ガンダムSEEDが始まらない。   作:捻れ骨子

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前回の続きと思ったか?
残念だったな!


閑話・あの人は、今

 

 

 

 

 ヘリオポリス。L3宙域に存在するオーブ所属のコロニーが一つである。

 基本的に資源衛星と接続した生産拠点であり、同時に工業カレッジなどが存在し民間人も10万単位で居住し生活している。

 その中の一角。オープンカフェで携帯端末を弄っている少年の姿があった。

 彼の端末では、プログラムコードが踊る端で小さな画面が展開し、ニュースが報じられている。

 

『……現在ザフト軍は東アジア共和国の南部で戦線を拡大し、これによる影響を懸念したオーブ政府は……』

 

 少年はそのニュースを耳にしながらため息を吐く。今起こっている戦争は、終わる様子を見せない。自国の政府は危機感を募らせ、双方に停戦を呼びかけると同時に軍備の拡大を図っている。いつまで平和に暮らしていけるのか、少年は漠然とした不安を抱いていた。

 

(アスラン……君は今頃どうしているんだろうな)

 

 肩にとまっている鳥形ペットロボットの頭をなでながら、少年は思いをはせた。このペットロボット【トリィ】は、プラントに居を移した友人から餞別として贈られたものだ。連絡を付ける伝もない友人の安否も気になり、憂鬱さが増す。

 と、そこで少年に声がかかった。

 

「よっ、【キラ】。こんなところにいたのか」

 

 振り返ればそこには3人の少年少女たち。【トール・ケーニヒ】、【ミリアリア・ハウ】、【カズイ・バスカーク】。少年の友人たちである。その中の一人トールが、少年に語りかけた。

 

「まーた教授になんか頼まれてたわけ? バイト代出るからって引き受けすぎだろ」

「でもなんか困ってたから。それにもう終わるし」

 

 会話の最中、トールは端末のモニターに目を向ける。

 

「お、ニュースか。……大分戦線も広がったなあ。結構本国に近づいてる」

「ちょっと、怖いこと言わないでよ。お父さんとお母さん本国にいるんだからね?」

 

 興味本位のようなトールに対し、ミリアリアが咎めるように言う。

 

「本国もMSの開発を進めてるって噂だし、そう心配することもないだろ。大体うち(オーブ)は中立国だぜ?」

「……でもさ、リョウガ様はタカ派だって聞くし、ひょっとしたら中立宣言破棄して参戦しちゃうかも」

 

 眉を顰めてカズイが言う。確かに現首長代表の息子であり、次期首長代表の最有力候補であるリョウガ・クラ・アスハは、過激とも言える言動でメディアを賑わせている。この戦争は他人事ではなく、すぐ側に迫った危機なのだと、彼は常に訴え続けていた。その思想こそ危機感を煽るものだという声もあったが。

 

「なさげな話だぜそれ。あの人前々からナチュラルもコーディ(コーディネイター)も変わらないって主張だろ? よっぽどのことがない限り連合にもザフトにも肩入れすることないんじゃないか?」

 

 多くの国民がトールと意見を同じくしている。プラントへの核攻撃(血のバレンタイン)にも地球に対するNJばらまき(エイプリールフール・クライシス)にも非難声明を出し、双方に人道的支援以外は断固拒否するという姿勢を(表向き)貫いてきた。その一方でNJにて被害を受けた地域には軍を派遣して災害救助や復興支援に当たらせ、オーブが開発したNJ下でも使える通信技術や発電用大型核融合炉の技術などを無償で提供したりしている。そういった行動は国民の支持を集めていた。

 そしてナチュラル、コーディネイターの区別を鼻で笑うような言動も国民には受けが良い。どこかの意地の悪いマスコミのインタビューに答えて曰く。

 

「コーディネイターは優れた資質を持って生まれることが出来ると言うだけで、超人でも化け物でもないだろう。そういう与太話は彼らが目からビームのひとつも出してから言いたまえ」

 

