一月経った。
うん、皆順調に踊ってんなあ。ちょっとどん引くくらい。
すっごく姫さんとの関係でマスコミ大騒ぎなんだけど。情報流すの手伝ったマティスが「えぇ~」って顔してんだけど。各国で世紀の大恋愛とか結婚まで秒読みとか言う文字が画面や紙面で躍りまくってやがる。なんで全体的に一面飾る扱いなんだよ自分とこの情勢とかもうちょっと取り扱えよ。慶事に飢えてたにしろやりすぎだろ。
まあそんな中でも気づいてるヤツは気づいてるんだけどな。アズラエル氏やラクス嬢なんかは「おめでとうございます。で、今度は何を企んでるんですか(意訳)」とかいう感じで連絡よこしてきたし。順調と言えば順調、なんだけどなあ。
「一部は我々のことを取り上げて、三つ股野郎とかハーレム首長誕生とかネガキャンやってるところもあるようですが」
「大体がジブリール氏を含む潜在的敵対勢力の傘下ですわね。マティスさんの事を嗅ぎつけてない時点で物が知れますわ」
「スカンジナビアの王族としては重婚オッケーどころか推奨なので欠片もダメージがないどころかむしろ自慢です」
呆れたような様子のチヒロにリシッツァ。そしてえへんと胸を張る姫さん。彼女らとマティス、そして俺はアスハ邸の談話室で新聞雑誌やネットを見ながら会話していた。
例の話を詰めるためである。発起人の姫さんは当然超乗り気で、チヒロとリシッツァはもう諦めてる。あとはマティスを説得するだけなのだが。
「いや貴女たちはちょっと本気で考え直すべきではないのか正味な話」
真剣な顔で姫さんたちを説得にかかっていた。気持ちは分かる。許されるのであれば俺もすぐさま取りやめたい。だがそう言うわけにはいかないのもまた事実。特に
「生憎と姫さんとの婚姻は決定事項だし、チヒロとリシッツァは今更俺の下から離すわけにはいかん。機密とか詰め込みまくってるしな。……まあ貴女にとっては不承不承だろうが、悪い話でもない」
「事実上の重婚のどこが悪い話ではないというのか」
ジト目で睨んでくるマティス。カガリも似たような反応だったなあと思いながら、俺はおためごかしで言いくるめることにした。
「俺の庇護下にあるというだけで、オーブ内で手を出してくる人間はおらんよ。それだけでも安全性は随分と違うだろう。加えて考えようによっては『貴女の本懐』に近いこともできるのではないかね」
「私の本懐、だと?」
「『一族の使命』だよ。人類の繁栄のため、世界を裏で牛耳り色々画策してきたと聞いている。俺は基本オーブの平穏と繁栄だけを望んでいるが……それを果たすためには世界が繁栄し平穏でなければならないとも思っている。方向性は違うが、人類の繁栄を望んでいるのは同じだ。互いにすり合わせや妥協も考えられるだろうし、俺と貴女が組めばまた違うやり方も見えてくる。自慢ではないが、財力では一族に勝るとも劣らないと自負しているぞ? 組む気には、なれんかね?」
とは言ってもすでに大分協力して貰っている状況ではあるが。それに彼女だけ放っておいて姫さんたちを囲むと言うわけにもいかん。絶対すねる(自覚無しに)し嫉妬で何かやらかしかねない。だったら一緒くたに囲った方がまだマシだろう。
後は彼女がそういう環境を割り切って飲み込めるか、なんだが。
「そ、そういう言い方は卑怯……いやしかし卑怯なことは私も散々やったし妥協点を探るのはいやではないというかやぶさかではないというか……」
また句読点なくブツブツ言い出したよこの人。どんどん面白キャラへの道を転がり落ちてんなあ。
このままでは話が進まない。気は進まないが俺はマティスに近寄り――
顎に指をかけこちらを向かせる、所謂『顎クイ』をやった。
突然のことに「ほうぁ!?」と妙な叫び声を上げるマティスだが、俺は構わずにその瞳をのぞき込むように目を合わせる。
「……無理強いはしない。だが、貴女が手を貸してくれたら助かる」
ただそれだけを言ってみた。果たしてどんな反応が返ってくるか。マティスは――
みるみる顔を真っ赤にして、「ぴひー」という小さな悲鳴を漏らしながら、湯気噴いて白目剥いてぶっ倒れた。
「…………初心すぎない?」
流石にこれは予想外だったわ。免疫なさ過ぎだろ。
「あのエロい顔とエロい声で迫られたら、たいがいの人間はああなると思いますけど」
「この男本能的に女墜とす手管冴え渡ってますわね」
「2番! 私2番でお願いします!」
君らな。……まあいい、この様子ならしばらくならせば説得できるんじゃなかろうか。あくまで説得だからな、説得。
この後、マティスが何度も意識飛ばしたり泡食ったり逃げだそうとしたりしたが……。
彼女は、墜ちた。
……説得だからな? いいね?
