「まあ、わたくしも招待して頂けると?」
「その予定だ。できればプラントの人間も幾ばくか招待したいところだが」
アズラエル氏がオーブ入りするのと前後して連絡を取ったのはラクス嬢。俺は各勢力に向けて、宇宙開拓事業のプレゼンを兼ねたレセプションを行おうと考えていた。もちろん、プラントも含めてだ。
当然罠を兼ねている。いつものことだ。
これは『選別』を兼ねている。こちら側につくか、ついても使えるのか、あるいは敵に回るのか。見定めるために必要なことだと俺は思っている。
……まあ罠なんで絶対横槍を入れてくるヤツがいるんだが。変な仮面とか紫唇とか。賭けてもいいが賭けにならないからやんない。
とまあそう言ったわけで招待客予定の人間に連絡を回しているわけだ。特に重要だと思ってる人間は俺が直接アポを入れている。ラクス嬢のようにな。
「つまり危険を覚悟で招待を受けてくれと、とてつもなく破廉恥なことを頼んでいるわけだよ私は」
「危険はいつものことなので構いませんわ。ただそうなると、プラントの招待客を選別するのは、大層難しいことになるのでは?」
「全くもってその通りでね。継戦派にしても穏健派にしても、下手な人間は招待できないだろうな。ザラ国防委員長や貴女のお父上などもっての外だ」
この辺は誰を選ぶか悩む……つーか誰を選んでもこじれそうな気がする。穏健派のカナーバ女史あたりが無難なんだろうが、繋がりが薄いからなあ。それに今回はあくまでプレゼンがメイン(ということになっている)。となるとプラントの企業……は正式には『ないこと』になってるから、経済産業大臣相当の人間か? それはそれで万が一の時を考えると怖いんだが。
そうやって僅かな間悩んでいれば。
「もしよろしければ、わたくしの方から幾人か推薦いたしましょうか」
「ほう? 確かに貴女ならば顔は広いと思うが、どのような人物を?」
ラクス嬢の方から話を振ってきた。俺は警戒心を抱く。何しろ彼女はアズラエル氏と同じく
「はい、父の派閥の中から経済に明るい方を。そしてザラ国防委員長の派閥から技術開発の専門家を推薦したいと思っております」
具体名は明かさなかったが意外な人選であった。政治家かそのへんだと当たりを付けていたんだがな。
「政治関係の方々は、今動くのも難しいでしょう。多分貴方が思っている以上にプラントは揺れています。戦争に対して否定的な考えを持つ方が増えるのはよいのですが、それが内部に不和を呼ぶのは頂けません。この状況で政治家を動かすのは無理筋かと」
「なるほど、道理だ。それで経済関係と技術関係か」
「はい。そちらが提唱した宇宙開発の構想は、経済的にも技術的にも注視されていることです。そちらの方面から刺激を与えれば首脳陣にアプローチがかけられるかも、と思いまして」
話の筋は通っている。あるいは原作でラクス嬢の後ろ盾となっていた組織、【ターミナル】の
まあいい、ある程度ラクス嬢の息がかかった人間を推薦すると考えて良いだろう。場合によってはプラントの継戦派と袂を分かち、独自に宇宙開発へと参加することを視野に入れているのかもだ。
いずれにせよプラント自体に無理強いはできない。かといってアプローチをしなければ拗れるのも目に見えている。ここはラクス嬢の提案に乗っておくのが吉、か。
「ふむ、分かった。貴方の提案を受けよう。それと可能であれば、シーゲル・クライン議長とパトリック・ザラ国防委員長からも幾人か推薦がほしい」
「双方に近しい立場の人間から見て貰いたい、と言うことですね?」
「その通り。貴女というフィルターがかけられている、そう見る向きもあるだろうからな」
特に国防委員長殿は懐疑的だろう。彼から見ればこちらも十把一絡げのナチュラルと裏切り者のコーディネーターとの集団だ。いや本人的にはそう侮っているつもりはないのかも知れないが、憎悪というフィルターがどうしても思考的な歪みを生じさせる。
それでも油断はしないし信用もしない。できれば自分の手のものに状況を確認させたいと考えるのではないだろうか。
俺がそれを勧めることで、逆に何らかの罠ではないかと考えることもあり得る。まあ色々やらかしてるからそう思われても仕方は無いが、彼が直接推薦して送り込んでくる人間には特別なリアクションを行う気はない。
問題は
うん、テロるな。しかも地球側とほぼ同じタイミングで。賭けてもいいけれどまず間違いなく賭けにならないからやらない二度目。
まあ冗談めかしているが、過激派連中が焦れていることに間違いは無い。パトリック・ザラはまだ踏みとどまり虎視眈々と機会を窺う理性があるようだが、全員が全員そうではないからな。なんやかんや言い訳して動こうとするだろう。この機会に大掃除できれば良いんだが。
「子細については貴女に任せよう。ともかく現時点で我々がプラントを見捨てるという選択を取ることはない。それをしかと伝えて欲しい」
「ええ、承知いたしましたわ」
なんかあれば見捨てる方向に舵取るけど。そう言外に込めたことをラクス嬢はしっかり読み取ったようだ。議長と国防委員長に伝え、それでもまだ敵に回るというのであれば……俺より先にラクス嬢が見限るだろうな。
宇宙開拓の話は、プラントにとって蜘蛛の糸となり得る。便乗し幾ばくかの利権が得られれば、現状の立て直しを図ることもできるだろう。その千載一遇の機会を見逃す、というのであればいよいよ任せてはおけない。もちろん罠ではないかと疑い、用心深くなるのは当然。敵の敵は味方などと甘い考えで事に当たるのは愚の骨頂であるが、原作よりマシとは言えさほど余裕があるわけでもなかろう。この機会を見逃せば進退を問われる事も考えられる。
