に指示を出す銀髪の少年、【イザーク・ジュール】。
「ナチュラルの新型艦が、どれだけのもんよってね」
皮肉げな言葉を放ち発進準備を整えるオレンジの髪の青年は、【ラスティ・マッケンジー】。
「ちっ、やはりノーマルじゃ反応が鈍いか。無理を言ってでもチューンナップしとくんだったぜ」
眉を顰めセッティングに文句を言う青年は【ミゲル・アイマン】。
そして、緊張した面持ちで各部をチェックする黒髪の少年。
「連合の新型艦。ここで沈めておかなければ、後々プラントの災いになる」
【アスラン・ザラ】というその少年は、強い眼差しを虚空に向けていた。
以上がクルーゼの部下、ヴェサリウスのMS部隊がメンバーである。全員が【赤服】と呼ばれるエリートで、ミゲルに至っては【黄昏の魔弾】などという二つ名のついたエースだ。彼は専用機としてカスタムしたジンを与えられていたが、以前の作戦で損傷を受けてしまい、現在はノーマルのジンに乗り換えている。
ここでアスランの台詞におや? と思われた方もいるだろうが、実のところ彼らは
そんなわけで彼らは実情を知らないまま戦場に赴く。まあ「新型艦を襲撃する」といった感じで嘘は言われていないのだが、詐欺に遭っているようなものだ。
かてて加えて待ち構えているのも、詐欺というかとんでも枠なのを彼らは知らない。
「各機に通達。目標の艦が逃亡を選択した場合、深追いはするな。足の速さが分からない以上無茶はできん。反撃してきた場合は交戦を許可する。その場合敵もMSを出してくる可能性がある。対MS戦闘もありえるぞ。データの収集を優先しろ」
「はっ、ナチュラルのMSなんぞ所詮猿まねだろ?」
クルーゼの指示を受け、ラスティなどは鼻で笑う。彼ほどあからさまでなくとも隊全体、いやザフトそのものが同様の油断をしているだろう。そのツケはすぐにも巡ってくることとなる。
ヴェサリウスとガモフが威嚇射撃を開始した。当てるためのものではない、相手の足を鈍らせるためのものだ。船足に自信があり、なおかつ機密を重視するのであれば、随伴している船を犠牲にしてでも逃亡を選択するだろう。そうでなければ。
「目標、3隻とも速度を落としました。相対速度合います、交戦の意思あり!」
「MS隊を出せ! 目標の戦力は未知数だ。迂闊に距離を詰めるなよ!」
2隻の艦から次々とMSが発艦する。その最後に発つのはジンと違い銀色に塗装された機体。主にザフトの指揮官が用いるMS、【シグー】。それを駆るのは隊長たるクルーゼだ。
「さて、船の数なら向こうが上だがMSはどうか。ただ出すだけでは良い的にしかならんぞ?」
何かの対策がなければ、ナチュラルが駆るMSはザフトのMSに勝てないだろう。
であるならば
「砲雷撃戦用意! MSは閣下たちに任せるか、対空を自動でやらせろ! でかものは当たらん! 主砲およびミサイルは敵艦に集中させろ! 当てなくて良い、回避させれば十分だ!」
ハガクレが砲火を放ち、その間を縫うように3機のMSが駆ける。先頭を行くゴールドフレームから、ギナの指示が飛んだ。
「可能な限りコクピットは避けろ。下手に殺しまくれば後で言い訳がきかん」
それにロウが応えた。
「言われるまでもねえ。俺はジャンク屋だ、殺しは仕事じゃねえよ」
「格好付けてる余裕はないぞロウ」
「ん? 誰の声だ? まさか
割って入った声に訝しがるギナ。
「ああ、こいつは【ハチ】。俺の相棒で、サポートAIさ。機体制御の補佐をさせてる」
「よろしく頼むぞ准将閣下」
「何とも珍妙な。……まあいい、使えるというのであれば成果で示せ。それが我らの流儀だ」
交わされる会話に、劾がふっ、と小さな笑みを浮かべた。
「……甘いことだ。だがクライアントの要望なら応えねばな」
轟。三体のMSが散開する。それぞれが、それぞれの戦いを繰り広げるために。
ギナは真っ直ぐに正面から敵に突っ込む。
「馬鹿が! ナチュラルのMS風情がよ!」
丁度正面に位置していたラスティは、マシンガンを構える。ギナは悠々とトリガーを引いた。
線条が奔り、ラスティのジンは右肩を打ち抜かれて腕そのものを引きちぎられた。
「な、なあっ!?」
「ビーム兵器だと!? MSが片手で運用できるものを実用化しているのか!」
