※他者視点
2隻のローラシア級。そのクルーたちは淡々とタスクをこなしていた。
「敵MS部隊接近。迎撃開始」
「了解」
艦長らしき人物、ブリッジクルー。全ての人間が無感情に動いている。
表情に動きはなく、ただ淡々と動く彼らは余計な言葉一つ発しない。まるで機械のように、必要なことだけをこなしていく。
彼らは作戦の目的など知らされていない。そして自分たちに待つ運命も。しかし知ったところで彼らはそのまま己の役目を果たすだろう。
心なき兵士たちは、ただ命じられたことを忠実に行おうとしていた。
オルガ・サブナックは拍子抜けしていた。
「なんだこいつら。歯ごたえがねえ」
接敵して交戦開始してみたらば、あっけなく敵は撃墜されていく。とはいえ通常であったら十分な技量と言えるだろう。オルガたちが1機撃墜するのにかかる時間は平均して30秒。並大抵の相手であれば接敵した瞬間に撃墜している。それなりの練度はあると言うことだ。
だがなんというか、
「ゲームの的かァ!? リアルじゃ面白くねえんだよ!」
「キモーい。ウザーい」
仲間の二人も違和感を感じているようだ。ムウの言い様ではないが、何か罠でも仕掛けられているのかと疑ってしまう。
「そう言うのを考えるのは
「良いのかよ。僕がスコア稼いじまうぞ?」
「元々俺らの仕事は母艦狙いだから、こっちが本命食っちまうんだがな。しっかりゲーム代稼げよ。シャニ、いくぞ」
「りょーかい。クロトも精々頑張れよー」
2機がスラスターを吹かし母艦へと向かう。それを見送りながらクロトが苦笑した。
「さては面倒なところを押しつけてったなあいつら。……まあいい、お前ら新作ゲームの課金代になれやァ! 撲殺っ!」
クロトの駆るレイダーが、ワイヤー付きハンマー【ミョルニル】を敵機ジンに叩きつける。
一方敵艦の片方に迫るオルガとシャニは。
「やっぱ反応が単調だな」
「どうする? 射程内に入ったけど」
「一当てしてみるか。俺は右、シャニは左からいけ」
「りょーかい」
型どおりの砲撃が降り注ぐ中、2機は左右に分かれる。余裕で回避し、カラミティはスキュラを、フォビドゥンはフレスベルグを、それぞれ放つ。
目標の艦は回避行動すら取らず、攻撃に曝されるまま、やがて火を噴き沈み始めた。
あまりにもあっけない幕切れ。それが逆に警戒心を呼んだ。
「シャニ、センサー感度最大。敵艦だけじゃなく、周囲を探れ。……おっさ、少佐。こちらオルガ。こっちの母艦は沈めた。だがあっさりしすぎだ。なんかあるぞ」
そう言いながらもう一方の艦に目を移せば……それもまた、攻撃を受け沈みゆくところであった。
「そっちもか。無人でもなさそうなんだがな。周囲を警戒。それと残った敵機に降伏勧告を」
「やってます。ですが抵抗をやめません」
「なに?」
通信を受けたムウは指示を出したが、どうにも様子がおかしい。
「こいつら自殺志願者か!? 母艦が潰されたってのに!」
ジンの群れを相手取っていたクロトが、苛立った声を上げる。スコア稼ぎに丁度良いなどと言った余裕はもうない。
敵は相変わらずの弱さだった。相変わらず、
どれだけ訓練を受けていても、母艦を落とされる――宇宙空間で孤立し帰還の当てがなくなると言う状況は、パニックを呼ぶ物だ。闇雲に逃げだそうとするか、降伏するか、ヤケになって破れかぶれの行動に出るか。ほぼそのような行動に出る。
それらが一切無いというのがどれだけの異常か。理解できれば怖気の一つも感じるというものだろう。
「くそ、全滅させりゃいいんだろ! 抹殺っ!」
恐怖にも似た感情を気合いで押し殺し、クロトは武器を振るう。母艦を落としたムウやオルガたちも加わり、謎のジン部隊は瞬く間に蹴散らされた。
「お、終わったか? なんだったんだよこいつら……」
「シャニ、なんか引っかかったか?」
「センサーに反応なーし。アークエンジェルのレーダーにも引っかかってないから、追撃はなさげ」
