さて、満を持して俺と姫さん(+3)の正式な婚約が発表された。当然
「とんでもないことを考えますねえ。戦争をやっているのが馬鹿馬鹿しくなってきそうです」
「それが狙いなのでね。まあ漁夫の利を得るなんて事も考えては居るが」
早速連絡を入れてきたアズラエルとの会話。その声にはやや呆れも含まれている。
まあそうだろう。俺、いやオーブは姫さんとの婚約発表と同時に、あることを大々的に公開した。
『宇宙開発の再始動と、火星圏との航路、交易の開拓』である。
そう、外伝Δアストレイに出てきた火星圏の住人、【マーシャン】を巻き込む腹だ。もちろん向こうも色々と問題があることを分かった上でな。
現在の所彼らは中立を保っている。そう、
これから先、宇宙開発にて火星圏は『橋頭堡』となりうる。アステロイドベルト、木星以降の外惑星。そこには未だ数多の資源が眠っており、宝の山と言っても良い。火星自体も豊富な資源があり、発展の余地があった。将来的には大きな市場となり得る可能性がある。今のうちに手を付けておくのは悪い話ではあるまい。
で、なんでこのタイミングで言い出したかというと。
「タメトモでしたか。よほどの自信がある……だけではないのでしょう? あれを見せ札としてまだ奥の手があると見ましたが」
「国家機密をそう簡単に口には出せんよ。ま、攻め込んでくるなら痛い目をたっぷりと見せてやるとは言っておく」
そう、タメトモをはじめとした防衛網の構築。それがひとまず完成した。それが理由の一つだ。流石に連合と真正面からやり合うほどのものではないが、防衛に徹するなら、物量による力押しなどのまともな手段では攻め落とされない自信がある。
……まともじゃない手段が山ほどあるんだがそれは置いといて、軍事力を背景にし、漁夫の利を得ようとオーブは動き出した……ように余所からは見えるだろう。事実その通りであるが、それだけが目的ではない。
「ここから先は連合とザフトの争いの他に、【
「連中の優位点はコーディネーターの能力を最大限に生かした技術開発。特に宇宙空間でしか生成できないマテリアル、独自の発想。その優位点が崩される可能性を突きつけられる。何しろオーブは
そう言うことだ。オーブを中心とした中立国が、戦争そっちのけで宇宙開発に本腰を入れれば、プラントの存在意義そのものが揺るがされることとなる。なに、人手の当てはあるのだ。例えば
まあ場合によっては第二のプラントとなる危険性があるが、オーブ本国と同等の権利や社会保障を確定させれば、それもだいぶ低く抑えられるだろう。プラント理事国の二の舞は御免被るからな。そう言うところはしっかりと目を配らなきゃならん。
そう、これは単に利益だけの行動ではない。『連合を追い出され、かといってプラントに鞍替えするつもりもないコーディネーターたちの受け皿』として、宇宙開発というお題目を打ち立てたのだ。スカンジナビアをはじめとする中立国、そしてオーブも、土地としてのキャパシティには限界がある。だがオーブにはアメノミハシラをはじめとした宇宙拠点、10基ほどのコロニー、ラグランジュ点に集めた資源採掘用の小惑星などがある。コロニーにはまだ人口を受け入れる余裕があるし、採掘用小惑星も、改装すれば居住施設として十分に機能する。これらを生産拠点兼経済圏とし、宇宙開発の基盤を成す……というのが計画の前半だった。
……これを達成するだけでも大分手間だが、上手くいけばオーブは宇宙開発を進められると同時にマンパワーを手にすることができる。戦争で削り合いをやっている連中は、徐々に労働人口を減らしつつあった。働ける人口を増やせると言うことは、優位に立てると言うことだ。まあそう単純なものではないが、後から効いてくることは間違いない。
「今なぜ、そう多くは思うでしょうが、