衝撃で吹き飛ばされるラスティの機体。さしものクルーゼも驚愕の声を上げた。
アストレイの基本武装はビームライフルとビームサーベルである。同時期に開発された連合のガンダム系と同じものであるが、この時期のザフトではまだ小型化できていない。その事実にクルーゼは顔をしかめる。
「優位に溺れたザフトの怠慢がこのような結果か。ならば是が非でもデータは持って帰らねばな。……ラスティ、下がれ! これは私が相手をする!」
部下を下がらせ前に出る。ビーム兵器の存在に目を奪われそうだが、一撃で敵機の戦闘力を奪う技量も並大抵ではない。一瞬にて彼はそれを見て取ったのだ。
加えてMSが携行出来るサイズのビーム兵器。その存在は、クルーゼからしても見逃せるものではない。これが実用化され大量に戦場へと投入されれば、戦局にも影響を及ぼす。連合が息を吹き返すのは大歓迎だが、一方的な展開になるのは困るのだ。可能な限りのデータを収集し、ザフトでも小型化したビーム兵器を実用化して貰わねばならない。そういった思惑があった。
そのようなことを気にもしないだろうギナは、強敵の予感に頬を緩ませた。
「隊長機か。楽しませてくれような!」
稲妻のような機動でシグーに挑みかかる。それを受けて立つクルーゼもまた、常識外の機動で相対する。
図らずも一騎打ちの形となった2機。それを尻目にして一直線にハガクレへと向かう者たちがいた。
「あの艦は下面の武装がない! 下に潜り込んでぶっ放せ!」
ガモフから出撃した4機のジンである。彼らは対艦装備、大型のミサイルを両腕に2基ずつ備えた兵装だった。味方機が正面戦闘を受け持っている隙に目標に痛打を与える。そのような思惑を持って駆けたのだが。
線条が、奔る。
正確無比なビームの射撃が、備えていたミサイルの弾頭を打ち抜く。
爆発。対艦兵器であるミサイルの爆発に飲み込まれ、4機はあちこち引きちぎられながら吹き飛ぶ。
「言われたとおり
それを成したのは劾のブルーフレーム。他の2機よりピーキーな機体を難なく使いこなした劾は、大した感慨もなく呟いた。
「なるほど、確かにジンに比べて扱いやすい。……む、新手か」
3点バーストによる射撃を回避するブルーフレーム。マシンガンを放ったのはミゲルのジン。彼はそのままブルーフレームへと挑みかかった。
「ディアッカ! ニコル! お前たちはやられた連中の救助に向かえ! 俺はこいつを抑える!」
機体は明らかにジンを上回る性能を持ち、そして乗り手も相当の腕があると見た。エリートとは言え経験の浅いディアッカたちには荷が重いと判断。危険を冒して矢面に立つしかないと覚悟を決める。
ビームと弾丸が交錯し、2機のMSは舞い踊る。その最中、双方は対峙している相手が何者か気づく。
「この機動! こいつ、まさか叢雲 劾か!」
「黄昏の魔弾か。やはりあのとき仕留めておくべきだった」
2人はかつて戦ったことがある。その際にミゲルは機体を損傷し、劾も相応のダメージを受けた。相打ちという形であったが、どうやらその続きを行うこととなったようだ。
金と青の機体は壮絶な戦いを繰り広げている。そして赤の機体はと言うと。
「こいつぅ! ふざけているのか!」
「イザーク! 落ちつけ!」
激昂してマシンガンを撃ちまくるイザーク。その射撃を、レッドフレームはなんだか妙な動きで回避していた。
横に回転したり縦に宙返りをして見せたり、手足を振り回しながらなんだか無茶苦茶な動きをしているように見える。イザークからするとそれが馬鹿にされているように感じられたのだ。
いきり立つイザークを宥めながら、アスランは疑問を浮かべる。
(なんなんだあの動きは。機体の作動を戦闘中に確かめているというのか? それにしても複雑に動かしすぎている)
試すにしてもあそこまで派手に振り回す必要はない。相手が何を考えているのか分からなくて、アスランは戸惑っていた。
で、その相対している方はと言うと。
「おっし、
「相手はだいぶ頭に血が上っているぞロウ。そろそろ突っ込んで来るかも知れない」
「分かってるさ。回避のサポート頼むぜハチ!」
どう、とスロットルを開ける。ロウがやっていたのは機体の特性を掴むこと。MSという