 と、このように宣った。ザフト、連合双方に対する皮肉を込めたこの言葉は、一時流行語にすらなったという。実際天才的な手腕で国力を向上させ続けている彼はナチュラルであり、コーディネイターをも上回る結果をたたき出しているためか、ぐうの音も出なかった。

(なお底意地の悪いマスコミは、後日公安に徹底した調べを受け、国外の青き清浄な何ちゃらを謳う団体と不適切な繋がりがあったため摘発された)

 皮肉めいているが全く差別も偏見もない姿勢は、プラントに住む人間のような選民意識を持たないオーブのコーディネイターたち(オーブはコーディネイターを受け入れている数少ない国である)にはありがたい話であった。贔屓もされないが差別もされない、肩の力を抜いた生き方が出来ると益々支持を受けることになる。

 ……すっかり本来の首長代表であるウズミの影が薄いがそれはさておき。

 

「ま、国のことは偉い人に任せてればいいのさ。……そんなことより、聞いたぜキラぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()んだってぇ?」

「ちょっと!? 誰から聞いたの!? ……ミリアリア?」

 

 茶化すように言うトール。その隣でふっふーんと胸を張るミリアリア。ジャーナリスト志望の彼女は時折どこからともなく情報を得てくるがそれはさておいて、少年――キラにそのような話があったのは事実である。クーロン商会がネット上で行ったチャレンジイベント――ハッキングスキルやES技能を競わせるような競技会じみたもの。人材発掘のため賞金も出して行われたそれで、キラは上位の成績をたたき出したのだった。

 単なるお遊びのつもりであったその成績からスカウトされるなどとは夢にも思わなかったキラは、返事を保留して迷いまくっていたわけだが。

 

「あれは一応って感じで声かけられただけだよ。ちょっとハッキングが上手いだけで即採用とかあるわけないでしょ」

「でもチャンスだぜ? このご時世、飛ぶ鳥落とす勢いで成長続けてる大企業じゃんか。ダメ元で話聞いてみる価値はあるかもよ?」

「けどさ、あの企業悪い噂もあるじゃないか。連合とザフト両方と裏取引してるとか、軍需産業に参入するとか」

 

 不安げな表情でカズイが口を挟む。悲観主義者なのか、彼はこのような発言も多い。短所にも思えるが用心深いとも言える。まあクーロン商会に関してはほぼ事実だが。

 

「んなこと言い出したらきりがないぜ? このご時世戦争に関わらない多国籍企業なんてあるもんか。【アズラエルグループ】なんか【大西洋連邦】とズブズブだろ」

「そりゃそうかも知れないけど」

 

 なぜかキラ本人よりも乗り気なトールと、消極的に反論するカズイとの会話は続く。置いてけぼりにされた当の本人は、肩をすくめるミリアリアと視線を交わしてからため息を吐いた。

 正直、興味はあった。だが何というか、踏ん切りがつかない。世界の情勢になんとなく不安を感じているというのもある。友人がいて、居心地の良いこのコロニーを離れがたいというのもある。そして……密かに淡い想いを抱いている少女の存在に、後ろ髪を引かれてもいる。

 ……まあその少女は友人の婚約者なので叶わぬ想いと分かっちゃいるのだが。

 ともかく、新たな世界に足を踏み出すことを、キラ――【キラ・ヤマト】は躊躇っていた。何かやりたいことがあるでもなし、成したい志があるわけでもない。ちょっとコーディネイターで素質があるだけの少年。その未来は定まっていなかった。

 今は、まだ。

 

 

 

 

 ちなみに、商会が行ったイベントに関してリョウガは全くのノータッチである。このことがどのような結果を導き出すのか、当然彼が知るはずもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、クーロン商会で製造されていた連合の新型艦とMSであるが。

 実はハガクレが出航するちょっと前に、すでに発っていたりする。

 

「本当にバレないものだな」

「左様ですな。ザフトの艦は全くの無反応。偽装は上手くいったようです」

 

 艦長と副長が言葉を交わす。それを耳にしながらCIC総括を務める【ナタル・バジルール】少尉は、密かに眉を顰めた。

 