とか何とかやってたら、なんか閣議で変な法案が通った。
「おい、あんたら。おい」
俺がジト目で議席を見渡せば、首長どもも議員連中も一斉に視線をそらしやがった。人がちょっと議会から離れている内に何やらかしてやがりますか。
「大体お前のせいだぞリョウガ。自業自得だ」
なんか久しぶりに会ったような気がする親父殿が、眉間に皺を寄せながら言った。親父殿はどうも不承不承のようだが、他の連中はノリノリだな?
「スカンジナビア王国の風潮に合わせるということさ。まあ特例だ。今のところお前さん以外の人間に適用させるつもりはない」
「左様。これから先、場合によってはスカンジナビアの王族、貴族とこちらの氏族とで婚姻関係を結ぶことが増えるかも知れぬ。その上で一挙に数人押しつけられると言うこともあり得る。その試しもかねておりますので」
もっともらしい理屈を上げているがそれだけか? そんな視線を向けてみれば、親父殿がため息をついて口を開いた。
「後は将来的なお前の『後釜』、だ。後継者は育てておかねばならん。お前の血を引いたからと言って優秀な人間になるとは限らないが、あれだけの面子が揃っていれば可能性も上がるだろう。……お前は自分が未だ替えの利かない人間だというのを少しは自覚していた方が良い」
耳の痛い話来たぞおい。皆揃ってうんうん頷いてんじゃないよ。
まあその、すごく振り回してるってのは俺も自覚はあるんだが、やんないとお先真っ暗なんでなあ。そして終わりが見えないと来ている。止まるわけには行かない血を吐くマラソンを続ける必要があった。
……それを考えると、確かに子供作って将来的な後継者として育てるってのはアリなんだよなあ。効率的なことを考えると重婚が表立ってできるというのはメリットではある。感情的なことはこの際置いて、流れには乗っておくか。
俺は根負けした様子を見せて両手を挙げる。
「……分かった分かった。ここで俺一人が意地を張っても仕方がない。皆の思惑に乗ってみるさ」
ほっとしたような空気が流れる。また俺が屁理屈をこねて抵抗するのではないかと思っていたのだろう。一方的に不利益を被るんならそうしたかもしれんがね。感情的なことを抜かせば得ではある。追い込まれているような気がせんでもないが。
その代わりと言っては何だが。
「で、それはそれとして、
「「「「「ぎく」」」」」
「ノリいいなあんたら」
一斉に視線をそらしやがって。別に悪いこと企んでるわけじゃないっつーのに。一気にダメな空気が漂ってる中、親父殿が恐る恐る言葉を発した。
「その、正直空気読めてないかな~って、おとーさん思うんだけどな?」
「なんでキャラ崩壊するか親父殿。別に俺も伊達や酔狂や嫌がらせでこの時期にこんなことを言いだしたんじゃないわい。
俺の策。それはこの時期からやっておかないと
この世界ホント、いつ世界が滅びてもおかしくない危機がゴロゴロ転がってるんだもんなあ。手が抜けるんなら俺も抜きたいわい。
「確かに時期は時期だし、
「……うむ、そこまでは分からんでもない」
親父殿はまた深々とため息を吐いた。吐いてから肩を落として言う。
「で、なんでそこから『ついでに不穏分子をあぶり出す』って発想になるの」
「やるんなら一石二鳥どころか群れごとだ。それにどうせ仕込まなくても不穏分子はちょっかいかけてくるぞ確実に。だったら罠仕掛けておいた方が合理的だろうが」
間髪入れずにどきっぱりと答えてやった。ふん、まだまだ俺という人間の見積もりが甘いな。使えるんなら自分自身も的にするってのは分かってただろうが。
こいつはも~、ホントにも~、ってな雰囲気が漂う。まあごり押してるのはこっちだ、気持ちは分かる。
だから
「とはいえ国家主導でやるのは不安がある、と言う話も分かる。そこでクーロン商会の資金や人材、設備を使うという方針も考えた。なんなら俺の個人資産から持ち出ししても良い。なに金ならあるしなくなりゃ稼ぎゃいい」
「「「「「それはやめて!」」」」」
何で一斉に止めに入るか。
「お前、国というリミッターなくなったら何しでかすか分かったものではないだろうが。せめて目の届くところでやれ」
「国に迷惑をかけるつもりはないぞ? 余所は知らんが」
「なお悪いわ」
ちっ、さっきのは訂正だ。流石に親だから俺のことがよく分かってる。国の主導から離れたのを良いことに
とにもかくにも、何とか俺の策を飲ませることには成功した。
お大尽アタック大盤振る舞いといこうか。
さて、俺が巡らせた策だが、その本筋は気づく人間が見れば気づく。先も言ったとおりアズラエル氏やラクス嬢などは早々に感付いて連絡を入れてきた。
しかし実際に接触してきた一番乗りは、意外な人物であった。
「随分と思い切った決断だと思います。ある意味世界を敵に回す可能性もありますが……恐らくそれも考慮に入れているのでしょう?」
真っ先に俺と面会することを求めてきたのは、マルキオ導師だった。よく考えれば当然だわな。基本オーブ国内に居を構えてて、こちらからも情報を流しているわけだし。
