ガンダムSEEDが始まらない。   作:捻れ骨子

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34・なるように『する』んじゃない

 

 

 

 

 

 ハガクレ――大気圏突入能力と飛行能力を備える特装艦による降下奇襲攻撃。今回はその実証試験を兼ねたものだったが。

 

「予想以上の効果があったな。まあ状況が状況だが」

「相手にも同様の特装艦があれば話は違ったのでしょうな」

 

 参謀と言葉を交わす。モニター向こうの戦況は……はっきり言って一方的だった。

 降下してきたハガクレは海上に降りず、戦場を旋回しながら敵艦隊に攻撃を叩き込んでいる。所謂ガンシップそのままの戦術をとっているわけだが、輸送機に大口径砲を積んだガンシップと違い、戦艦の火力がそのまま叩き込まれるのだ。しかも上空からなので敵艦隊の砲火は届かず、対空ミサイルなどはハガクレの砲火か護衛のMSに撃ち落とされていた。MSによる攻撃も同様である。と言っても姫さんとギナ率いるMS部隊に引っかき回されて、ろくな攻撃もできていないようだったが。

 折角空飛べるんだから、なにも真正面からドンパチしなくていいじゃない、と俺が思いついて発案した戦術だ。マ●ティジ●ックでも似たようなことしてたし、有効じゃないかと思っていたらマジ有効だった。まあこれ、一方的に戦艦が空飛べるから成り立つ戦術であって、アークエンジェルのような同系列の艦が相手に存在すれば対処される程度の物でしかない。その場合降下中に粒子砲ブッパで不意打ち上等になるが。

 ともかく予想以上にこちらの優位で戦況は進んでいる。要因はこっちで想定していたよりも敵の戦力が低かったことと……『アレ』である。

 

「ほぼ一人で中隊規模を押さえ込むとか、どうなってんのあの姫さん」

「見れば向こうもエースクラスなのですがなあ」

 

 参謀と揃って宇宙猫の顔になる俺。うん、すごい大立ち回りしてんだあの姫さん。突出してきたストライクらしきMSと、それが率いるダガーらしきMSの部隊を纏めて相手取ってる。

 一応ハガクレから援護についてきてる小隊がいるが、ホントに援護だけでまともに活躍の場を与えられていなかった。あいつらアメノミハシラ所属のトップガンのはずだよなあ。完全に添え物じゃねえか。

 で、さっきも言ったとおりハガクレとギナたちのおかげで敵艦隊はきりきり舞いだ。指揮官がまともなら作戦失敗と判断して撤退を考え始める頃だぞ。ブルコスキメてる連中だから躍起になってるのだろうが。ともかく敵は完全に押さえ込まれてしまっていた。

 おかげさまで仕込みが大分無駄になりそうなんだよなあ。石橋を叩いて壊すというか、石橋作りすぎてどうしよう感を感じていたそのとき、アメノミハシラから通信が入る。

 

「アメノミハシラ、ミナだ。こちらでも観測しているが、順調なようだな」

「ああ、順調すぎて仕込みが色々と無駄になりそうだよ」

 

 いつもの調子で言うミナに、俺は若干皮肉めいた様子で返す。ホントにもー、何でもかんでも上手くいきゃいいってもんじゃないぞ。

 

「そう言う台詞はあの姫様を止められるようになってから言ってくれ。最低でも我々の手には負えん。……いつかリベンジするが」

「うんそれは正直すまんかった。……まあそれはそれとしてだ、そっちで用意した仕込みは上手くいった。姫さんのおかげで目立たなかったってのはあるが」

「話をそらしたな。まあいい。あの『杖』は想像以上の効果があるのははっきりした。ゆえに取り扱いは慎重にせねばならんだろう」

「分かっている。当面は封印だ。使わなければそれに越したことはない代物だからな」

 

 アメノミハシラに用意した『仕込み』。ハガクレの降下に合わせて試射したそれは、俺からすれば想定通りの効果を示したのだが、ミナとギナはどうやらあまり気に入ってはいないようだった。二人は己の才が十二分に活かせるようなやり方を好む。しかも前線に立ちたがる質だ。遠間から一方的に蹂躙するなんてのは好みではなかろう。