この機会を見逃すことこそプラントを見捨てること。ラクス嬢ならそう考える。彼女は穏やかな心持ちの人間だが、同時に間違っていると感じたら国家に反旗を翻す、肝の据わった人間でもある。事実現時点で色々やらかしてくれているのだ。躊躇うことはあるまい。
……できるだけプラント丸ごと見殺し、とかはしたくねえんだよなあ。策略家的にはともかく個人としては後味が悪い。敵味方の選別をするつもりはあっても、そこまで冷酷にはなりきれん。とはいえいざとなったらやらざるを得ないのも事実だが。
まあ、それはひとまず置いておこう。
「ところで、例のコーディネーター問題についてなんだが」
「あら、何か進展がありまして? 導師からは裏社会の方が何やらゴタゴタしているようだと聞いておりますが」
一族の崩壊は、裏社会に影響を与えているようだ。まあ事が事なんで詳しい事情は説明できないんだが、いつまでも黙っておくわけにもいかない。俺はある程度の事情を打ち明けることにした。
「実は冗談みたいな話なんだが、黒幕かと目星を付けていた組織が崩壊したようでね。裏社会の混乱はそれが原因だろう」
「あらまあ。そんなことがあったのですか。詳しい経緯などはお分かりになりまして?」
特に驚くでもなくそう問いかけてくるラクス嬢。実感が湧かないから、それとも話の続きを聞くのが先だと判断したか。恐らくは後者だろうと思いつつ俺は話を続ける。
「その組織、一族と言うらしいが、
流石に党首自身を捕らえた挙げ句、嫁にすることになりましたとは言えない。あっさり納得されてしまいそうな気もするが、そこら辺は隠しておく。
「それではコーディネーターの誕生に関しての情報は、得られなかったのですね?」
「ああ。一族がコーディネーター関連技術の根幹を研究していたという所までは掴んだが、それだけだ。今の戦争を散々煽って利用した、と言う点では黒幕と言えるだろうが、どこまでコーディネーターの誕生に関わっていたかは分からん。分裂した一族の残党から情報を得られるかもしれんが、振り出しに戻ったような物だよ」
実は同じ事をアズラエル氏にも伝えてある。彼はこっちの言うことを鵜呑みにせず自分でも調査を進めるだろう。それはラクス嬢も同じであることは間違いない。
俺達の視点や伝からは見えない物が見えるかも知れない。そのような期待もあった。
「現段階では決定的な物証も証言も何もない。とてもではないが策謀に利用できるものではないな」
「導師からは
「かの方の受けた苦難は聞き及んでおります。業の深いことかと。……コーディネーターであるわたくしが言うのも何ですけれど」
そういやこの子たちは
「彼が知らなかった……いや、
何しろ一族も誰かの思惑に踊らされていたってこともありうると、俺は考えているからな。簡単には真相を露わにはできまい。
逆にそう言った輩は長期的な計画を水面下で巡らせているから、そうそう表に出てこられないと言うことでもあるのだが……放っておいたら後でとてつもなく面倒なことになるのは目に見えている。調査は続けにゃならん。
「いずれにせよ、引き続き調べる必要はある。
「ええ、焦っても仕方の無いことですが、何らかの陰謀があるのであればそれを止めねばなりません。無益な血を流し続けるわけには参りませんから」
誰かの手に踊らされて戦い続けるなど御免被る。これは俺達三者共通の思いだ。これがある限りしばらくは共闘を続けられる。終わったら出し抜こうとしそうなのが一人いるが、利益と妻子の安全を保証すればまあ裏切ることはないだろうと信じたい。
こうしてオーブが大々的に動く裏で、この世界の裏を探る戦いは続いていく。いつ終わるとも、どこまで真実がつかめるとも分からない、暗闇を手探りで進んでいくような作業となる。
報われるとは限らないが、知らねばどこで何をひっくり返されるか分からない。存在するかも不明な黒幕に対して牽制する意味でも、続ける必要はあった。それがどれだけクソの山を積み上げる行為であってもだ。
原作知識では分からなかった知らん事実が次々掘り起こされて食傷気味になってるが、止めるわけにはいかないんだよな。嫁4人も貰うことになっちまったんだ。養うためにも平穏と秩序を勝ち取らにゃいかん。
そのために、先ずは表の邪魔者をできる限り掃除するとしよう。
大々的に人を集めて行われる、オーブ主催の宇宙開拓計画レセプション。その会場となるのは宇宙ステーション、アメノミハシラ。
そこが一大決戦の地となる。
出張直前で会場を変更するの、止めてもらえませんか(震え声)。
まあ迎えの車とかで対応してもらえるようで一安心ですが、何年ぶりかの泊まりがけ出張でいきなりこれ。波乱の予感に、震える……ッ!
スーツなんて着るの何年ぶりじゃろ捻れ骨子です。
はい今回はラクス様との対談ですが、闇深なのを再確認しただけだという。掘っても掘っても闇が湧き出るCEという修羅の港。信じられるかい? この先ファウンデーション王国というさらなる闇が待っているんだぜ……?
なおここで驚愕の事実。リョウガさんは前世で令和に代わる頃に亡くなっています。つまり映画の話は知りません。だからラクス様は普通のコーディネーターだと思っています。このことが後にどのような影響を与えるのか……実に楽しみですね。(ニチャァ)
とまあこんなところで、今回はここまで。