通常の操縦だけでは分からない動きの癖や特徴、OSがどのように四肢を動かしそれがどのようなモーメントを生むのか。そういった事を確認し、感覚を掴む。実戦中にやることではないが、ロウは説明書を流し読みしてから実際に動かして性能を把握するタイプだ。それがどこであろうと、やるべきと判断したときにはやる。
突然動きを変えた相手に、イザークとアスランは虚を突かれる。だが、流石に
「こっ、のおお!!」
咄嗟に、左腰に備えられた剣、重斬剣を逆手に引き抜くイザーク。不意を打たれたお返しとばかりに振るわれた剣は、しかし空を切る。
レッドフレームは接近してから、突如肩を中心軸とした縦回転で攻撃を回避したのだ。そして、そのついでとばかりに踵落としのような形でイザークのジンの左肩を蹴り付けた。
「ぐうあっ!?」
「させない!」
イザークのフォローに回ったアスランの銃撃も旋回しつつかわされる。そうしながらロウは軽口を叩いた。
「今のはヤバかったな。だが早々当たってやれるかよ」
ロウはナチュラルの民間人であるが、ジャンク屋として生きてきた中、同業者や荒くれ者と諍いがあったり、ザフトくずれの海賊もどきと立ち回った経験がある。その上で基本能力はともかく、勝負勘とくそ度胸、機転と発想力は図抜けた人間だ。機体の性能とハチのサポートも加えれば、総合的にコーディネーターに勝るとも劣らない。基本真面目なイザークやアスランにとって、実は相性の悪い相手であった。
たった3機、その上初陣のMSがザフトの部隊を翻弄している。その事実にアデスは戦慄した。
「これほどのものとは。連合のものでも、オーブのものであったとしても、脅威には違いない。クルーゼ隊長の判断は正解であったと言うことか」
あるいはクルーゼ隊の壊滅を引き換えにしてでも持ち帰らなければならない
と、そこでオペレーターから新たな報告が入った。
「レーダーに感! 新たな船影が2! 船籍は……オーブです!」
「なに! 増援か!?」
現れたのはオーブ宇宙軍所属の宇宙戦艦。イズモ級ネームシップ【イズモ】と、2番艦【クサナギ】。イズモの艦長【ソガ】二佐は、ギナに回線をつないだ。
「サハク閣下! お迎えに上がりました! 無理をなさらず至急後退を!」
「おう、来たかソガ。良いところであるが潮時か」
同行は出来なかったが、スケジュールの調整が出来たら後発で迎えに来るよう指示を出しておいたのだ。このタイミングは偶然であるが、都合は良い。
増援が現れたことを確認したクルーゼは、忌々しげに舌を打つ。
「ちぃ、ここまでか。……総員、撤退するぞ!」
増援の2隻から威嚇射撃が始まる。恐らくは警告も放たれているはずだ。これ以上は言い訳が効かない。クルーゼは信号弾を打ち上げ後退を始めた。
信号弾を見たミゲルは、安堵と共に機体を翻す。
「九死に一生ってところか。
もっと良い機体であれば違っていたものを。ほぞをかむ思いであったが、今は生き延びられたことをよしとする。半壊した味方機を曳航するディアッカとニコルに合流し、彼らを護衛しながら撤退する。
それを劾は追わない。
「ここでカタを付けても良かったが、要望に背いてまでのことではない、か」
今回はあくまで火の粉を払っただけ。敵を殲滅するのが目的ではない。それを十分に理解している劾は追撃を行わなかったのだ。
「こいつの性能のおかげで優位に立てた。良い機体だ」
劾は微かに、満足げな笑みを浮かべた。
そして。
「撤退だと!? ならばせめて一撃!」
「止せイザーク!」
完全に頭に血が上っているイザークが、レッドフレームに襲いかかる。それを止めようとしたアスランだったが。
突然の衝撃が、彼の意識を刈り取る。ロックオンなしで無作為に放たれていた威嚇射撃の一つが、偶然アスランの機体に直撃したのだ。イザークの行動に気を取られていたのと、ロックオン警報が発せられなかったという状況が、この結果を導いた。
「アスラン!?」
流石のイザークも一瞬気を取られた。
ついでに機体の操作を僅かに誤った。
「あ」
ごがん、と衝撃が奔り、イザークもまた意識を飛ばされる。ジンの頭部に放つはずだったレッドフレームの蹴りが、操作を誤り機体の挙動が変わったことによって、コクピット周辺に直撃したのだ。