「少佐、デブリにも何の仕掛けも見受けられません。これは一体……」
僚機からの報告に、ムウは眉を顰めた。
「どうも引っかけられたっぽいが、何をどう引っかけられたのかが見えんな。いや、そもこれ
目標がアメノミハシラだとすれば、オーブに対するアクションだろうと思う。奇襲を装ったにしては手間がかかりすぎで、しかも戦力が中途半端。戦力を引き寄せると言う役割なら果たせているが、それは外様の
「今の不気味な対応といい、どうにもただの失敗じゃなさそうなんだが……アークエンジェル、聞こえるか」
「こちらアークエンジェル。艦長より手がかりがないようであれば帰還するよう要請が出ていますが」
どうやらマリューもきな臭さを感じているようだ。ならばここは一旦引いておくべきだろう。ムウはそう判断した。
「よし、全機帰還するぞ。気になることは色々あるだろうが、今は後回しだ。爆発物が仕込まれてなさそうな破片だけを回収しておけ」
ムウの指示に従い、何機かは艦や撃墜した敵機の破片やパーツなどを回収していく。アークエンジェルに帰還する最中、オルガはちらりと敵だった残骸に目をやった。
「一歩間違ったら俺たちもああなってたかもな。おっかねえ」
「
薄暗いブリッジの中、サングラスをかけた男が言う。視界が確保されているのか怪しいところだが、本人も周囲もそれを気にした様子はない。
「ふむ、オーブの戦力はほぼ無事。連合の跳ねっ返りどももさほど損失はないが……時間の問題だな」
戦術モニターに映るのは、アメノミハシラにおける戦闘の様子。一見互角のように見えるが、補給に限りがある連合側はじり貧となっていくことは、容易に予想できた。
「当初の予定では、オーブの戦力がある程度分散するのを確認して、ということでしたが?」
オペレーターの一人がそう問うてくる。モニターを見ていた人物は、ふむと考えるそぶりをした。
「何事も予定通りにはいかぬ。と言うことだな。……連合側が目に見えて不利になれば介入する。
「は、抜かりなく」
「よろしい。私はMSで待機する。戦術情報は機体の方に回してくれ」
「了解しました」
サングラスの男は席を立ち、格納庫に向かう。どうやら高速輸送艦を改修した船らしく、搭載されている機体は10機に満たない。
並ぶ機体の一つに男は乗り込み、システムを立ち上げ出撃の準備を整えていく。
「じきに出番が来ると思うが……各機、聞こえるな? 我々の仕事はブルーコスモス派の連合が離脱する援護だ。功を焦るなよ」
「――――」
僚機から応答があった。後援者から押しつけられた人材だが、それ相応に使えるようだ。ただ己の能力に自信があるからか、状況を甘く見て傲慢な振る舞いをすることが多い。そう言った輩の扱いには慣れているのでサングラスの男は気にしない。その傲慢さゆえに自滅しても自業自得だ。そういうドライな目で見ていた。
「リョウガ・クラ・アスハにも挨拶しておきたいところだが……どう転ぶか」
男は小さく嗤う。彼は確かに今この状況を、楽しんでいた。
※リョウガ視点
謎の存在がアークエンジェルに討たれ、戦況が膠着状態から動き出した。ブルコス連中(多分)が
攻めきれなかったせいで、バッテリーなどが尽きてきた。目敏い者は早々に補給に戻っているようだが、大半は無理を押し通そうとして立ち往生する羽目になる。実際ゲシュマイディッヒ・パンツァーを張ることもままならず、撃墜される
だが。
(見られている、と感じているな。俺は)
どこからか視線を感じた。先ほどからその感覚は強くなってきている。やはり出番を待っている存在があるのだろう。
……こうなったらもう認めざるを得ないな。どうにも俺はニュータイプ的な感覚があるらしい。原作でもムウとかキラとかにそう言う描写があったから、このような能力が存在するのは確かだ。鍛錬や過剰な仕事が、影響を与えたのかね。それとも転生したせいなのか。
ともかく何かが今や遅しと構えている。それを感じ取れるのだ。