「連合は立場上それが難しいし、なおかつ内部に
「……ゆくゆくは
「そこまで読まれていたか。……ま、まだ絵に描いた餅だがね」
話が早い。冷静さを保てればホント頭の回転が早いなこの御仁。火星とのコネクションを作るのと、経済力を押し上げ市場として成り立たせることを目的に、そう言った構想はある。これは何もコーディネーターに限ったことではなく、ロウのように自ら望んで新天地に赴こうとするナチュラルもいると踏んだ。なにしろ地球圏は火種がたんまりとある。火星が平穏とは言わないが、地球よりマシと考える者も多いだろう。逃げ場は作っておいた方が良い。
ともあれ言ったとおり、まだまだ先の話だ。今は宇宙開発と、難民を拾い上げることを最優先とする。もちろんなんやかんや言ってくるヤツはいるだろうが、ちゃんと『エサ』は用意してるんだなこれが。
「本気ですねえ。協力を申し出た勢力に対する報酬もなかなかのものです。
「そういう貴方はあまり興味がなさそうだな?」
「興味はありますよ? ただ貴方関係だとまず眉につばを塗っておくべきだと思いましてね」
「相変わらず食えん御仁だ」
うん、ヴォワチュール・リュミエール開発の前身と言える電磁推進システム。実用化しちゃった。
外伝であるスターゲイザーの話だとシビリアン・アストレイに搭載されていたようなので、実用化できんじゃね? と思って開発させてたら案の定だよ。まあ大型宇宙船のような大質量で使おうとすると初速がめちゃくちゃ遅いので、ロケットモーターや核パルス推進などを併用する必要があるが、時間さえかければ理論上亜光速まで加速できる。もっともそこまで加速させる前に太陽系を飛び出してしまうだろうけど。
この技術を公表した理由は二つ。一つは
たしかにこの電磁推進システム、それ自体は推進剤を必要としないが、ヴォワチュール・リュミエールと違い小回りが利かない。MSクラスの質量なら主推進器として十分に使えるが、姿勢制御のためにサブスラスターは必要だし、そのサイズまで小型化できるものではない。結局推進剤は必要になるのだ。大分量は減ることになるが。それにしても大した性能の向上は見込めない。
大型宇宙船ともなればもっと顕著で、先も言ったとおり十分な速度を得るまでは他の推進力頼りとなってしまう。距離によっては単なる
で、もう一つの理由が
こう言った小細工も、アズラエル氏はお見通しのようだ。まあ俺を見知っている人間はたいがい見破っているだろうが。
「宇宙航海のブレイクスルーとなり得る技術の公開、そして共同開発。釣り餌にしては壮大なエサで、しかし事実なのでしょう。だからこそこの大盤振る舞いが怪しく見える。もっとも多くはそこまで気づかない。気づいているのはほぼそちら側の人間、でしょうね」
「ふむ、まるで自分もこちら側だと言いたげだな?」
「ええ、そろそろ
にやりと笑みを浮かべて言うアズラエル氏。なるほど、腹を決めたようだな。
「ブルーコスモスは、
「ほぼ僕の手から離れつつあります。穏健派がこちらについたのが不幸中の幸いと言ったところでしょうか。もちろん存続はするでしょうし、シンパはまだまだ多いでしょう。ですが最早ただのテロリストだ。利用価値はあれども、盟主の座に居座る気はなくなりましたよ」
アズラエル氏の中では使い捨ての駒に格下げ、と言ったところかね。精々踊らせて、あちこちに武器を売りつける理由にする程度だろうな。見捨てる気満々だ。
「ロゴスも半分は手を引くつもりのようで。うちの父なんかは結構渋っていましたが、何とか説き伏せました」
「お父上まで手を引かせたと? アズラエル家はブルーコスモスの創設に深く関わっていたはずだが」
「しがらみはもちろんありますが、それが足を引っ張るのであれば潔く切り捨てるべきでしょう。幸い大西洋連邦の軍は、ハルバートン提督の派閥が主流になりつつあります。鞍替えするには丁度良い頃合いかと」