(全く、このような()()()()()()()()が上手くいくなど……)

 

 納得いかない。ものすごく納得いかない。生真面目な彼女は現在艦に施された細工に、嫌悪感じみた苛立ちを抱いていた。

 彼女が苛立っている理由は、現在の艦――アークエンジェル級1番艦【アークエンジェル】の姿にある。なにしろその姿はどう見ても、使い古したウォータータンカー――水資源を輸送する大型輸送船のものであったからだ。

 真新しい船体の外側を丸ごと中古のタンカーから剥ぎ取った外装で覆う。このアイディアは建造を受け持ったクーロン商会から強引に押しつけられたものだ。担当した技術士官と窓口のお偉い方は渋ったが、商会の銀髪三つ編み幹部はニコニコとした態度のままでこうのたまったという。

 

「引き渡して出港した途端に撃沈されました、では話にならないのですよ。護衛の戦力もろくによこさない状態で、産毛の生えたばかりのひよっこが血に飢えた猛禽に太刀打ちできるとでも?」

 

 この期に及んで派閥争いなどというくだらないものの為に足を引っ張り合っている連合に対する皮肉も込めた言葉であった。本来の話であればどこぞのエンデュミオンの鷹さんが護衛として派遣されるはずであったが、状況が変わりついでに連合軍内部の足の引っ張り合いも様相を変えたようで、それはキャンセルされてしまったようだ。

 そして艦を動かすためのスタッフと、トップガンとは名ばかりのひよっこだけをよこされることとなって、鬼とも悪魔とも呼ばれた女性は静かにキレた。おどれら舐めとんのかい、と。

 で、この有様である。新造艦をそのまま出すから狙われるのであって、別な姿にしてしまえばバレにくいじゃない。ついでに船籍も適当な船会社にしてしまえばまず露見することはあるまい、と。その上で商会の子会社である、警備会社とは名ばかりの傭兵派遣組織【CSS(クーロンセキュリティシステム)】から護衛の人材とMAを貸し出す念の入れようであった。

 実際ザフトの監視は見事に騙されたようなので、偽装に関しては誰も文句は言えない。言えないのだが。

 

「無事に月にたどり着ければ、【ハルバートン提督】の面目も立つ。そこから実績を積めば大艦巨砲主義の阿呆どもも目が覚めるであろうよ」

「兵士の損失を数字でしか見ないお偉方は、物量だけで勝てると思っておられますからな。願わくば我らが戦況打開のきっかけとなれれば良いのですが」  

 

 艦長と副長はそのようなことを言っているが、()()()()()()()()()()。ナタルは苛立ちとともに不安を抱いている。

 エイプリールフール・クライシスによる深刻な電力不足と情報インフラの壊滅的な被害は、オーブからの技術提供により快方に向かっている。しかしそれが巡って連合軍に幾ばくかの余裕を生み、派閥争いが活発化してこのざまだ。大体オーブの仲介でクーロン商会にMSとそれを運用する艦の開発を頼らなければ、未だ連合軍はMSの開発に手間取っていたことだろう。虎の威を借りる狐、とまでは言わないが、自力でここまで立て直したのではないのだ。胸を張って威張れることではない。

 そしてその事実に対し、()()()()()()()()()()()()()()()()()、そんな感覚を覚える。はっきりとしたものではない、勘のようなものだ。しかしそのような不確かなものを頼る気質ではないナタルは、口を噤んでしまうしかなかった。

 彼女はまだ若く、その視野は『真面目な軍人』のものでしかない。故に全てを見通せるようなセンスは未だ持ち得ていないのだ。現時点では軍隊というシステムのパーツに過ぎないナタルは、悶々とした思いを抱きながらも己の職務を忠実に果たしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アークエンジェルのMS格納庫。そこは実戦さながらの熱気に包まれていた。

 

「【ストライク】の換装システムは一通りの作動チェックを済ませたら後回しだ! 艦の艤装の方に人を回せ!」

 