そして、この場には俺以外にもそんな気配を感じ取れる者が一人。
「リョウガ様……」
「む、君は……君もか」
「はい。僕が感じ取れるのは
そう言ったのはマルキオ導師が補佐として連れてきた少年、【プレア・レヴェリー】。
彼とそのベースとなった人間、および近似のクローンとの間には、ニュータイプ的な感覚の繋がりがある。となれば、出待ちしている人間は誰か確定されたと言うことだ。
まあ大体分かってた。
インカムの通信を司令部につなぐ。
「ミナ、アメノミハシラの上方を集中的に警戒しろ。多分来るぞ」
その言葉にミナは鼻を鳴らして応えた。
「そんなところだろうと思ったわ。警戒シフトを変更させる。貴様は客を大人しくさせておけ」
付き合いが長い分、俺の突飛な発言に彼女は慣れている。そして彼女自身も警戒していたのであろう。実に対処が早い。
「アメノミハシラの警戒網を出し抜いたとでも?」
側に寄ってきたリシッツァが小声で問うてきた。俺は頷いてみせる。
「ああ。
リシッツァは一瞬考え、眉を顰めた。
「……ミラージュコロイド?」
「恐らくはな。艦船に施すことができれば、レーダー網と光学観測をくぐり抜けることができるだろうさ。こっちの間合いに入るまでには量子レーダーに捕まるだろうが、そのギリギリなら一発勝負の奇襲をかけるのも不可能じゃない」
「博打ですわね」
呆れたように言うリシッツァ。確かに分が悪い博打だ。だがね。
「仕掛けてくるのは、そんな博打が大好きな輩だよ」
※再び他者視点
「大まかな位置を特定されたようです。レーダーがこちらに集中照射。ミラージュコロイドはまだ効果を発揮しているため、発見までにはまだ余裕がありますが」
「いや、頃合いだろう。我々が発艦後、当艦は即座に離脱。予定通りの行動に移れ」
「了解。ミラージュコロイド解除。コンテナベイを開放します」
何もないように見える虚空から、しみ出すように姿を現すのは輸送艦。備えられたカーゴベイの左右が開き、そこから放り出されるようにMSが射出される。
「ネオ・ロアノーク、ストリームストライク出る」
大型のスラスターを備えたバックパックを装着し、連射可能な大出力ビームライフルと多目的シールドユニットを装備したストリームストライクは矢のように加速した。それに続くのは同様の装備を施したダガー正式採用機。尋常ではないストライクの加速に、しっかりとついてくる。
サングラスの男――ネオは、展開している連合艦隊に向けて通信回線を開いた。
「こちらは連合より要請を受けた特務部隊である! 展開中の連合艦隊に通達! 現状を放棄して撤退!
はったりである。そんな事実は確認できないが、
別にこれを信用しなくてもいい。撤退しなければ自己責任だ。警告を放ったという事実が必要なだけで、後のことは知ったことではない。
そんな本音をよそに置いておく必要があった。スポンサーは彼らが全滅するのはお気に召さないようだ。まだ利用価値があると踏んでいるのか。ともかく彼らが撤退するように事を運ばなければならない。
「雇われのつらいところだが……
仮面の男が狙う先は、
灰色の機体が、迫る。
出世が決定したよやったねたえちゃん!
でも仕事は増えて給料税金引かれてそんなに変わらないつまり面倒だけ増えてるよやってないよたえちゃん!
神は俺に殴られるべし捻れ骨子です。
さ、そんなこんなで更新。あっけなく始末された謎の勢力&やっぱり来てたあの人です。謎の勢力はもうちょっと無機質な気持ち悪さのようなものを出したかったのですが、中々上手いこと行きませんな。で、折角のムウさんイージスが全然活躍していないというw 多分そのうちどっかで出番があるんじゃないかな(適当)
そして満を持して登場、あの人です。私、参上! したこのエンジョイ勢今度は何をやらかす気なのか。私の姿を見た物はみんな死ぬぞぉとかやらかす気なのか。いずれにせよろくな事しない予感しかしません。
そんな波乱含みの状況ですが、今回はこのあたりで。