ブルーコスモスの盟主と国防産業連合理事を辞任し、距離をとるつもりだと言う。その一方でブルーコスモスの影響が少ない派閥に接触し、乗り換える事を考えているようだ。まあ実際ブルーコスモスと関係があると言うだけで眉を顰める者も多くなった。鞍替えするには頃合いなのは間違いない。
もっとも、鞍替えしたからといって
「話は分かった。税金をしっかり払ってくれて、
「ええ、
……やっぱり裏で色々と画策するつもりだなこのやろう。下手すりゃうちの重鎮に取り入って派閥を作り上げかねん。とは言っても放り出すわけにもいかんのよなあ。目の届くところにいてくれた方がまだマシ、か。
「……というよりあまり非道なことをすると妻から怒られるので大人しくするしかないんですよね」
「返答に困る情報をぶっ込まないでくれるかな?」
あまり脅威にはならないかも知れなかった。演技かも知れんけど。
ともかく、オーブは本格的に動き出し、それを隠れ蓑とするかのようにムルタ・アズラエルはブルーコスモス盟主の座から退陣。表向きは隠遁という形で大西洋連邦を去った。
この事実は世間一般的にはともかく、経済界に激震を呼ぶ。事実上、アズラエルグループが大西洋連邦の軍需産業から撤退したような物だからだ。実際の所は派閥を乗り換えて供給は続けるのだが、その規模は縮小される。代わりにアクタイオン社やら何やら怪しい連中が台頭していくと見られていた。
しかし、アズラエルグループはある組織と提携することを発表した。
これらの大規模な方針転換は、アズラエルグループの裏切りだとブルーコスモス過激派は判断するだろう。実際早速嫌がらせじみた小競り合いは始まっているようだ。もっともブルーコスモスを見限るに当たって色々根回しや用意をしていたようで、アズラエルグループに大したダメージはない。痛い目を見ているのはテロ扱いされた過激派の尻尾ばかりだった。
そしてアズラエル氏自身は密かにオーブ入りを果たす。で、早速俺を含めたオーブ首脳陣と密やかにコンタクトを取り始めた。もちろんそれはこちらに都合のいい話ばかりではなく、アズラエルグループが今後有利になるような話や交渉が数多く含まれている。
味方とは言いがたい。さりとて敵と断ずることもできない、絶妙な立ち位置。彼はそこに収まった。
それは同時に、
ともかくアズラエル氏はブルーコスモスを見限った。結果連中は本格的に制御できなくなるだろう。敵とみれば誰彼構わず噛み付く狂犬どもの手綱を取れるものは、誰一人いなくなったって事だ。現状上に立っているのは、むしろ真っ先に噛み付くことを指示するようなアレばっかりだしな。
このことが吉と出るか凶と出るか、それを確認しながらも俺達は次の段階へと動く。
さて、どれだけ釣れて、どれだけ巻き込まれてくれるかな?
定期検診で引っかかる。再検査を受ける。毎年のパターンですが、直腸検査とか聞いてないよ。ないよ。
……新感覚に目覚めそうになったわ捻れ骨子です。
さ、筆者の性癖がゆがみかけたことは置いといて、更新です。ついにアズにゃん寝返り。ついでにオーブの企み暴露って回でした。本当はこの後別な人との対話があったんですが、アズにゃんとの会話行を食う食う。政治劇大好きな影響が色濃く出てますね。頭悪くて文章下手なくせに。ともかくおかげで話が全然進みませんどうしよう。そろそろモビルスーツ戦とか入れないといけないのに。仮にもガンダム話だというのに。まあSEED始まってないから仕方がないね。(なくない)
しかしこんな荒唐無稽な計画立てて大丈夫か? いやリョウガさんじゃなくて俺が。もちろんノリと勢いだけで話進めてるから計画性なんてないぞ。どうしよう本当に。
といった感じでいつもどおり不安をばらまきつつ今回はこの辺で。