コックピットハッチを歪ませて吹っ飛ぶイザークのジン。くるくる回りながらあらぬ方向にすっ飛んでいくそれを見て、ロウは慌てた。
「うっわ、やっちまった。……死んでねえよな? 無事でいてくれよ?」
これで死んでしまったりしたら後味が悪いと、彼は吹き飛ばされたジンを追う。
こうして、クルーゼ隊にとって一方的に不幸だった戦闘は終わりを告げた。
這々の体で撤退したクルーゼ隊の面々が、アスランとイザークの未帰還に気づくのはしばらく経ってから後のこと。その頃にはすでに、オーブの船は追跡不可能な距離に至っていた。
※リョウガ視点
「……なるほどな、話は分かった。それで捕虜となった2人は?」
「士官待遇で軟禁してある。話を聞いたが、こちらがオーブ所属であるとは聞かされていなかったようだ」
ギナの答えを聞き、考える。本気で誤認したのか、それとも分かっててわざとやったのか。
……後者だな間違いなく。
ともかく、これからどうするかだ。
「彼らの身柄は慎重に扱わねばいかん。……俺がアメノミハシラに直接引き取りに行く。こっちで何とかしよう」
「ふむ、確かに下手を打てば政治的な問題になるな。任せる」
「それはそれとして、お前後で股間な」
「ちょっと待てぃ!」
唐突に放たれた俺の言葉に、ギナは慌てた。
「今回のことは不可抗力だ! むしろよくぞ生きて捕らえたものと褒められても良いくらいだぞ!?」
「そっちじゃねえよむしろそのことは良くやったよ! 問題は指揮官のお前が真っ先に戦闘に飛び出してるってとこだよ! 万が一があったらお前の名声上げてゆくゆくは国の重職押しつけてやろうって言う俺の計画がパーじゃねえか!」
「なにさらっと空恐ろしいことを宣っている!?」
「というわけで嫌でも反省させてやるから覚悟しておけ」
「ちょ、待て……」
返事を待たずに通信を切る。そうしてから俺は、ふう、と息を吐いて椅子に体重を預けた。
ギナには誤魔化したが、イザークはともかくアスランを捕らえてしまったことは幸運であると同時に非常に面倒だ。何が面倒かって、父親が現国防委員長【パトリック・ザラ】だってところである。
原作で彼は、嫁さんが農業用プラントコロニー【ユニウスセブン】ごと喪われてしまったが為に、連合、いや地球のナチュラル全てを激しく憎悪していた。この世界でもその辺りの展開は同じなので、恐らく思考は似たようなものだろう。そして彼はやらかすときには過激にやらかす、ナチュラル絶対殺すマンあるいはナチュラルスレイヤー=サンである。正直関わり合いになりたくない。
つまりアスランの存在は政治的に有効なカード……と見せかけた地雷である。下手な交渉材料にすれば、パトリックの癇に障るどころか確実にこっちを敵視する。かといって何の条件もなく解放しても疑われるだけだろう。どう扱えば良いか、さじ加減が難しい。
……まあまだ死んでないだけマシだ。今回アスランが死んでたとしたら、パトリックはガチギレて、ザフトの切り札たる超大型ガンマ線レーザー砲【ジェネシス】を真っ先にオーブ本国に向かってぶち込みかねない。そういう意味では不幸中の幸いであろう。
さてどうしたものか。図らずも手に入ったカードの使い道に関して、俺は思考を巡らせる。
そんな俺の元に新たな問題が飛び込んできたのは、しばらくしてからだった。
第六章ではムチプリになった大人エロいモーさんがでてくると信じてたのに、信じてたのに!
いや待てまだ慌てる時間じゃないと希望を捨てない捻れ骨子です。
はい今回ザフト側の事情と戦闘って言う流れ~。捕虜になったのはアスラン君とイザーク君でした。あなたたち騙されちゃったのよぉ! って感じで真実聞かされてません。クルーゼだったら絶対こうするよなあ、と言う考えでこうなりましたがいかがだったでしょうか。
そしてアスランの扱いに悩むリョウガさん。パトリックのキャラ知ってたら明らかな地雷だと思います。返すにしても留めおくにしても下手な扱いは出来ませんからね。ホントどうしたものでしょう。イザークのところも結構危険牌ですが、アスランに比べたら遙かにマシじゃないでしょうか。
そんなこんなで今回はこの辺で。さあてどんだけUVカウンター回るかなあはははは(おめめぐるぐる)