 整備主任である【コジロー・マードック】曹長が声を張り上げ指示を飛ばす。整備員たちが走り回る中、格納庫のハンガーでたたずむ5体のMS周りでも各種作業が進んでいる。

 灰色に統一された機体の一つ、GAT-X105ストライクのコクピットが開き、中から担当のパイロット候補が顔を出した。

 

「【ラミアス】大尉、シミュレーション№5から8までを終了いたしました。確認をお願いします」

「了解しました。少尉はこちらでチェックリストに記入してから休息を」

 

 パイロットの少尉を促すのは、黒髪をなびかせるツナギ姿の女性。【マリュー・ラミアス】大尉。アークエンジェルと連合MSであるXナンバーの開発に携わった技術士官である。

 コクピット周辺や内部に取り付く作業員たちに指示を出してから、マリューはチェックシートの記入を終えドリンクチューブを口にしている少尉に語りかけた。

 

「どうです少尉、ストライクの様子は」

「実働しているわけではないのでまだ何とも。……ですが以前訓練で使った鹵獲ジンに比べれば、格段に扱いやすいと感じます」

 

 ザフト製のMSはコーディネイターにしか扱えないと言われているが、動かすだけならナチュラルにも出来る。ただとてもではないが戦闘に使えるような動きは出来ない。連合軍も色々試行錯誤してみたが、結局ハードもソフトもそのままコピーしただけでは使い物にならないと判明しただけだった。

 ゆえに1からMSを開発する流れとなったのだが、その開発は難航した。そこで白羽の矢が立ったのが高い技術力を持つオーブである。しかしオーブは中立であることを理由にその依頼を拒否。代わりに自国の製品をライセンス生産している多国籍企業、クーロン商会を推薦したのだ。

 オーブのモルゲンレーテと互角以上の技術力を持つ商会の協力で、MSとそれを運用する新型艦の開発は成った。しかし。

 

「これのOS、G.U.N.D.A.M.でしたか。素晴らしいものですね」

「……ええ、そうね」

 

 ストライクを見る少尉の言葉に、少し複雑な表情となるマリュー。GXシリーズの制御OSは、ほぼ完全にクーロン商会製であった。SWRなどの作業機械を開発した実績があるとはいえ、システム周りだけに関して言えば連合の技術を上回っていると言うことである。バーターとして小型化高出力化したバッテリーと、省電力高効率の駆動システムの技術を提供したが、もしかしたらそのようなものがなくとも自力でMSを開発できたのではないだろうか。技術屋の端くれとしては、敗北感のようなものを感じずにはいられない。

 それに、()()()()()()()()()()()()()()()()()、それも気がかりだ。一応クーロンズロックではアークエンジェルとXナンバーの開発に携わっていた区画は独立して隔離されており、人の出入りも厳しく制限されていた。だが商会の手のひらの中であったことには違いなく、()()()()()手段などいくらでもある。かの施設を発つ前に、関係部署のデータや記録は破棄され、自分もそれを確認したが、どこまで信用できるか分かったものではない。

 

(気にしすぎ、であればいいのだけれど)

 

 クーロン商会には色々と後ろ暗い噂もある。アークエンジェルの護衛を買って出たCSSは最たるものだ。かの組織は警備会社と名乗っているが、その実態は傭兵派遣組織であるともっぱらの噂だ。多くの傭兵に仕事を仲介し、その範囲は連合はおろかザフトも含まれていると言われている。

 現在彼らは艤装された外殻の前方、空いたスペースに簡単な居住区画と整備施設をこしらえ、数機のMAと共に待機している。トラブルを防ぐためという理由でアークエンジェルのクルーとは最小限の接触しかしていないが、そういった行動もまた不気味さのようなものが感じられた。

 

(……無事に月までたどり着けるのかしら)

 

 今のところ何の問題もなく上手くいっている。だがマリューは、何かそこはかとない不安を覚えずにはいられなかった。

 だが彼女の不安とは裏腹に、アークエンジェルは何のトラブルもなく月の連合基地までたどり着くこととなる。

 マリューが感じた不安は何だったのか、それが判明するのはもう少し先のことになる……かも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 L5宙域。地球から遠く離れたそこに、砂時計を思わせる形状の天秤型コロニーが整然と配置されている。

