結局、マティスは俺が側近の一人として迎え入れることになった。
多くの反応は「ああ、またか」といったものだ。例外として情報部が「勘弁してください。ホント勘弁してください」と泣きついてきたくらいか。彼らにはすまないことをしたが、有能な人材には代えられない。ちょっと給料に色を付けておくか。
そしてマティアスは「じゃ、この子のことよろしくね」と、自分の仕事に戻っていった。オーブに拠点を移し、分散したこともあって一族の脅威は減ったが、彼の仕事が減るわけではない。むしろ長々と引き留めてしまった。これからしばらく色々忙しいだろう。
で、肝心のマティスはと言うと。
「……貴方は実のところ頭のいいアホだろう」
「自覚はあるが性分でな」
とりあえず俺の執務室で仕事の補佐を行うこととなった。
監視の意味もある。俺の側なら下手なことはできまいという、満場一致の意見であった。押しつけたのか押しつけられたのかは微妙なところだ。それに俺の仕事の効率を上げるためには、彼女くらいの能力でないとついて行けないという事情もある。
国家機密めっちゃ見られると思うけれども大丈夫? と言う意見もあるだろう。場合によっては何か細工をされるかもしれないと。
なぜなら彼女は
加えて。
「……さて、このあたりで一息入れようか」
「うん、これ一人でやる量の仕事ではないな。私もそれなりに忙しくしていたが、これほどではなかった。貴方は他の人間に仕事を振ることを覚えた方がいい」
休憩しようと声をかければ、マティスは仏頂面でこう小言を言ってくる。彼女は俺の仕事っぷりがあまり気に入らないようで、こういう不服をよくこぼす。うん、そうなんだけどな。
「前にも誰かに言ったような気がするが、仕事を振ってこれだよ。……それに俺に回ってくる多くは俺が始めたことばかりだ。責任者としてできるだけ関わっておきたいのさ」
そう返すとマティスは「気持ちは分かるが……」と複雑な表情だ。思うにこの人、根が真面目なんだろう。そも一族自体が人類のためというお題目で活動していたのだ。色々と問題はありすぎるが、真剣に人類の未来を案じていた者も多かったんじゃなかろうか。
まあそれはそれとして。
「それに俺が忙しくしている理由の幾ばくかは、一族が関わっていると思うんだが」
ごふっ、とマティスが(雰囲気的に)吐血した。全部が全部じゃないけれど、世界がこうなった原因のいくらかは一族が関わっている。もしかしたらコーディネーター関係の深いところもだ。その責任を少しでも彼女に取らせたいという、意趣返し的な思いもあった。
「いやこちらとしては目的を果たすためにしかしオーブ目線で見れば迷惑なのは確定的に明らか……」
なんかショックを受けた様子でブツブツ言い出すマティス。 党首やってるときも相手の状況とか心理とか読んでたんだろうが、実際立場を変えてみると見え方が変わってくる物ではある。そこで考え込むところが真面目なんだよなあ。
と、そこに。
コンコンしぱたーん! と、ノック直後に返事を待たず執務室のドアが開いた。
「マティスさ~ん! 休憩ですよね女子会しましょう!」
怒濤の勢いでマティスに迫りくるのは、いうまでも無く姫さんだった。
自分の目的にマティスを巻き込む気満々である。その目的とはもちろん俺を囲い込むこと。そのために
マティスとしてはドン引きだ。この件に関しては、もう完全に理解できない生き物に振り回されるかわいそうな人でしかない。まあこれも彼女が悪事を働けない一因となっているので、潔く諦めて貰おう。
決して人身御供にしたわけではない。ないったらない。
「い、いや私はまだ仕事が残って……」
「大丈夫です天井のシミを数えていたらすぐに終わりますから初夜のように! 初夜のように!」
「どういう例えだそれに何で2回言ったってちょっとまて抱え込むな持ち運ぶなああああああ!」
どたどたどたばたん! と、嵐のような勢いでマティスを抱え込んだ姫さんは去って行った。うむ、順調にギャグ落ちしているようで何よりだ。(←現実逃避)
「……よろしいので?」
すっかり影が薄いが同室で仕事をしていた側近(男性)が問うてくる。
「なんだかんだ言って、
「良い気晴らしですむのでしょうか? クリスティーヌ姫は取り込む気満々ですが」
「そのあたりは、
ぴた、と側近の動きが止まった。俺の言葉の意味が分かったのだろう。そして彼は――