「今でも世界の一部からは目の敵にされていますのでね。何のことはない……とまでは言いませんが、覚悟の上です」
「それ以上に、戦いが沈静化する、あるいは方向性が変わるだけでも多くの人間が救われることでしょう。それが貴方の狙いでなかったとしても」
相変わらず持ち上げてくるなあ。結果的に戦争が沈静化するかもってだけで、そこまで考えちゃあいない。
「金で横槍を入れると言うだけですよ。もちろん人が救われるのならそれに越したことはありませんが。……こちらとしても、近々導師と話し合う必要がありました。ジャンク屋協会に協力を要請することになりそうなのでね」
「無論私個人としては協力を惜しみません。協会に働きかけるようにしましょう。……ですがそれだけでは手が足りないのでは? 中立国からも協力を募るつもりですか?」
導師が問う。全くもってその通りで、オーブやジャンク屋協会だけでは少々手が足りない。中立国に協力を仰ぎたいのはやまやまだが、彼らは彼らで混み入っているため、さほど多くの力を割けないだろう。と言うことで。
「もちろんそうするつもりですが、向こうもそれほど多くの余力はありません。ですから
これには流石の導師も驚いた様子を見せた。
「ロゴスですか。しかし彼らはブルーコスモスの後援者では?」
「ええ。ですが
勘違いしている人間は多いし、デスティニーでは議長がそう思わせるように誘導していたが、ロゴスは
なぜかこの世界では軍事産業の影響力が大きいが、彼らの多くは兵器ばかりを作っている企業ではなく、大体は重工業などを主な生業とする。そちらの方は俺にとって利用価値があった。
そしてデスティニーではジブリール側についていたように見える彼らだが、実際の所はジブリールの言動にドン引き及び腰であったし、消極的であった。ロン毛議長が悪の組織指定したおかげで逃げ回る羽目になっていたが、そうでなければどこかでジブリールを切り捨てていた可能性すらある。
加えてこの世界じゃ、俺のお大尽アタックとアズラエル氏の行動で大分揺るがされている。ブルコスのスポンサーを降りようかという話も出ているようだ。それをやってしまったら今度はテロの標的が自分たちに向きかねないので慎重にはなるだろうが、風向きは悪くない。
……と、このような話を大雑把に導師へと伝えてみる。さすれば彼は目から鱗が落ちたと言った様子で言う。
「……なるほど。
「そんなところです。ブルーコスモスの行動は、消耗を促す物ばかり。それが回り回って経済を活性化させるのであればロゴスも支援を惜しまないでしょうが、アズラエル氏すらコントロールできなくなった組織は、ほとんどただのテロリスト集団と化しています。軍部に食い込んでいるのがなおさら悪い。コントロールのできない軍事力など、野盗以下でしょう。経済的にも状況的にも、支援するには限度という物がある」
だが先も言ったとおり、下手なことをすればブルーコスモスがさらに暴走し、ロゴスそのものが危機に陥る可能性がある。しかし……
「戦争という行為から注意をそらし、なおかつ経済の活性化を計る。加えて地球圏、プラントをも巻き込む大事業とすることを目指す、というわけですか。いやはやスケールの大きい」
「そのくらいでなければ楔を打ち込むことはできないでしょう。戦力ではなく経済で殴りつける。これが私の戦い方です」
このために金を稼いでいたんだ。CEと言う理不尽な世界に対する、俺なりの抵抗である。こんな形でブラック企業の経験が生きるとは思わなかったが。
原作と比べオーブの戦力は向上しているが、だからと言って真正面からザフトと連合を敵に回せるほどの力はないし、俺も国もそんなことをやらかすつもりはない。だから経済力で殴らせてもらう。
俺の話に導師は深く頷く。
「お話は、よく分かりました。成されようとすることの利点、そして危険性を熟知し、覚悟の上で行おうというのです。これ以上私の口から何かを言うのは蛇足ですし野暮でしょう。……それに今回貴方を訪ねたのは、もう一つ提案がありまして」
「はて、なんでしょう?」
心当たりは色々あるが、さてどれが来たのか。そらっとぼける俺の問いに対し、導師はくすりと微笑を浮かべ言った。
「
バーンブレイバーン無事終了おめでたい。いやあスポンサーとスタッフと監督が好き勝手絶頂やらかしまくったアニメでしたな良いゾもっとやれ。こういう勢いのあるロボット物で良いんだよもっと作れや捻れ骨子です。
はいリョウガさんがマティスさんを「この女、墜ちたっ!」するのと、なんか企んで金突っ込んでる回です。うんそれ以上言う事ねえや。女は口説いて味方に引き入れ、悪の組織()は札束で頬を叩いて味方に引き入れる。こう書くと最低な人間ですが、何一つ間違っていませんね。
果たしてこの金持ってる最低野郎(ボトムズ)はこの世界をどのような方向に導くのか。そしてみんな分かってるとは思うけど死んだはずのジョージ・グレンと会うとはどういうことなのか。特に風雲急は告げないけれど斜め上をかっ飛んでいくこの話の明日はどっちだ。
……筆者が手綱取れていないという事実には気づかなかったことにして欲しい。と言ったところで今回はここまで。