 俺の立場だとそうも言っていられないので用意させたが、うん、ちょっとやり過ぎたかも知れん。タメトモの時点でもう手遅れな気がするがそれはそれだ。無いよりはある方が安心はできるし。

 

「了解した。ブロックごと封印の処理をしておく。できればそのままにしておきたいところだが……む、しばし待て」

 

 何か連絡が入ったらしく、ミナは画面外の誰かと言葉を交わす。マイクから離れたためその内容は聞き取れない。しばらく会話した後彼女は頷き、再びこちらへ向き直る。

 

「予定より少々早いが、『客人』が到着した。準備ができ次第始めるぞ」

「分かった。こっちは精々奴らの目を引きつけておくとしよう。波風立たないよう頼む」

「ふん、それは客人次第だな。まあ殴り合いになったら止めるくらいはするさ」

「煽るなよホント頼むから。あと賭けるのもなしだ」

「周知させておこう」

 

 そこからいくつかやりとりし、通信は切られる。やれやれ、『本命』は無事に成し遂げられそうだ。内容がどうなるかまでは俺達の責任じゃないから知らん(薄情)が、結果次第でこれからどう動くかが変わる。無事に終わってくれりゃいいが。

 ともかくこれからの戦いは蛇足だ。向こうが仕掛けてきたときの用意は万端だったが、この様子だと真正面から押し返してしまうかも知れない。主に獅子奮迅してる姫さんのせいで。

 優勢のまま事を終えられるならそれで良いか。油断はできんが。もう完全に消化試合を見るスタジアムスタッフの心境で、俺は事の推移を見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※他者視点

 

 

 ネオは、余裕というものをなくしつつあった。

 

「この私を圧倒する!? 何者だ」

 

 挑みかかってきた白いMS。アストレイの改造機らしいが、恐ろしく手練れだった。

 縦横無尽に(くう)を駆け巡り、四方から強力な打撃や正確な射撃を叩き込んでくる。しかも己だけでなく、配下の機体もあしらいつつだ。向こうも援護に何機か引き連れており、それらもまた腕のいい乗り手であるようだったが支援に徹しており、ほぼ一人で自分たちと渡り合っている。

 明らかに、『己よりも高い技能を持っている人間』。その存在に驚きとも怒りともつかない感情を抱いていた。

 

「私を凌駕する存在など! まさかスーパーコーディネイターか!」

 

 この時点、いやこの時空の中では、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。単純に彼と接触しておらず、伝を使ってキラのことを調べていないせいであったが、スーパーコーディネイターの存在自体は知識にある。ゆえにこのような疑いを持ったのだ。

 残念ながら相手はそのような存在ではない。欧州の貴種を寄り合わせた結果生まれた、『天然の怪物』だ。

 

「なかなかやりますね。この私が押し切れないなんて」

 

 ネオと比べ、こちらは幾分余裕がありそうである。技量的なものもあるが、クリス……じゃなかった謎の助っ人レーツェルから見れば、目の前の敵には付け入る隙があった。

 ()()()()()()()()()()()()のである。隊長機であろうストライクの改造機が中核となった部隊だが、その隊長機と配下の者たちの動きが合っていない。いや、配下は隊長機にあわせようとしているのだが、その動きと癖がどうにも機械的なものに見える。それでも並の人間であれば見切るのは容易いことではないが、レーツェルは僅かなタイミングのずれを見出し、そこを突くことができる。むしろ隊長機が秀でた技量を持つからこそ、動きを合わせられないのだろう。この隊長、よほど我の強い人間のようだと、レーツェルは見て取った。

 ともあれほぼ一人で互角の戦いを演じているレーツェルであるが、連携は取れていないとは言っても流石にこの世界で上位に類するパイロットに率いられた部隊だ。いや僅かながらも連携が取れていないからこそ互角に持って行ける。そうでなければ押されていたのは自分であろう。