電光の速度で席を立ち部屋を横断すると、ドアを開け放ってこう吠えた。
「大穴ーーー! 若様が彼女ら纏めて面倒を見るってーーーー!!」
「待てや」
部屋の外でどすんばたんどかんという音が響く中、俺はため息を吐いた。
いや
「で、どういうおつもりですかそこんとこを詳しく話していただきたい配当に影響が出ますので!」
再び電光の勢いで戻ってきた側近が詰め寄って問う。君ね。ホントにね。
呆れながらも俺は説明してやることにする。
「……そろそろスカンジナビアとの連携を強める必要があるからな。連合、ザフトの双方が動き出し、それは良くも悪くも現状を大きく変えるだろう。それに対抗するにはオーブ単体では限界がある。中立国を纏めるためにも関係強化は必要だ」
つまり姫さんとの婚姻は絶対条件に近い物になってきたわけだ。いつまでも中途半端な状態にしてはおけなかった。
「……で、あの姫さんが目を付けたあいつらを引き込まないわけがない。その中でもマティスは下手な動きを封じる意味でも身内に引き込んでおくべきだと俺は思う。油断のならない人間ではあるが、毒も転じれば薬だ。姫さんの無茶振りと俺の手腕で、上手いように転がしてみせるさ」
俺だけだったら凄まじい腹の探り合いで疲れるだろうが、姫さんが加わることでマティスもそう言った余裕は激減する。別の意味で疲れるだろうがマシだろう。
まあ姫さんは姫さんで『思惑』はあるだろうが、それでこちらの不利になることはなかろう。ぶっ飛んでいるがその辺はわきまえている。
で、加えてだ。
「それに、
その言葉に、側近はしばし考え込んで。
「無理ですな」
断言した。うん俺もそう思うわ。今更あいつら放流できないし、かといってこのままなあなあにしておくのも収まりが悪い。結局多少外聞がアレでも纏めて面倒見た方が良かろうと言うことだ。
正直今でもハーレムじみたことには抵抗がある。が、俺の心境や外聞は置いといて囲っておいた方が利がある。であればこの際恥も外聞も無しだこの野郎馬鹿野郎俺はやるぞ。(←多少ヤケ気味)
……とまあ俺の本音はまた棚に上げといて、と。
「まあ他はともかく、姫さんとの婚姻は派手に宣伝せにゃならん。
「またなんか企んでますね?」
「応とも。親父殿や首長連中と話を詰めにゃならんが」
ヤケになったからではないが、この状況は色々と利用ができる。精々派手にやらせて貰う。やるのは世界の命運を賭けた大博打。胴元はもちろん俺だ。
改めて覚悟を決めろ、リョウガ・クラ・アスハ。このふざけた世界を徹底的にぶち壊すために。
「それで、アズラエル氏のお嬢さんは?」
「流石に二回り近く歳離れた相手に手は出せんわっ!」
水面下での和平の動きは加速していく。
オーブの思惑として、先ずは停戦まで持っていきたいところだ。もちろん連合、ザフト共に戦意を抑え込むことは容易くない。これまで行ってきたことで大西洋連邦以外の国家や、ザフト地上軍などは大分軟化してきてはいるが、それでも決定打とはなりにくいものだ。
アズラエル氏やラクス嬢も動いているようだが、目立った変化はまだ現れていない。双方ともに煽るだけ煽りまくったからな。手こずるのは止む無しか。
となれば、俺達が動くしかない。いや前々から動いてきたけれど。
先ずは中立国への働きかけ。スカンジナビアとの関係強化はその理由付けになる。もっとも姫さんとの婚姻はまだ正式なものとはせず、噂話程度に留めるが。
ちょうど情報のコントロールによさげな伝もできたしなあ。
そんで本人に頼み込むついでに俺の企みを聞かせてやることにした。マティスは最初恨みがましいというか妬ましい視線で俺を見ていたが、話を聞くうちに真顔になり、最後にはちょっと青ざめてこう言った。
「貴方は悪魔か」
「とうの昔に高値で押し売りしてるよ魂なんざ」
かの一族の元党首をしてそう言わせるならば、仕掛けとしては十二分だろう。とは言ってもすぐに最悪の状況に転がり落ちるのがこの世界だ。まだまだ世に現れていない危険思想の人間や勢力は山とある。そう言った連中にも目を光らせておかねばならない。超えても超えても山しかないこの状況だが、やらねば先に進まない。
幸いというか、連合の中でも風向きが変わりつつある。主にユーラシアと東アジアの方で。