 プラント。元は地球からの出資によって作られた生産拠点であったが、現在その住民のほとんどを占めるコーディネイターに占拠され、独立のために出資者――理事国であった国が纏まった地球連合と戦争を行っている真っ最中であった。

 その首都である【アプリリウス市】。いくつかのコロニーで構成されたその中央。代表評議会議事堂が置かれたアプリリウスワンの評議会議長官邸にて、2人の男女が言葉を交わしている。

 

「アスランが、行方不明に?」

 

 驚いた表情を見せるのは、桃色の髪の少女【ラクス・クライン】。その対面に座った人物は、重々しく頷いてみせた。

 

「そうだ。連合の新型艦と思われる船を攻撃した際、反撃を受けて帰還できなかったらしい。……だが、その船はどうやらオーブのものだったようだ」

 

 その人物は【シーゲル・クライン】。ラクスの父で、現在最高評議会議長を務める人物だ。その表情は苦悩に満ちている。

 

「今はまだ評議会内で話は止まっている。そしてオーブからもまだ何の反応もない。だがかの国が動かないはずはないし、事が露見すればプラントの民も動揺するだろう。誤認だという話だが、頭を下げてすむ問題ではないのだ。相当の賠償やペナルティを覚悟しなければならないだろうな」

 

 MIA(行方不明)になったアスランは、国防委員長【パトリック・ザラ】の息子であり、同時にラクスの婚約者であった。そんな重要人物をパイロットにして前線に出して良いのか、とは思うがプラントの軍事組織ザフトは万年人材不足である。どんな立場の人間であろうと自ら望んで門を叩いた以上、受け入れざるを得ないという事情があった。

 要するに襲撃した相手がどうだとか言う以前に、プラントの内情的にも大問題である。その上で襲った相手が中立の、しかもやたらとヤバげな人間が音頭をとってる国だ。事が表沙汰になったら混乱ではすまない。そしてオーブが中立宣言をかなぐり捨てて敵に回ったりしたら勝算はゼロに近くなるだろう。戦力的な問題だけではない。中立国であるオーブは民間企業などを仲介してプラントに便宜を図ってきた。その支援がなくなればどれほどの損失か。地球からの輸入がなくなるだけでプラントは干上がるのだ。もちろん全てがいきなり敵に回り即座に干上がるというわけではないが、かの国を敵に回すことだけは避けねばならないのに。

 

「マルキオ導師を仲介に、オーブに接触を試みているが向こうがどう出るか。アスランの安否も気がかりだが、今は下手な動きが出来ん。お前が向かうはずだった()()()()()()()()()()()()()()()()()。……気を揉むだろうが、今は大人しく待っていてくれ」

「分かりました、お父様」

 

 気を落としたような様子で返事をするラクス。その様子を見ながら、シーゲルは内心で思い悩み続けている。

 今回の事件は評議会で押さえられているが、その評議会自体が混乱している状況だ。息子が行方不明になったパトリックは色々な意味で激怒し、同じく息子が行方不明になった【エザリア・ジュール】議員は卒倒して病院に担ぎ込まれ、他の議員は意見が割れまくっていた。

 タカ派の中でもパトリックを含む急先鋒の連中は、それ見たことかオーブは危険だと息巻いて、穏健派の中でも状況を理解しているものは即土下座かましに行くべきだと主張し、互いがお前分かってねえのかと喧々囂々にやり合っている。残りはあっちについたりこっちを宥めたりと右往左往していた。こんな状況でのんきに追悼式典などやってはいられない。

 ともかくシーゲルは諸々の意見を余所に、オーブに五体投地で許しを得ることを前提に動いている。彼は最高評議会議長という国の頂点であるが、今の今まで自分の思ったとおりに人や国が動いた事など一度もない。敵も味方も人の話を聞きゃしないのだから。自分に出来ることと言えば関係各所に頭を下げまくることだけだ。