 一撃離脱を繰り返し、目標の急激な変更やフェイントを織り交ぜて攻める。手の内を読みにくくさせる戦い方で翻弄。無理に仕留めようとはせずとことん隙を突いて相手のリズムを崩す。機動力を高めた機体性能を十全に生かした戦術は、並大抵のものではこなせないものだ。こうでなければネオのような凄腕と渡り合うことはできない。

 だが、そんな彼女にも欠点はある。

 

「あまり粘られても困るので、さっさと下がって欲しいんですけれどね」

 

 苦笑を浮かべるレーツェル。戦闘時間はまだ5分とたっていないが、彼女は時間を気にし始めていた。

 絶大な身体能力と才覚を持っている彼女であるが、それと引き換えに『燃費』が悪いと言うことは前にも語ったとおりだ。

 つまり。

 

 

 

 

 

 <ぐう~>

 

 腹が、減るのである。

 

 

 

 

 

 普通(?)に戦っている分には問題ないのだが、今回のような激戦だとカロリーの消費が半端なものではない。そして空腹が酷くなると、彼女の能力は極端に低減するのだ。

 

「全く、我ながら面倒な体質です!」

 

 言うレーツェルの左手が霞むように消えた。その一瞬の後には封が切られたカロリーバーが握られている。

 それをむぐむぐと頬張りながら、レーツェルは機体を駆り続けた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()は後退しましたが、この人たちはいつまで粘るつもりなんでしょうかね。おやつにも限りがあるんですけれど」

 

 緊張感はないが、本人なりに危機感を覚え始めている。どちらが先に音を上げるか。この場ではそう言った戦いが繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、直近の部下を引き連れて戦場のど真ん中で暴れ回っているギナはというと。

 

「ははははは! どうした、この私と【スサノオ】相手に渡り合える強者はいないのか!」

 

 高らかに吠える彼が駆るのは、アストレイゴールドフレームをベースにした黒い機体。

 【アストレイゴールドフレーム(アマツ)・スサノオ】。本来であれば右腕を失い、そこから他のMSのパーツなどを使い魔改造されるはずだったゴールドフレームだが、この時空では別な意味で魔改造されている。本来備えていたミラージュコロイドやその他特殊装備はほとんど無く、背面には高機動型フライトユニットを背負っていた。読者諸氏の知っている天の特性がほとんど死んでいるじゃないかと思われるであろうが、この機体を設計し改装したのはロウとヴァレリオを筆頭とした頭おかしいロマニストどもである。当然まともな機体のはずがない。

 

「奔れ、【オロチ】!」

 

 左腕に持つ、妙な形の刀剣らしき物が振るわれる。それは中程から先が分離し、ワイヤーのような物を曳いて飛翔した。

 狙われた敵機は回避行動を取る。だが、ワイヤーを曳く切っ先の()()()()()()()()()。予想外の動きは敵機の回避行動を遅らせ、ワイヤーが絡みつき――

 

 ()()()()

 

 誘導式ワイヤーブレード、オロチ。切っ先であるドローンをAI制御し、回避しにくい軌道にて攻撃することを目的とした武器だ。その変幻自在の動きは正しく大蛇を思わせる。

 次々と敵機を切り裂いて、ワイヤーを納め周囲を睥睨するスサノオ。周囲の機体はあらかた片付けた。実に食い足りぬとギナは鼻を鳴らす。

 

「あの姫君は膠着状態のようだが……手助けに行くのも無粋か。そもこの様子なら間もなく撤退を選ぶだろう」

 

 流石に全滅するまで粘るほど敵も阿呆ではあるまいと、ギナは考える。これは別に慢心ではない。戦況はこちらに有利。敵艦隊は4割ほどが大破や轟沈しており、MS部隊も次々と墜としている。よほどの増援でも無い限り勝利は揺るがないと見ていた。

 そして現状で、この艦隊を派遣した勢力が出せる精一杯の戦力だという情報(アズラエル経由)も得ている。増援はまずないと考えていい。

 後は撤退なり降伏なりしてくれればいいだけだ。ギナは傲慢な方だが殺戮を楽しむほど愚かではない。逃げるならとっとと逃げろ負け犬どもと考える程度だった。

 