ユーラシアはスカンジナビアからの働きかけが効いてきた。以前も説明したが、スカンジナビアはユーロエリアへの影響力が強い。その上でオーブとの関係、中立国の勢力強化を匂わせ、停戦に向けた方向へ舵を切った方が得策だと訴え続けた。事実スカンジナビアとオーブ、そしてプラントと友好的な中立国は力を増してきたのは事実だ。NJに加えて戦争で疲弊してきたユーラシアには無視できないだろう。
加えて大西洋連邦との関係性も徐々に悪化しつつある。大西洋を本拠地とするブルーコスモス過激派のおかげでテロは頻発しているし、あからさまに戦力を自分たちに向けて準備している。背中にナイフを隠して握手するにも限度という物があった。いっそプラントではなく大西洋を敵にした方が国は纏まるのではないか。そういう笑えない話もちらほら出ているようだ。
で、東アジアであるが、そもそもここは戦争に消極的で、専守防衛に近い状況であった。NJ打ち込まれてマスドライバーが狙われたからこそ反撃したが、連合の中で最後の最後まで武力行使を躊躇っていたようだ。
理由は簡単なことで、
その分日本エリアで最先端技術を開発し、中国、台湾エリアで廉価版を大量生産するという悪魔合体した強みがあるわけだが、ともかく爆弾を抱えた状態で戦争はしたくないというのが彼らの思惑だった。で、嫌々開戦となって蓋を開けてみれば、ザフトとの戦闘での被害よりもブルーコスモス過激派と、それに便乗した国内の運動家を自称するテロリストどもが与えた被害の方が大きいという、思った以上の酷いことが起こっていたりする。
そりゃプラントよりブルコスの方を敵視するだろうよ。その上で元々交流があったオーブから再三話を持ちかけられれば、心も動くという物だ。
そう言ったわけで、実は連合は瓦解寸前まで来ていた。大体肝心の大西洋連邦だって、アズラエルを中心に停戦に向けた根回しを始める者が増え、プラント殲滅を謳い文句に戦争継続を煽るタカ派過激派は徐々に追いやられ始めている。今停戦に向けて動かなきゃいつ動くよって状況だ。そりゃ動くよ。
だからと言って全てがすぐさま切り替えられるわけではないが。先も言ったとおりまだ決定打となり得る物はないし、人々の戦意、怨念もそう簡単に収まる物ではあるまい。
それはプラントも同じ事で、しかもこっちにはラクス嬢とバルトフェルド氏、マルキオ導師しか伝がないと来ている。友好的な中立国からの働きかけとラクス嬢の内部工作でどこまで動かせるか。連合共々不確定な要素はまだまだ多い。
だから
姫さんとの関係を噂として流すと同時に、『ある情報』を広める。これはフェイクではない。そろそろ本格的に動かそうとしていた話だ。中立国同士の連携を強めようとする一方でオーブが裏で何やら画策していると察すれば、各勢力共に注視せずにはいられまい。
その上でさらに虚実入り交じった情報を流す。本命を隠すためではない。むしろ
まあアズラエル氏は商人だ。思うところがあっても商機とあらばこちらにつくだろう。ラクス嬢もほぼ間違いなくこちらに来る。今の戦争に楔をぶち込むような真似は、彼女からしても都合がいい。自然と彼らにつく勢力は、こちら側になると思って良いだろう。
残るは二の足を踏む者と様子を窺う者、そして敵に回る者だ。戦争を差し置いて何をと憤慨する者もいるだろう。俺から言わせればそろそろ幕を引くべきだと思うんだがね。事実そう思って動いている者は俺以外にもいるわけだし。
ともかく俺の策で
さあ、乗って賭けて貰うぞ。嫌でもな。
車買い換えたら~、一週間でフロントガラスに飛び石だよ!
しかも丸ごと交換とかね。もうね。お祓いとか行くべきかもしれん捻れ骨子です。
はい更新です。そしてリョウガさんが色々覚悟キメる回です。うん正直、ハーレムルート以外にねえよなこの先。さすがにヒマワリちゃんを加える気はなさげですが。まあリョウガさんより若くてイケメンなのこの世界にいくらでもいるからなあ。犠牲者候補には事欠きません。
そして何やらまた画策している模様。果たして何を企んでいるやら。
ところで映画の敵は読心能力や闇堕ち能力(違)を持っているそうですが、リョウガさんに向けた場合……。
・相手に対し複数の対処を同時に思考し処理する上、前世からブラック労働という闇にどっぷり浸かってますが何か。
ってな具合で通用しない気がするがするんんでしょうがどうよ。
姫さん? 本能と勢いだけで全部ぶっ飛ばすんじゃね?
と言ったところで今回はこの辺で。