 誰か代わってくれないかなあとは思うが、下手な人間にこの立場を譲ったら状況は坂道を転がるように悪化するだろう。それを考えると容易に退陣も出来なかった。今日もシーゲルの頭と胃は痛み続ける。

 そして、対面のラクスであるが。

 

(覚悟はしていたつもり、だったのですけれどね)

 

 沈痛な表情の下で思う。アスランが行方不明になったことがショックだったのではない。逆で()()()()()()()()()()()()()()()()()が衝撃だったのだ。

 アスランと自分は親が決めた婚約者同士である。アスランは自分を大切に扱ってくれて、自分も相応に心を開いていたと思う。愛していた、恋心を抱いていたとまでは言わない。しかし互いを尊重し、プラントの未来を築く間柄になれると思っていた。その片翼とも言える相手が失われれば、相当に動揺するはずなのに。

 まるで()()()()()と、そう諦めてしまったかのような。喪失感だけがある。時間がたてば違うのかも知れなかったが、これ以上の感情を抱く自分というものが見えてこない。存外薄情な人間だったのか自分は。それとも戦争というものが自分から感情を奪い取ってしまったのか。

 

(この戦争で家族を失った人たちは、このような気持ちなのでしょうか。……いえ、違いますね)

 

 例えばパトリックは妻を失ってから常に怒りと憎悪を抱いている。多くのザフト兵たちは同様に連合に対して憎悪を募らせている。それは理解できるのだが、同じような感情を持つことは出来なかった。それが何を意味するのか、ラクスにはまだ分からない。

 

(こんな私が、何を成すことが出来るというのでしょうか。ただ民を慰撫し、兵を鼓舞し続ける。それで良いのでしょうか)

 

 プラントのシンボルであり、希代の歌姫と呼ばれる彼女もまた、ただ一人の少女に過ぎなかった。そんな自分が何をすれば良いのか。ラクスは考え続ける。

 

 

 

 

 

 で、彼女は諸々のフラグがポッキリ折れてしまったわけだが、もちろんそんなことに気づくはずもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうでも良い設定

 

 

 CSS(クーロンセキュリティシステム)

 

 クーロン商会の子会社にして、警備関係を一手に担う警備会社……と言うことになっている組織。

 しかしその実態は実質上ロン・ヤア(リョウガ)の私兵であり、傭兵に依頼を仲介する傭兵派遣組織でもある。

 所謂ギルド的な側面があり、登録した傭兵に適切な仕事を割り振るオフィスとしても活動している。その仕事は信用第一。最低でも自ら傭兵に「騙して悪いが」系の依頼はしないし、依頼者がそのようなことをすれば制裁するくらいにはしっかりしてるようだ。

 新興の組織ではあるが、その姿勢から傭兵たちからの信用は高まりつつあり、サーペントテールなどの有名な傭兵も登録者として名を連ねている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 エクリプスガンダムは2機あるそうですが……多分1機は強奪されるか裏切るかするんだぜ。そして魔改造されるんだぜ。(偏見)
 HG出たらオリジナルも魔改造も買うだろ常識的に考えて。捻れ骨子です。

 はいそんなわけで今回は閑話という名の番外編。本編放っておいてなにやってんだという意見もあるでしょうが私は謝らない。ともかく本来の主人公たちが現在どうしているかというお話でした。
 キラ君とかアークエンジェルクルーとかモブ扱いになりつつありますが、本編に絡む理由がなければこんな物ではないでしょうか。キラ君なんかはクルーゼさんに引きずり出されそうな気もしますが、クルーゼさん自体が今そんな状況じゃありませんからねえ。ちょっと行く先が怪しいかも知れませんけど、多分彼はしばらく平穏なままです。
 そしてラクス嬢は漂流フラグそのものがたたき折られちゃったよ。いやあ、あのやらかしはこれくらいの影響は出るでしょう。市民は訝しがるでしょうが、上の方はそれどころじゃないでしょうし。シーゲルさんがんばえ。(他人事)

 そう言ったわけで今回はこの辺で。
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