「そのためにも抵抗する意思を折っておきたいところだが……む?」

 

 戦況を確認していたギナの目に止まった物。それは友軍と交戦している奇妙な形状のMSらしき物。確か戦っているのは空軍のエースであったはずだ。それが苦戦していると言うことは、相当の性能か技量があるという事。

 まあ性能に関してはアレなのだが、技量という点に関しては間違いない。何しろ戦闘用コーディネイターに匹敵するほどの逸材だ。そういう意味でギナの目には狂いがなかった。

 

「……少々『味見』をしても構うまい」 

 

 相手が撤退を選択する前に、強敵と斬り結ぶ。戦闘狂の気もあるギナはそう判断し、機体を奔らせた。

 

「ババ一尉、少々邪魔をするぞ」

 

 最速で割り込み、右腕の武器を振るう。備えられているのはサーベルとライフルが一体化したビーム発信器と電磁射出式パイルバンカーを組み合わせた複合兵器、【アマノサカホコ】。それはババと斬り結んでいたリヴァイアサンに襲いかかる。

 

「っ!?」

 

 狙われた方のパイロット、スウェンは咄嗟に右腕の武装を放棄し後退する。ゲシュマイディッヒ・パンツァーを物ともせず、パイルバンカーが蟹ばさみをぶち抜き、爆発。爆煙の中から無傷で現れたスサノオから、ギナの声が響く。

 

「よくぞ躱した。少しは楽しませてくれそうだな」

 

 強敵だ。本能的にそれを悟ったスウェンは、僅かに眉を寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、アメノミハシラでは。

 

「本日この会合を取り仕切らせていただく、ユウナ・ロマ・セイランです。双方にとって実りある物になるよう微力を尽くしますので、どうかよしなに」

 

 一礼するユウナと、その傍らに立つマルキオ導師の前で対峙するは2つ。

 一方は背後に砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドとハイネ・ヴェステンフルスを控えさせたラクス・クライン。

 もう一方は妙に若い護衛を三人侍らせたブルーコスモス穏健派代表……と自称オブザーバーのムルタ・アズラエル。

 世界を揺るがすかも知れない話し合いが、始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……で、クーロンズポート某所では。

 

「……僕いつまでこの格好してなきゃならないんでしょうかぁ……」

 

 ピンクのカツラを被って女装したニコル・アマルフィが滝のような涙を流しており、ヴェステンフルス隊の面子は気の毒そうな(あるいは俺でなくて良かったと言いたげな)表情で、生暖かく見守っていた。

 (なおアズラエルは普通に影武者使った)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オリメカ紹介

 

 

 MBF-P01-Re-R アストレイゴールドフレーム天・スサノオ

 

 ゴールドフレームを改装した機体……なのだが、本来の天とはだいぶ違う。まず右腕を喪失しておらず左右対称で、ブリッツの腕を移植することで備えるはずだったミラージュコロイドや武器を持っていない。その代わりというわけではないが装甲とそれに塗布された塗料の効果で高いステルス性を持っており、バックパックはノーマルのアストレイと同じく自在に交換することが可能。原作に近い仕様や全く別な仕様にすることができる。今回は空戦と中近接戦を重視したセッティングとなっており、誘導型ワイヤーブレード【オロチ】や複合兵装【アマノサカホコ】などを装備している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 暑いよ。
 いや文句言ったところで仕方が無いんですが、言わずにゃおられませんて。皆さんも体調には十分お気を付けください捻れ骨子です。

 はいそんなわけで更新です。遅れてすみませんでした。姫さん押さえ込むのに必死で気がついたらこんな時期に……と言うことにしておいてください。実際戦闘シーン書き込みすぎるといつまで経っても終わらなくて泣く泣く削るハメになりました。何しろ本番は戦闘シーンではないので。
 大体はリョウガさんが仕込んだ茶番ですが、本人まだ仕込んでるし企んでそうだぞ。それが生かされるかどうかは全く別問題ですがね。主に姫さんのおかげで。

 さ、次回はなんか胃がギスギスしそうな予感がしますが、果たしてどういう展開になるのか。ってなとこで今回はこれまで。
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